で、コミカライズされると意外と違っていることにビックリしたり納得したり。
私の中のオルステッド様は範馬勇次郎でした。
ガルは幽遊白書の雷禅
ジノ君は無一郎
案内された部屋には彼が座っていた。
膝を畳んで座る姿、所謂正座だ。
右膝の上に右の手を添え、真っ直ぐに座る姿。
それは誰もが美しいと思わせる佇まい。
まさか瞬時に6人もの命を絶った極悪人とは思えない姿であった。
左脚が腿からない状態で剣神ジノ・ブリッツはだまって正座し彼らの到着を待っていた。
いつ来るのか知らされていない。
傷は出血を止めている程度。食事も拒否している。
にも関わらず、この部屋に軟禁されてからずっとその姿で待っていたようだ。
情状酌量を得る為?
点数稼ぎ?
反省してますアピール?
それでここまでできるなら大したものだ。
ジノのそれはそのようなものではなく。
まさに真摯に傷つけてしまった者たちに対峙するためにこうしていた。
(セイジ視点)
正直、色々な予想をしていた。
ふてぶてしく開き直っているジノ
土下座をしているジノ
イロイロ言い訳をしてくるジノ
後悔の念に顔を歪ませているジノ
そのどれでもない今のジノの姿、
しかし僕等の期待していた剣神のジノの姿だ。
唯一、目に光がないことを除いて。
先日、七星さんから聖地の事件の概要は伺っている。
恐らくは彼も被害者だ。
ならば同じ被害者として、彼はどのような選択をするか僕は聞きたくなった。
「セイジと言います。あの日両親と祖母を失いました。」
「はい、私が斬ってしまいました。」
言い訳でも謝罪でもなくジノは事実のみを語った。
「開き直るわけではなく、私は貴方達の大事なものを奪ってしまった。謝罪ですむとは思えない程のね。」
ルーデウス様が続いた。
「では、貴方はどうしてここに、そして私達を呼んだのですか?」
「私が起きた事をすべて伝え、貴方達に私の今後を委ねるために。」
「それは、セイジやルーデウス様に殺して欲しい。ということですか?」
意外にもセシリアが反応した。
「私にはもう、望むものは無くなりました。可能であればそうしてくださって構いま・・・」
「冗談を言わないで下さい!」
セシリアがジノの言葉を遮った。
「セイジの大事なものを奪っておいて、その上貴方の死まで背負わせるつもりですか?
勘弁して下さい。まだセイジには私がいるし、私にはセイジがいます。ルーデウス様にもシルフィさんやロキシーさんもいます。
自分達だけで手一杯なんです。」
僕はセシリアの背中を優しく擦った。
「ジノさん、まずは教えてください。何があったのか、そして何でこうなったのか。少しは知っています。しかし、僕はジノさんの口から聞きたいのです。」
ジノさんは今までの事を全て話してくれた。
ギルの事。
家族の事。
「正直、どうして貴方達の家族を襲ったのか、その理由は今にして思えばよく覚えていないんだ。」
ブチギレる。頭が真っ白になる。という事態だ。
そして次に彼から伝えられた言葉に僕等は驚愕した。
「ヒトガミが私のところに現れた。」
ヒトガミの言ったことをジノは全て僕達に話してくれた。
「ジノさん。ヒトガミは3人を一度に視たんですね。」
「ああ、そうだ。私とギルドもう一人」
「それ、多分僕です。」
「ああ、君だったのか、ヒトガミがやたらと殺したがっていたのは。」
「殺したい二人がいる。と言っていたのは、君と、君かな?」
ジノさんは僕とセシリアを交互に見た。
思わずセシリアは僕に擦り寄る。僕も咄嗟に魔力で彼女を覆った。
「すまない、勘違いさせてしまったね。もとより私にはそんな意志はないよ。」
僕はほっとし、魔力を緩めた。
「ジノさん、お話は以上ですか?」
「ああ、話さなければいけないことは全て話した。」
「そうですか。ではジノさんは今何をしたいですか?但し自分で死ぬというのは却下ですよ。」
セシリアが駄目を押した。確かに自殺でも僕らには負担だ。
「難しいな、一番したいことは駄目だからね。でも、
死後の世界があるならそこで会うまでに、私は彼女に誇れるものを残したい。」
「具体的には?」
「ギルとヒトガミを殺したい。特にギルを。ああ、申し訳ない、君の兄だったね。」
「いいえ、私もそれがいいと思います。」
セシリアはキチンとジノの目を見ながらそう告げた。
ルーデウス様はジノさんとセシリアのやり取りをしばらく聞いていた後に口を開いた。
「ジノさん、改めてお願いします。私達と一緒に戦いませんか?」
そうだ、昔ルーデウス様はジノさんに共闘を持ち掛けていたんだ。今ならもしかして。
ジノさんは暫く思案してこう答えた。
「すまない。私の敵はギルとヒトガミだけだ。完全な共闘は不可能だよ。」
彼が拒否したのは「完全な」共闘だ。
逆に言えば、ギルやヒトガミに対しての共闘は了解したということになる。
その後、体力回復の為、
ジノさんは、ようやく食事も摂ってくれた。
体力さえ戻れば、ギルを追うとの事だ。
ルーデウス様より義手と義足の提案をされたが、彼は謹んで辞退した。
これはイゾルテとエリス、ニナの友人二人が彼につけた傷だと。あえてこの姿で生きていくと。
そしてジノさんの傷が癒え、旅立つ日が来た。
アリエル女王様も被害者からの陳情も無ければ罰は与えられない。
剣や魔法で戦う以上人を殺めることは日常にありふれている。
よってこの世界では殺人が即罪とはならない。
アリエル女王は国外退去のみ命令した。
シャンドルさんに護衛をお願いして、僕達は竜の上顎でジノさんを見送ることにした。
ジノさんは一つだけ僕達の申し出を受けてくれた。
痕跡眼によるギルの追跡である。
ニナさんの剣を僕は観た。刃こぼれが一箇所ある。
剣の手入れを欠かさなかったニナさんにはありえない事だと。
痕跡の軌跡はここから北東、ビヘイリル王国を指した。内陸ではない。島みたいだ。
ジノさんは礼を述べると背中を向けた。
次に会うとき迄に、もっと強くならなくちゃね。
シーフの孫はいかがでしたか。
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面白かった
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つまらなかった
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ラブストーリーか?
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もっと続きが読みたかった。続編あるよね?