世界のためだとか 大それたもんじゃなく
ただ君のため
「進軍ではなく凱旋気取りだな」
僕とセシリアは木の上から鬼神帝国の軍勢を見張っている。
さて、どう仕掛けようか。
進軍している道の道幅が狭いのか、隊列を組むのは難しいようだ。
薄い層がの隊列の場合、剣士の方が仕掛けやすい。
但し一撃でターゲットを狙えないと窮地に陥る可能性もある。
僕もセシリアも戦闘経験は低い。
さて、どう仕掛けるか。
「ギルを見つけたら「剥奪剣界」で近づくしかないかな。」
「ん?セイジ!あっちの方!なんか騒がしい!あ!」
セシリアが雪煙の上がる方向を指差そうとし、バランスを崩した。
「危ない!」咄嗟にセシリアを引き寄せたものの、二人は木から落下した。
当然バレる。
「セシリア!仕方ない、行くぞ!」
僕は龍骨棍(自称)セシリアは剣を構え手を繋いだ。
魔力強化を発動し二人を包む。剥奪剣界は使わない。効率と持久率重視の戦術だ。
ヒットアンドアウェイ
鬼神は膂力はあるが速度は劣る。
少しずつだが鬼族の軍勢を削り取っていく。
「みんな!下がりな!」
女性の声だ。
「後はうちらがやる。お前らはこいつらが逃げられないように周りを囲みな!」
見たことはないが間違いない、この人が鬼神だ。
ジノさんもギルが頭目になった、とは言っていたけどこういう事か。
確かに鬼神になったとは言ってはいない。
「アタイは鬼神セウタ!うちの亭主に粘着してるからどんな奴かと思えばなんだい?ガキと小便臭い小娘じゃねえか!はっ!アタイらが相手してやるよ!」
周囲から「オーッ」とか「姉御、お願いします!」と歓声が上がる。
部下からは慕われているようだ。
2対2
僕等は背中を併せ相手と向かい合う。
セシリアはギルに
僕がセウタと相対した。
本来ならギルには僕が当たるべきなのだが
セウタの膂力は未知数だ。
それなら魔力強化が可能な僕が当たる。
セシリアも剣神流とは相性がいい。
「「剥奪剣界!」」
この世界で二人以外は練習を手伝ったペルギウス様とその使い魔しか知らない技。
先々代のレイダ・リイアが編み出した水神流の奥義と同じ名前の技。
水神流出身のギルにはその名前すら効果的なはずだ。
一方セウタの方は構わずに棍棒で殴りかかってくる。
しかし、闇雲に殴りかかる相手は僕達のいいカモだ。
僕の「円」に入る瞬間、僕の棍がセウタの棍棒をはたき落とした。
腕の内側の筋、親指と連動している筋を思い切り叩き、
親指の力を抜かせた。
手が逃げれなくなったセウタは棍棒を取り落とす。
「今だ!」
僕はセウタの首の後ろ、人なら延髄のある箇所に棍を振り下ろした。
セウタは死んではいない。
再度動き出すのは、五分か?三分か?一分か?
とにかくその間にギルを倒さないと!
「姉御!」
「構うもんか!殺っちめえ!」
周囲を囲んでいた鬼族達が「俺」に迫ってきた。
ああ!こういう時にマップ兵器がほしい!
なんか、サイフラッシュみたいなの。
ドガッ!ガゴ!ドゴ!
なんだろう、さっきの雪煙か?
音がする度に鬼族が数人ずつ宙に舞う!
サイフラッシュが来たー
「見つけた。」
その娘は青い髪で白い巨狼に乗っていた。
先程から鬼族をふっとばしていたのは狼の方か。
でも、見つけたって何のこと?
「詳しい話は後、取りあえず、周りの雑魚を薙ぎ払う。本命は、まかせた。あ、」
「これやると、多分私倒れるから。その後、ちゃんと回収して。」
「取りあえず、自己紹介しとく。私はララ、パパと青いママの娘。」
パパ?
「僕はセイジ!ありがとう。お願いします!」
僕は再びセシリアと並びギルと対峙する。
『むぅ、セイジ、女の人と仲良くしちゃって。知らない!』
『いや、助けてくれているわけだし』
『聞きませーん。セイジは私のなのに・・・ブツブツ』
ふとセシリアを見ると、あちこちに傷がある。
『セシリア・・怪我!』
『大丈夫。セイジの魔力に包まれていたから致命傷にはなってない。』
セシリアごめん。
僕は魔力、いや、念で彼女の傷ついた場所をさらに包んだ。
接触していないと使えないが無詠唱で治癒できる。
彼女の傷はみるみる治っていった。
「準備できた。二人は自分を守るのを優先して。これ、無差別だから」
〜 仄白き雪の王、銀の翼以て、眼下の大地を白銀に染めよ。来よ、氷結の息吹〜
「アーテム・デス・アイセス!」
周囲の鬼族、樹木が見る見る凍りついていく。
しかし、ある程度の力を持つものはレジストし、今度はララさんに狙いを定めた。
「やはり、これだけじゃ、駄目か。」
〜
響け終焉の笛、ラグナロク!
〜
これは結構厳しい。念で自らを覆っている僕達にもダメージが入るレベルだ。
「あとは、任せた・・・」
魔力を使い果たしたようだ。
「これは参りましたね・・・せっかく頭が空っぽの鬼族の姫を誑し込んだのに。計画が無駄になりました。」
ララさんの魔術、しかも神級奥義のようなラグナロクを喰らってもさほどダメージを受けていない。
「忌々しい我が妹とその従者よ。私の計画の為にここで死になさい。」
ギルは目を見開く。
あの爬虫類のような、感情のない眼。
狼さんにはララさんを、咥えて安全な所まで下がってもらう。
『セイジ、これ』
セシリアが僕にナイフを渡した。
『私の力じゃ、これでもギルを貫けなかったの。でも、セイジなら。』
『確かに防御は硬い。でも、二人でなら!』
セシリアはハッとした表情をし、すぐに嬉しそうに笑った。
『うん!うん!うん!』
「うぉっと!」
ギルが声を上げた、背後から一撃を貰ったらしい。
「セイジ、悪かったな。雑魚が消えるのを待っていた。」
剣神ジノ・ブリッツが一閃した剣を鞘に収め僕等の前にいた。
「俺の相手はギル・クルーエルのみ。
お前らには前座をやらせてしまったな。」
まあ、彼は鬼神帝国が敵ではなくギルが敵だから仕方ないな。
「構いませんよ。」
ジノさんは居合の構えだ。
一方ギルの方は、ダランと剣を下げている。下段の構えとかそういうものではない。
構えなど無用。そんな剣士を、小馬鹿にしたような構えだ。
「隻腕、片脚、しかも光の太刀に必要な左脚を失った貴方に構えなどいりませんよ。」
ギルは例の爬虫類のような瞳で、それでいてニヤァっとした笑顔でジノさんを見据える。
ジノさんははそれには応えず、黙って光の太刀をギルに撃つ。
剣神渾身の太刀。しかし、ギルは簡単にそれを跳ね返す。
「ほぉらね?」
確かに彼の光の太刀は、エリスさんが、見せてくれたそれよりも速度、威力、そして威圧が感じられない。
確実に左腕と左脚を失った影響だろう。
エリスさんに聞いたことがある。
居合型の光の太刀は腕だけで放つものではないと。
鞘が暴れないように支える左腕、そして全力全開で引き抜く右腕。
引き抜いた上で体の回転を乗せるために踏み出す左脚。
某飛天御剣流の奥義でも書いてあった
光の太刀とは即ち「天翔龍閃」
ジノさんは、その「左腕」と「左脚」を失っている。
しかし、彼は何度も「光の太刀」を放つ。
あたかもダムを穿つ蟻のように。
しかし、ジノさんの剣が、折れた。
「ゲームセット、ですね。」
ギルはゆっくりジノさんに近づいていく。
剣、剣、どこかにないか!
あ、あるじゃないか!
「ジノさん、これを!」
僕は預かって、というか単純に返し忘れていた、剣を彼に向かって投げた。
ニナさんの剣が回転しながらジノさんに向かう。
夫のもとに駆け寄る妻のように。
剣の回転は当然のようにジノさんの手元にすっと収まった。
「全く、セイジ君は気づくのが遅いんですよ。」
「ジノ!あんたに力、貸してやるわ」
「ジノ、ごめんなさい。でも一緒に戦いましょう。」
どこがで声がした。
懐かしい声、力強い声、そして、慈しむ声。
ニナさんの剣が光を帯びる。
同時にないはずの左脚、左腕が光を帯びはえてくる。
「「「ジノ!お待たせ!!!!」」」
今回は久々にイッキに書ききりました。
内容にはメタ要素満載です。
リリカルなのは
るろうに剣心に
エヴァ破
タイトルも前書きも元ネタありとネタてんこ盛りでお届けします。
これが「燃え」だ!
シーフの孫はいかがでしたか。
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面白かった
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つまらなかった
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読みにくかった
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ラブストーリーか?
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もっと続きが読みたかった。続編あるよね?