と思ったらお気に入りに入れた人が一人減った(へこむ)
また、産まれてしまった。
あのままで秋人を見守っていたかった。
視線が定まってきた。
そこで彼女は気がついた。
「.....いつもと父と母が違う」
彼女は気づいた。いつもの両親ではない。
一掴みの金貨で私を売った両親
神子の親として贅沢の限りを尽くした両親
幾度と繰り返す転生で両親の立場は変わるが、
両親自体はいつも同じだった。なのに今回は違う。
周囲も違う。
いつもは両親と医者しかいなかった。
周りを見渡す。
富豪ではなさそうだが、貧しくはない部屋
なにより多くの人が周りにいる。
そしてその人達は笑っている。
極めつけは産まれてきたのは彼女だけではなかった事だ。
もう一人、となりに男の子がいる。
秋人?ううん、違う。知らない赤ん坊。
緑の髪のかわいい男の子。
男の子は必死で何かを抑えつけようとしている。
いや、抗っているように見えた。
男の子の中に二人の何かがいるみたいだ。
無論彼女はその真実を知る術を持たない。
彼女の能力はそれを知るにはなんの効果も持たない。
外から大人が入ってきた。
明らかな敵意と殺意。
それが自分の弟に向けられていた。
私と弟は一人の女性に抱かれている。
女性は落ち着いていた。
私の髪を撫でてくれた。
後から来た弟も併せて抱きしめてくれた。
両親とその仲間達が先程入ってきた大人と私達の間に立ち塞がった。
私は護られているんだ。
今迄の転生にはなかった不思議な安堵感をその時、感じた。
弟に殺意を向けていた大人は帰って行った。
私は安堵する。どうやら弟に危害を与える人は去ったみたいだ。
私を抱いていた女の人が、今度は男の子の髪を撫ぜた。
なんだか、ほんわかした気持ち。
そんな私達「三人」を父が振り返り笑顔を見せた。
その後だ、私に向かって話してくれる少女がいた。
青い髪の少女だ。
『大丈夫、怖い人は帰った。』
私もその少女のように話してみた。
少女は微笑みを絶やさず、私の言葉を聞いてくれた。
そして少女は私が話ができる事を両親に話してくれた。
父も母も懸命に私と話す方法を試してくれた。
それは一日では出来なかった。
でも、父も母も毎日毎日私達に話しかけた。
きっかけは些細な事だった。
連日の子育て、加え話し方の研究に母は疲れていた。
私を胸に抱いたまま、母はうつらうつらとしだした。
ガクッ
母は私を取り落としそうになったのだ。
父は咄嗟に私に「手」を伸ばした。
物理的な手ではない。彼が持つ「心の手」で私を抱きとめた。
それが全てであった。
父の焦りが、愛が私の心に流れ込んできた。
私はそっと、父に話し方を教えた。
父はそれを理解したようだ。
『はじめまして、リリア。僕が君のパパだよ。』
パパの「手」は大きかった。
私だけでなく、「ママ」と「アクア」も包み込んでくれた。
私は「私の秘密」を打ち明けた。
幾度と数えきれない転生。
それより一回だけ少ない死。
前の出来事。
初めて出来た友人の事。
今回は彼に幸せになって欲しい事。
パパは驚いた。
私の友達がパパの友達でもあったこと。
そして、彼を待っていてくれる人が、いる事。
私も乙女の年齢までは生きていた。
少しだけ、その待っていてくれる人に嫉妬した。
嫉妬という感情がわかるくらいには生きていたのだ。
その時だ
幼い子の手が、私の頬を撫ぜた。
『ねぇね』
アクアが初めて話した。
初めて感情を見せてくれた。
初めて人を慈しんでくれた。
私も幼い手を伸ばした。アクアの髪に届くくらい。
『アクア』
翌日、私達はパパの上司と面会した。
正確には二回目だろう。
そこには黒い髪の少女がいた。
私が死んでしまった時と同じくらいの年齢の少女だ。
パパは二人に経緯を説明する。
明らかな驚愕と喜び。
恐怖や不信はこの二人からは感じなかった。
少女は七星静香と言う。
言える気がした。彼女を安心させたい。
「しずか、わたし、あきと、あわせる」
初めて口から出せた言葉。
彼女の瞳から大粒の涙が、それこそいくつもいくつも流れていた。
『パパ、ママ、アクア、私、産まれてきて良かった。』
アンケートありがとうございました。
これは三人の、続きを読んでみたい。
と答えてくださった為の続編になります。
感想とかくれると嬉しいです。
(なんの反応もないのは密かに泣ける。)
シーフの孫はいかがでしたか。
-
面白かった
-
つまらなかった
-
読みにくかった
-
ラブストーリーか?
-
もっと続きが読みたかった。続編あるよね?