「唐突だが、お前はヒトガミの使途か?」
オルステッド様が本当に唐突に尋ねてきた。何を今更・・・
「一度会いましたが拒絶していますし、その後オルステッド様の指輪で護られているはずですが・・・」
「うむ、そうだ、お前やセシリアは問題ない。」
うん、信じてくれてありがとう。
「だから、この後の顔合わせに立ち会って欲しくてな」
「ああ・・・そういう事ですね。承知しました。」
討伐メンバーの定期的面談、これは僕がオルステッド様に薦めた事だったからだ。
ここ数か月間で「無の世界への行き方」「基本的な戦術」「必要な人材」「それが揃う時期」は固まった。
残念ながら、リリアとアクアの成長を待つ必要があり、決戦は5年後になる。
七星さんはラプラス戦役が発生しない事から安全なケイオスブレイカーに帰っていった。
というのは建前で「あんた達がイチャイチャしているのを見ていると、ひとり身が寂しすぎるのよ!」というのが理由らしい。
なので、今できる事は、討伐に向かう人選を行う事、そのスキルを高める事、
現在、龍神陣営の拠点になっているこの村の防衛を強化する事だ。
その中で注意すべきものとして、「我々の陣営にいると見せかけて、じつは使途である。」という可能性を考慮すべきではないか。とオルステッド様に提案したのだ。
生きている年数は長いけど、そもそも他人との交流が希薄なオルステッド様だ。
口で味方だ、と言われたら信じてしまうし、裏で何かしようとしていても気づかない場合がある。オルステッド様は自分が受けた経験に関しては知識も深く、対処も的確だが、今回はラプラスでさえ「非常に稀」と言われるくらいレアケースなのだ。オルステッド様の経験では既に判断ができないレベルになっている。
「信じてもらえたところで、オルステッド様、私から質問がありますが、お答えいただけますか?」
オルステッド様の顔に明らかに緊張が走る。予想外の事なんだろう。
「・・・いいだろう」
「オルステッド様が作ろうとするヒトガミのいない世界。今の世界と比べてどこが変わりますか?」
オルステッド様の表情がこわばる。いや、固まるという形容の方が正しい。
僕は間髪入れずにたたみ掛けた。
「申し訳ありませんが、オルステッド様は、ヒトガミを倒した後の世界に一切干渉しないのではないですか?」
「うむ、正直、ここの世界の暮らしがどうなるかなど考慮はしていない。まずはヒトガミ打倒が最優先だからな」
「オルステッド様はそれでいいでしょう。既に気が遠くなるほど繰り返したのですから。
しかし、一部の人間を覗いて、ヒトガミ殺害後の世界がどうなるかは、非常に大事なんです。」
あのルーデウスさんでさえ、自分の家族がどうなるという事が、オルステッド様とヒトガミの間で揺れた原因だ。
僕だってそうだ、アクアをペルギウスさんとオルステッド様が殺そうとしたら・・
僕は喜んでヒトガミの傘下に下っただろう。
「オルステッド様、人間の気持ちは非常に揺れ動くものなんです・・・」
オルステッドは黙っている。
「例えば、ヒトガミに強烈な憎しみを持っていた人、具体的にはルーデウスさんですね。
あの人は「ヒトガミ」に許したかだい仕打ちを受けています。それでも心が動き、ようやくオルステッド様の側についた。
ルーデウスさんは強い。例えひどい目にあったとしてもそれを飲み込んで、ヒトガミの配下になろうとしたのでしょう?
僕達も立場はルーデウスさんに近い。肉親を間接的とは言えヒトガミの罠で失っています。
こういう人たちはある程度裏切る可能性は低い。ただあくまで低い。になります。」
「そのような者達でも確実ではないと言うのか。」
「はい、100%とはなりません。例えば、あの時、オルステッド様はアクアを助けてくださいました。しかし、あのとき アクアに手を下されていた場合はヒトガミ、オルステッド様両方に遺恨が残るわけですから・・・」
「敵に回るという事もありえたのか」
「但し、このようなケースは比較的どちらにつくかは読みやすいケースになります。問題はこれ以外です。そして実はこちらの方が圧倒的に多い。
一番多いのは、どちらにつけば自分にとってどういった見返りが返ってくるか。これを期待するケースです。オルステッド様も多く見かけられたでしょう。主にアスラ王国の貴族達に。」
「ああ、嫌となるほど見てきたな。」オルステッドは苦笑した。
「ただ、そのような連中は戦いの中で戦力にはならない。無視してもいいだろう。」
吐き捨てるように言う。よほど、その手の人たちが嫌いなんだろう。
しかし、セイジはそれを諫めるように続けた。
「確かに直接的な地位や恩賞が目当てであればそうかもしれません。しかし、求めるものが
「大臣の職」ではなく「家族の安全」「おのれの信念」もしくは「自分が信じる正義」だとしたら如何でしょうか?もしくは、「平和な世界」だとしたら・・・」
オルステッドは考え込んでいた。
いや、むしろ困惑していた。
今までヒトガミが死んだ後の世界の事なぞ、考えた事がなかったからだ。
彼は1周あたり200年生きる。これを数百周しているのだから既にヒトガミを殺すことが彼の目的だった。
彼にとっては「ヒトガミを殺す」が終着点であり、「ヒトガミを殺したら●●しよう」等という考えは思いつかない。
不死魔王の一族も似たようなものだろう。ただ、彼らはオルステッドより自由だ。
今回は借りを返す。今回は酒を飲んで歌い過ごす。アトx-フェ等は好例だろう。
今回はルーデウスに負けたから力を貸したのだ。
では、普通の人間は?
自分の生涯は短い。だから後に続くものを大切にしている。彼らの目的はその数だけ多様だ。
息子が魔族のハーフである事に引け目を感じないよう王竜王カジャクトに挑んだ初代北神。
家族を守るため額を地に擦り付けてでも懇願したルーデウス
アリエルが女王になる事を祈って先に逝った者達。
先程オルステッドが見下していたアスラ王国の貴族達であっても「家族の繁栄」という意味ではさほど大きな差はない。
では、ヒトガミは何を望む?
ヒトガミは全世界の神になる事を願い、他の神を殺していった。
しかし、今のヒトガミは神なのか?
この世界にヒトガミを祀る宗教はない。収容らしいのはミリス教くらいだ。
神ではないものが神にちかい扱い「聖ミリス」として祭られる。
では、この世界を統治する事か、それこそ、不可能である。
彼は部屋に幽閉されており、自分が支配する世界には降り立てない。
指図をできるのはわずか3名まで、しかも、絶対的な服従はできず、「そそのかす」のが精いっぱいだ。
正直な話、ヒトガミを封じ込める最適解は何もしない事。なのである。
「オルステッド様」
オルステッドはセイジの声で我に帰る。
「僕もセシリアもオルステッド様の事が好きですよ。
だから、ヒトガミを相手にして倒すことに躊躇はありません。」
「オルステッド様は僕達と勝ちたいですか?」
俺はお前たちと
勝ちたい。
現在私のメンタルが最悪なんで
オルステッドのメンタルも底辺です。
シーフの孫はいかがでしたか。
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ラブストーリーか?
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もっと続きが読みたかった。続編あるよね?