「あれ?俺死んだんじゃなかったのか?」
うん、予想通りだ。
フィットア領の上空に浮かぶ天空の要塞、
ケイオスブレイカーの設置された魔法陣。
その中央部に立つ少年、篠原秋人は周囲を見渡し、
やがて一人の少女に目を留めた。
「リリア、君も無事だったのか、でも、あれ?」
予想外の言葉に周囲が固まる。
「アキ・・・」七星さんが口許を抑えながら涙を堪えている。
あれは、再会の喜びの涙か、最初に気づいて貰えなかったショックの涙か。
僕にはわからない。
秋人もその声に気づいて、更に驚愕の声をあげる。
「ナナ!どうして?お前までここにいるんだ?ってあれ?ここはどこだ?前呼ばれた地下室ではないんだ?」
秋人は?のオンパレードらしい。まあ、無理もない、ただそれ以上に僕達の方が驚いている。
「確認します。篠原秋人さんで間違いないですね。」
流暢な、でも、明らかにネイティブではない日本語で
「セシリア」が尋ねる。
「はい、篠原秋人です。ところでここは?それより何でナナが?」
七星さんが秋人に駆け寄り抱きつく。
「アキ!アキ!アキ!良かった・・・あ、遭いたかったよぉ・・・」
七星さんは号泣している。そうだろう、何十年ぶりの再会なのだろうか。
「アキ、僕が誰かはわかる?」
同じく涙ぐむリリアを抱きかかえ、僕は秋人に声をかけた。
「えっと、僕の友人に似ているようにも思うのですが彼はもう少しその、華奢というか・・・」
貧弱とか、ちびとが言いたいんだろう?
「クロだよ、アキ。そして今はリリアのパパだ。」
秋人は転移者である。
それは間違いない。
そして、秋人は時を遡ってきていた。
証拠は彼の腕についた軽い切り傷。
これは、前線に追い立てられる前の稽古でつけられた傷だ。
その場はリリアが記憶しており間違いないらしい。
「でも、ちょっと、混乱してるから、少し待って」
秋人は状況の整理にてんてこ舞いだ。
テーブルを秋人、七星さん、リリア、僕で囲む。
「取り敢えず、お茶を煎れました。飲みながらお話しましょ」
セシリアがお茶を煎れ、そして空いている席についた。
お茶はソーカス茶だ。
ああ、そうか、秋人は既に数年はここの世界にいる。
その間に魔力が蓄積されている可能性があったね。
セシリアはよく気がつく。ちょい前の少し残念なセシリアも好きだが、今の淑女で、気が利いて、お母さんもしているセシリアはもっと好きだ。
「・・・ふふん♪」
あ、僕の視線に気づいたセシリアがドヤ顔で返してきた。
やっぱりちょっと残念だ。
「取り敢えず、もう一回整理しましょう。」
改めて自己紹介、僕はセイジ・クロキ、この世界に「転生」してきた。
だから、ここの人達と同様に年を取る。今は25歳だ。
そして、こちらはセシリア・クロキ、僕の妻だ。
僕が愛する唯一の女性。どう、アキ?羨ましいだろう。
そして、この娘はリリア・クロキ、僕の娘だ。
もう一人、アクアという子供もいるが、今回の転移魔法陣に魔力を注ぎ込んで疲れて休んでいる。
て、こちらは七星静香さん、え?こちらは大丈夫?
まあ、そうだよね。
で、今は甲龍暦490年、アキは前を覚えているんだよね。
ならば、話が早い。
リリアは前回十歳の時に君を呼んだ。
だから、甲龍を495年に君を呼んだ計算だ。
今のリリアはまだ5歳だ。アキが驚いたのは、リリアが記憶より小さかったからだろう?
そうさ、リリアが時を遡って過去を改変したんだ。
自分の命と引換えにね。
おかげで、七星さんはこの世界に転移して、僕が転生して、そして、リリアが僕の娘になってくれたんだ。
全ては、そう、リリアの願い。「君とリリアが生きていける世界」になるようにね。
僕もセシリアもおかげさまでこの世界では少しは強い。
リリアを守れる程度にはね。
そして、アキ、君を七星さんとリリアを守れるくらいに鍛えるつもりだ。
少なくとも前回みたいに簡単に首を切られるようにはさせない。
さて、リリアとセシリア、ちょっと席を外そうか。
僕は半ば強引にアキの七星さんを二人きりにしてあげた。
(秋人視点)
クロは起きたことを懇切丁寧に説明してくれた。
状況を百パーセント理解はできていない。
だけど、僕が呼ばれた使命、みたいなものも理解したつもりだ。
でも、それ以外にやらなければいけない事、決めないといけない事。
それぞれを済ませないといけない。
まずはやらなければいけない事だ。
眼の前で視線をスカートのシワに落としモジモジしている子にだ。
「ナナ」
「!ひ、ひゃい!」
ナナの反応がかわいい。
あの時から、俺は何年か生きた。
ナナはそれ以上に俺を探してくれた。
この魔法陣もナナの熱意で造れたものだ。
ナナのおかげで、また俺はナナに逢えた。
「まずはあの時はごめん。」
「う、うん、こちらこそゴメン。つい、カッとなっちゃって。」
ナナも下を向いたままだけど同じく謝ってきた。
僕にとっては5年ぶり、ナナにとっては数十年ぶりの仲直り。
だから、言おう。
「俺を探してくれてありがとう。好きです。ナナ。」
シーフの孫はいかがでしたか。
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ラブストーリーか?
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もっと続きが読みたかった。続編あるよね?