アキトはあれから毎日訓練。
パパとママとアレクさん。
立会の練習はフェリスさんとも。
パパの大事な棍を譲り受けての「護りの剣」。
何年も繰り返してさまになっている。
もう「水聖」レベルだそうだ。
今日は私とナナホシさんが見学。
ナナホシさんは、それは優しい目でアキトを見ているの。
ちょっと不機嫌な私。
たまには意地悪してもいいよね。
今、ママとアキトの稽古が終わった。
私はタオルを持って駆け寄る。
「はい!アキト!」
「おう!ありがとうリリア」
アキトは私に向かって笑いかけてくれる。
ママは最初私がママにタオルを渡すのかと思ったみたい。
パパが差し出すタオルを手に苦笑いしている。
ごめんなさい。ママ
「よし、アキ、今日は午後用事があるから、練習はここまでにしようか。」
「用事?」
「ああ、午後は僕もセシリアも準備だ。」
「そこでだ。アキ」
「ん」
「うちの大事なお嬢様の面倒を見ていてくれないか?」
ん?パパ?何で?
「そういえば前もこうやって街を歩いたよね。」
「は、はい。」
「リリアに、アレは何?これは?って聞きながら、あ、あれはアルスか。」
「う、うん、ここほ私の産まれた村。最初は私達の家族だけだったけど、最初は行商人の人達が来て、そのうち、お店も少しだけできるようになったの。」
「そうか、そういえば、こうやって街を歩くのって初めてかもしれない。僕やナナは魔力の濃い場所に出ないほうがいいらしいからね。」
そう、アキトとナナホシさんは異世界の人、パパと違って、こっちの人として生まれてないから魔力がない。
「だからね、こうやってリリアとお出かけできて嬉しいんだ。リリア、「君の産まれた村」を案内してよ。」
そっか、これってママが言っていたデート?
もしかして、パパ、仕組んだ?
「はい!では、リリアがアキトをエスコートするね!」
私はアキトを郊外に連れ出す。
ここは、パパやアイシャさん、ルード傭兵団の人達が作った「水田」今はお水を引いていないけど、もう少し経ったらお水を入れて、稲を植えるらしい。
「アキト、お米好きでしょ?そのお米はここで作っているの。」
「おお、ここでなんだ!魔力が少ないから僕達も気兼ねなく食べれるし、何より美味しい。」
「味はもうなくなったルーデウスさんや、パパ、ナナホシさんがお墨付きをくれたから、間違いなく美味しいよ。」
ここは、ラズベリーの畑、実も食べれるし、葉っぱはお茶になる。妊娠初期はだめみたいだけど、母乳の出は良くなるらしい。私が赤ちゃんの時にママが飲んでた。
この村の特産品。
「へぇ、これがあのお茶になるんだ、俺も好きだよ。」
好きだよは当然お茶に対してなのだが、リリア自身が少しだけキュンとなる。
ラズベリーの畑を抜けると、今度はラベンダーの畑だ。
初夏の今なら畑はラベンダーが満開。
あたり一面を紫色に染めている。
私はアキトと並んで座り、ママから持たされたパイと水筒のお茶をアキトに勧めた。
「ちょっと歩き疲れたから、ここでお花眺めながら休憩しましょ。」
私はアキトと、色々な話をした。前世の事、それより前の事、そして何より今が幸せな事。
アキトも微笑みながら相槌をうつ。
「今は悲しくないんだね。」アキトは私の「今」を喜んでくれた。
魔力はこの十年で元に戻った。
基本的な魔術はここに先生は多い、ロキシーさんにシルフィさん。
ロキシーさんの教え方は理論的で、どうしたらどうなる。というのがよく分かる。
シルフィさんはやや抽象的だけど、一回できると「ああ、こういう事を言いたかったんだ。」とすぐに理解できる。
だから、私もアクアも中級の治癒魔法までは無詠唱でてきる。
私は治癒魔法が向いているらしい。
アクアは水魔法だ。こっちはもっとすごい、水王級のライトニングまでだせる。
「どちらも才能ですね。」とロキシーさんも満足気だ。
でも、時を遡る事はできていない。
どうしても、無意識に魔法が途切れてしまう。
あと、何年かでパパが言っていた決戦らしい。
もう少しできることを増やしたいな。
「さて、暗くなる前に帰ろうか、お嬢様。」
アキトは少しだけおどけて私の手を取った。
帰り道、夕日は村の方角へ落ちていく。
私達は黙って家路についている。
楽しい日って終わるの早すぎるな。
お散歩して、お花畑でお弁当食べて、他愛のない御喋りして。
それだけなんだけどすごく楽しかった。
アキトは私を家に送り届けると、ダッシュして何処かに行ってしまった。どうしたのだろう?
私と一緒は嫌だったのかな。
まあ、ナナホシさんのところかな。
仕方ないよね、ナナホシさんはアキトの大事な人だもの。
「リリア!アクア!誕生日おめでとう!」
みんな笑ってくれてる。
5歳のときも、ううん、いつでもみんな私達を笑顔にしてくれる。
「さあ、僕ができるありったけを用意したよ!みんな、楽しんでいってね。」
パパもすごく嬉しそう。でも、これだけの料理食べきれるの?何人動員したの?
廻りを見渡すと、シルフィさん、アイシャさんは勿論、普段料理しなさそうな、ロキシーさんや、ルイシェリアさん、フェリスさんも?!なんか疲れた顔をしている。
でも、満足そう。
私達なんかの為にめんなさい。って顔しちゃいけないよね。
「皆さん、ありがとうございます!」
その後は、私とアクアにプレゼントをくれた。
二人共魔術師だから概ねプレゼントは魔法関連のものになる。
でも、同じものが二つない。きっとみんなで話し合ってくれたんだな。
あれ?そういえば、アキトとラプラスがいない。あ、ナナホシさんも。
どうしたんだろ、アキト疲れさせちゃったかな?
ちょっとだけションボリ。
「すいません!遅くなりました!」
息を切らしながらアキトが入ってきた。
遅れてきた割にはおめかししている。
髪の毛も乱れていない。
そして、手には「黄色い薔薇」の花束。
村の市場にあったやつだ。
決して多くはない。何本かを纏めてリボンで止めたもの。
「ったく、アキってよりによってその花選ぶのよ。クロとおんなじ。」
ナナホシさんが呆れている。パパと同じ?
「お嬢様、私と踊ってくださいますか?」
え?ダンス?
私はお貴族様ではないから、パパとママは無理には教えなかった。
無論演りたいって言えば先生くらい連れてこれるレベルにはうちは裕福らしい。
でも、私は他に学びたいことが多くあった。
私はママから初級レベルの水神流
アクアはパパから初級レベルの北神流を
「ごめんなさい、私、踊れない・・・」
ごめんなさい。アキト。
「大丈夫ですよ、私にあわせてくだされば、そう、足捌きは水神流で。」
「アクア君、私でよければ踊って欲しい。」
他の方でララさんの声がした。
「え?ララさん踊れるの?」何だろう、パパがすごく失礼な事を言っている。
「セイジ君、それは私でも傷つく。」
「そうだよ、パパ!ララさんは僕のダンスの先生だよ。」
アクアがパパに反論した。ララと二人顔を合わせて「ね~!」ってしている。
「セイジ・・私が探していた男は・・アクアかもしれない。私は「ショタ」に目覚めた。」
しょたってなぁに?
後ろでアイシャさんが腕を組みながら
(*・ω・)(*-ω-)(*・ω・)(*-ω-)ウンウン♪としている。
きっと大人の女の人にしかわからない言葉なのだろう。後でママに聞いてみる。
「ま、まぁ、とりあえず今日の主役の相手も決まった事だし、楽士さん達、お願いします。」
さっと暗幕が開かれると楽器を持った人たちがいっぱいいた。
え?え?アドリブでなく、ここまで計画的?
(本当に上手だ)
アキトとのダンスは本当に夢のようだった。
私が知っているのは足さばきを水神流の基本で踏むだけ。
『そうそう・・上手上手、ダンスは足の動きが揃えばそんなに難しくはないんだよ。』
アキトが私の耳もとでそっと囁く。
確かに、私もアキトもママから水神流の手ほどきを受けている。同じステップを踏める。
でも、それだけじゃない。
アキトのリードが上手なのだ。
そうだったんだ。ここまでが私へのサプライズ。
ママたちが準備をしてくれて、
パパが根回しとかしてくれて
挙句にアクアまで?私、貴方の「お姉ちゃん」なんですけど!
てか、アクアの誕生日でもあるんだよ!
でも、嬉しいな。
みんなのやさしさが嬉しい。
音楽が終わった。
だから夢の時間もおしまい。
「ありがとう。アキトお兄ちゃん」
アキトは少しだけびっくりして、すぐに優しく言い返してくれた。
「どういたしまして、リリア。」
パーティの余韻も覚めぬまま、私はソファでぼ~っと座っていた。
何かフワフワしたような。くすぐったいようないい気持ちだ。
私はアキトからもらった花束に目をやると、そうだ、と思った。
周囲を見ると、同じようにソファに座っているお目当ての人を見つけた。
ナナホシさんだ。
私はナナホシさんに目で挨拶をした。
ナナホシさんも無言で隣を勧めてくれた。
「その花の意味を聞きたいんでしょう?」
さすが大人の人、察しが早い。
「えぇ、パパもアキト・・さんも同じとナナホシさんが言っていたのでどういう意味なのかなって」
ナナホシさんは暫く考え、ふっと微笑みながら私に教えてくれた。
「本当の意味は内緒だけど、それを贈ってもらった女の子を私は二人知っているの。
一人はお話の中の人、一人はあなたのママ。
二人とも幸せになっているわ。だから大丈夫。貴方も幸せになれるわよ。」
シーフの孫はいかがでしたか。
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読みにくかった
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ラブストーリーか?
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もっと続きが読みたかった。続編あるよね?