シーフの孫   作:迷宮の迷子

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【間話】ジークとクリス

親には親の、子には子の道がある。

ルーデウスの妻三人、子が六人。

それが全てルーデウスの意志を継いだか。といえばそうではない。

寧ろ継いでないものが圧倒的ではないか。

 

ルーシー、リリ、クリスはそもそも戦闘力が高いわけではない。

しかし、ルーシーはミリス教国の司祭の妻、リリは魔道具の製造開発、クリスはオルステッドの主たる同盟国アスラ王国の王妃として間接的にではあるがルーデウスの意志を継いでいる。

 

アルス、ララは意志を継いだ。

アルスはルード傭兵団として、オルステッドの手助けをした。

ララは言うまでもないだろう。彼女の人生の大半はヒトガミ打倒とイタズラと昼寝でできている。

 

妻達はルーデウスの為に働いたのであって、オルステッドやヒトガミ打倒の為に働いてはいない。

ご近所に住む社長のようなもの。

旦那の仕事は旦那がするもので、必要な時のみ手助けをする。

 

ここであげていない人物が一人いる。

ジークハルトだ。

ラプラス因子継承者、類稀なる力を有するもの。

子供達の中でもララと並びヒトガミとの戦いに参戦してもらいたい人物である。

 

が、彼は今のところ母親であるシルフィすら避けている。

 

 

 

 

 

「お久しぶり、お兄ちゃん。」

周りに人はいるが、「表向き」は二人での話だ。

クリスは昔のままの口調で話した。

 

「クリスティーナ王妃もご健勝な事、何よりでございます。」

一方、ジークハルトはあくまで上下関係を重視した話し方だ。

これもまた正しい。

外交の席のついでの事だ、後で一武将に過ぎない者が王妃に不遜な態度を取った。と言われるケースもあり得る。

 

「パックス団長には今回助けていだたきましたわ。」

トップ会談のハプニングを抑えてくれたのは間違いなくパックスJr だ。

そこからの話の持って行き方はさすがクリスティーナである。

 

ストレートにヒトガミの話題には持っていけない。

先程「神様」ネタで一騒動あったのもある。

また、ヒトガミについては広く話が伝わっていない。

ルーデウス家内では周知の事実だが、外部にはせいぜいラプラス止まりだ。

アリエルは知っている。もしかしたらエドワードにもその話をしたかもしれない。

しかしアスラ王国の家臣や他の国には知られていない。

だから、その名前は出せない。

 

なのでパックスの話、即ち黒竜騎士団の話から入った。

空白地帯をうまく攻略する手際

騎士団達の話

ジークハルトは結婚しないの

押し、引きをうまく操りクリスティーナはついに核心部分に辿り着く。

 

「作戦はパックス団長が決められるのですか?それとも皆と話し合われて?」

 

 

「概ねそうですが、稀に「助言者」に数回、窮地を救われました。」

 

「助言者?」

 

「最近はどんな助言をしてくれたのですか?」

「今日の事、本当は行かないつもりだったんだ。でも助言者は行って妹と交流を深めてこい。って助言をしてくれたんだ。」

いつの間にジークハルトも昔の口調になっていた。

 

クリスティーナは考えている、

ジークハルトがヒトガミの使徒であるという可能性について。

前提条件としてクリスティーナとジークハルトが兄妹であり、共にヒトガミの事を知っていること。

 

「助言者」という呼び方、「お告げ」がNGワードになった今

使うには適切なものだろう。

それでもクリスが使徒で、誰かに聞かれたらどうするか?

「はぐらかす」そもそも「言わない」を選択する。

 

では、何故?

一つは明らかにヒトガミでない者の助言をもらっていることだ。

もう一つは、実際にジークハルトを騙しているのはヒトガミなのだが、ジークハルトにヒトガミだと気づかせないように行動している場合だ、確率は五分五分、しかしクリスティーナは確信をした。

 

「ジークハルトはヒトガミの使徒である。」

 

 

 

 

 

 

アルスの転移陣はお馴染みのクリスティーナ邸だ。

転移陣から出たクリスティーナはセイジとセシリアに告げた。

「セイジの村に行きます。そこまでの護衛を頼めるかしら。」

「勿論、うちの村からアルスまでの護衛もいたしますよ。」

 

 

── オルステッド事務所 ──

 

「どうぞ〜」相手が王妃だとわからぬか、

ファリアステアが王妃にお茶を推める。

 

「オルステッド様、正直申し訳ないご報告をしなければなりせん。我が兄、ジークハルト・サラディン・グレイラットがヒトガミの配下に取り込まれたようです。」

 

オルステッドの眉がピクリと動くそれは間違いないのか?」

「ほぼ間違いありません。」

間違いないのか?は間違っていて欲しい、の意味だ。

それだけ、ルーデウスの家族を彼は愛していた。

 

「殺さねばならぬか」

周囲はオルステッドの言葉に凍りつく。

 

「オルステッド様、少しお待ち下さい。」

セイジが、オルステッドの言葉を遮る。

 

「少し整理致しましょう。宜しいでしょうか」

オルステッドは目で続きを促した。

「まず、この時点でヒトガミがジークハルトさんを使徒にした理由。これは二通り考えられます。一つはアスラ王国と王竜王国を戦争させること。これはオルステッド様の力になる人物を失わせる事に繋がります。もう一つは完全に背水の陣、オルステッド様が無の世界に旅立つ直前を狙うための刺客です。我々はアスラ王国から旅立つのですからジークハルトさんはこちらに来ていなければなりません。ですから、例え倒したとしても、正当防衛が成り立ちます。よって今すぐやるべきは殺し合いではなく、まずは助言者の正体がヒトガミであるという事をジークハルトさんに教えることだと思います。まずはその事を考えましょう。」

 

 

 

 

 

 

 

シーフの孫はいかがでしたか。

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