シーフの孫   作:迷宮の迷子

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いい予感と悪い予感

「はっ!ふっ!っと!ふん!」

ニート僕の朝は早い。冬はまだ星が見えている時間から彼は棍をふるっている。

前回のセシリアとの仕合以降、5歳の時にもらった棍「竜骨棍」での練習を許可してもらえた。

但しあくまで、素振りのみである。武器に頼らない。これはシャンドルの教えだ。よって立ち合いの時には普通の棍を使っている。

しかし、本当の強敵、出くわしたら間違いなく逃げるけど竜とかと戦わなくちゃいけない時に全力が出せないといけない。だから朝の基本型の時だけ使わせてもらっているんだ。

 

せっかく棍が使えるんだ、僕は基本型に魔力移動を加えてみようと思った。

例えば突く動作の時に腕に魔力を集中させると攻撃力が増えるかなって。

でも、どうもうまくいかない。腕だけ強化されても下半身がおっとっとと流れてしまう。

 

「あ、そうか。纏だ」

再び彼のバイブルの登場だ。確か纏を維持する訓練があった。便利だなぁ、愛読していてよかったよ。

僕は更に早く起きて纏の練習をしてから基本型の訓練を始めた。

最初の1年は纏の維持は10分程度しかできなかった。よって纏維持に10分、残りは基本型の繰り返し、

徐々に時間が延び少しずつ基本型が纏を維持したままできるようになった。

そうなると自然と基本型の完了速度が速くなる。2時間たっぷりかかっていた基本型が1時間でできるようになった。

愛読書が教科書なのは強い。10歳になるころには、纏、堅、硬、絶がスムーズにできるようになったんだ。

これを基本型にあてはめて、ここぞというポイントで魔力を集める。流の動作だね。

 

「ふぅ、朝の訓練は終わり!汗を流してからセシリアと座学の準備をしないと・・・って、え?」

「セージィー おはよー!」

セシリアが飛びついてきた。この辺は5歳の時とさほど変わらない。

けど外見はもう10歳だ。かわいい女の子だ。

10人が見て10人が美人というタイプではないけど、外見は凛としたお嬢様、特に水神流の門下生には高値の花として憧れている人多いらしい。

確かに水神流本家という立場から、物静かで、静かに笑みをたたえる、そんな女の子だ。

あくまで対外的にはであるけど。おかげで僕の立ち位置は周囲からすれば、「お嬢様の付き人、下僕」のような扱いである。

 

「ちょ、セシリア、僕汗臭いよ。ちょっと離れて!」

「ん?そう?スンスンハスハス、大丈夫!セイジの匂い好きだし」

匂いフェチか!まぁ、彼女の素の姿を見れる僕は幸せ者だろう。他の人たちは知らないんだ。

「あ・・それはありがとう・・ところで急いで何の御用?」

「あ、そうだった、おばあ様がご用事だそうです。着替えたらお越しになって!」

 

レイダ様がお呼びか。なんだろう・・

 

「わかりました。支度をすませたらお伺いします。」いい事だよね。きっと・・・

取り合えず、汗臭いのは嫌われるから上下総とっかえでレイダ様の部屋に向かった。

 

 

「セイジさん、おはようございます。鍛錬、頑張っているようですね。」

入室早々お褒めの言葉を頂いた。

シャンドルさんもセシリアも腕を組んでうんうんと頷いている、完全にシンクロしていて面白い。

それより、先客が多くてびっくりした。

レイダ様、ドーガ様、シャンドルさんはともかく、父さん、母さん、おはあちゃんまでいる。

うちの家族が勢ぞろいだ。

「ありがとうございます。今後も精進致します。」

動揺を押さえつつ、ありきたりに返答をした。

 

「ところで、今日来ていただいた件ですが・・・いい事、悪い事・・・どうでもいい事のどれから聞きます?」

どうでもいい事?何それ、レイダ様お茶目すぎる。

 

「そうですね・・・まずはどうでもいい事からお聞きします。多分すぐに終わりそうでしょうし。」

どうでもいい事。

ラノア魔法大学の特待生として入学しないかというお誘いだ。

何でも私の魔力移動が注目されているらしい。うん、本当にどうでもいいやつだった。

「私の能力はルーデウス様でも解析できなかったものですから、あちらに行ってもあまりお役に立てそうにないのですが・・・」

「でも、セシリアも一緒に留学らしいですよ。」

ちょっと心が動いた。二人で寮生活、キャンパスライフ・・でも、今も変わらないじゃない。一つ屋根の下にいるわけだし。

「非常に魅力的ではありますが、セシリアの師はレイダ様、私の師はシャンドル様です。これ以上の師はおそらくラノアにはいないかと・・」

水神と北神が講師だぞ、ここは優秀なんだ。

「そこまで持ち上げられると、少しこそばゆいですね。でもわかりました。この話は無しという事で。」

「私もここで修行したいと思います。」

この件は一件落着と。

 

「次は流れ的に・・いい話をしましょう。」

うん、悪い話は心配だけど、いい話は早く聞きたい。

「来月、二人とも10歳の誕生日ですけど。」

「よろしければ一緒に行いたいと思っているのです。」

セシリアも初耳あったようで、ぱぁっと顔を綻ばせた。

成程、それで父さん達も呼ばれていたのか。

「あの、僕はうれしいですけど、父さん達、よろしいのですか?」

「ああ、先ほどレイダ様からお話を頂いていてね。了承しているよ。」

それならばなんの問題もない。喜んでお受けしよう。

 

「二人の誕生日には多くのお客様をお呼びします。ただ、私たちは貴族というより武家ですので、盛大に。とはいきませんけどね。」

お客様か、ルーデウス様はまた来てくださるかな。もう一度お会いしたいのだけど。

 

「最後に・・・悪い話をします。」

ついに来てしまったか。

「ギルが、帰ってきます。貴方と戦うために・・・」

え?

「そのようです。ジノが剣聖として認めたとか。」

前に話したなんちゃって剣聖ではない。聖地で正式に剣神から認められた剣聖だ。

 

「5年も待ってやったんだ。もうそれなりにはなっているだろう。覚悟して待っていろと・・・」

「お兄様って、存外しつこいのですね。」

「もう忘れてくれていると思っていたのですが・・・」

 

「セイジさん、本当にうちの孫が申し訳ありません。」

「ただ、このまま付きまとわれるのもセイジさんにとっても不本意でしょう。最強の教師をお呼びしております。」

 

「最強の?」

「教師?」僕とセシリアが顔を見合わせた。

なんだろう、いやな予感しかしない。

 

 

「まぁまぁ、二人とも警戒しないで」

赤い髪の女性が声をかけてきた。

隣にいるのは来るかと思っていたら、既に来ていたよ。のルーデウス

「私とエリスが協力させてもらうよ。」

狂犬王エリスが再びアスラ王国にやってきた。

 

 

 

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