スーパーロボット大戦とどげせんをクロスさせてみた   作:samasa

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スーパーロボット大戦DOGEZA ~終焉の土下座へ

我々の住むこの世界から、極めて近く、また限りなく遠い平行世界―――

地球は大ピンチである。

外宇宙からの侵略者・恐るべき地底勢力・人間同士の争い…もはや全ての終焉<アポカリュプシス>は目前にまで迫っていた。

 

だが!しかし!そんな脅威に立ち向かう戦士達が、地球には存在していた!

強大なスーパーロボットで悪と闘う、正義の味方―――

 

その名も<兜甲児と愉快な仲間達>略して<カブコー>である!

 

…ちなみに、この部隊名の発案者である兜甲児は「まさか本当に採用されちまうとは思わなかった」と漏らしていたという。

とにかく、彼らこそが地球に残された最後の希望なのだった。

 

 

 

 

 

さて、そんな<カブコー>の面々は現在、日本某所の基地に駐屯している。

そこでは、こんな光景が繰り広げられていた。

 

「うおぉぉぉぉ!カツゥゥゥッ!」

 

<カブコー>所属の戦艦ラー・カイラムの艦長ブライト・ノアは部下であるカツ・コバヤシの顔面を全身全霊で殴り飛ばした。

「ゲフゥッ!」

「死ねよやぁ、このカツ野郎っっっっ!!!」

フリッカージャブからのチョッピング・ライトに、カツの前歯が三本ほど飛んだ。

「はあああああああっ!」

それに留まらず、頭を∞の形に振りながらウィービング。その勢いのままに無数のフックを繰り出す。

嵐の如き打撃が収まった時、カツはもはやボロ雑巾であった。

 

「な…何故…」

 

半死半生のカツは、血反吐に塗れながらも余りにも不条理な暴力に対して苦言を呈する。

「何故…あなたはいつもこんなことをするんです、ブライト…艦長…!」

「それはな…」

軍服の襟を正したブライトは、静かに、淡々と答える。

 

「それは…お前が<カツ>だからだ!」

 

「なっ…!」

「お前が<カツ>である限り、私はお前を甚振り続けるだろう…それが私の存在意義だ!」

その顔には、理不尽な部下イジメを行う下卑な喜びなど全くない。

むしろ、使命を背負った聖人の如き<絶対の覚悟>すら滲み出ていた。

「私は全てを賭して、お前を殴り続けよう…この拳、砕け散るまで!」

言葉通り、ブライトの拳からは真っ赤な血が滴り落ちていた。

カツはいっそ清々しさすら覚えつつ、意識を遠のかせていった…。

 

 

 

 

 

「はあ…」

空はこんなに青いのに、カツの心はロンドンの冬のように暗かった。

「僕は…何の為に<カブコー>にいるんだ…?」

殴られるだけなら、我慢できる。けれど。

「最近…というか、この戦争が始まってから、一度も出撃させてもらってない…」

一度、その事で控えめに抗議したら、生身で出撃させられそうになった(宇宙空間で)。

核ミサイルに括り付けられ、発射されかけた事など、一度や二度ではない。

自分とて、青雲の志を抱いて<カブコー>に参加したというのに…。

「はあ…」

溜息をつくと寿命が縮むというが、それが本当ならカツの命はとっくの昔に尽きている事だろう。

そんな彼の前に、ぬっと現れた人影。

「カツくん」

「あ…あなたは…」

 

 

―――別段高級でもなさそうなスーツとネクタイ。

 

チョビ髭を生やした鼻にちょこんと乗せた眼鏡。

 

風采の上がらない、冴えない中年男性という印象のこの男―――

 

名を瀬戸発(せと・はじめ)。彼もまた<カブコー>の一員である。

前職は高校教師であったというこの男は、そのうだつの上がらない容姿とは裏腹に、部隊の中でも屈指の曲者として名を馳せている。

 

彼の最大の特徴は―――<土下座>。

 

そう。彼は戦闘に際して、武力を一切使わない。

彼はただ、頭(こうべ)を垂れて―――地に擦り付ける。

恥も外聞もなく―――土下座する。

だが彼は。瀬戸発は、それで全てを解決する。

 

恐怖の天才科学者Dr.ヘルや闇の帝王率いるミケーネ帝国。

アクシズ落としを画策したシャア・アズナブル。

人類内部の病巣ともいえる三輪長官やブルーコスモス盟主アズラエル。

 

その他諸々、一般人には殆ど知られていないが、それらは全て瀬戸の土下座によって悉くが撃退された。

圧倒的な<土下座>という名の神通力。

瀬戸発の<土下座>は、実は世界に満ちた至高の存在である<無限力>の一種ではないかと、実しやかに囁かれている程なのだ。

高校教師時代から土下座で全てを切り抜けてきたという逸話もあり、付いた二つ名は<どげせん>。

 

気付けば彼は<カブコー>の中心的存在として、誰からも頼られる男となっていた。

 

 

(毎日毎日、ブライト艦長に殴られる僕とは、えらい違いだよな…)

ついつい、卑屈な気分になってしまうカツであった。そんな心情を察したのか、瀬戸は優しく微笑み、カツの隣に体育座りである。

 

「カツくん…どうしたいんだい、君は」

「どうしたいって…そりゃあ…」

握り締めた手に、落ちる雫。

頬を濡らす涙。

「僕だって…僕だって、この部隊の一員なんだ…!」

「カツくん…」

「瀬戸さん…!僕も…出撃…したいですっ…!」

「そうか…」

すっく、と。瀬戸は立ち上がり、青い空を見上げる。

「丁度いい…試運転が、したかった所だ」

「え?試運転、って…何の?」

「友人に頼んでおいたモノが完成したと連絡が入った。もうじき、彼がそれを持ってやってくる」

「彼?」

「カツくん。君もニュータイプと呼ばれる者なら、感じないかい?ここに近づいてくる気配を」

「…!?」

ニュータイプ。それは宇宙に進出した人類が発現させた、超常の感覚。

カツもまた、その力の持ち主だ。

それによって、彼は確かに感じ取った。この基地に近づいてくる、何者かの存在を。

 

「え…?こ、この感覚は…!?まさか…!」

 

いや。

それはもはや、ニュータイプでなくとも感じ取れる所まで来ている。

途方もなく、強大な気配。

圧倒的な存在感に中てられたのか、基地の中にいた<カブコー>の面々も飛び出してくる。

その中にブライトの姿を見た瀬戸は、これで準備が整ったとばかりに小さくほくそ笑んだ。

―――やがて、空から降りてきたのは、青色の巨大なロボット。

その威容に<カブコー>の精鋭達も驚きを隠せない。

 

「バカな…あれは!」

 

「そんな…!」

 

その青いロボットは、名を<ネオ・グランゾン>といった。

 

かつて最強無敵、絶対の存在とすら呼ばれた、究極の戦闘マシーン―――

それがネオ・グランゾンだ。

そして、コクピットから一人の男が降りてくる。

貴公子然とした、怜悧にして端正な美貌。

しかしその瞳は、どこか暗い闇をも湛えていた。

 

彼の名はシュウ=シラカワ。

若くして10にも及ぶ博士号を持つ天才科学者。

そしてかつては<カブコー>と敵対し、その頭脳による数々の策略と、自らが設計し、そして造り上げた超高性能機―――

<グランゾン>そしてその真の姿である<ネオ・グランゾン>により、カブコーを壊滅寸前にまで陥れた。

そんな彼も、今はカブコーを離れて自らの闘いを続ける魔装機神<サイバスター>の操者―――

マサキ・アンドーの活躍と、瀬戸の土下座によって悪事からは足を洗い、ここ最近は姿を見せなかったのだが―――

 

 

「何をしにきた、シュウ!」

「また、俺たちとやり合おうってのか!?」

「ククク…そんな気はありませんよ。最も、あなた方がそれを望むというのならば、降りかかる火の粉は払わねばなりませんがね」

 

血気に逸るカブコーの面々を前にしても、シュウは余裕綽々といった態度を崩さない。

そして彼は、瀬戸に歩み寄る。

「今日は、彼に用があって来たのですよ…<どげせん>瀬戸発にね」

「瀬戸さんに?どういう事だ」

「私から説明しよう」

瀬戸は、ざわつき始めた隊員達を制止する意味も含めて語り出した。

「実は私は、彼に<あるモノ>の開発を依頼していた…」

「あるモノだって?」

「何だよ、そりゃあ。シュウの野郎に頼むだなんて…」

「瀬戸発の、専用機ですよ」

答えたのは、シュウ。

その言葉は、精強なるカブコーの面々をも凍り付かせるに十分な威力を持っていた。

これまで、生身での土下座によって全てを成し遂げてきた瀬戸が、ロボットを?

そして、それを造ったのが、シュウ?

 

「皆が驚くのも、無理はないと思う」

 

瀬戸は、静かに語る。

 

「だが私も、自らの土下座だけでは限界を感じていた…宇宙最大の勢力を誇るバッフ・クラン。未だにその全容を見せぬバルマー帝国。そして、無限とも思える数の宇宙怪獣…それらに対抗するには、更に強力な土下座が必要だと…」

 

そして、シュウに振り向く。

 

「その為の力…私の専用機を産み出せる者といえば、彼しか…総合科学技術者(メタ・ネクシャリスト)と異名を取る、シュウ=シラカワしかいまい。そう思った私は、彼に土下座して頼み込んだ」

 

結局土下座かよ、と誰もがツッコんだが、口には出さなかった。

 

だって、瀬戸発である。土下座で何もかも手に入ると、本気で信じている男である。

 

「クク…まさか、邪神ヴォルクルスとの戦いに乱入して土下座してくるとは、流石に思いませんでしたがね。下手をすれば死んでいたというのに、恐ろしい男だ」

よく分からないが、瀬戸は瀬戸で、命を賭した土下座を行なっていたらしい。

伊達に<どげせん>などと呼ばれてはいない。

「その熱意に打たれた…という訳ではありませんが、いい加減に私も根負けしましてね。あの大戦に…<封印戦争>にも参加せずに、彼の専用機を造っていたのです」

「なるほど…最近、姿を見せなかったのは、それが理由か」

「で、その瀬戸さんの専用機ってのは、どんなんだ?」

「ククク…では御覧なさい。これこそが瀬戸発の為の機体―――その名も<ドゲザリオン>です!」

 

シュウが指を鳴らすと、何もなかったはずの空間に、突如として巨大なロボットが出現した。

 

それは。

 

その、ロボットは。

 

実に、実に―――何という名状し難きフォルムか。

 

ドゲアーム。

 

ドゲレッグ。

 

ドゲボディ。

 

ドゲヘッド。

 

全身の全てで、土下座しているかのようなロボであった。

 

瀬戸発が乗る機体として、これ以上相応しいものがあろうか…!

 

<ドゲザリオン>の名に、偽りなしだ。

 

「す、すげえ…!」

「まるで、土下座をする為に造られたようなロボだぜ…」

「いや…間違いない。これは、土下座の、土下座による、土下座の為に造られた機械神だ!」

 

これに瀬戸が乗ったら、どうなってしまうのか?

 

湧き上がるのは戦慄と恐怖、そしてある種の期待感だ。

 

「シュウ。よくぞこれだけのモノを仕上げてくれた…感謝する」

「フ…」

 

二人は、ガッチリと握手を交わした。

 

互いに一癖も二癖もある男ではあるが、それでもその間には、奇妙な信頼が―――互いの力を認め合った者同士の連帯があるようだった。

 

「パイロットとして、既にあなたのデータは登録してあります。いつでも起動できますよ」

「ありがとう。では…ブライト艦長!」

「な、なんだ!?」

 

いきなり名を呼ばれ、ブライトが狼狽したその虚を突き、瀬戸は畳み掛ける。

 

「あなたはこれまで、ただの一度もカツ・コバヤシを出撃させていない…そうですな?」

「それは…そうだが。それは今、関係ないだろう」

「関係ある。何故なら、今から私はドゲザリオンの初陣として…あなたに挑むからです」

「な…何ィ!?」

 

言うが早いか、瀬戸はドゲザリオンに乗り込む。

 

その瞬間だった。

 

カブコーの面々、そして彼らの乗る機体に異常が連鎖的に発生したのだ!

 

「ゲッターが、反応してやがる…!」

「お、俺に埋め込まれた銅鐸が疼くぜ…!」

「Gストーンの輝きが増した…!」

「イデのパワーが上がったわ!」

「アニマスピリチア!」

 

Etc、Etc。

 

瀬戸が、ドゲザリオンに乗った―――

ただそれだけで、これほどの異常が起きた。

そして、ゆっくりとドゲザリオンが動きだす。

 

 

 

―――瀬戸が、己の機体に求めたモノとは何か?

決まっている。

土下座だ。

それ以外に、彼に必要なモノなどない。

そしてシュウ=シラカワは、その要求に完璧に応えてみせた。

 

ドゲザリオンに搭載されたシステム―――

それは<ダイレクト・ドゲザ・モーション・システム>

パイロットがコクピット内で土下座を行う事により、ドゲザリオンはその動きを完全にトレース。

 

一切のズレなく、ドゲザリオンはパイロットと共に土下座する。

 

その土下座力変換効率は、生身での土下座の実に十倍!

瀬戸の土下座力を百万とするなら、ドゲザリオンに搭乗する事で発揮される土下座力は何と一千万!

 

 

 

そんな正確な数値など知る由もないが<カブコー>の面々は、これから始まる事態を恐れ半分、期待半分で見守るばかりだ。

 

瀬戸が土下座する時―――<何か>が起きる。

無限力の一つとすら揶揄される瀬戸の土下座は、奇蹟を具現するのだ!

そして、ドゲザリオンはブライトに向けて<あのポーズ>を取る!

 

 

 

ORZ

 

 

 

―――それは、人が母の子宮に抱かれていた頃から無意識に取っていた、原初のスタイル。

 

それは、生命の姿。それは、宇宙の真理。

 

土下座。

 

最底辺の物乞いが行う筈のそれはいまや、偉大なる王の命令に匹敵する強制力を得ていた!

 

「お願いです、ブライト艦長…カツくんも、出撃させてあげてください」

「む、むう…だ、だが…!」

ブライトは、抗っていた。

本当は、今すぐにでも首肯し、この圧迫感から逃れたい。だが。

彼の中に流れるカツ虐待の血が。彼を構成するカツ苛めの遺伝子が。

この申し出を受けてはならないと、全力で抗っていた!

 

しかして、瀬戸の土下座は続く。

 

「なにとぞ…」

 

ドゲザリオンから響く、瀬戸の哀願。

 

 

 

「なにとぞ、カツくんに彼専用の機体を…そして彼を

 

小 隊 長 に し て い た だ き た い ! ! !」

 

 

 

その発言に、カブコーの面々はどよめく。

 

「専用機に、小隊長って…!」

「最初は、カツも出撃させてやれってだけだったのに…!」

「流石は瀬戸さんだ…エゲつねえぜ!」

 

さて。カツはというと、渦中の人でありながら、すっかり置いてけぼりにされた気分である。

(なんだ…なんなんだ、この展開…!)

 

しかし。戸惑いながらも彼の胸中は、熱く煮えたぎっていた。

人は誰でも、一度は主人公になれる。

今がその時だと、カツは確信していた。

 

「ブライト艦長…」

 

カツは跪き、地に手を着け、そして額を擦り付けた。

 

「どうか、僕に専用機と…小隊長の座を!」

 

瀬戸発。

 

彼が駆るドゲザリオン。

 

そして、カツ・コバヤシ。

 

まさしく三位一体土下座(トリニティ・ドゲ)!

 

その土下座力は瀬戸の百万がドゲザリオンによって一千万にまで増幅され、カツの土下座によって更に二倍の二千万!

 

ブライトは完全に顔色をなくし、だらだらと汗をかきながら震えるばかりであった。

 

(…見事です、瀬戸!)

 

シュウは瀬戸が作り出した一連の流れに芸術的な美しさすら感じていた。

もはや場は、完全に瀬戸が支配している。ブライト艦長が折れるのも、時間の問題だろう。

 

(ククク…これはもう、土下座の名を借りた脅迫ですね。瀬戸発…地べたを這いずり、惨めったらしく赦しを請うているように見せて、その実、己の意志を貫くことしか考えていない!己の要求を押し通すことしか頭にない!)

 

そんな瀬戸の姿は、シュウの目にすら眩く映る。

この男は何て、ワガママで。何て、自分勝手で。

 

 

―――何て<自由>なのだろうか。

 

 

(そう…だから私は、彼に惹かれてしまうのかもしれませんね…)

 

自分自身の為にしか動かない彼が、瀬戸の為の専用機である<ドゲザリオン>を、労力を惜しむ事なく造り上げてしまった程に。

 

(瀬戸発…あなたの土下座道の行く末、しかと見届けさせてもらいましょう)

 

そのクールな顔立ちを緩め、シュウは頬を少しだけ…本当に少しだけ、赤らめるのだった。

 

 

 

 

 

―――かくして瀬戸の活躍もあり、カツ・コバヤシの主張は認められた。

 

次の出撃時にはカツ専用νガンダムが用意され、小隊員として元祖スーパーロボットパイロット兜甲児に、流竜馬率いるゲッターチーム、そして勇者王・獅子王凱と、超豪華メンバーが選出された。

 

ちなみに彼らの乗機はそれぞれマジンカイザー・真ゲッター・ジェネシックガオガイガーである。

考えうる限り、最高の条件といっていいだろう。

これに対するする反論は一切なかった。どうせ土下座で押し切られるだけだからである。

 

「瀬戸さん…!」

 

ドゲザリオンから降りた瀬戸に、カツは駆け寄った。

「ありがとうございます!僕は…僕はもう、どう言っていいのか…!」

言葉が見つからない。ただただ、カツの双眸からはとめどなく溢れる涙。

それはそれは、熱い涙だった。

伝えたい。この、熱い想いを。

 

「すみません…!」

 

カツが取った姿勢は―――土下座。

 

それ以外に、ない。

自分の為に尽力してくれた瀬戸に…ただただ、心から謝りたかった。

 

「いいんだ、カツくん。君の気持ちは、分かっている。次の出撃、楽しみにしているよ」

 

瀬戸は、カツの肩にそっと手を置いた。

カツの心意気は、瀬戸には余すところなく伝わっていた。

 

そう―――

 

謝りたいと感じたなら―――

 

それはもう<感謝>だから―――

 

 

 

 

 

瀬戸発。

 

宇宙に平和が訪れるその日まで、彼の土下座は続く!

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