【完結】ゲッターロボに愛されて死ぬことも出来ないアイドル   作:朱鷺野理桜

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煉獄さんネオゲ時空のゲッターロボ1説

・赤、黄、白が特徴的なカラーリング
・刃物を武器にしている
・主人公らの先輩ポジションにあたる
・後輩である主人公らが3人組である
・胴体に穴が開いたことが死因
・自分の死を厭わず敵を道連れにしようとする
・しかし敵を殺し切れずに終わる
・必殺技が熱に関連する
・同輩ら(柱)の助けもあって主人公らがラスボスを倒す
・主人公が少しの間、人間ではなくなってしまう(真ゲッターロボと同化)
・しかしなんとか元に戻れる


鬼舞辻無惨にゲッターの恐ろしさを味わわせる話

「星の呼吸壱ノ型……力技!」

 

 なんてこと言いながら、私は手にしたトマホークで鬼の首を力づくで叩き切った。

 私は星野アイ。鬼殺隊星柱をやっている。どうも、ゲッターロボのない世界に転生したようだ。

 いつもならまだ判断するには速い……と思うんだけど。さすがに大正時代にゲッターロボはないからね。

 明治時代なら存在するかもって思うんだけど……いつだって維新志士たちの若い命は真紅に燃えているのでござるな。

 

 ……いや、待てよ。サクラ大戦はロボットものだけど、あれって大正時代だよね? 正確には太正だけども。

 いま大正3年だから、もしかしてもうちょっと後に、光武とか出て来る……?

 いや、まぁ、たしかあと10年くらい必要だから、まだ考えるには早いか……。

 

 さておき、鬼殺隊とは、鬼をなにがなんでもブチ殺したいという異常者の集いだ。

 所属組織を悪く言うのもなんだけど、割と擁護できないんだよね……。

 組織の統率者が異常者だと、組織自体も異常なものになるっていう好例だね。

 

 御館様とか、外面は綺麗に取り繕ってるけど、鬼をブチ殺したくてたまらない異常者そのものだし……。

 いや、だって……鬼舞辻無惨のせいで家系が呪われてるって……証拠ないじゃん?

 証拠ないけど、もしかしたら呪いが解けるかもしれないから鬼舞辻無惨を殺そう! って異常者の発想だと思うよ。

 

 まぁ、この時代だとまだまだ天狗とか河童の存在が信じられてた頃だし。

 鬼と言う存在がいる以上、呪いもあっておかしくないというのは自然な発想だ。

 私としては単に遺伝病なのではと思うが。実際、御内儀様を他所の家系からもらったら子孫の寿命伸びたってそう言うことだと思うし。

 とは言え、別に医者ではない私がそんなこと言っても信じてもらえるとは思えないしなー。

 

 そう言うわけでその辺りには触れず、私は無難に鬼殺隊をやっている。

 

 鬼殺隊に入った経緯だけど、特にこれと言ったものはない。

 この世界に生まれ落ちて、すぐに両親が毒親だと理解し、まともに動けるようになるまでは雌伏の時を過ごした。

 その後、家を脱走した後は稼ぐ手立てを探し、イマイチうまく決まらなかったので、ヤー公をボコって財布を奪うというカツアゲ行為に勤しんだ。

 いやほら……ヤクザは社会のゴミだから……上前はねても別にいいかなって……。

 

 その後に鬼殺隊の存在を知り、鬼殺隊は強ければ金がもらえると聞いて鬼殺隊に所属することにした。

 所属する方法は、藤の家を探し、そこで鬼殺隊の人間から聞くことで知った。

 藤襲山なる場所で、鬼相手に7日間サバイバルして生き延びればいいらしい。

 

 こんな方法で入隊者選抜するとか異常者では……せっかく鍛えたやつらがバタバタ死んでるじゃん……。

 

 まぁ、私には関係のない話である。いや、助けられるなら助けるけどさ……私は鬼を徹底的にボコり、朝日が昇ったら炙り焼きにするという手段で7日間を生き延びた。

 その後、隊に所属し、日輪刀をパキポキ折りつつも鬼を殺しまくった。

 殺して殺して殺しまくった。殺せば殺すだけ給料がもらえるからね、ありがたいね。

 

 そうするうちにどんどん階級が上がり、気付けば柱にまでなっていたというわけだ。

 で、何柱にするか聞かれ、そもそも何の呼吸使ってるのか聞かれ、そんなもん使っていないとは言えずに星の呼吸と答えた。

 

 私は星野アイだから、星野の呼吸で星の呼吸だ……!

 

 全集中の呼吸が使えずとも、ダイナミック世界出身の身体能力ならば素で鬼を倒せる。問題ない。

 柱になったことで特製の日輪刀を作ってもらえることになり、私はゲッタートマホーク2振りを作ってもらった。

 日輪刀とか脆すぎるんだよね。やっぱりゲッタートマホークよ。重いけど、その分だけ威力乗るし。

 

 私は大正の世を駆ける鬼殺の剣士……剣士? ……鬼殺隊員として、影ながら人々を守っているのだ。

 

 

 

 

 

 柱合裁判。隊規に反する隊士が出たら、処罰するための裁判だ。

 でもこれ法律と照らし合わせると、ただの私刑だけど大丈夫なのかな……?

 

「裁判の必要などないだろう! 鬼を庇うなど明らかな隊律違反! 我らのみで対処可能! 鬼もろとも斬首する!」

 

「ならば俺が派手に頸を斬ってやろう。誰よりも派手な血飛沫を見せてやるぜ。もう派手派手だ」

 

「あぁ……なんと言うみすぼらしい子供だ……可哀想に……生まれて来たこと自体が可哀想だ……」

 

「勝手に手出したら私がゲッターわからせするからね。どうなっても知らないよ」

 

 御館様の指示の意味分かってる君たち?

 勝手に殺すなよ、って言う意図で柱合裁判やろうとしてるんでしょ。

 勝手に殺したらダメだって気付いてよ。

 

「あぁ……なんと恐ろしい……ゲッターわからせなる謎の技はあまりにも恐ろしい……意味も分からない……」

 

「うむ! 星柱殿が触れた相手が、すべてが分かったと言い出した後に廃人になった件は俺も見ていたが、意味が分からなかった!」

 

「見た目は恐ろしく地味な技だが、ド派手に意味分かんねーからな……あれはマジでどういう技なんだよ、星柱さんよ」

 

「いや、そのままだよ? ゲッター線の意味をわからせるだけ」

 

「まず、そのゲッター線とやらが派手に意味不明なんだが」

 

「ゲッターエネルギーとは……命」

 

「いや、分かんねぇって」

 

「すばらしいことだよ」

 

「星柱さんどっか派手に変なとこ繋がってないかこれ?」

 

 オッケーゲッターする時に誰かも巻き込むと、相手はオッケーゲッターの加減が分からず虚無る。

 私しか出来ないある意味での最強技だが、オッケーゲッターするのに時間かかるから戦闘では使えない。

 加減間違えると私も虚無る超危険な技だ。まぁ、相手巻き込む分にはほんの僅かに同化すればいいから、私は楽勝で戻って来れるんだけど。

 

 でも、ゲッター線がそうしようとしたら私もゲッター線と同化しそうな予感はビンビンしてるんだよね。

 だからあんまり使いたくはないんだけど……ただ殺すよりはマシだろうと、隊律違反で斬首となる隊士に使ってる。……ただ殺した方がマシな気もするけど、どうだろう?

 

「まぁ、ゲッター線に興味があったら教えてよ。ゲッター線には色んなすごい効能があるんだよ。使い過ぎると人間やめることになるけど」

 

「星柱さんそんなやべーもん使ってんのか……」

 

「まぁ、私でもない限りはやばくないから、大丈夫」

 

 そもそも、オッケーゲッターとかも普通はできないから……。

 そんなこと考えてたら、かまどたんじろーくんの意識が戻った。そして弁明しだすたんじろーくん。

 人を襲わない鬼、ねぇ……この主人公っぽさを醸し出す少年は一体……!?

 

 これはたぶんあれだね……始まりの剣士の家系とかそう言う感じのアレだよ、きっと。

 この世界が何の世界かは知らないけど、フィクション作品ならそれ以外ないって感じ。

 おあつらえ向きにそれっぽい耳飾りとかつけてるし、大方始まりの剣士その人から受け継いだ代物なんでしょ?

 

 時透くんも始まりの剣士の家系らしいけど、たぶんあの子の家には伝わっていない剣技とか伝わってるんだよ、どうせ。

 時たまいる黒い日輪刀の使い手は何の呼吸使えばいいか分からないらしいけど、たぶん始まりの呼吸がそれなんだろう。

 オッケーゲッターするまでもないね。たんじろーくんが主人公だ……!

 

「わかっちゃったぞ~」

 

「なにがだよ……」

 

「私が思うに、この2人は鬼舞辻無惨を殺すのに重要な役割を果たすと思うんだ……!」

 

「は? 根拠は?」

 

「わからない、私は雰囲気で物を言ってる」

 

「雰囲気で喋んないでくれねぇか星柱さんよ……」

 

「じゃあ、女の勘だよ。あとゲッター線の使者としての勘」

 

「ゲッター線って使者出すようなもんなのか……お偉方みてぇ」

 

 言われてみるとよく分かんない存在だな、ゲッター線……。

 

 音柱の宇随くんと喋っていたら、風柱の不死川くんが到着したようだ。

 その不死川くんが勝手にかまどたんじろーくんの連れていた鬼の入っていた箱を痛めつけようとし出す。

 

「はい、ストップ。ダメだよ。御館様が殺さずにつれて来いって言ったんだから」

 

「チッ……」

 

 腕を掴んで止めたけど、こいつ……有無を言わさず殺したら有耶無耶にできるとか思ってるな……。

 私もゲッターロボ乗ってる時は力づくで一掃して有耶無耶にしたりするから人のことはあんまり言えないけど、どうかと思うよ。

 

「星柱さんよォ、あんたも本気で鬼が鬼殺隊として人を守るために戦えるなんて思ってんのかァ?」

 

「わかんない。でも、不死川くんのそれはダメだよ」

 

「たとえあんたであろうと、鬼は……ン? 星柱さん? 星柱さん!?」

 

 メキメキと音を立てて不死川くんの腕に食い込んでいく私の指。

 

「――――かかったな馬鹿め!」

 

 私は不死川くんを力づくで持ち上げると、そのままブンブン振り回した。

 御館様来るまでは振り回してるね。暴れる不死川くんがいけないんだよ! 不死川くんが!

 ギャアアアとかヒィィィとか悲鳴を上げて振り回され続ける不死川くん。

 

 この状況に持ち込まれたら詰みだ。人間である以上は抵抗不能。

 まぁ、私とか悲鳴嶼さんくらいの腕力がない限りはできないけど……。

 

 

 

 その後、御館様がお出ましとなり、不死川くんがオエオエ言ってたけど、柱合裁判は始まった。

 結論から言うと、現状維持、である。たんじろーくんの妹、ねずこちゃんが人を襲ったら、連座で切腹するらしい。こわぁ……。

 どうでもいいけど、ねずこちゃんの禰豆子ってすごい書くの大変……報告書出す時しんどいから合同任務したくない……。

 

 でも、推定主人公だろうたんじろーくんは絶対に物語の核心に迫っていくだろう。

 そうすると、たんじろーくんについて回った方が、鬼舞辻無惨を殺すのに重要なピースは探しやすい。

 べつに鬼殺隊に大したモチベーションはないんだけど、人類の敵を野放しにするつもりもないし。

 そもそも、ゲッターロボ的に考えて鬼は殲滅しないといけないよね。

 

 そう言うわけで、私の鎹鴉である靫葛にたんじろーくんが任務に出る際には見ておくように頼んだ。

 なにかしらの重大な事件とかに出くわしたら、私も救援に駆けつけるとしよう。

 

 そう思って任務をしながら過ごしていたところ、たんじろーくんがついに任務に出るとのこと。

 炎柱、煉獄杏寿郎との合同任務……これは絶対になにかしらのハプニングがあるやつだな……。

 もう絶対に何か重大事件起きるでしょ。鬼舞辻無惨と遭遇して、杏寿郎があっさり殺されるとかそう言う感じの。

 

 杏寿郎はかませにされるほど弱くないけど、上弦の鬼を圧倒出来るほど強いわけではない、と思う。

 正直、上弦の鬼の強さもよく分からないんだけど、相当すさまじい強さだろう。その頭領が弱いわけもない。

 

 どうにか時間をやりくりし、任務の際には駆けつけられるようにしなきゃ……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「その闘気、練り上げられている。至高の領域に近い」

 

「俺は炎柱、煉獄杏寿郎だ」

 

「俺は猗窩座。杏寿郎、なぜおまえが至高の領域に踏み入れないのか教えてやろう」

 

「人間だからだ。老いるからだ、死ぬからだ。鬼になろう、杏寿郎。そうすれば、百年でも二百年でも鍛錬し続けられる。強くなれる」

 

 そんなペラ回している鬼と、杏寿郎。

 私は上空から落下し、杏寿郎の横に落着する。

 鬼は眼を見開き、杏寿郎もびっくりして私のことを見ていた。

 

 それと同時、ダイナミック身体能力の全てを全力で駆動。

 鬼の両腕を根元から斬り飛ばし、蹴り上げられた脚を左拳で迎撃することで地面に叩きつけると、その首を叩き切りに行った。

 へぇ……上弦の参。これと遭遇したとは。物語的に熱い展開としては、杏寿郎が死んで、連れている隊士たちが決意を新たにする感じかな?

 

「ぐっ!」

 

 上弦の鬼が一瞬で腕を再生させ、辛うじて腕をトマホークの間に割り込ませつつも、身を翻す。

 腕は一瞬で切り落とすも、軌道を反らされたことで、首の8割を切るに留まった。

 

「ふぅん」

 

 斧についた血を払いながら、一歩離脱した鬼を見やる。

 

「強いなぁ。その闘気、練り上げられてるね。ゲッター線の好みだね」

 

「おまえも、柱か? 凄まじい闘気だ……杏寿郎を超えている」

 

「見ればわかる。君のそれ、とにかく強くなりたい種類のヤツだ」

 

「俺は猗窩座。おまえの名を聞かせてくれ」

 

「私は星野アイ。現状、人類で最強の女かな」

 

「なるほど。たしかに、その強さ、至高の領域に近い。どうだ、星野アイ。おまえも鬼にならないか?」

 

「ならない。だから、代わりに提案しよう。猗窩座、君もゲッター線の下、未来永劫の刻の狭間で永遠に戦い続けない?」

 

 私はそんな提案をした。こいつ、すっごいゲッター線の好みだと思うんだよね。

 闘争が大好きって言うのは、ぶっちゃけた話、ゲッター線の好みではあれ、推しにまではならない。

 でも、こいつは違う。理由があって闘争に勤しむ。必要だからそうする。

 なんとなくだけど、竜馬と似たような部分があるような……そんな気がするのだ。

 

「猗窩座、なんで君が至高の領域とやらに至れないか、教えてあげよう。鬼だからだよ。切磋琢磨する相手がいない。信じられないほどに強大な敵と、自分の限界ギリギリのところで戦ったことがないからだよ。紙一重の差で死に至る戦いがないからなんだよ」

 

 私の実力が大きく伸びる時。それを自覚出来るのは、私が決死の戦いを潜り抜けた後だ。

 ゲッターロボを駆る中で、そう言ったものを強く実感した。そして、私がたった1人の最終決戦に挑む時にこそ、それを最大限に実感する。

 精神が研ぎ澄まされ、眠っていた感覚がこじ開けられていく。自分と言う肉体の最大駆動率が分かっていく。

 

 鬼にはそれがない。強くなりすぎてしまえば、人間と言う枠組みの中で戦うしかない鬼殺隊を相手に、限界が見えて来る。

 柱の中でも上澄みの上澄み。歴代でも最強格に近い柱たちがいる今でも、単独では猗窩座に敵わないだろう。それほどに猗窩座は強い。

 ゲッター線の導く下、未来永劫の刻の狭間の中で戦えば、強大な敵には事欠かない。鬼だからと言って、その不死性で生き残れるほど甘い相手などいない。

 

「ゲッター線の下に還ろう。そうすれば、百年でも千年でも、戦い続けられる。信じられないほどに強大な敵、自分の全てを賭しても手も足も出ないほどに絶望的な戦い。そんな戦いが無数にある」

 

「ゲッター線とはなんだ? それの下につけば、強くなれるというのか?」

 

「ゲッター線とは、命だよ。生命以前のあるべき姿。そのもとにつくことは、そう、すばらしいことだよ」

 

 ゲッターわからせを喰らわせれば一撃で殺れる。

 その結果どうなるかは知ったことじゃないけど、鬼1匹混ぜたくらいでどうこうなるほどゲッター線はやわじゃない。

 それに、ゲッター線の好みの存在として、ゲッターの尖兵とかになれば、本当に強くなれるだろうって言う予感はある。

 

「さぁ、猗窩座。ゲッターと共に往こう」

 

 私は猗窩座に手を差し出す。乗ってきたらほぼノーリスクで上弦の1つを殺れる。

 そして、そんな誘いを、猗窩座は一笑に付した。

 

「ゲッター線がなにかは知らんが、鬼になるよりもいいこととは思えん。アイ、おまえこそ鬼になれ」

 

「馴れ馴れしく呼ばないで。私のことを呼び捨てていい男は2人だけだから」

 

 まぁ、さすがに迂闊には乗って来ないよね。

 乗ってくれたら楽だったんだけどなー。

 

「ゲッター線と共に往くつもりがないなら、殺してゲッター線に還らせる」

 

 私はトマホークを手に猗窩座へと挑みかかった。

 それに呼応するように、杏寿郎が私の横に並び立った。

 

「星柱殿! 救援に感謝する!」

 

「いいよ、気にしないで杏寿郎! さぁ、こんなやつパパっと片付けてみんなで帰ろう!」

 

「承知!」

 

 さて、杏寿郎との共闘は初めてだね……先代炎柱、煉獄槇寿郎とは何度かあったんだけど。

 ちなみに、私が杏寿郎を名前で呼ぶのはそう言う理由。先代との方が付き合い長かったからね。

 

「今まで殺して来た柱に炎はいなかったな! そして、俺の誘いに頷く者もいなかった!」

 

 信じ難いほどに、猗窩座は強い。打撃の威力の次元が違う。信じられないほどに重い。

 竜馬より強いぞこれ……鬼相手に比較対象になれる人間ってのもどうなんだろう?

 ドスで刺されてもドスの方が折れるとか言う私ならともかく、常人なら即死。柱級の剣士でも致命傷だろう。

 

「なぜだろうな? 同じく武の道を極める者として理解しかねる! 選ばれた者しか鬼にはなれないというのに!」

 

 正確で高速の拳撃。そして、常軌を逸した再生速度。

 こちらの攻撃の出鼻を察知し、それを潰しにかかる反応速度。

 武の道を極める、というのもフカシではないようだ。これはたしかになんらかの武術を高度に学んでいる。

 

「素晴らしき才能を持つ者が醜く衰えてゆく! 俺はつらい! 耐えられない! 死んでくれ、杏寿郎! アイ! 若く強いまま!」

 

 打撃が飛ぶ。私たちが物理で戦ってるのに、ファンタジー染みた真似しないでほしい。

 飛ぶ打撃ですらも凄く重い。こんなもんを一瞬で撃って来るとは、上弦の鬼とはこれほどに……。

 

 距離を取られれば不利。あれを連打され続けるのは厳しい。

 ならば、距離を詰めてインファイトで攻めるしかない。

 鬼相手には厳しい戦いになるが、元々リーチの短い手斧を使う私にはいつものこと。

 杏寿郎に目配せをすると、杏寿郎も同様の結論に至っていたのか、互いに踏み込んだ。

 

「この素晴らしい反応速度!」

 

 私の斧が、杏寿郎の剣が、猗窩座の拳が。

 交差し、激突し合い、血が飛び、肉が躍る。

 

 リーチの短い私が前に出て、攻撃を潰し、時として受け止める。

 体格と武器の分だけリーチに優れる杏寿郎が頸を狙う。

 私が防御、杏寿郎が攻撃。その分担は自然と成立していた。

 

「この素晴らしい剣技も! この凄まじい膂力も! 失われていくのだ杏寿郎! アイ!」

 

「誰もがそうだ! 人間なら! 当然のことだ!」

 

「凄まじい膂力で悪かったね! 乙女的にちょっと傷付くなぁ!」

 

 トマホークを握り締め、全身の力を振り絞る。いまが命を燃やす時だ。

 こんなことなら全集中の呼吸、もうちょっと真面目に学んでおくべきだったかな。

 練習はしたけど、あんまり才能なかったみたいで、全然使えないんだよね。

 

「杏寿郎、思ったよりも分が悪い。杏寿郎は頸を切ることに集中。私は攻撃をいかせない。私が前に出た方がよさげ」

 

「了解! なんとしても頸を斬ってみせる!」

 

 2人でも足りないんじゃないか、これ。3人くらい欲しい。

 ただ、猗窩座は私相手だと拳が鈍る。致命傷を負わせないように手加減しようとする。

 なんでだろ。まぁ、分かんないけど、有利になるならなんでも使っていく。

 杏寿郎に拳をいかせようとするなら、その腕を私が叩き切るまで。

 

 

 

 

 激闘は続く。

 杏寿郎が全身全霊を振り絞って頸を斬らんとし。

 私はその杏寿郎に指1本触れさせないと護る。

 

 実際、そのおかげで杏寿郎は掠り傷程度だ。

 私はそれなりに重傷だけど、まだまだ動けるから問題ない。

 

「……生身を削る思いで戦ったとしても、すべて無駄なんだよ、アイ。お前が俺に喰らわせた凄まじい威力の斬撃も、打撃も、既に完治してしまった」

 

「そうなんだ、めちゃめちゃむかつくね」

 

「だが、おまえはどうだ。折れた右腕、砕けた肋骨、傷付いた内臓、もう取り返しがつかない」

 

「こんなもんツバつけときゃ治るから。その程度でイキらないで」

 

 いや、冗談とかではなくマジで。

 鬼じみた回復能力とか言われる程度に私の怪我の治りは速い。

 実際、今の状態でも普通に全治1週間くらいだと思う。

 

「鬼であれば瞬きする間に治る。そんなものは掠り傷だ」

 

「は? 私にとっても掠り傷だけど? こんなの3日で綺麗に治るけど? 負けないけど?」

 

「どう足掻いても、人間では鬼に勝てない」

 

「だからなに?」

 

 諦める? 考えたこともない。

 私は死ぬことを前提に戦ったことはない。

 いつもなんとしてでも生き延びようと戦った。

 死ぬまで足掻いて、たとえ死んでも足掻いて。

 なんとしてでも前に進み続けて来た。

 

「人間は弱い。すぐ死ぬ。意志も薄弱で、すぐ楽な道に逃げる。それでも」

 

 なぜ、人間はゲッター線に選ばれたのか。その答えを私は知らない。

 虚無戦記の神々の言葉が、本当にゲッターを指しての言葉なのかもわからない。

 でも、ゲッター線が望んでいるものは分かる。

 そしてそれは、私が足掻く中で、最も大事だと思っているもの。

 

「人間は前に進み続ける。立ち止まることも、振り返ることもあるけど。限りある命を燃やして、前に進み続ける」

 

 諦めて、そこに蹲ってしまえば、そこで終わってしまう。

 ゲッター線に見放されるのか、私と言う存在が折れてしまうのか。あるいはそれ以外か。

 私自身にもよく分からないけれど、私は前に前に進み続ける。

 

 本当に小さな、ちっぽけな1歩かもしれないけれど。

 すべての道程から見て、芥子粒ほどに小さな1歩でも。

 前に進み続ける限り、いつかは辿り着けると信じている。

 

「どんな困難だって、乗り越えられると信じて。たとえ、斃れるのだとしても、前のめりで。前に進み続けるからこそ、道は啓ける」

 

 どうしようもないほどに無様で、滑稽なほどに無力でも。

 前に進み続けようと、よりよい未来に進もうとする意思があるからこそ。

 進化し続けようという意思があるから、人間は選ばれたんじゃないか。

 私はそう思っている。だから、立ち止まるわけには行かない。

 

「私の道を阻むならどんなやつも許さない。魂を燃やして、何度だって立ち上がる」

 

 たとえそれが、神だろうと、鬼だろうと……そして、ゲッター線であろうとも。

 私は私の道を往く。前に進み続ける。道を阻むなら、倒すまでのこと。

 

「猗窩座! 私の道に、立ち塞がるな!」

 

 このまま戦っていてもラチが開かないなら、起死回生の一手を打つしかない。

 捨て身の戦いになるが、私の頑丈さならなんとかなると信じて、やってみせる。

 

「杏寿郎。1秒、猗窩座の動きを完全に止めて見せる。その間に、なんとしても頸を斬って」

 

「了解! 星柱殿の覚悟に応えてごらんに入れよう!」

 

 覚悟を決め、私は残った体力の全てをこの後の3秒間に注ぎ込む。

 深く息を吸い、私は手にしたトマホークを握り締める。

 

「素晴らしい闘気だ……それほどの傷を負いながら、その気迫! その精神力! 空気が震えるほどの気合!」

 

 なんで嬉しそうにするかな。コイツ変態か?

 まぁ、変態だろうとなんだろうと、どうでもいい。

 コイツはここで殺す。猗窩座、ここで終われ。

 

「ダブルトマホォォォォォク! ブーメランッ!」

 

 私は手にしたトマホーク、その双方を気合と共に投げ放った。

 ゲッターロボのそれならば、戻ってくる。だが、私の手にするトマホークは猩々緋砂鉄で造られた日輪刀でしかない。

 ひとりでに手元に戻ってくるような力などない、武器を手放すただの自殺行為。

 

「おぉぉぉおおおおおおおっ!」

 

 トマホークを追いかけ、私は走る。

 怯え、惑う人々を脅かす鬼を倒すために。

 許せない敵を倒すために、走る。

 

「やはりお前は鬼になれ! アイ!」

 

 猗窩座がトマホークをその両の拳で迎撃。

 まるで寺の鐘でも衝いたような重苦しい音を響かせてトマホークが弾き飛ばされる。

 そして、その時にはもう超至近にまで肉薄した私が、猗窩座へと迫っていた。

 

「捕まえたァ!」

 

 全身の力を振り絞り、私は猗窩座の腕ごとその胴体を抱え込む。

 異常な速さで察知して迎撃するのなら。ならば、その拳が使えなければ。

 私がこの場から逃さなければ……さぁ、どうなる?

 

「捨て身か!」

 

 自分の腕を自分で掴むクラッチの状態。

 例え鬼であっても、そう簡単に抜け出せるものではない。

 猗窩座の唯一自由になる脚が、私の鳩尾に捻じ込まれる。

 

 物凄い激痛と不快感。でも、その程度で負けるもんか。

 猗窩座の肋骨が圧し折れ、背骨までもが軋む音がする。

 

「ぐふっ……!」

 

 肺が押し潰され、猗窩座が呻き。

 そして、その直後、轟音が響き渡り、私は奔る焔を幻視した。

 

 炎の呼吸奥義 玖ノ型・煉獄。

 

 その一斬が、猗窩座の首を、刎ね飛ばしていた。

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