【完結】ゲッターロボに愛されて死ぬことも出来ないアイドル 作:朱鷺野理桜
「ただいま~」
「おや、おかえり、アイくん。どこに行ってたのだね。深夜に出歩くのは感心せん……そ、それは……?」
「ああ、これ。ゴーラって言うんだけどね」
私が足を掴んで引き摺っているのは、ハチュウ人類ゴーラ。
早乙女研究所周辺を探し回り、ようやく見つけた早乙女ミユキ。
連れ帰ろうとしたけど、まぁ、普通に拒否られたので、実力行使した。
要するに殴り倒して無理やり連れ帰ろうとしたわけなんだけど。
すると、ハチュウ人類の姿を現し、私はゴーラ! 早乙女ミユキはぶっ殺してやったわ! とか言い出して抵抗して……まぁ、普通にボコった。皆既日食じゃなくても元の姿に戻れるものなのか……?
いや、たしかにハチュウ人類って人間よりも大体強いけど、私はそれよりさらに強いし。
それに、幼少期に人間のスパイとして送り出されてるわけで、戦闘訓練とか受けてないみたいだしね……。
「ここまで身近なところに潜んでるとは思わなくてびっくりしたけど、本物のハチュウ人類だよ」
「なんと言う……たしかに人間ではないが……顔が随分と大きい。脳の容量が人類よりも多いのか……?」
「それは私が散々殴ったから腫れてるだけ」
「そ、そうか」
「ミユキちゃん探しに行ってこんなことになるとは思わなかったよ」
「む、やはり、まだ見つからんか」
「んー……」
「いったいどうしたのだろうか……なにか不満があったのか……こんなに遅くまで帰らないなんて、反抗期だろうか……」
「うーん……」
落ち込んでる早乙女博士。いつの時代も娘を持つ父親ってこんな感じなのだろうか……。
「えーとね、早乙女博士」
「うん?」
「これ、ミユキちゃん」
「なに?」
「ミユキちゃん見つけて連れ帰ろうとしたんだけど……なんか、突然この姿になって、我が名はゴーラ、恐竜帝国より参ったとか言い出して襲ってきたから、殴り倒して連れ帰って来た」
「……本当なのか?」
「目が覚めたら聞いてみればいいんじゃない? あ、一応拘束はしといてね。鎖とかで」
「う、うむ……」
その後、早乙女博士とゴーラがどんな会話をし、どう結論をつけたのかは知らない。
ただ、それからも早乙女ミユキちゃんが早乙女一家の団らんの中にいたことだけは知っている。
「止むを得んことだ。戦闘用ゲッターロボを開発する……」
「何から作る? とりあえず真ゲッターでいく?」
「それはちょっと……」
博士がドン引きして拒否って来た。ちぇー、ノリ悪いなー。
まぁ、私も真ゲッター提案されたら拒否るけど。
「ミユキから恐竜帝国の脅威については聞いた……たしかに、止むを得んことなのだろう」
「ねだるな、勝ち取れ、さすれば与えられん、って言ってる人もいたし、平和は自分たちの手で守らないとだね」
「いい言葉だな……誰の言葉だね?」
「えーと……聞いたのはサーファーだけど、科学者のお父さんから教えられた言葉って言ってたかな?」
「なるほど。ねだるな、勝ち取れ、さすれば与えられん……か。上から垂らされる平和をねだるばかりではなく、自ら勝ち取らねばいけない。儂にできる最善を尽くすほか、あるまい」
「建造中のプロトゲッターは一旦キャンセルってことでいい?」
「そうだな。しかたあるまい。廉価版プロトゲッターは改修したところで戦闘には耐えられん。1から戦闘用に作らねば……」
そう言うわけで、プロトゲッター類はすべて建造キャンセル。
私のプロトゲッターは建造待ちだったので、起工すらせずに終わることとなった。
まぁ、しょうがない。恐竜帝国との戦いを今度こそ生き延びて、じっくり作ろうと思う。
「正式版として扱うつもりだったプロトゲッターは戦闘に耐えられる程度に改修は出来そうだが……」
「まぁ、1から戦闘用のも作りつつ、改修もすればいいんじゃない。改修はそこまで難しくはないし」
宇宙放射線とかデブリのこともあって、プロトゲッターの装甲は厚い。
装甲配置が戦闘向けじゃないけど、その配置さえ是正すればすぐだ。
あとは出力関係を頭のイカれた感じにすれば、武装はなくても初代ゲッターに近しいものになる。
「戦闘に耐え得る炉心は、どの程度のものが用意できそうだね?」
「被弾とかしても暴走しないってことだよね。プロトゲッターに載せたやつの30倍はいけるね」
ちなみにプロトゲッターに載ってるのは初代ゲッターのものと変わらない性能がある。
あれ、元々は宇宙開発用に使うやつだったから安定感抜群なんだよね。アーク以上に安定してるかも。出力低いけど。
「何も考えずに出力だけ求めろって事なら、600倍くらいのやつも作れるけど」
「それほどのものが作れるのかね?」
「うん。ただ、安定性は知らない。私はお勧めしないかな」
これは真ゲッターに乗せてたゲッター線増幅炉と同じものだ。
素材関係で600倍どまりなだけで、もっと高性能な素材があれば1000倍まで楽に伸ばせる。
たぶん、サイコフレーム使えば楽勝で1000倍までいけるけど、何が起きるか分からないからやりたくない。
そしてだが、炉心の安全措置とか安定性を犠牲にすれば、もっともっと伸びるだろう。
真ゲッターのあの有様でも、一応それなりには安全措置とかは講じていたのだ。全部無駄だった気がするけど。
「たしかに、安定性が低いでは問題か……その30倍のものを、ゲッターロボ仕様で用意しておいてほしい」
「分かった。あとは、パイロットだね。3人乗り仕様でいくんでしょ?」
「うむ。パイロットを見出さねばならん……」
「あてがあるから任せて」
「ほう。未来でゲッターチームと言うものをしていた子たちかね?」
「うん。勧誘してくるね」
「わかった。任せよう。ただ、予算の範囲内でな……」
「大丈夫大丈夫」
そう言うわけで、私はスカウトマンアイとなって、ゲッターチームを拉致りに行くことにした。
「流竜馬だね?」
「あん? 誰だ、おまえ」
「私は星野アイだよ。絶賛売り出し中のアイドルやってるんだ」
「ああ、どこかで見たツラだと思ったら……そのアイドルが何の用だ?」
私は竜馬に対し、蹴りを放った。
クリーンヒットすれば、ハチュウ人類の首を捩じ切る威力の蹴りだ。
しかし、竜馬はそれを受け止め、地を蹴って距離を取った。
「やるね。私の蹴りを受け止めたのは君が初めてだよ」
この世界では、だけどね。
「けっ、腕がブチ折れるかと思ったぜ。テメェほんとに女か?」
「さすがに失礼じゃない? こんなに可愛いんだよ?」
こんなに可愛い子が女の子のわけがないとも言うけれど、私は女だ。
しかも、女であることにあぐら掻いてる人と違って、魅せることが仕事のアイドルだよ?
「なんだか分かんねぇが、喧嘩売ってるってんなら買うぜ。女相手でも容赦はしねぇぞ」
「あはは、乗り気になった? じゃあ、本気で殴り合おうよ!」
竜馬はああ見えて思慮深いところもあったりするけれど、基本的には単純な人間だ。ついでに言えばガサツだし、下品だ。
思いっ切り殴り合って、お互いを認め合ったら、とことん信じてくれる。もちろん、こっちが誠実なら、だけど。
私は嘘つきだから、そう言う意味じゃ相性は悪いけど。私は少なくとも本気で竜馬のことを仲間だと思ってる。
だから、今回も友だちになって、仲間になろうよ、竜馬。
そのために、本気でぶつかりに行くから、そっちも本気で来てよね。
30分くらい殴り合った。結果はまぁ、引き分けかな。
あー、ほんと竜馬って強い。それでこそ竜馬と思うけど、むかつくのはむかつく。
まぁ、私が一方的に勝てる竜馬は竜馬じゃないから、これでいいんだけど……ぐぬぬ。
体格差って言う要素はあれど、経験は私の方が上のはずなのにな。
負け方から弱点を分析してみても、いまいち上手くまとまらないし……竜馬に私の弱点聞くのは癪だし。
「ちっ、口ン中がズタズタだ。アイっつったか、お前やるじゃねえか」
「そっちこそ。やるじゃん」
自販機に背を預け、お互いの健闘を讃え合う。
あー、暴れた後は炭酸が飲みたくなるから、コーラいっちゃお……。
「俺もコーラな」
「はいはい……いや、自分で買いなよ」
「アイドルなんだから稼いでんだろ?」
「言うほどお給料もらってないけどね……まぁ、中学生ならそこまでお金持ってないか」
私の月給は10万ちょっとくらいである。アイドルの方はね。時代が時代だから安い。物価も安いけど。
早乙女研究所ではゲッター線増幅装置の主任研究員扱いされてるので、30万くらいもらってる。
早乙女研究所って、給与面はホワイトなんだよね。ハチュウ人類に襲撃されるって言う壮絶なブラックさがあるけど。
「暴れた後に飲むコーラって、犯罪的に美味しいよね……」
「妙にウメェのは認める」
「暴れてからお風呂上がりのダッツも最高だけど、まだなんだよねぇ……」
ハーゲンダッツ、好きなんだけどなぁ。今年からなんだよね、展開……手軽に食べられるのはまだ先。
レディボーデンも好きなんだけど、撤退しちゃって今はない。しばらくしたらまた展開するけど。
唯一美味しいアイスが食べられるのは、サーティーワンだけ。それもデパートとかにしかないから中々食べれないし。
「ところで竜馬」
「あん?」
「バイトしない? 月給15万」
「マジか? 15万っつったら、おまえ、あれだぞ? 15万だぞ?」
「うん、15万」
15万が15万なのは当たり前なんだけど、まぁ、言わんとするところは分かる。
「私のバイト先なんだけど、身体能力に優れてる人が必要なんだよね。私くらいに」
「なるほど。お前くらいってなると、早々いやがらねぇな」
「とりあえず話だけでも聞いてみない? 給与に関しては昇給もあるよ?」
「だが、俺ぁ自慢じゃねえが頭は悪ぃぞ。体力だけで済むのか?」
「ハナから体の方にしか期待してないから安心して」
「そうか、ならいいんだが」
言外にいま馬鹿って罵ったんだけど、気付いてないなこれ。
「将来的には昇給もあるよ。バイクも買えるくらい貯まるかもよ」
「バイクか、へへ……」
この年代の男の子って、バイク好きだよねぇ……。
私も嫌いじゃないけど、町中だと走った方が速いからね。
ダイナミック身体能力ありきの話ではあるけども。
「じゃあ、これ名刺。今度ここに来てね。ここでバイトしてもらうから」
「おう、早乙女研究所……な。おまえの名前出せばいいんだな?」
「そうそう。じゃ、よろしくね~」
「ああ。またやろうや」
「返り討ちにしてあげるよ」
「へっ、言ってろ」
よし、竜馬の勧誘終了。
一度早乙女研究所に戻り、敷島博士の研究室にお邪魔する。
「おーい、敷島博士~。武器貸して~」
「なぬ!? 儂の作った武器を使いたいじゃと!? 今どきの若いモンにしちゃ見る眼がある! なんだ! 何を殺すんじゃ!」
「殺すつもりはないかな」
「なんじゃ、つまらん」
「でも結果として死んだならしょうがないから、殺すつもりってことでもいいのかも。これで死ぬようなら、死なせてやった方が親切だって本人も言ってたことだし」
「よく分からんが、使いたいなら好きに持っていけい。こっちじゃ」
武器庫に案内してもらう。相変わらず洒落にならないもの大量に作ってるな、この人……。
その洒落にならないものを使おうとしてる私も私だけど……。
実は今まで結構敷島博士には世話になってるんだよね。護身用アイテムとして色々借りてたから。
護身ってレベルじゃない代物ばっかりだったけど、主な使用相手がハチュウ人類だから些事だろう。
「小型の武器はここじゃ。ちょっとしかないが、好きなもんを選んでいいぞ」
「ちょっと、ね」
たしかに未来に比べればちょっとかもしれないけど、部屋の半分を埋める量をちょっとって……。
「このリボルバー散弾銃と……こっちの殺人テイザーガン借りるね」
「ほう! いいものを選んだな! そいつは装弾数は3発きりじゃが、1発で人間なんぞ木っ端微塵じゃ!」
「だろうね」
ハチュウ人類も余裕で吹き飛ばす威力なんだから、人間くらい即死だろう。
「そっちのテイザーガンは、一撃で象も殺すほどの電撃を放つ! 射程距離は20メートルちょっとしかないがな」
「十分だよ。借りてくね」
「おう、存分に殺しなさいよ。それから、出来れば写真撮って来てくれんかね」
「殺した相手のってこと?」
「ひひひ……儂は昔から、儂の作った武器で死んだやつを見るのが楽しみでなぁ。できれば、殺す前と殺す後の両方を頼むぞ!」
「死んだら撮影しとく。現像は自分でやってね」
「話が分かるじゃないか! 応援しとるぞー!」
しなくていいから……相変わらず頭おかしいな、この人。
「神隼人だね?」
「誰だ、おまえは」
「私は星野アイ。君は神隼人でいいんだよね?」
「そうだが、知り合いだったか? こんな美人の知り合いはいないと思ったがな」
中学生の頃の隼人って、比較的まともだったんだな……。
もっとやべー尖がったやつかと思って、準備してきたんだけど……まぁ、せっかくだから使うか。
「えいえい」
「ぐわっ!」
敷島博士から貰ってきたリボルバー散弾銃をぶっ放す。
ちゃんとゴム弾にしてあるので死なないから問題ない。
ショック死はするかもだけど、その程度で死ぬならゲッターチームに必要ない。
「えいえい」
「ぐああぁぁぁぁぁ――――!」
そして殺人テイザーガンを打ち込む。象も一撃で感電死させるすさまじい威力らしいね。
死にやしないんじゃないかとも思ったけど、一応電圧を下げて死なない程度にしてある。死ぬほど痛いだけだ。
「えいえい」
最後に、ポセイドンのフィンガーネットに使う素材で作った捕縛ネットを被せる。
いやほら、ポセイドンは私が乗るから、最優先で作っちゃってもいいかなって……。
「怒った?」
返事がないので怒ってないようだ。
白目剥いてるけど、俺の目の黒いうちはとかそう言うアレだと思われるので、白目ってことは同意ってことだね。
「よし、連れて行こう」
私はリヤカーに隼人を乗せると、早乙女研究所へと連れ帰った。
これで隼人の勧誘も終了。
元祖ゲッターチーム、結成だね!
「早乙女博士、2人スカウトしてきたよ。1人は後々来る。もう1人がこいつ」
「どう考えてもスカウトしてきたように見えんのだが」
白目剥いてゲロまみれになっている隼人に早乙女博士は引き気味だった。
なんでか知らないけど、スタンガンとかで感電した人って吐くんだよね……。
「ゴム弾を打ち込んで、テイザーガンで感電させてから捕縛して連れて来ただけだよ?」
「それは普通、拉致と言うんだが」
「じゃあ、拉致って来たよ。どうせロクでもないやつだから、大丈夫大丈夫。はいこれ」
「うん? これはなんだね? ……大臣暗殺計画?」
「こいつ、学生運動に参加して、最終的に総理大臣殺すつもりだったみたい」
荷物検査したんだけど、懐からとんでもない計画書出て来たんだよね。
一見してまともだったけど、内心はぜんぜんまともじゃなかったようだ。
まぁ、イタイ妄想として纏めた計画かもしれないけど、中身が妙に現実味帯びてたので、ガチっぽくて……。
「頭のトビっぷりも抜群だし、身体能力もかなりのものだよ。ゲッターロボにはこれくらいぶっ飛んだやつじゃないとね」
「儂は人選ミスを疑っておるがな……」
「えー? 私の見る眼を信じてよ」
「いや、儂自身の見る眼を疑っておってな……」
「そう? 早乙女博士って見る眼はある方だと思うけどな」
「儂もそう思っていたが……どうだろうな……まぁ、乗せてみてから考えるとしよう……」
はぁー……とか早乙女博士が重い溜息を吐いた。疲れてんのかな?
「ああ、そうそう。戦闘用ゲッターロボの仕様書を纏めておいた。見ておいてくれ」
「はいはい」
渡された仕様書を見る。以前の世界の初代ゲッターと遜色ないスペックに見える。
まぁ、技術的限界ギリギリまで性能を追求しまくればこういう数値になる、って感じだ。
要するに、人間の方は一切考慮してない感じのスペック表となる。
「ところでこれ、どういう意図でスペック決めたの」
以前までは、とりあえず性能を追求しまくった結果だったはずだが……。
まだ、恐竜帝国の脅威は知っていても、そこまで危機感を抱いているようには見えない。
もうちょっとパイロットのことを考えたスペックになってそうなものだけど……。
「うむ。アイくんはゲッター3のパイロットだったと聞いておる」
「そうだよ」
「と言うことは、アイくんに合わせて作ればよい」
「ああ、なるほど。だから身体測定されたんだね」
「うむ」
私に合わせて作ったらたしかにこうもなるかな……うん、納得……。
でも大丈夫? 身体測定のデータ見たけど、人間とは思われぬ数値が乱舞してたよ?
って言うか、私の握力って200キロもあったんだね……知らなかった……。
「しかし、アイくんの身体能力が異常な数値になっているのだが……なにか、危険なクスリをやっているなどと言わんよな?」
「進化を促す危険な光線ならやってるけど、クスリはやってないよ。あと、スカウトしてきた2人は私よりも上くらいの身体能力だから」
「なんと、凄まじい……期待できそうだな」
まぁ、体格差の分って感じで、そこまで劇的な差はないんだけどね。
ゲッターチームは結成され、戦闘用ゲッターロボの開発は着々と進んでいく。
原作開始から遥か前に、ここまで事態が上手く進んでいる。
今度こそ生き延びれる気がする。純ゲッターの世界で生き延びれたことは今までない。
なにか変わるかな? なにか知れるかな?
楽しみでもあり、怖い気もする。私の生の真実を知りたい。
「おう、アイ。博士が準備しろだとよ」
「あいあい」
いまからプロトゲッターのテストフライト。一応、戦闘用への改修は済んでる。
出力の高い炉心に換装もしてあるし、各部の強化も完了。武装はまだないけどね。
「なんでこんなことに……」
ブツクサと文句言う隼人。強引に勧誘したから、まだちょっと反発されてる。
まぁ、ゲッター線に魅了されだしてるから、そのうち静かになるだろう。
いつも私服で乗ってたけど、さすがにテストなのでスーツを着用。
めんどい各種のチェックを済ませ、ゲットマシンに搭乗する。
「久し振りだな、ゲッターロボ……」
見慣れたデザインのコクピット。なんだか落ち着くような気すらする。
ゲッター線の力強い胎動を感じる。安心感すらあるような、そんな感じ。
でも、ゲッター線の思い通りになんか、なってやらないよ。
「よし」
私は気合を込めると、ゲットマシンを発進させた。
ちょっと飛行した後、丁寧に丁寧に合体シークエンスを進める。
ゲッターロボのテストなんだから、そりゃ合体するよね。
ゲッター1への合体シークエンス。宇宙開発用プロトゲッターでは成功させている。
戦闘用ゲッターではまだだが、内容自体は変わらない。炉心出力が上がってるので、上げ過ぎないように気を付けるだけ。
ベアー号とジャガー号が接続し、ゲッター1の胴体と脚に変形する。
そして、イーグル号がゲッター1の頭部へと変形すると、そこへとジャガー、ベアー号が捻じ込まれ。
「え」
ゲッター線の輝きを眼にして、私は意識を失った。
「ん……あれ?」
目が覚めれば、そこは見慣れた私の部屋だった。
施設を出て、借りた賃貸の部屋。女の身だから、それなりにしっかりした集合住宅。
べつに暴漢に襲われても負けるわけないんだけど、下着ドロとか困るからね……。
私の部屋はどの人生でも似たようなインテリアにしている。
インテアリアに含まれないものは割と変わっていたりするけどね。
最初の頃は、雑然と研究資料を置いたりはしていなかった。
今は大量の研究資料とかがあって、一見すると散らかった部屋にも見える。
「……私?」
そして、机に向かっている後ろ姿。
思わず声をあげると、なにかの資料を眺めていたその人が振り返った。
それは、疑いようもなく私だった。
今の私より少し大人で、白衣を着ている。
その下は、アイドルらしい清楚で落ち着いた印象を与える私服。
ぎっ、と音を立てて椅子の背もたれに体を預けた。
「アイ、どうしてここに来たの? と言うか、いつから居たの?」
「どうしてって、どうしてだろ。今さっき目が覚めたんだけど」
「まだ、来るべきところじゃないよ。ううん、まだじゃない、永遠に来るべきじゃないところだよ、ここは」
「永遠に?」
感じるから、分かる。ここは、ゲットマシンの中だ。
膨大なゲッターエネルギーの鼓動。信じられないくらいに強大なパワーを感じる。
真ゲッタードラゴンと真ゲッターロボの炉心を直結して、ダブルシャインスパークを放った時でようやく比較になるほど。
状況からして、戦闘状態ですらない。平常状態で、暴走同然の増幅をしたよりも上のパワー。
まさかと、私は周囲を見渡す。感じる、分かる。
この膨大なゲッターエネルギーの流れの中に、私の見知った鼓動を感じる。
「ここって、まさか、ゲッターエンペラーの」
「そ。ここはエンペラー参號艦の中だよ」
ゲッターエンペラー。私の知る、ゲッターロボの到達点。そして、通過点。
未だ見ぬ進化の果ては、もう誰にもわからないが。
「どうして? なんで? なんで私はここにいるの?」
「それは分かんない。でも、分かることはあるよ」
「それは?」
「私はこっちに来ちゃいけなかった。気付いた時にはもう遅かったけど、まぁ、取り返しはつくからね」
「どういうこと? 説明してよ。ゲッター聖ドラゴンじゃないんだからさ」
「あまり時間がないから詳しくは無理だよ。アイ、進化の道筋は1つじゃない。いくらだってある。到達点だって、1つきりじゃない」
「え? いや、それはそうだろうけど、でも、ゲッターロボの現状の到達点はエンペラーでしょ?」
「そう、エンペラーに辿り着く。それは自然なことだよ。始まりの形が同じだからね。なら、始まりの形を変えれば、べつの到達点に辿り着く……そう思わない?」
「それは、まぁ、そうなのかな?」
ゲッターロボの始まりが初代ゲッターで、ゲッターロボGに、そして真ゲッターへと進んでいく。
ゲッターロボGと、真ゲッターロボ。この2つが強大な進化を繰り返すことで、エンペラーへと至る。
ゲッターロボGはゲッター聖ドラゴン、あるいは真ゲッタードラゴンへと進化し、そしていずれかのタイミングで真ゲッターロボと融合する。
その融合形態がゲッター天であるという推測もあったけれど、その真実は分からない。
「アイ。サウンドゲッターも、サイコゲッターも、無駄じゃないよ」
「サイコゲッターはどう考えても失敗作でしょ」
「失敗から成功を見出すことも出来るでしょ?」
「たしかに失敗は成功の母って格言もあるけどさぁ……」
「ああ、もう時間がない。どこから説明すればいいのかな、ほんと……えっと、アイ、ゲッター線にヤキ入れる方向性は間違ってないよ」
「え? マジ? ゲッター線って闇のマゾなの?」
自分で自分への怒りを育てて、自分の力で自分を殴らせるとか拗らせすぎでは?
「そう言うことじゃないんだけど、そう言うことでいいよ。アイ、なにもかも無駄じゃない。ぜんぶ意味がある。始まりを、始点を変えるんだ」
「ゲッターロボの開発なら進めてるよ。ゲッターロボGを超える性能のゲッターロボを13歳の今の時点で作れてる」
「それじゃダメ。アイの持ってる知識は早乙女博士由来で、プロトゲッターを祖として、初代ゲッターを基礎にしている。その始まりじゃダメなんだ」
「え!? いや、それどうしたらいいの!?」
ゲッターロボをどうこうしろって言うなら、早乙女博士の影響はどうしても消し切れない。
どんなゲッターロボだって、早乙女博士の影響がある。ネオゲッターロボは隼人が作ったけれど、隼人は早乙女博士の直弟子でもあるのだ。
もしも早乙女博士の影響が一切ないゲッターロボとなると、もう完全に別物になってしまう。
「あ、まさかダークネス!? あれって敷島博士が作ったんだよね!? 考えてみれば武蔵が女だし、私とポジが一緒だし! それにあれって、アンチゲッター線で動いてるわけだし!」
そうか、そう言うことなら納得できる。
そう思ったのだけど、アイは首を振った。
「たしかに、その考えは間違いじゃないけど、でも、正解とも言えない」
「え? えーと……デボリューションの方のアンチゲッター線ってこと?」
「アイ、1つ考えて欲しいんだけど。ゲッター線にヤキを入れるのって、なんで?」
「そりゃ、ゲッター線がむかつくからでしょ」
人をこんな目に遭わせておいてなにもされないと思ってるなら思い上がりが過ぎるのでは?
たとえ相手が誰だろうと、舐められたらブチのめすのがゲッターチームだ。ゲッター線であっても例外じゃない。
「そのむかつくってどの程度のことを言うの? なにを捨ててでもゲッター線に思い知らせてやりたい感じなら、アンチゲッター線を使うのは間違いじゃないと思うけどね」
「それは……」
それは、違う。違うと、思う。
今まで深くは考えていなかったけれど。
ゲッター線に思い知らせてやりたいとは思う。
でも、自分の全てを懸けてでも、と言うほどではない。
自己保身とかそう言うことではなくて。
なんと言うか、気に入らないけど、否定したいわけじゃないというか。
「アンチゲッター線を使えば、ゲッター線と敵対するのは宿命だよ。お互いの存在を全否定して、お互いをこの宇宙から抹消するまで争うことになる」
「それは……それは、違う。そこまでしたいわけじゃない」
「そうだよね。私もそうだもん」
そう言って、白衣を纏った私は苦笑した。
「アイ、ゲッター線にどう向き合うのか……そして、ゲッター線の行き付く先が、本当に1つしかないのか……大いなる意志の戦いに、本当に1人の個は必要ないのか……殺し合うことしか、道がないのかも……すべて、あなたにかかってる」
「え?」
「私は、今でも信じてるよ」
「……なにを?」
「ゲッターは、絶対悪なのかもしれない……だけど、それでも……そうだとしても……ゲッターロボは、正義のスーパーロボットだって……ずっとずっと、信じてる」
「正義……」
「私はエンペラーの記憶から造られた人造人間だから、厳密にはあなたじゃないけど。それでも、気持ちは同じだと思う」
「……うん」
「抗って。超時空アイドル、星野アイが。αナンバーズが、ゲッターチームが……諦めるわけには、いかないでしょ?」
「……そうだね! うん、とことんまで抗って見せる。どうしたらいいのかは分かんないけど、でも、ゲッター線に使われるのは癪だから。私がゲッター線を使ってやってるんだって思い知らせてやらないとね」
「そう、その意気だよ、アイ……そろそろ時間だね」
「へ?」
「手」
そう言って指差す先は、私の手。見れば、私の手はなかった。
「えっ、あっ、ちょっ、おー!? ええ!? て、手がないんだけど!?」
「元の時代に戻ろうとしてるんだよ」
「じゃ、じゃあ、最後に教えてよ! 私が目指すべきゲッターってなに!? 早乙女博士のゲッターロボじゃダメなら、何を目指せばいいのかを!」
「――――恐竜帝国」
「え?」
どういう意味かを問い質そうとして。
その時にはもう、私はゲットマシンの中で操縦桿を握っていた。
「え? あれ?」
『合体成功だ! よくやったぞ、アイくん! 竜馬! 隼人!』
「へっ、こんくれぇ楽勝だってんだ!」
「フン……」
モニターに映る竜馬と隼人。そして、早乙女博士。
機体は、ゲッター1の形態をとっている。
私が未来に行っていたのは……ほんの一瞬だったのか?
漫画の真ゲッターロボの時と同じことが起きるなんて……。
帰ったら炉心を徹底的に調べないといけないかもしれない……。