転生って、生まれた瞬間から転生したと気付いたパターンや、突然に憑依したパターンとがあるが、俺の場合は何とも曖昧なものだった。
子供心に、色んな既視感や違和感を持ちながら、転生やら水星の魔女の舞台だの整理がついたのは、小学生に入る前。
大人の精神で赤ちゃんプレイや、ヤバい状況で唐突に目覚めるよりはマシだと思うが、状況の整理が追い着かない。
「なるほど、母は愛人だったな」
ラウダ・ニール。それが新しい俺の人生。
俺の家はいわゆる母子家庭。
生活の中に父親はいないが、生活は苦しくない。むしろ裕福だと言えるだろう。
父は愛人への生活費を欠かすことは無かったようだ。
そんな環境の中、俺はどう生きるべきかを模索する。
ラウダと言えば、兄のグエルが大好きな変態ブラコン。「落ちろ水星女ぁ!」で、コアなファンを獲得したキャラだ。
まあ、俺もグエルは好きだよ。だが、俺がラウダのようになれるかと言えば断じてない! 奴の兄への執着は、絶対に変態の領域だと思う。
話が逸れたが、やがては父のヴィム・ジェタークやグエルと会って、グエルを補佐する立場になるのだろう。
しかしだ。別に兄より優れた弟がいても構わないだろ?
折角の転生生活。主役を目指したって良いじゃないか。
俺は水星の魔女の舞台を知っているが、それでも一期までしか記憶がない。多分、二期が始まる前に死んだのだろう。
あんな終わり方をしたものだから、凄く続きが気になる。この状況だとなおさらだ。
だが、分からないものは分からない。それでも、色んな考察は見ていたので、そこから予想しよう。
うん。ジェターク社、ヤバいよね。CEOが死んだ上に、ジェターク社のMSをテロリストが使用。シャディクの手で完全に踊らされ、未遂とは言え総裁殺しの罪はジェターク社に擦り付けられるだろう。父を殺したグエルも闇落ちする可能性が大。
これは見切りをつけた方が良いかもしれない。少なくとも最低限、一人でも生きていけるスキルを身に付ける必要がある。
そんな訳で、この世界の事は知っておくべきだし、MSの操縦や工学系の技術には興味があったので、勉強だけは真面目にした。
幸い、元からあった知識に加え、地頭に優れているのか、柔軟な子供の脳みそは吸収に優れているのかは分らんが、自分でも驚くほどの速度で知識を吸収していった。
周囲に天才だと持てはやされ、多少いい気になりながらも、この世界の歴史やMSの構造を勉強する。
これからどうするか。MSの開発には興味があるが、やはりパイロットへの道も捨てがたい。
そんな中、母が雲隠れして、俺は父に引き取られる事になった。
まあ、今の俺なら何とでもなる。無理に家や家族に縛られる必要も無い。好きにやらせてもらおう……そう思っていた。
「俺はグエル、よろしくな」
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僕の名前はラウダ・ニール。
ジェターク・ヘビー・マシーナリーの御曹司、グエル・ジェタークの弟だ。
兄さんを支える事を生き甲斐にする元気な10歳児。
即落ちしてんじゃねえかって? 否定はしないよ。
一応は抵抗した。頑張ったんだ。これは僕の僕だけの物語だと。
でも無理だった。つーかさ、何で抵抗する必要あるの? 兄さんを支える以上の幸せがあるとでも? 無いでしょ。
そんな訳で、兄さんに輝かしい人生を送ってもらうために、兄さんの力になり、兄さんの障害は排除する必要がある。
最大の障害は水星女だ。あの女が来てから兄さんの人生はおかしくなる。
だから、奴が来るまでに対策を練る必要がある。
要は、兄さんが水星女に勝てば良いのだ。
そのためにやるべきこと。
兄さんに水星女より強いパイロットになってもらう……って、ふざけるな! 兄さんが水星女に劣るとでも!?
絶対にあれは機体性能だ! そうに違いない! エアリアルってチート過ぎるだろ!
と、とにかく、エアリアル以上のモビルスーツを用意する……のは無理でも、性能差を埋める必要がある。
そのためにも、ジェターク社のMS開発の状況を調べてみたんだが……
あれ? ジェターク社。すでにヤバいんですが?