助かります。
「機体番号MG-0011X1、操縦者グエル・ジェターク、同乗者ラウダ・ニール。着陸の許可を求む」
僕たちが来ることは事前に伝えているが、向かう先はジェターク社のCEOがいる場所であるため、少し離れた場所で着陸し、コクピットの中を確認される。
それを終えると、MSハンガーに止めてから、父さんの元へと向かった。
父さんは、最近は地球にいる期間が長く、本社に戻っても直ぐに地球へ向かっている。
「ここも変わったよな」
「うん。質の面では十分とは言えないけど、これなら飢える事は無いだろうね。もう、難民とは言えないよ」
「都心部の連中と上手く行くと良いな」
「食糧生産を上げて、都心部に売れるのが理想だけどね」
広がった農地には、芋と豆以外の野菜も植えられている。しっかりと自活できているようだ。
学校も作り、教師は雇わず、ジェターク社の中から教員を選んで教えている。まあ、出世競争に負けたタイプのオジサンが多いけど、そこには触れないでおこう。
ただ、農業や畜産が分からず、知識が理系に偏ると言う問題が発生しているが、この子たちの中から、いずれはジェターク社で雇いたいと言う狙いもあるし、現状は放置である。ただ、早い内に農業知識は欲しい。
だが、そんな先の事より、取りあえずは目先の事。
今回は、この国でジェターク社直轄のパーツ工場を作るので、兄さんが呼ばれたんだよね。
ちなみに、難民だった人を雇う予定はない。もう少し都心部に建設して、以前から住んでいた人を優先して雇う。
あまり、難民にばかり肩入れしていたら、住民の対立が生まれるので、それは拙い。むしろ、難民を頑張って受け入れたから、ジェタークが来て仕事が増えた。そんなシナリオを目指している。
そんな会話をしながら、父さんと久しぶりの再会を果たす。
「2人とも、元気そうだな。もう直ぐ進学だが、勉強はしているだろうな?
コネ入学だからと、遊んでばかりで恥をかかせるなよ」
大丈夫。僕も兄さんも成績は良いよ。アス高で無くても普通に進学は出来るし、アス高でも上位間違い無し。
「父さん、また痩せました?」
兄さんが心配そうに声をかける。父さんは、地球に来てから随分と痩せた。
だが、本人に言わせれば、前が太っていただけで、今の方が適正だそうだ。
言われてみれば、痩せたと言うより、引き締まった感じだ。前よりヤクザ度がアップしている。
「まあ、面倒な事は少なくないがな」
ジェターク社で開発を始めた時にいた難民は、今では難民と言えない状態になったが、その噂を聞きつけて、別の所から難民が押し寄せて来るそうだ。
これ以上は無理と、政府が食い止めようとしているが、止めるのも難しく、おまけにそれをジェターク社の指示だと思った活動家がデモを起こす事もあるらしい。
「デモ、広がっているんですか?」
「いや、ここの連中はウチの味方だ。それに、元から居た、この地の住民もこれ以上は歓迎はしていないからな」
「それが何で、デモになるんです?」
「その手の行動が好きな奴は何処にだっているさ」
「医者や弁護士ですね?」
「それに教師だ」
苦笑しながら付け加える。
その手の人が多い職業。だから、教師は雇わないんだな。まあ、読み書きや計算は誰でも教えられるし、普通の教師に
「まあ、その辺はどうでもいい。問題はテロリストの便乗だ。
そして、この国の軍が、早い軍の展開が求められている事だ」
「ギャプランを購入したいと?」
「ああ、だが、あまり金がない」
この国には金がない。それは広大な敷地を難民に解放していた事からも明らか。
そして、ギャプランは高い。多くをディランザのパーツと共有しているとは言え、装甲は当然ながら、変形機構の独自パーツや、独自の推進機。おまけに専用の装備。
ディランザと違って数を見込めないので、少数生産のため割高になってしまう。
これで、性能が高ければ良いのだが、戦闘能力はディランザの方が上。まあ、ディランザの性能はピンキリなんだけど、ギャプランと同じ値段の範囲でセッティングしたら、もう最高値なんだよね。
つまり、ディランザを全力で金をかけた状態。僕の専用機と同じくらいかな。それを超えるには、兄さん用の特殊セッティングしかない。
「だから、生産数を上げてコストを抑えたいが、宇宙用は出来るだろ?」
「出来ますが、無理でしょう」
父さんが言いたい事は分かる。宇宙でも使えれば、そっち方面で売れると思うからね。
でも、無理だろう。
「ギャプラン、可変MSは、戦略レベルや作戦レベルで要求されるMSです。今の宇宙で、そこまで考えている軍は存在しませんし、必要になるとも思えません」
戦争には段階がある。戦略、作戦、戦術、戦法だ。
例として、一年戦争をあげると、戦争が起きた理由は連邦が元のままの秩序の維持で、ジオンは独立して新たな支配体制。相容れない主張が衝突したから戦争になった。
その目的を果たすため、戦略は目的に沿ったもの。つまり、両国一致していて、相手側の首脳を引っ張り出して条約を結ばせることだ。独立や維持と言った目的そのものを指す場合もある。
その戦略を実現するために作戦が展開され、コロニー落としや各サイドへの攻略作戦。
もっと単純で分かりやすいのが、連邦だ。相手本拠地であるサイド3まで行くのにソロモン、アバオアクーと言った各要塞を攻略していくのが作戦。艦隊を派遣したりソーラーシステムの準備がそれに当たる。
戦術は先に言った要塞を攻略するための行動。各艦が決められたポイントへの進軍。ブライト艦長の仕事はここ。艦での砲撃も含まれるし、どこで、どのMSを発進させるか。弾薬を使い果たしたMSの補給タイミングなど。
戦法は、直接戦闘の実行能力と見て良い。アムロの行動がそれだ。彼の場合はいささか、そのレベルを超えている気がしないでもないが、彼の行動を作戦レベルに組み立てたら、逆にアホである。だって、「敵の司令官が乗ってるビグザムが出てくるだろうから、MSで落としてね」なんて言って来たら殴るだろう。
ここで、可変MSの価値だが、作戦レベルなら分かる。部隊の展開速度に影響があり、具体例ではソーラーシステムの防衛してから、照射後は速攻でダメージを受けた場所を殴りに行けなんて作戦が建てられる。
しかし、ブライトが手元に可変MSがあるからと、どこで切れば効果的かなんて、どこだろうと大して変わらんで一蹴である。
更にアムロがガンダムより少し弱い可変MSを与えられても、どうしろと……まあ、彼は計算外の行動をしそうだから、カイやハヤトにしよう。変形するガンキャノンだ。それで戦果が変わるかと言えば変わらない。
ギャプランが求められているのは、孫子の兵法で言うところの、『己を知り~敵を知り~』の情報収集や、『兵は拙速を尊ぶ』でいう迅速な戦力展開だ。前者は戦略、後者は作戦レベルの話。また、情報収集からの即時作戦行動に移ることが出来る戦闘能力が武器だ。単純にMSなどの敵戦力を倒すことを重視するならギャプランは無駄な性能が多い。前も行ったが、性能を上げるには無駄を削ぐことが重要。
この国は、唐突に点火しかねない場所が複数あるので、その気になればミサイル並みの速度で移動できる、ギャプランの即時展開能力が目当てなのだろうが、宇宙で素早い展開能力を求めている組織はない。
「それに、単なる長距離移動ならブースターを付ければ良いだけですし」
空気抵抗関係ないからね。速度をアップしたいなら、それで良し。
そもそも、MSに限らず、兵器と言うのは目的があって開発するものだよ。
地上では、偵察、展開速度、移動中の地形によるロス、これらに加え、危険地帯にMSを配備する場合の良し悪しがある。地球では感情問題があり、危険だからと配置すると、逆に刺激しかねないからね。配置するにも見えない場所の方が良いケースもある。
このように、国防と言う当然の戦略上で価値があるから欲しがるが、宇宙ではそれが無い。
「売り上げに貢献という方法なら、アスティカシア入学後に兄さんに乗ってもらう手がありますが?」
「それはダメだ。
兄さんなら、いいハンデだと思うけどね。
「俺がダメなら、ラウダに任せては?」
「ラウダでは人気が出ん」
今、酷い事言われた気がするけど?
いや、兄さんが申し訳なさそうな顔をすることは無いよ。
「開発しろと言われたらしますけど、期待はしないで下さいよ」
「ああ、それで構わん」
宇宙用にするのは簡単だ。脚部とムーバブルシールドを元のギャプランに戻せばいいだけだ。
いや、ムーバブルシールドは、格闘戦用にビーム砲の威力を落としてでも、ビーム刃を仕込もう。
とりあえず、ムーバブルシールドと脚部の交換パーツを制作する必要がある事を伝えると、直ぐに了承の返事が出た。
「では、早速だが、ラウダは宇宙へ戻れ」
「分かりました……って、僕だけ?」
「交換するパーツが出来るまで、グエルはいらないだろう?
グエルには仕事もあるし、会いたがっている奴も多いし、しばらく居るといい」
はああぁぁぁっ!? なに言ってるのかな? 僕と兄さんを引き離す? 言って良い事と悪い事の区別もつかないの? 暗殺しちゃおうかな。
「俺も会いたい奴は多いですし助かります。頼んだぞラウダ。楽しみにしてるから」
「任せてよ。満足できるよう頑張るから」
兄さんの頼みなら仕方がない。最高の機体にしてみせよう。
でも、父さんの望みは叶わない。だって、どう考えても需要が無いし。