ラウダの野望   作:山ウニ

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今回も独自設定てんこ盛り


希望に満ちた入寮日

 

兄さんと僕は、入寮初日から寮長、パイロット科の3年生の呼び出しを受けていた。

ディランザの胸部の上で、長々と放置プレイした挙句に呼び出しとは、実に良い度胸だ……と言う訳ではない。むしろ、逆である。

そもそも、アスティカシア学園の校風が、弱肉強食と言えば綺麗ごとと思えるほどに腐っている。

弱肉強食とは、自身が強者だからこそ、弱者を虐げることが出来るはずだが、残念ながらアス高のそれは、自身の力より、その者が持つ背景の方が重視されている。

僕に言わせれば、虎の威を借りる狐の集まりなのだ。

そして、僕たち兄弟は、最も強力な(父さん)の威を借りている狐だと認識されている。言っとくけど兄さんは獅子だからね。

 

「正直に言おう、君たち兄弟が何をしようと、それを注意できる存在は寮にはいない」

 

「正直すぎます」

 

兄さんが絶句してしまっているので、僕が代わりに受け答えする。

まあ、その方が彼も楽だろう。

どうも、兄さんが明らかに練達した技術を見せつけた挙句に、MSを降りてからの最初の挨拶が好青年っぽい感じだから、指導なんてどうするんだよ? って感じで相談し合った結果、この呼び出しって事か。まあ、次期CEOが好青年かつ操縦が下手というのが理想だったのだろうが、そうはいかなかったね。

まあ、いくつか確認したい事もあるし、先ずはそれをやってしまおう。

 

「確認ですが、その存在には寮生以外も含まれていると?」

 

「その通りだ」

 

嬉しそうに返事するなよ。まあ良い。取りあえず寮を支えるスタッフも同類と。

寮内では兄さんは王様のように振舞っても何の文句も出ない。最初からこれだと面白くないな。

僕としては、頑張ってマウントを取ろうとする先輩や、何とか先輩らしく振舞おうとしているのを想像していたので、そんな人たちの脳を焼いて行く兄さんを見たかったのだが。

 

「それで、地球寮との関係は?」

 

ジェタークが地球に手を出すシナリオがスタートしたのが3年前。その時点から、アス高のジェターク寮生には、アーシアンを差別しない、関係を改善させる方向で進むように要望が出されていた。

まあ、指示ではなく要望で、強制ではない。可能ならばの範囲で、悪化は望まないが、絶対に良い関係を築けとも言われていない。

そもそも、現在の地球寮生の背景は、ジェターク社とは無関係である。同じベネリットグループなので、全くでは無いが、彼等を推薦した会社は、ベネリットグループの最下層。だが、アーシアンの中では富裕層に当たる。

そして、ジェタークが手を出している地域と住民はアーシアンの貧困層で、アーシアンの中では別世界の存在だ。

だから、無理して関係の改善を図る必要は無いが、地球でのジェターク社の評判に関わるので、悪評は避けたい。だから、現状は確認しておこう。

 

「ああ、それなんだが」

 

どうも、それを説明したかったらしい。寮長の説明を黙って聞く。

元々、ジェターク寮と地球寮の関係は悪くは無かった。これは言い訳では無いだろう。

そもそもアス高とは虎の威を借る狐の集まりだ。そこはカースト制度とも言える力関係を構築し、その中で生活している。

そして、目の前の情けない上級生を見ると勘違いしそうではあるが、ジェタークはカースト制度の最上位に位置する。それに対し地球寮は最下層、いや、ド底辺と言った方が正しいか。

以前から、ジェタークにとってはアーシアンは取るに足らない存在であり、迫害するまでも無く、地球寮に嫌がらせをするのは、カースト制度の中級か、それ以下の存在になる。

つまり、御三家やブリオンは、地球寮への嫌がらせには加担しない。ただ見下していただけ。

 

それを悪くなかったというのもアレだが、地球寮の生徒からしたら、声をかけるのは怖いが、イジメっ子ではないので、比較的に安心できる相手だったらしい。

これは向こうにも確認すると、異なる答えが返ってくる可能性はあるが、まあ、間違ってはいないだろう。

 

それでも、例の要望が出たせいで、どう接すれば良いか分からなかったらしい。今までの関係を急に変えろと言うのも確かに酷だ。

そこで、当時の在校生は話し合った結果、今度入学する新入生に任せようという事になった。

それが、目の前にいる寮長、今の3年生の世代。

 

「まあ、突然の話だからね。それで、向こうと話をしたんだ。同じクラスだったしね」

 

地球寮の現寮長で、同じくパイロット科の3年生。ちなみに向こうも困惑している状態だった。

アーシアンとスペーシアンの関係は、入学前から知っているし、上級生も困惑している。

しがらみの無い彼等個人としての関係は悪くない。むしろ友人と言える関係を構築しているそうだ。

だが、寮での交流となると難しい。当時の上級生には、直接的な嫌がらせはしないものの、露骨に見下す態度を取るものが少なからずいたようで、何かの切っ掛けで爆発しかねないと判断した。

現状維持どころか、関係を悪化させましたなど、体裁が悪すぎる。

 

「だから、先輩たちが卒業するまで、無理に交流はしない方が良いと判断した。

 個人間の関係は好きにすれば良いし、幸いだけどディランザがあったから、交流とは行かなくても、装備の貸し借りで、行き来する事もあるよ」

 

寮長たちが入学したタイミングで、父さんはパイロット科の人数分のディランザを送っている。ジェタークと地球寮の分を。

父さんからすれば、ジェタークの分は従来の投資で、地球寮の分はナワバリの主張だろう。だが、これが幸いした。

地球寮は、その名が示すように、企業単独の寮ではない。ちなみに、アス高において、寮は寝食を共にするだけでなく、合同で作業するチームのことになる。

同時に、複数の企業が合同で何かを行うには、普通なら問題がある。

特許を始め、企業秘密の事だ。MSは工業製品であり、重要な部品は中身を見られないようにブラックボックスにする。このブラックボックスだが、開けようと思えば開けれるが、開けた瞬間に分かるよう仕掛けが施されている。メイド・イン・USAの兵器を購入した場合と同じ仕組みだね。

そして、開けた場合は多大な損害賠償が請求されるようになっていて、その金額は一学生が払えるようなものでは無い。だからこそ、アス高はもしもの時の賠償を請求する相手である推薦する企業が必要なのだ。

そうしないとスパイ天国になるからね。ちなみにスパイと言っても、どこぞのメカニックのような政治的な奴ではなく、技術を狙う方ね。

だけど、本当に怖いのは狙っていないのに、ブラックボックスを開いてしまう事だ。不慣れな作業者に古いMSでは、それがありかねないが、ワザとじゃないと言っても、許されるわけがない。

 

だから、それまで地球寮には、寮が所持するMSは無かった。選ばれたではなく、寄せ集めの学生では、預けるリスクが多すぎるから。

入寮するパイロット科の生徒が持ち込み、その生徒が責任を持って管理する必要があった。

そこを、父さんは与えた。ディランザは分割したパーツの集合体なので、ブラックボックスはパーツの中にある。

間違っても、そのパーツを分解する必要は皆無。パーツ自体は小さいもので小型の冷蔵庫くらいで、大型でもバスのサイズくらいだ。不調があればパーツごと交換すれば良い。

 

そのパーツが手元にない場合は、互いの寮に借りに行くくらいの行き来は普通に行っているらしい。

これは朗報だ。ものの貸し借りは、互いの信頼関係が無ければ成り立たない。

借りたら必ず返す。途中で悪意ある嫌がらせをしない事が、お互いの間で出来ている。

 

つまり、最低限の舞台は整えたから、後は任せるということだ。

それだけ分かれば地球寮の事は十分だ。むしろ頑張ってくれたと思う。

その後も、いくつか質問をした後、部屋で兄さんと相談する事があるからと言って、寮長には退出を願った。

 

「それで、兄さんはどうしたい?」

 

「どうって、お前はどう思ってるんだ?」

 

「兄さんが思っていた世界は、この学園には無い。

 地球で出会ったような、兄さんを鍛えてくれるような人はね」

 

父さんが地球で雇っている人の中には、兄さんに対しても、遠慮しないで叩きのめしてくれる人もいる。

それを兄さんが望んでいるとしても、立場的には勇気のある行動だ。

でも、彼等は気に入らなければ転職できる。その自由さが無いのがアスティカシア学園の最大の問題点だ。

自分だけでなく、推薦してくれた人、ほとんどが家族だろう。それが人質に取られているも同然だから、学園は変わらない。何かするにはリスクが大きすぎるのだ。

今の寮長は、それを教えてくれただけでも、感謝する価値がある。

 

「兄さんは、自分を磨く事を願っていたんだろうけど、兄さんより強い人に鍛えて貰う線は期待できない。

 だったら、別の方法しかない」

 

「他に手があるのか?」

 

「自分を追い込む事。そんな立場に立つ。

 あの話だと、兄さんは王様扱いだからね。でも、王様だって色々いる。名君、暴君、賢王、愚王、色々な王がいる。兄さんが好きな王様になれば良い」

 

「具体的にどうすれば良いんだ?」

 

「簡単だよ。兄さんがなりたい自分でい続ける。兄さんが自分を嫌いになるような事はしない」

 

兄さんの魂は高潔だ。その魂に従えば良い。

兄さんは、自然と惹きつけ、人を率いていく。結局のところ、兄さんは王になるしか無いんだ。

だったら、ダメな王様にならないよう戒めて、偉大な王になればいい。

 

「先ずは、あの寮長のこと、どう思った? 兄さんを、僕なんかを後輩に持って?」

 

「大変だと思う。不満はあるけど、向こうの立場を考えたら、仕方がないって」

 

「寮長を続けたら、これからも大変だよね」

 

「そうだな……ああ、確かにそうだ。俺たちに指示をしなければならないなんて冗談じゃ無いだろうな」

 

兄さんの目に力が蘇る。

 

「だったら、楽にしてやろうか? 幸い、この学園には特殊なルールがある」

 

「ああ、決闘を申し込むぞ。寮長の座を要求する」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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