アスティカシア学園は一応は高校なので長期休暇が3回ある。
まあ、最後のは進級が絡むので、忙しいのだが、後の2つは寮で合宿やイベントを行うところもあるそうだ。
まあ、里帰りをする生徒も多いので、参加者は限られているみたいだけど。
それとは別に、新入生が入学して1か月くらいで、1週間ほどの連休がある。ほとんどは新入生の再教育や親睦会なんかをするらしいのだが、それを寮長になった兄さんが仕切ろうとしている。
そのお題が、『全員で地球に行こう、ちなみに地球寮も誘おうぜ』と言うものだ。さすが兄さん、スケールが大きいよ。
ちなみに、旅費は全て
でも、
その利益ってのが、地球で働ける人材の育成と確保。
地球で活動するのに、足枷となるものがある。メンタルと重力だ。
メンタルは、安定した温度を始めとした作られた環境に慣れた者にとって、地球の自然な環境での生活はストレスになる。更に、スペーシアンとアーシアンの対立が生んだ価値観が邪魔をするものが大きい。
ぶっちゃけ、地球で働くと体調を壊すものが少なからず出てくるのだ。しかも、アス高出身者に多い。
まあ、あんなアーシアンを自然に見下す環境にいて、卒業後に地球で働けと言ってもね。
外国人差別をしていた人間が、海外で働けと言われるようなものだ。自業自得とは言え、それで体調を崩したら会社としてはマイナスでしかない。
そして、重力に関してはそのまま。
プラントの中でも重力区画はあるが、そんな場所で重機の使用は限られている。
装甲の付け替えや、巨大なパーツを組み込む時は、無重力空間で行うので、その手の機器は重力区画には置いていない。
寮で使用する学園クラスの設備では、完全な重力下で全ての作業をすることは無く、両方を使い分けて作業している。
同時にこれは宇宙進出に成功したスペーシアンが地球に住んでいたアーシアンより技術的な優位を達成した一因でもある。無重力空間の使用は、巨大な工業製品を作るのに非常に有益だった。
だが、逆に置いて行かれた地球の環境下での作業は困難で、それをでもやらねばならないのが現在のジェターク社である。
これらで困っていると愚痴を聞かされていたので、兄さんの提案を実現すべく、この活動を通して、早い内から環境適応能力を確認し、精神から来る体調と重力下での技能を磨いた方がプラスになる事を計算し、更に追加要素として地球寮の人と行動を共にすれば、企業イメージもアップする事の有益性を資料として提出した。
最初の兄さんの提案? 普通にみんなと地球に行きたいだけだよ。高潔な兄さんが、そんな打算的な考えをするわけ無いだろ。
元寮長だけでなく、個人間で地球寮の人と仲良かった人は意外といた。今年になるまで問題が発生しないように自重してた感が強かったのが、それも解除になったので、この際だからと思いついたそうだ。
でも、父さんは打算的な人だから、ちゃんと企画書を提出しないと動いてくれないから頑張った。
そんな訳で、先ずはジェターク寮で参加者を集う。
ここで兄さんが言うと、意図しなくとも強制になるので自重してもらう。
もし、嫌々参加した奴がいて、そいつが問題を起こしてしまったら、先輩たちの苦労が水の泡になるからね。
兄さんなら託せると思い、2年の間準備をして、更に決闘と言う形を取ったとは言え、寮長の座も快く譲ってくれたのに、もう合わせる顔が無くなってしまう。
だから、参加は自由という事で、調整はカミルに任せた。方向としては、「今度の連休、ジェターク兄弟が地球に行くけど、俺も連れて行ってもらう。他も希望者いたら誘っても良いぞと言われた」そんな感じで誘いをかけたそうだ。
その結果、ほぼ全員が参加表明。
不参加の数名も先約があったため、泣く泣く断念したというのが実情だったので、地球への忌避感が無いというのは朗報。兄さんに擦り寄りたいという思惑が無いとも言えないが。
だが、実際に、ジェターク社で勤務したら、地球行きが大いに有り得るので、興味があるし、行けるなら行ってみたいと、素直に思っているようだ。
うん。この手の行事は″俺”がいた日本では、昭和の頃は積極的で、令和になる頃は避ける傾向が強かったが、ジェタークのノリが分かって来たよ。
そして、お次は地球寮へのお誘い。
地球寮の1年生にはパイロット科が1人もいない。
通常科目では一緒になる事もあるようだが、椅子に座って教師の話を聞くだけの授業では、他の生徒と親しくなる切っ掛けは無いので、兄さんも僕も地球寮のメンバーとは疎遠な状態だった。
そのため、ここでもカミルに甘えることになった。メカニック科は2名在籍していて、男の方、ティルと話を進めたらしい。
そこで、正式なお誘いをするため、兄さんとカミル、そして僕の3人がティルに地球寮へと案内してもらう事になった。
そうして、合流したティルだが、ああ~、こんなのいたいた。そんな感想というか、記憶を掘り起こす。
寡黙で表情が無い。セリフも少なかったはず。でも、地味に優秀オーラを出していたね。
自己紹介を済ませて、地球寮へ向かうことになった。
「こっちも、一年で対応するから」
向こうも、ウチと一緒で交流は一年生にぶん投げ…中心に再構築しようと考えていたらしい。そのため、寮長の座を押し付けたりはしていないが、ジェタークとの窓口は一年のマルタンというのがやるそうだ。
いや、兄さんが嫌だったんだよね? それにしてもマルタン……思い出せない。
「でも、本当に地球寮で良かったの? 狭いよ」
「良いよ。そもそも、今回の話でジェターク寮に呼び出すってのも変な話だろ?」
兄さんの言う通りだよ。今度、地球に行くから一緒に行かない? ってのが今回の趣旨。
だったら、こちらから赴くのが常識って奴だ。
「でも、アーシアンとスペーシアンの…」
「その下らない習慣を壊す意味合いもある。悪いが付き合え。俺たちと同じ年に生まれたのが運の尽きだ」
「ん」
少し驚いた表情を見せた後、言葉少なに嬉しそうに頷く。
良いぞ兄さん。ソイツの脳も焼いてしまって!
「着いたよ。そこにいるのがマルタン」
そして到着した地球寮。入り口でマルタンが待っていた。会ったらコイツも思い出した。兄さん相手で緊張してるのか、表情が強張っているので、余計に思い出しやすかった。
あの、見てはいけないものを見て、2期が始まる前に処分されている可能性がある奴だ。
「マルタン何処に行ったんだろ?」「……さあ」曇るニカの表情。そんなのを想像したな。実際にどうなったんだ?
そんな事を思い出しながら、自己紹介をした後、中に案内される。思い出してきたぞ。この倉庫っぽいというか、確かにこんな感じだったな。
高給ホテルみたいなジェターク寮とは大違い。そういや、個室も無いんだっけ?
それと、ここって……
「うお!」
カミルの声に振り向くと、大きな白い物体。ヤギだね。そうそう。ここって家畜を飼ってた。
ヤギって、家畜としては小さいけど、実際は大型犬より大きいので、初めて見る場合はビビる。つーか、アイツ等大抵は人懐っこいから近付いてくるんだよね。知らない内に接近して突いたりするの。犬と違って喜んでるとかも分かりにくいし。
「へ~、ヤギなんているんだな」
初めて見るカミルは驚いて距離を取ろうとするけど、兄さんは見たことがあるので、普通に撫で始めた。
ジェターク社が手を出している地域で、羊で畜産業している場所があるけど、何故かヤギが混ざってくる。
ちなみに毛は柔らかく、触ると気持ちいんだよね。
「慣れてるね」
「ああ、色んな動物を見たし、大丈夫な奴は触ってる。でも、学園で飼ってるなんて初めて聞いたぞ」
「ああ、アリヤが連れて来たんだ。同じ一年の…」
「随分とティコが懐いてるな。ジェタークの御曹司なのに、動物は苦手じゃ無いのかい?」
「全然。むしろ大好きだ。両方の意味でな。
ラウダはダメだったが、俺はミルクとバターも美味いと思った。まあ、肉はあんまりだったが」
「確かに、肉は慣れない人には嫌がるな。だが、ティコの肉は提供しないぞ。その代わりにミルクだったら歓迎だ」
随分と兄さんに対して馴れ馴れしいな。確かにいたよ。ボーイッシュというか、王子様系の喋り方をする女。
しかし、口調と違って、外見は女性的、褐色肌でロングの黒髪。コイツがアリヤか。ぶっちゃげ、ララァ・スンっぽい……………………待て。
兄さんの特徴。赤い。ライバルキャラ。子供の頃に母親が逃げたので母性を求める可能性……マザコンの素質。2期では仮面をする(予定)。
アリヤの特徴。インド人系。占いをやってたし、神秘的? 今は15歳だから、アニメで見た記憶よりロリ。更に母性?もある。
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ダメだ!ダメだ!ダメだ!ダメだ!ダメだ!ダメだ!ダメだ!ダメだ!ダメだ!
絶対にダメな組み合わせだ!
ソイツとのフラグは立てちゃいけない!
このままでは兄さんが隕石落としをしてしまうぅぅぅぅぅぅぅぅ!