ラウダの野望   作:山ウニ

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ジェターク社の危機

何か不自然だったんだ。これは納得ですよ。

何がって、僕たちのパパさんヴィム・ジェタークの事です。

 

不自然な点、その1。独裁的で辣腕なイケイケCEOなのに、やることがセコイ。

自分の息子を総裁の婚約者にして、その後で総裁を暗殺って変だよね。

向上心が強くて総裁の地位を目指すほどの自負があるなら、普通そんな真似はしない。

そんな性格なら、最後の出撃前に言ったように、息子に頼らず自らが切り開いていく。つまり現在の総裁であるデリング以上の力を求めるはずだ。

 

その2。初登場のシーン。グループ内で業績3トップの1つに数えられ、その直後の赤字会社をデリングが見捨てる発言の流れ。

温厚なサリウスならともかく、父さんの性格なら、業績悪化でデリングに切り捨てられる会社を見ても、むしろ同感だと言う態度を取るだろう。なにしろグループ内での赤字会社は、足を引っ張る存在でしかない。

だが、実際は不満そうな表情でデリングを見ていた。

 

不自然だと思う。だが、ここに実は経営が悪化していました。そんな事実があれば話は変わる。

赤字になる会社は、明日の我が身。焦って総裁の地位に就くことで、危機を脱しようとしているとすれば、納得がいく。

その期が、業績トップ3と言っても、所詮は過去形。MS会社であれば、MSを納品した数になるのだが、次の予約が無ければ来期はアウト。いや、業績の報告を改ざんしていた可能性もある。

 

何故そう思うか?

ジェターク社のMSは安くない。重装甲かつ高パワー。安いはずが無い。

そして、購入先はと言うと、資金のあるスペーシアン側は戦争をしていない上に、仮想敵国を設けての防衛意識も低いので、大量配備は望めない。つまり兵器が売れないのだ。

これは、ベネリットグループ全体に関わるのだが、この事態を打破するために、スペーシアン側はアーシアン同士の紛争を誘発し、そこに兵器を売って稼いでいる訳だ。この仕組みを戦争シェアリングと呼んでいる。

 

その善悪は置いておくとして、結果として資金が無い相手に兵器を売るのだが、それがどうなるか考えるまでも無い。

少しでも安い兵器を欲しがる。つまり、御三家ではジェターク社が真っ先に候補から外れる。

パイロットの生命を優先した頑強な装甲はそれだけでコスト高だ。スペーシアン同士での覇権戦争ならジェタークのMSは決して悪くはないが、戦争をしているのは、予算が限られている組織になる。

航空機で、高性能なF-15より、コストパフォーマンスに優れたF-16の方が売れたように、多少の性能差には目を瞑っても、これからはコストパフォーマンスに優れたMSが売れるはずだ。

グラスレーのようにドミニコス隊に食い込むでもしなければ、ペイル社のように飛行能力を持たせるか、ブリオン社のような低価格モビルスーツの方が需要があるだろう。

 

では、ジェタークも低価格MSを作れば良いかというと、その分野でブリオン社とやりあうにはノウハウが足りない。低価格でも、大ヒットかつロングセラー作品であるデミシリーズは、あれで中々に高性能だ。あの性能であのお値段。実にお買い得であり、そう簡単に真似は出来ない。

それに、根本的な問題がある。戦争シェアリングという構造が間違っているのだ。戦争によってアーシアンの貧困層は増え、体力は無くなり、正しく地球が持たん時が来ている。それなのに、浅ましく残されたパイを奪い合っているスペーシアンの方々。やがては共倒れである。

 

この先、兵器製造会社は消えていくだろう。その中でもジェターク社は真っ先に消えるタイプだ。

生き残れそうなのは、御三家でも無いブリオン社が本命。

ペイル社は飛行MSがあるので、高性能MS会社として生き残れる可能性はあるし、グラスレー社も、カテドラルとの関係がある。僕がジェターク所属で無いなら、両社の合併を試みる。どちらにせよ、そうしなければ最終的には共倒れになるだろう。ちなみにジェタークはお呼びでは無い。

 

つまり、MS製造会社ジェターク社には後が無いのだ。

これを解決するには、派手な戦争が起きるか、逆にMS製造以外の事業に舵を取るしかない。

そして、僕が知る限り戦争は起きない。2期では兄さんが仮面を被って何かやらかしそうな気配もあるが、それは断固阻止だ。兄さんが不幸になるのは認めない。

だから選択肢は一つ。ジェターク社をMS製造会社ではなく別の会社にすること。

 

うん。無理だね。だって、今までMSを作って来たのに、それ以外を作れって。

確かにMSは工業製品の中で、最も高性能だ。駆動部を作り出す技術は重機を作れる。機動に関する技術は航空機やホバー技術を生かした移動手段を生み出すことも出来るだろうが、利益を生み出すためには、どれだけの試行錯誤がいるのか。

そんなことをしている間に会社は潰れてしまう。

 

「待て、MSって最初は宇宙開発に使用していたよな」

 

元々、宇宙世紀では、MSは宇宙開発のため重機から発展したものだった。

それが兵器に転用されたのだ。戦争の兵器であるMSを、別の方向に転用する。

パッと思いつくだけでも、元のように宇宙開発に使用する。あるいは娯楽に全振りで、格闘技の興行みたいにMS同士での決闘をやれば良い。学園では賭けもやっていて、娯楽として運用されていたくらいだ。十分に行ける。

 

いや、面白いが、現状では無理だな。

まず、ジェターク社では興行権を得られない。ベネリットグループ全体でなら可能だろうが、そこに出場して得られるものが少ない。多少は宣伝になるが、コスト高は売れないと言う根本的な解決にはならない。

だったら、宇宙開発だが、これ以上進めるメリットが低い。将来的には必要になっても、現状では地球から離れるリスクが大きすぎて、問題が多すぎる。GUND技術が研究されたのもそのためだ。

もう、開発するところが……

 

「……あるじゃないか」

 

何も新しい場所を開拓する必要は無い。

目の前に、荒廃しながらも、開発しなおせば金を生み出せる可能性を秘めた場所が。

 

「地球。捨てるには早すぎるだろ」

 

 

 

 

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