ラウダの野望   作:山ウニ

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気持ち悪い想像しちゃったよ

 

 

入学から3か月。学園での生活にも慣れ、緊張感が無くなってくる時期。同時に気の緩みから問題が発生する時期でもある。

そんなタイミングで、気になって調査を開始した、シャディク・ゼネリについての報告書が上がって来た。

 

「イエル・オグルね……」

 

養子になる前の名前はイエル・オグルか。まあ、悲惨な境遇だったようだが、運良くグラスレー社の施設に引き取られ、そこで才覚を見込まれて、サリウスの養子になる。

どうやら、シャディク・ガールズも同じ施設みたいだな。

それにしても、神童呼ばわりされる才覚か……転生(チート)の僕と違い、本物の天才。

 

「……サッパリ分らん」

 

だからこそ、コイツの狙いが、全く読めない。

考察勢は、反スペーシアン組織フォルドの夜明けと繋がりがあり、アーシアンであるニカとも関係があることから、裏でアーシアン側に立っているという説が多かったように思う。

 

だが、それにしては、動きが短絡的な印象だ。バカなら分かるが、シャディクは天才だ。

これが狂信者の行動なら、その辺りを考えない。単に許せないから攻撃したで済む。

だが、シャディクは何らかの宗教や思想にのめり込んでいる様子は無い。

 

単にデリングを殺したところで、何が変わるかと言えば、報復によりアーシアンの命が減るだけ。

アーシアン側なら、報復で奪われるアーシアンの命を見返りにしてまで欲しいものがある。つまり、デリングを殺して、何をしたいかが重要だ。

 

だから、冷静に天秤にかけたはず。

1期最後の争いは、表面上、フォルドの夜明けによるテロ。父さんは主犯気取りだったが、やったことはデリングの動きを探るスカウトに過ぎない上に死んでいる。

だから、フォルドの夜明けは、確実に報復のターゲットになる。彼等が全滅するだけでなく、テロ組織なら、中東のテロ組織同様に匿う勢力が存在する。そこも一緒に巻き込まれる事は確実。探索から含めれば、少なくとも千単位。多ければ万単位が犠牲になる。

そこまでして、デリングの死で何を得られると言うのか?

 

「おまけに、ミオリネを犠牲にしても良いと考えていた」

 

この男の最大の特徴が、ミオリネに対する感情だ。ぶっちゃけ純愛。絶対に童貞だ。

それまで女を侍らすチャラ男のイメージだったので、その落差が印象的だった。

そういや兄さんに対する好感度が高く、ミオリネを託しても良いと思っていたって話もあったな。

あの後、実際にグラスレー寮に誘っていた。父さんの指示で寮を出た兄さんを誘えば、それなりのリスクはある。兄さんを仲間に出来ると思っていた? なら、兄さんが、父さんと、あるいはジェターク社と敵対してでも、賛成するような目的だと考えた方が良いか。

 

つまり、ジェターク社に敬意は無い。むしろ、テロ組織にデスルターを貸しているのは、ジェターク社に罪を擦り付けようとした可能性もある。

まあ、あの時点では、兄さんはジェタークを出奔していたから構わないのか。

 

「いかん。ジェタークは抜きだな」

 

つい、僕の視点だとジェターク社を重視してしまうが、シャディクにとって優先度は低いはず。

やはり、ミオリネへの感情を起点に考えるべき。

そこから読み取れるのは、自分が彼女に相応しくない。まるで汚れた存在だと思っている。

自分が汚れた存在だと、思い込む理由。アーシアンの孤児出身という境遇そのものか?

 

「逆に、アーシアンへの憎しみを拗らせたか?」

 

自分の出自を拗らせた者が陥るパターンに、その根源を恨む行動に出る事だ。農民出身の皇帝が農民に優しいとは限らない。むしろ逆に弾圧に走るケースが少なくない。

シャディクの場合は、貧しいアーシアンがこれに当たる。

これなら、理屈は正しい。一期の最終話でアーシアンのテロ組織が、デリングの暗殺を狙った。シャディク自身がそう導いたから、これは間違いがない。

その結果は見えるのは、デリングの後継者による報復しかない。それこそが、デリングの後を継いだ者が成すべき事だから。

同時に、父さん、ヴィム・ジェタークも始末しようとした。

 

となると、新総裁の有力候補はサリウスになる。

病弱なサリウスの名代として、報復行為の指揮を執れる。自身の願いであるアーシアンへの弾圧が出来る。

狂信的だが理性的でもある。スペーシアンのアーシアンへの感情を、蔑視から怒りに変えれば、アーシアンを攻撃するのは正義となる。

あの911同時多発テロ直後に広まったアメリカの国民感情。それまで、白人以外を無意識に蔑視していたが、テロの直後はイスラム教徒は、蔑視から憎悪の対象へと変わり、彼等への迫害が増えた。

道徳的には許されない事だが、そんな綺麗ごとが通じると世界なら、ここまで捻じれた関係にはなっていない。

 

シャディクは、非常に知性的なので、これらの事は計算も予想できるはず。

ただ、理屈で見るなら正しいが、サリウスは嫌がるだろう。報復は仕方がないと思っても、やりすぎは嫌がりそうだ。

それに、シャディク自身のイメージに、やはり合っていない気がする。見方が甘いか?

 

「……甘いと言えば、サリウスの見方が甘いとか?」

 

僕から見て、アニメ内でのサリウスも、現実で知ったサリウスも、非常に人格者だ。

デリングや父さん、外道過ぎるペイル社の4BBAと比較するとだが、違和感があるくらいの人格者。

しかし、それがミスリード。

 

「マッキー2号?」

 

つまり、アレである。

人格者に見えて、あるいは基本的に良い人だが、性癖だけは勘弁な。のパターン。

だが、サリウスの身体はあんなだし……いや、鼻チューブに車椅子でも、下半身の一部は元気なんてこともある。

アカン、想像したら気分が悪くなってきた。

でも、それなら、シャディクが童貞を拗らせるのも分かる。

 

「ん?」

 

カミルから着信があったので、出ると実にしょうもない用事だった。

 

「相手、バカなの?」

 

兄さんが決闘するそうだ。

 

 

 

 

 

 

 

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