ラウダの野望   作:山ウニ

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長くなってしまった。
短くしようと頑張ったけど無理でした。



こうして俺は光に焼かれ、僕になった

 

 

決闘から戻った兄さんには、「お疲れ様」の一言だけは何とか言えた。

でも、賞賛も、苦言も、他に何も言えなかった。

何と言えば良いか、自分でも分からない。あれから部屋で一人でずっと考えているけど、どうすればいい?

だって、今回の行動は、相手を懲らしめるという意味では、何も間違っていないから。

 

そもそも、苦言って何を言うんだ?

相手を改心させるのが理想だけど、それを兄さんに押し付けようなんて、僕の傲慢な考えだ。

確かに、あのやり方では、相手は絶対に反省しない。それどころか、兄さんを、ジェタークを、更にはアーシアンを恨みに思う。

でも、あの程度の奴が恨んでも、それこそ何かして来たら返り討ちにすればいい。

 

奴等は、マルタン(弱者)に嫌がらせをして、今度はジェターク(強者)に怯え、挙句にの果てに、兄さんの実力も読めずに、姑息にも弱い(と思っている)ジェタークの御曹司を倒して誇ろうとした。

腐っている。酷い目に合ったのも自業自得だ。何だ、何も問題ないじゃないか。

 

「ラウダ、いるか?」

 

「兄さん? どうぞ」

 

僕の部屋に兄さんを招き入れる。

楽しい兄さんとの時間のはずなのに、兄さんの顔は暗い。何かあったのかな?

 

「俺はダメだったんだよな?」

 

「えっと、どうしたの?」

 

「俺は、どうすれば良かったんだ?」

 

「えっと、何がかな?」

 

「決闘が終わってから、ずっとイライラしているんだ。いや、少し違うな。とにかく気分が悪いのに、何か上手く言えない。

 最初は泣いてるだけの相手を見てムカついてると思った。

 でも、戻って、お前の顔を見て気付いた。俺が、何か失敗したんだろ?

 やり過ぎたとは思ったけど、お前はそんなことでは、あんな顔をしない。

 だから、自分で考たけど答えが見つからなくて、頼む。教えてくれ」

 

「なに言ってるんだよ。別にダメなんてことは無いって」

 

先ほど考えていた奴らが自業自得だってことを口に出して説明する。

そうだよ。何もダメな事なんて無いさ。

 

「だが、俺は今の俺を誇れない」

 

「そんなことないよ。兄さんは……」

 

「でも、お前は満足していないだろ?」

 

それはそうだ。あれは違う。

 

「教えてくれるか? お前にとっての正解を」

 

「……僕の正解に拘る必要は無いよ。兄さんが選んだのなら、僕はそれを応援する」

 

「そうじゃなくて、なあ、俺たちが初めて会った時の事を覚えているか?」

 

忘れるはずが無い。

僕が僕になる前。今より醜悪な怪物である″俺”だった頃。

 

 

 

″俺”だった頃は、この世界でどう生きるか、それを模索していた。

転生先はジェターク社CEOの子供だ。この世界での勝ち組。同時に危険な未来に進むことも知っていた。

長男グエルの失踪と、CEOヴィムの死。やがて来る火事場から逃げ出すか、それとも未来を変えるか。

逃げ出すことは何時でも出来る。その時になって困らないよう、色々なスキルを既に身に付けていた。

だけど、未来を変える方が得策。そう難しい事ではない。

 

問題となるのは、グエル・ジェターク。物語として見る分には愉快な人物。

だが、実際に身内として見れば、愚かな阿呆であり道化。

 

そもそも、あの道化は、何を好き好んで、あんな容姿しか取り柄の無い、身勝手で自己中極まりない、ミオリネ・レンブランに拘った?

婚約者の地位など、親が決めた事。ミオリネは自分の意志では無いと、さも自分を悲劇のヒロインであるように振舞っていた。実に滑稽だよ。それを決めたのは、ミオリネの父であるデリングなのに。

 

グエルにもミオリネに恋愛感情など無かった。

なら簡単だ。グエルも同じように振舞えば良かったのだ。

別にミオリネ(自己中)のように、学園から脱走したりする必要は無い。

ただ、俺の方が不本意ですと、周囲に言葉と態度で示せば良かった。

あの女の親が勝手に決めたルールで、婚約者になった。俺の親も賛成している。

学園最強の地位は手放したくないけど、あんな性格最悪の女と結婚するなんて御免だねと。

 

乙女ゲーの舞台みたいだとは言われていたけど、そう振舞えば本当に、不本意ながらに悪役令嬢との婚約を決められた攻略キャラの立場だ。

片や御三家と呼ばれる巨大企業が保有するジェターク寮の寮長にて多くの仲間に慕われる少年。

片や学園の理事長室を、勝手に改造して自室にして引き籠り、好き勝手に振舞う少女。

どちらが支持されるかは明白。親の勝手な取り決めに苦しんでいるのは同じでも、我慢している少年と我慢できずに暴れている少女とでは、比較にならない。

 

だから、俺ならそうする。

将来、破談になるも、仮面夫婦になるにしても、学園で生活する時は、トロフィーであるミオリネの事はいないも同然に扱う。

だから、スレッタ・マーキュリーが現れても相手にしない。彼女がグエルに決闘を申し込む理由がないから。

もし、戦うとしたら、ミオリネが裏で手引する可能性だ。

 

勝てそうならそのまま勝つ。でも、ワザと負けた方が良いか悩んでいると宣伝しておく。

ミオリネがスレッタと一緒になりたくて決闘をけしかけている。

だったら、別にいいさと、全ての(とが)を、身勝手な同性愛者(レズビアン)であるミオリネに押し付けて、負けてもダメージは最小限にする。

 

何故、そんな簡単な事も出来ないのだ?

度し難い愚かで阿呆な道化。それがグエル・ジェターク。

だったら、ラウダ・ニールがその地位を奪い、上手く振舞ってやる手もある。

俺が、グエルを蹴落とし、ジェタークを乗っ取る。

悪いプランではない。グエルは愚かだが嫌いではないから、支援は続けてやろう。

そして、そう思っている小僧と最初の対面を果たした。

 

「弟がいて、すげえ嬉しい」

 

何を言ってる? この道化は?

思わず失笑が漏れたかもしれない。

 

「ラウダ・ニールだよ」

 

自己紹介くらいしろよ。

 

「俺はグエル、よろしくな」

 

少し驚いた後、嬉しそうに自分の名前を言う小僧。何が嬉しいのか。

まあ良い。そうやって、能天気に生きていろ。その方がやりやすい。お前は俺の引き立て役でいればいい。

 

「母さんがいなくて寂しいだろうが、俺がいるから」

 

なに言ってる? ああ、お前が寂しいんだな。

それで、俺を慰めているふりをして、自分の辛さを誤魔化そうとしてるのか。面倒な奴だ。

 

「スゲエな。ラウダは本当に頭が良いよ」

 

何を笑ってる? 俺と成績で比べられ怒られたばかりだろ?

笑っている暇があれば勉強した方が身のためだぞ?

 

「お前は自慢の弟だよ」

 

俺は見た目通りの中身じゃないからな。

それと、弟の自慢をする暇があったら、自分をどうにかしろ。

 

「辛いことがあれば言えよ」

 

だから、何で……

 

「ラウダ」

 

俺に気を使うな!

俺に優しくするな!

 

何でそんなに綺麗なんだ?

何でそんなに輝いてる?

何でそんなに眩しい?

 

止めろ。お前は俺と違って本当の子供だろうが。

もっと、我が儘で、自分の事だけを考えれば良い。それが許される齢だ。

それに比べて俺は何だ?

これ以上お前といれば……自覚してしまう。

 

止めてくれ。頼むから。

 

「俺はお前の兄貴だからな」

 

無理だろ、こんなの。

本当の子供で、真っ直ぐ、優しく、眩しい存在に対峙するには、俺の心は醜悪すぎた。

転生(反則)で得た力で、好き勝手を目論んでいた。何もかも思い通りになると考えた浅ましくおぞましい、気持ち悪い生き物。

……消えたい。心が怪物の俺は、強い光に焼かれ退治された。

 

燃えカスはどうすれば良い? ラウダはどうした? 俺が殺したのか?

俺が死ねばラウダに戻れるのか? どうやって死ねば? 怖い。やはり死ぬのは怖い。俺が死んだからラウダに戻れる保証はない。いや、その可能性は限りなく低い。身体が死ねばそれまでだから。でも、それは後で思いついた事。ただ、死にたくなかった。何処までも身勝手で醜悪な怪物。

こんな生き物に生きる資格があるのか? それでも死にたくない。その上、強い光を排除せず、むしろ見つめている。憧れている。

 

……そうだ。人類に害する悪い怪物が生き残る方法がある。

英雄や勇者、正義の味方の仲間になること。彼等に従い、そのために生きる強力な武器になる事。

そう、醜悪な怪物が生き残るには、(グエル)に縋るしか無かった。

 

自分への惨めさや情けなさ、自分に対する怒りを、未来の敵に責任転嫁した。

敵は、この光を傷つける相手。これからグエルに訪れる理不尽な地獄を与え、その事を気にも留めない、悪意が人の形と成った存在。。

見る目が無くグエルを認めず、政略結婚の道具としたヴィム・ジェターク。

分不相応にグエルの妻になれる栄誉を認めず、貶め続けたミオリネ・レンブラン。

辱め、なぶるように、機体の性能でグエルに勝利し、転落させたエラン・ケレス。

高みから見下ろし、周囲を操り、グエルに父殺しの大罪を犯させる切っ掛けを作ったシャディク・ゼネリ。

全ての転落の元凶、おそらく出生から普通の人間ではない怪物スレッタ・マーキュリー。

俺の身代わりには、ちょうど良い。

 

俺は死んで僕になる。

兄さんのためを免罪符に、その力を行使する怪物になる。

(グエル)の敵を滅ぼす(ラウダ)になる。

 

僕が力を行使するために決めたルールはただ一つ。

それが、グエル・ジェタークの意志に沿い、彼のためになるかどうか。

そのルールに従ってきた。兄さんが、本来のルート(アニメ作中)以上に強くなるよう誘導したのも、それが兄さんが望み、兄さんのためになるから。

 

そのルールに従い、最初の敵であるヴィム・ジェタークは傷付けない。利用価値も高いので利用する。

だが、その心は攻撃し続ける。僕に親は不要。僕はグエルの弟であって、お前はグエルの父だとしか思っていない。そう態度で教え続ける。

兄さんの意志だから、僕も息子として振舞うが、敬いはしない。

そして、僕の力を欲しろ。だが、僕に言う事を聞かせたければ、グエル(息子)に媚びろ。

 

そうやって、兄さんに縋る事でしか生きる術を持てない、狂った生き物が僕だ。

だから、兄さんの意志がそうである限り、兄さんが横暴に振舞うのを止めない。

僕の理想とする光では無いけど、僕の理想を押し付けるほど傲慢にはなれない。いや、勇気がない。

だって、縋る相手に拒絶されたら、それこそ僕は終わりだから。

 

 

「会った頃は、俺は何一つお前に敵うものがなかった。その時のお前の表情を思い出したよ。無理もないさ。お前と比べて、本当にダメなガキだったからさ。

 そして、そうじゃなくなったのも、お前がそうしたと思っている。俺を今の俺に、ラウダの兄だと誇れる俺にしてくれたと」

 

それは、兄さんが望んでいたから。強くありたいと、自慢の兄でいたいと願っていたから。

僕は僕のルールに従い、兄さんを導いた。

 

「今回、どうやれば俺はお前の自慢の兄でいられた?」

 

本当にこの子は……やはり眩しいな。

そして、条件が成立した。不成立の原因である兄さんの意志が変わったから。

これは、兄さんの、グエル・ジェタークの物語で、僕は(主役)に従う怪物(脇役)でしかない。

選択は主役の特権。兄さんが選択したのなら従おう。

そして、示そう。兄さんに苦難(栄光)に満ちた道のりを。例え縋る相手に拒絶されようとも。

 

 

 

 

 

 

 






ある転生者の断末魔の叫び

「こんな奴の弟、やってられるかあぁぁぁぁぁぁぁぁ!」


なお復活後の反応

「兄さん、ハアハア 最高だよぉ♪」

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