ラウダの野望   作:山ウニ

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打倒アスティカシア学園

 

「他に何をやらせる気だ?」

 

「入寮日の事を憶えてる?」

 

「……ああ」

 

「あの時は寮で王様になれって言ったけど、今回は規模の拡大。この世界の王になろうか。

 まずは、ベネリットグループの縮図である、この学園の王様から」

 

「待て、何か話が大きくなってないか?」

 

「目的を小さくした結果、小物になったんでしょうが。

 だから、目的の修正。単にダイゴウの寮長のフォローだけだと、今回の件の延長でしかない。

 それを根っ子の部分、地球寮への蔑視とか、この学園の風潮そのものを変化させる事を目標とする。

 簡単に言えば、兄さんには、この学園の誰もが憧れる、こうなりたいと思える人間になって欲しい。それが、僕が期待する事。とりあえずホルダーは取ってもらうけど、それで満足してもらっては困る」

 

「簡単に言うなよ。相変わらずの無茶振りだな」

 

うん。無理な事を言ってる。

それは分かっている。絶対に出来はしない。世の中には小物より性質が悪い小人がいる。妬みの塊のような奴。

そんな連中は、兄さんの振る舞いが、立派であればあるほど、絶対に認めないだろう。

 

「まあまあ、これは理想目標ってことでさ」

 

交通災害ゼロとか、そんな奴。

ゼロは無理だと思ってるし、逆に起こると思ってるから、救急車とかの対応も出来る。

でも、ゼロを目指して、可能な限り減らす。そんな感じ。

 

「とりあえず、兄さんの土台はジェターク社だ。ここが揺れると色々とおかしくなるからね」

 

兄さんは、社会の変革を望んでいるけど、政治家でも、ましてや革命家でもない。

ジェターク社CEO。今は父さんだけど、やがて兄さんの寄って立つ土台はここだ。

 

「だから、極論だけど、ベネリットグループもスペーシアンもアーシアンも二の次。逆に優先させてしまうと変な方向に行くからね。

 土台の現状と目指すべき目標を決めれば、そこから、どうやって向かうのか、手段を選択することが出来る」

 

「ああ、分かっている。そして、俺たちの目的は、ジェターク社の繁栄。

 戦略が、地球を再生させることで、ジェターク社を盛り立てていく。

 現状は、少ないが、アーシアンの雇用も増やしていく事で市場を更に活性化させる」

 

「うん。宇宙と地球で分断されて、二極化している経済の流れを、一つの大きく複雑な流れにする。

 経済って、結局は物の流れだからね。物流は血の流れに等しい。流れが活発なら健康であり、社会も活性化する。逆に滞れば身体も社会も壊死するしかない。今は死にかかっている状態だ」

 

だから、地球を再生させる。そっちが目的になれば、ジェターク社を潰しても構わないなんて発想になり、力尽きて共倒れなんてなりかねないけど、地球の再生が手段と割り切れば、何処から、どう攻めるか冷静に考えられる。

 

「そして、今回、僕たちは良い経験をした。

 兄さんから、寮の仲間に言ってもらえれば、みんな聞き入れてくれると思うけど、目的と手段を混同する危険を実感したんだ。それを繰り返さないよう戒めるのは一つ。

 そして、情報の重要性も改めて分かった。そう言えば、情報って何か教えたっけ?」

 

「ああ、情報を集めることで、色んな状況に対応できる。戦争なんかでは、相手の事を知れば対策がうてる」

 

「それとは違う。情報って未来予測に必要なんだ。同時にそこまで含んで情報と言う場合も多い。

 だから、集めるだけでなく、分析する必要がある」

 

大日本帝国が情報を軽視していた事は有名だが、同時に陸軍中野学校などの例を出して、情報を重視していたという反論もある。

これは、情報と言うものの捉え方の違い。

 

最初に軽視していたと言ったのは、アメリカ側だが、彼等が言う情報は予測まで込みの事。同時にそれがセットで無ければ、集めた情報など、宝の持ち腐れでしかないという、正しい価値観だ。

そもそも、それが出来ていれば、あの戦争は避ける。人口、資源、技術、全てが上回るという情報は持っている。後はそれを分析すれば、勝ち目が無い事は分かっていた。

だから、情報を軽視していたという発言は、全く持って正しい。

 

分かりやすい例が、天気予報だ。

天気を予測できるのは、昔は時期や雲の動きを見て当てていた。それが、衛星から観測して雲の動きを上から見れるようになり、より正解確率が上がった。

情報を集める能力が発展したメリットだ。だが、予報者の能力も忘れてはいけない。

過去の情報(データ)から、この先、雲がどう動くかを予測する。その能力は素直に称賛できるだろう。

ちなみに、気象予報士を育てる気象大学は、毎年の定員が15人で講師の方が多いという異常な学校である。

 

僕みたいな転生者が活躍できるのも情報のお蔭。

同時に、僕の情報は欠陥だらけだ。途中まで、しかも古いので曖昧な記憶も多い。おまけに既に変化を起こしている。

だから、情報を集める機関が欲しいと、前から思っていた。

 

「いい機会だし、経営戦略科の連中に次のステップに入ってもらおう」

 

「経営戦略科の連中に情報を扱わせるのか?」

 

「うん。元からの構想でね。経営戦略科でも情報は取り扱っている。基本中の基本だからね。

 それを、もう一歩進めて、将来のジェターク社では、CEO直属の情報管理部門を設置する予定で動く」

 

社外情報の調査は、現在は営業部がやっているが、規模が小さいので、拡大して、兄さんの直属にする。

そのスタートを、今の連中から選抜すれば、CEO直属感が増す。

 

「だから、アレか?」

 

「そう。汚れてもらった。語り部をさせるのもそのため」

 

グエキャンで、自分の中にある浅ましい部分を自覚させた。同時に、それが恥ずかしい事では無く、誰にでも起こる現象だと気付かせた。

更に、あの後は、自分が何を考えていたか周囲に話をさせて、色んな考えが発生するとも分かった。

ちなみに、恥ずかしくて言えないなんて事にならないよう、ここで正直な語り部として機能しないようなら、次回もやると伝えたら諦めて白状したよ。

 

「情報を分析するには、フラットな思考で、何でも受け入れる柔軟な考えが必要だからね」

 

人は、先入観が強いと変な想像をするし、受け入れられない考えは、無意識に排除する。

僕が向かないのはその辺りが原因。我ながら視野が狭い。

 

「全員が情報を扱えるわけでは無いけど、あの中から良い人材が見つかるのを期待しよう」

 

「合格者は報酬を高くしないとだな」

 

「当然だね。裏切られないよう好待遇でよろしく。

 でも、先は長いからね。今は学園内の情報収集と分析で、何が起きるのか予測させたりで訓練をしよう」

 

下らない話でもOK。人の色恋沙汰とかでもね。今回の発端はそれだしさ。

先ずは、兄さんがホルダーに挑戦する場合に起きる事、取った後の変化辺りかな。

 

「メカニック科とパイロット科には、経営戦略科が出した予想に従い行動する。

 間違っても文句は言わない」

 

「そこは大丈夫だろ」

 

うん。この辺りは助かる。ジェターク寮(ウチ)の結束力は、良くも悪くも見せて貰ったから。

 

「そして、兄さんには自覚して欲しい。

 人は、思想には付いて行かない。人が従うのは人。今のジェターク寮の仲間が、地球再生に積極的なのは、兄さんを、自分達を率いるのに、相応しいと思っているから」

 

元は僕の案だけど、僕が言っても、誰もついては来ない。

今は、父さんがやっているけど、社員が積極的かと言えば、決してそうではない。

地球行きは左遷と思っている社員は、数多い。

 

「逆に、どれほど素晴らしい理想を抱き、それが可能だったとしても、その人物が悪辣だったら、その理想を否定したくなる。

 兄さんの目指す世界は、今のままだと、ダイゴウの連中には、邪魔されると思って良い」

 

「そうだよな。本当に失敗した」

 

「でも、今後、取り返せるかもしれない。

 そのためにも、兄さんには、学園最強なんて小さいものだと思ってほしい。

 背負うのは、ベネリットの罪。何時の日か訪れるだろう、魔女の災いを討ち払う、剣となること」

 

「……ガンダムか」

 

ジェターク社の力を使っても苦労したけど、ルブリスの戦闘データは手に入れた。

量産試作機が使うファンネルミサイルモドキや、あのルブリスが使うビットの力を兄さんは知っている。

そして、対抗策として生み出した装備の一つが、兄さんが使用している装備だ。S装備と呼んでいるが、僕は内心でスペシャルズ、トールギスと呼んでいる。

 

もう一つは、T装備。周囲にはアルファベット順と説明しているが、実はティターンズの意で、ジオの装備になる。テレビ版の全身スラスターの高機動型ではなく、小説版の全身からメガ粒子砲を撃つ方。

アニメ版ジオと似たバックパック、フロントスカート、リアスカートと付け替える。ただしスラスターではなくビーム砲を配置し、攻撃は最大の防御をコンセプトとした武装で、全周を同時に攻撃出来る代わりに、機動力はガタ落ちである。

 

兄さんは両方試して、S装備を選び、量産試作機が相手なら勝てるようにはなった。

まあ、T装備は尖り過ぎで、オールレンジには強いがそれ以外は使い難い機体だしね。

でも、エアリアルが使用しているビットのように、攻撃と推進が同時に可能な技術を手に入れたら、かなり化けるんだけどね。

あれ? どうなってるん? シン・セーに金を払えば教えてくれるかな?

 

でも、その本命のエアリアルの力は、ルブリスの比ではない。

だから、強化した前提って事で、背中のガンビットランチャーに、ファンネルや、ファング、シールドビット、ファンネルミサイルを付けて、その相手の訓練をしてもらおう。

もう、増長する余裕なんて与えないから。仮想ハマーン様たちにボコってもらうから。

 

いや、別にグエ虐がクセになった訳じゃないよ。うん。

ちゃんと僕も訓練する。水星女に勝つとは断言できないけど、地球の魔女とか出て来るはずだ。

あれってルーン文字らしいから、20機以上のルブリスが出て来る可能性が高いから、兄さんにだけ任せる訳には行かない。

ただ、僕には僕のルールがある。これを破ったら、僕は自分の道を見失う。

 

「兄さんはそうする事でこそ、自分を律せると、僕は思ってる。

 同時に、ベネリットグループの罪を背負い、受けて立つ覚悟を持つことが、縮図である、この学校の王様の姿。

 そして、この閉塞した学園を変える。いや倒す事かな」

 

僕の言う王は支配者の事では無い。その人に従いたくなるカリスマを持ち、何かを成そうとしている人物。それを手伝いたいと思う人が多く現れる人物。野暮な言い方をすれば、おとぎ話の未来の王様。

今はガンダムの話は公にしにくい風潮だから、それは武器に出来ない。

でも、兄さんが何かをしている事は、どうしたって周囲には分かる。

いや、感じやすくするためにも、注目を浴びるホルダーの地位は助かる。

そうやって、兄さんが、ジェタークが、進めている地球再生を手伝いたい、同じ道を歩みたいと、大勢の人に思われてこそ、困難な計画は実現する。

 

「それで、了承なら、今いる寮生には、ヴァナディース事変の事を伝えて、兄さんの専用機のメカニックには、カミルを中心にした専属メンバーを決める。当然、対ガンダムを想定したシミュレーションのサポート込みで。

 それで、どうする? 嫌だって言うなら、この話は無かったことにするけど」

 

僕のルールは、兄さんの意志が最優先……って、考え方はズルい気がしてきたな。

だって、答えは分かっているから。

 

「それをやってこそ、お前は俺を自慢の兄だって思えるんだな?」

 

「うん、それが僕の自慢の兄さんだから」

 

「フン、だったら、期待に応えないとだな。寮生を集めろ。全員だ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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