ラウダの野望   作:山ウニ

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白が良いと思うが、黄色も捨てがたい。だが鳥の羽、テメェはダメだ

 

 

「ちょっと無茶すぎやしないか?」

 

四方をファンネルに囲まれて、ボロ雑巾のようになる赤いディランザ。

カミルが無理だと言うが、容赦はしないよ。

 

「無茶? 例の映像は見ただろ? あれが来た時、無茶だから止めて下さいとでも言うか?」

 

「見たが、あそこまでの動きでは無かった」

 

「ああ、向こうは、ろくな準備もしていなかった。そして、投降の通達も無く攻撃されて、理不尽に殺された。

 で? お前だったら、同じものを作って満足するのか?」

 

「……やはり、復讐に来ると思うか?」

 

「来ないと思う根拠を、教えてくれたら考え直す」

 

それが実際に、分からないところだ。

プロスペラは、何でデリングと組んだ。クワイエットゼロって、何だったんだ? 双方が欲し、デリングに使用権が移っても構わない存在。

プロスペラの目的として候補に挙がるのは、娘のエリクト復活と、デリングへの復讐。

デリングの目的として候補に挙がるのは、治安の維持。平和な世界。

接点が無いよね。エヴァ系の話になるんだろうか?

 

「無いようだから、僕も自分のチームに戻る」

 

僕ではトールギス装備を、兄さんのように使えないので、ジオの装備を練り直す方向で進める。

兄さんと入れ替わりで出撃し、ステージは地上。ホバーで移動するが、重量がありすぎるので、思うように進まない。

 

ファンネルが飛んでくるので迎撃。視線だけでロックオンしてくれるT装備は、この辺りは強いが、動きが遅いので、本体に接近されると厳しくなる。

右手に持った銃剣で対応するが、そちらに気を取られると背後に回ったファンネルにやられる。

やはり、迎撃にオート制御を組み込むか? それにやはり重すぎるから、全周囲攻撃の武装を減らして軽量化するか?

ウルとソーンはビットを使っていなかったし、ビットがエスカッシャンくらいの数なら、もっと減らしても対応できる。

だけど、ガンダム世界では、サイコガンダムやクインマンサみたいな敵は定番だからなぁ。

直近のオルフェンズでもMAが出て来たし。数を減らすのは勇気がいるな。

 

ルブリスが距離を取った。すかさず左腕に装備したワイヤークローを射出して捕まえる。

このワイヤークローも、捕まえるではなく、杭にして、相手を貫く方が良いかもしれない。ワイヤーが付いていれば実弾兵器に含まれない。

そうすれば、エスカッシャンの防御も一つずつ破壊できる。

いや、威力が足りないか。杭にブースターを付ける?

 

色々と考えながら戦っていたら、ダメージが蓄積して、撃墜判定。まあ、仕方がないか。

 

 

「やあ、ラウダと言いグエルと言い、いったい何と戦っていたんだ?

 特にラウダは、随分と奇怪な装備じゃないか」

 

コクピットから降りたら、何時の間に来たのか、アリヤとティルが困惑した表情で聞いてくる。

今回使用したシミュレーション装置は、実機を使用し、そのモニターに敵を投影するタイプで、実戦に近い訓練が可能なタイプだ。

一般的な実機を使わないコクピットのみのシミュレーターでは、再現が不可能な機動によるGや衝撃が体験できるので、僕と兄さんは、これを使用する事が多い。

本当の実戦と比べると、ダメージの再現率、欠損などが使用不能にとどまり、完全な表現は出来ないが、相手を用意する実戦だと、修理費で眩暈を起こすので、これを使用している。

 

まあ、それでも推進剤や駆動部の消耗があるので、一般的なシミュレーターより金がかかるが、そこは僕たちはお坊ちゃまなので。

ちなみに、この訓練は外から見ると、シャドーボクシング状態で、素人が見れば何をやっているか不明。そこそこの知識がある者なら、例えば、この2人なら対戦相手を想像できる。

だが、今回の相手はガンダムなので、彼等の想像外の相手だ。

 

「兄さんの許可が出れば教えるよ。それで、例のモノが出来たのか?」

 

「ああ。だが、肝心のグエルはアレだ。

 何のつもりだ? ダイゴウの寮長の件は、反省したと聞いたが、更なる地獄を再現しようと、企んでいるように思えるが?」

 

画面内では、宇宙空間で動き回る赤いディランザが、高機動で動きながら、細かく何度も刀を振り回している。

あの様子だと、ビームランチャーを失ったな。でも、ビームカタナでファンネルのビームを弾きながら、敵機に接近中ってとこか……あ、右腕の動きが止まった。腕もやられたか。

 

「今のホルダー、どう考えてもグエルの敵じゃないよ。それなのに、何の訓練?」

 

「別に、ホルダーを取るための訓練はしてないからな」

 

ティルの質問も、今ははぐらかす。

 

「ホルダーは眼中になし?」

 

「いや、経営戦略科が集めた情報で、どうやったら、向こうが勝てるかを相談している」

 

敵のつもりになって、勝つ方法を考えさせる。これには、メカニック科とパイロット科も参加している。

まあ、どう勝てば良いか分からず、頭を抱えているみたいだけどね。

 

「忙しいからと、頼みごとをしておきながら、何を企んでいるのやら」

 

「スマン。だが、文句はカミルに言ってくれ。言いだしたのはアイツだ。

 それで、搬入は終わったのか?」

 

「うん。無重力ハンガーの方に」

 

「よし、もう夕刻過ぎだ。今日はここまでにしよう。兄さんも、もう直ぐ終わるはずだ。状況終了したら、無重力ハンガーへ移動するよう伝えてくれ。

 サポートチームにもだ」

 

僕のサポートチームに、訓練の終了と伝言を頼む。

夕食までは、あと少しあるので、ティルとアリヤの用事くらいは済むだろう。

 

「終わるって?」

 

「直ぐに落とされる。右腕と左足。それにブースターも片方損傷している」

 

「なあ、君たち兄弟は、宇宙人の襲来にでも備えているのか?」

 

「兄さんが戻ってからな。お前達にも隠せとは言わないと思うが、あまり公言できる類のものでは無いから」

 

困惑した表情のまま、無重力ハンガーへ行き、そこに入荷されたばかりのコンテナが置いてあった。

すでに、何人かのメカニック科が集まり、中身を出していた。

 

「綺麗な色だな。白にも銀色にも見える」

 

「近くで見ると透明だけどね。グエルが気に入ると良いけど」

 

「今更、文句は言わないよ。むしろ気に入るんじゃないかな」

 

兄さん、ライオン好きだし。

あの、僕が知らない間に、兄さんのディランザに、(たてがみ)を付けようという案が出ていた謎の事件。

兄さんが乗り気でなかったので、放置されていたが、今回、ジェターク寮での大反省会&方針説明会で、兄さんがホルダーを取る宣言をした。

それなら、王様らしくしようと、再びこの案が蘇った。

 

兵器はシンプルであるべきが、基本的な僕のスタンスだが、時には威厳や威風といったものが、必要な事も理解している。

今回は、それに該当するし、僕の好みを優先すべきではない。それに、鬣なら鳥の羽よりは良い。

どうしても、あの鳥の羽は、スレッタとミオリネを祝福する小道具であり、兄さんを貶める印象があったので好きにはなれない。いや、ハッキリ言って不愉快だ。

 

だが、今回は鬣なので、実際は指一本くらいの太さの紐?ロープ? の束だ。

仮に兄さんが破れ、原作再現になっても、降ってくるのは、長さ3メートルくらいの大量のロープ。

それに絡まって藻掻いているスレッタとミオリネを想像したら、逆に素晴らしい装備だと思えてしまう。

 

後になって聞いたが、この想像をしていた時の僕は、今までにない良い笑顔をしていたらしい。

勘違いをした兄さんは、ラウダが喜ぶならと、採用を決定したそうだ。

それで、赤色である兄さんの専用機に合う色として、鬣の色の選定に、黒、白、黄色と出てきて、結局は白色が選ばれた。まあ、元ネタが武田信玄の兜だからね。

 

ただ、ここで問題が発生。鬣の実物を用意する必要があるが、方針説明会で決定した件で、気合を入れ直すためにも、全員が早急に動く状況を作ったので、誰も手を出せない状況になった。

そこで、元々、提案が生まれた場所である地球寮に泣きついたと言う訳だ。

おまけに、今回の事件でも地球寮は関係がある。助けたつもりでいたが、逆に迷惑をかけた事にもなるので、依頼料を多めに出すことで迷惑料とし、こちらの考えも説明した。

地球寮も笑って受け入れてくれて、今日に至ると。

 

「あれ? 黄色?」

 

「ああ、一応だけど用意した。評価が分かれたんだろ?」

 

「うん。黒は早々に弾かれたけど、白か黄色で迷ってたな。

 しかし、こうして見ると捨てがたい色だ」

 

明るい黄色だが、金色にも見える。まあ、この辺りの美術的センスは僕には無いから、後はお任せだな。

 

「何だったら、ラウダも付ければ良いぞ」

 

「冗談。何の機能も付いていない装備に興味は無いよ」

 

「ロマンが無いな」

 

「ロマンくらいあるさ。ただ、方向性が違うだけだ」

 

機能美ほどロマンが詰まったものは無い。

それを主張しようと思ったところで、兄さんのディランザが入って来た。

相も変わらず、美しい動きでハンガーに付けると、コクピットを開いて、兄さんが出て来る。

 

「おう、悪かったな。変な依頼をして」

 

「いや、割高料金で依頼してくれたから、資金の無い地球寮としては助かったくらい」

 

「ああ、問題ないとも。ただ、それは良いが、ラウダが意地悪するんだ」

 

おい、ティルの返答は素晴らしいのに、アリヤは何でそんなことを言うんだ? そんなことを言ったら…

 

「この野郎ラウダ! 誰に意地悪してんだ!」

 

「寮長の弟だからって容赦しねえからな!」

 

「ラウダ、君は女性の扱いを知るべきね」

 

学年男女問わずに、一斉にメカニックの連中に罵声を浴びる。いや、他の科だろうが同じか。

偽ララァ女は、地球で過ごしてから、ジェターク寮(ウチ)で人気者になった。胃袋を掴まれたとも言う。

それと占いが楽しいらしい。もう、どうでも良いし、選り取り見取りだから、好きなの選んで嫁つげ。だから、兄さんには近づくな。

 

「で、何をしたんだ?」

 

冗談だと気付いている兄さんが笑いながら聞いてくるけど、ここで怒って聞いてきたら、本気で泣くからな。

 

「君たち兄弟が、何星人と戦うつもりなのか教えてくれない」

 

「ああ、それか……う~ん」

 

「グエルまで言えないって、重要な件みたいだね」

 

「みたいだな。いや、悪かった。もう聞かない」

 

言い淀む兄さんを見て、拙い話だと察したようだ。おまけに、騒いでいたジェターク寮生まで口を噤んでしまっている。

この辺りは、推薦した企業を背後に持つ、学生でありながら、社畜に片足を突っ込んでいるアス高生。企業秘密の重要性は理解している。

 

「いや、絶対に秘密って訳じゃないが、半端な説明だと誤解を生む案件だからな。

 地球寮は、今日は寮生が揃っているのか?」

 

「ああ、寮に全員いる」

 

「ラウダ。悪いが、地球寮に行って説明を頼めるか? 資料を使った奴で」

 

「分かったよ兄さん。さて、食欲が無くなる話だから覚悟しろよ」

 

「よし。今日はラウダに御馳走しよう。話はそれからだ」

 

本気で逞しいな。お前は……

 

 

 

 

 

 

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