ラウダの野望   作:山ウニ

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ディランザ計画(上)

 

ここで、僕が「地球の開発をしよう」と、父さんに進言したところで、耳を貸してもらえない事は明白。

これまで、戦闘用のMSを製造していたのに、例えばモビルクラフトの製造会社にしようなど言っても、急な路線を変更なんて出来るはずが無い。

モビルクラフトの代わりに、モビルスーツを使用する。方向としては悪くないが、わざわざ高価なMSを使用するシーンは限られるし、それなら安いブリオン社のMSを選ぶに決まっている。

だから、もっと安くする。装甲は紙装甲で十分、パワーはそこそこあれば良い。速度なんて不要。

しかし、それは今までのジェターク社とは真逆の道。反発があるはず、いや、無ければおかしい。これまで積み重ねたプライドが許さないはずだ。

 

だが、やりようはある。

まず、MSの製造は駆動部となるフレームをベースに、スラスターのような推進機、バルカン等の内部兵装を取り付け、それを装甲で覆う。

このフレームを本当の意味での骨格に駆動装置を取り付ける形にする。

骨格はパーメットを内蔵させ、周囲をモーターやシリンダー等の駆動機で覆っていく。

 

「駆動機は異なる種類を……引く力と押す力は違っても良い、だが、並列処理で効果を上げる事が出来るのが最低条件……」

 

駆動機はあくまで人で言う筋肉に該当。MSは軍人だと言える。格闘戦に優れ、射撃に堪能。だが、その中でも射撃を得意とする者、格闘でも投げや締めを重視する者や打撃を重視する者で筋肉の付き方が異なる。

押す力、引く力、回す力、重いものを動かす力、速く動く力……それらは異なる筋肉になる。

その筋肉の鍛え方を、パーツの取り付けで再現する。単純に数が増えれば筋肉が太くなるのと同じ理屈で……

 

「プレゼンに必要な項目、この機体を生み出すメリット……」

 

政治情勢の問題もある。最悪、地球開発は諦める。少しでも食い込めれば上等なくらいで良い。

だが、開発した場合のメリットは最大限アピール。地球ならではの産物。食糧増加で、良質な食材が手に入る可能性。何と言っても市場が生まれる。

 

それらが無理でも、カスタム化しやすい機体が持つメリットは多い。

パイロットの得意とする戦い方を伸ばしたり、逆に弱点をフォローできる。

それに、訓練時はパワーが低い方が良い。車に例えれば、初心者に加速の良い車は危険なのと同じ。

 

「こんな感じかな」

 

新しいMSのコンセプトモデル、父さんに提出するプレゼンを作成。

 

1)MSの戦闘以外の可能性

今回のテーマでもあるMSの戦闘以外への道。それは父さん以外も、今後、ジェターク社の社員が気にかける事でもある。常に意識する事で、方向転換が必要になった際に準備しておくことが出来る。

 

2)地球を開発する事で得られるメリット

地球で子会社を起業する。質は置いておくが数は多いマンパワー。地域特性があるので特産品が得られる。

安くて良い品が得られる上に、その地域は住民の収入が増えることで市場価値が高まる。

 

3)2を実現するための、低価格MS

農地に開拓、工場の建築にMSを使用する事で、得られる高い労働力と、それ自体の売り上げ。

 

4)2が進行する上で予想される事態

ジェターク社が着手可能な地域なんて高が知れている。その事でアーシアン内での貧富の差が発生する。

貧しい地域のアーシアンからの攻撃が予想され、その防衛のためMSが必要になり売れる。

発想が死の商人? その通りですが何か? ジェターク社(うち)は兵器会社です。

 

5)容易な強化とパイロット補充

開拓建築に使用していたMSに、筋肉となるパーツを加え、頑丈な皮膚となる装甲に変更する事で戦闘に耐えうる。

同時に、重機代わりにMSを操縦していたパイロットも補充兵候補となれる。普段は戦争が嫌でも、敵が攻め入ってきたら話は別で、安定した収入と家族のためなら戦う者も出て来る。

 

6)新型MSのテストパイロット

そのコンセプトを持ったMSは訓練にも使用可能、むしろ優れていると予想される。

そのパイロットには、“ある人物”を推薦。

 

4と5は死の商人らしい発想だが、言いたい奴には言わせておく。

だが、全てを一気に着手するなんて不可能だし、必ず貧富の差は生まれる。結果的に対立の構造がアーシアンとスペーシアンから、スペーシアンと手を組んだアーシアン対純粋アーシアンに、仮にジェターク社以外が参入したら、そこはこれまでの対立構造と大きく変わる。

最早、単純な地球と宇宙の対立では無くなり、それぞれに複雑な利権が絡みあう。

それが理想。戦争や争いの無い世界なんて、可愛い発想は無い。戦争は必ずあるを前提にし、その上で拳を振り下ろさないよう縛り合う世界構造が良い。

 

ただ、進めていく中で注意することがある。最悪なのは、地球側が一気に繁栄する事。

これは明文化しないが、父さんにだけは告げておくとする。

繁栄が急激なら、そこには没落が急激な者が発生する。

経済力で優れ、それを誇りの拠り所にしていた者が、それまで見下していた相手に奪われる。

しかも、力は持っており、道徳心は低い。

困窮するスペーシアンの誕生は絶対に避けるべきだ。彼等が爆発すれば水の泡。

 

もし、対立構造がアーシアン対スペーシアンの内に戦争になったら勝負は決まっている。

その場合は、絶対にアーシアンを見捨ててスペーシアンに与しなければならない。

何故ならスペーシアンが絶対に勝つからだ。戦力が互角では話にならない。アーシアンが10倍の戦力になって、初めてどちらに与するか悩む程度。それでも僕はスペーシアンが勝つと断言する。

 

何故なら、戦争では高所の確保こそが肝要。戦争で最も必要な情報が得やすい上に、攻撃は高所から低所は有利。

基地や城のある高地の奪い合いですら、攻める低地側は多大な犠牲を強いるのに、大気圏の内と外では話にならない。

いざとなればガンダムシリーズ恒例のアレを実行するだけ。

この世界は、小惑星をラグランジュポイントに持って来て、プラントとして改造する。つまり小惑星の移動は楽勝である。

対してアーシアン側は、これを阻止する戦力を宇宙に擁していない。後は簡単なお仕事である。おまけに、アス高生徒を見れば、彼等に道徳心を期待する方が無理と分かるだろう。

 

まあ、そんな事態にはならないはず。急激な繁栄なんて、余程の奇跡でもなければ無理だ。

そんな事より、大事なのは最後の項目。

 

「出番だよ、兄さん」

 

喜べ! 感涙しろ! 偉大なる兄さんの勇姿を、本来の歴史より早く見れることを!

 

 

 

 

 

 

 

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