「アイツ、マジだったぞ」
シャディクとの決闘を決めた兄さんに、話を聞こうと部屋に入ったら、第一声がそれだった。
「冷戦出来ると思ってた?」
「思っていたな」
マジかよ……アイツ、冷戦構造という名の全面戦争を企んでいやがった。
どうしたら、そんな考えに至った?
いや、目的がベネリットグループの解体という手段になっていて、それだとマズいから頑張って目的を考えたってことは分かるんだけどさ、それにしても本気で検討とかしてないだろ。
まわりの奴は何も言わないのか?
いや、アイツ等も自己嫌悪組か。
思い返せ。本編でシャディクは何を考えていたか。
アイツにスポットが当たったのは、兄さんとエランが破れて御三家最後の敵としてだ。
別に周囲にケンカを売り回っている訳では無い水星女は、理由がなければ戦闘はしない。それまでは向こうから挑んできた。
増長していた兄さんはノリと勢い。
エランは、ペイルの意向でエアリアル目当て。
シャディクは、株式会社ガンダムの利権が目当て……ん?
そうだ。シャディクは決闘は本意ではなかった。
アイツは戦わずにエアリアルを手に入れようとしていた。
つまり、本気でエアリアルが欲しかったはず。
決闘最後の「ミオリネの隣にいるのは俺だぁ!」という恥ずかしい台詞がインパクトがあったから忘れていたが、アイツの狙いは、当初は
エアリアルを欲した理由は、普通に考えれば、あの戦闘能力。
量産化すれば……まあ、出来ないだろうが、それは分からないので出来ると思っている前提だと、グラスレーは大儲けだ。
でも、それだとシャディクの基本スタンスに反する。
だが、エアリアルの量産を、アイツが想像する冷戦構造で地球側がやれば、従来の戦力しかないスペーシアンに対し、質で上回ることが出来る。
だが、心中での優先はミオリネなので、あの恥ずかしい叫びになる。
いや、でもアイツがミオリネと本気で結ばれたいと願っていたら、いくらでもやりようはあった。
だが、それはしなかった。兄さんとの結婚を望んでいたくらいだ。
ミオリネの役割は他にあったとしたら……ん?
「ねえ、シャディクは兄さんと茶番をしようとしてたの?」
「流石だな。良く気付いた。アイツと俺で戦っている振りだ。実際に戦争は避ける。
デリングを見ていたせいかな。あのノリがベネリットグループ以外でも通じると考えたようだ。
それと、ベネリットグループの資産を全部地球に売っぱらえば、戦力のバランスが取れると思ってたらしいな」
「よく吐いたね」
「ここを落とせばどうなるって、お前のマネをした。
一瞬焦ってたな。でも、両陣営のトップが抑えれば大丈夫だと言い訳してたぞ」
「抑えられる訳ないじゃないか」
宇宙側と地球側のリーダーが衝突に積極的でなければ、全面的な衝突は回避できると考えたんだな。
それが、本来はシャディク本人とミオリネ。
順調に兄さんがホルダーを保持し続けて、ミオリネと結婚したら、最終的にはベネリットグループの総裁になる。
総裁に就くのがどちらかは確定しないが、当時の兄さんでは、政治面の話になったら
そして、シャディクとミオリネ。惹かれ合う2人が敵対する立場に……ロミジュリ? あの童貞め、その展開に酔ったか?
だが、今回はミオリネの代わりに兄さんに白羽の矢が立ったわけだ。まあ、前から考えてたようだし、今回もミオリネの事は意識していただろうな。
「ねえ、計画の杜撰さを突いた?」
「ああ、色々とな。あのバカ、視点が足りてない。広い狭いの話では無く、とにかく足りない」
視野が広い狭いとは言うが、それとは別に、視点の数が重要だ。色々な立場から考えること。
シャディクは、アーシアンの孤児という底辺視点と、スペーシアンの御三家の後継者という上流階級の視点の両極端しかない。
アーシアンだけでも、地球寮の面々みたいな人がいるが、その視点を想像していない。
その地球寮の中でも、マルタンみたいな奴もいれば、チュチュみたいなのもいる。
「まあ、頭良いはずだからな。本気で考えれば気付くはずなんだが、本気で考えていなかったと思うぞ。
やはり、お前が考えた通り、破滅願望持ちだな」
だろうね。自分を大事にするなら、後の世界での自分の居場所を考えれば、リアルな想像をするけど、自分を捨てているから、想像がリアルに出来ない。
これ、本編ではどう落とし前付けたんだ?
当時の状況からラウダが、あるいは兄さん自身がジェターク社の立て直しに奔走しているだろう。
そこで、資産の売却だ。ジェターク社としては許せるわけが無いし、ベネリットグループ全体としても同じ。
当然反アーシアンの機運が高まり、兄さんはその看板に打って付けだ。
おまけに、ミオリネも、シャディクの幼馴染だという、この時点では汚点がある。
下手にシャディクを擁護しようものなら、男女の関係を匂わせればいい。それでミオリネを辱めることに成功し、ベネリットグループから追放できる。おまけにシャディクのダメージは増大。
ミオリネを排除すれば、アーシアンを守ろうなんて聖人君子は、ベネリットグループに存在しない。
グエル・ジェタークという怒りに猛った悪鬼が猛威を振るうだろう。
あ、そう言えば、忘れてたけど、シャディクって死因が決まっていたような?
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「こんな石っころ、ミカエリスで押し返してやる!」
地球に落下するプラントクエタを押し返そうとする、シャディクの操縦するミカエリス。
シャディクの元に集ったシャディクガールズを始めとする革命軍のメンバーも援護する。
「シャディク、一つだけ教えてやる」
その姿を見ても、仮面を付けたグエルの冷たい声は変わらない。
「それを可能にするには、
その言葉を肯定するように、ミカエリスは大気圏に突入。
空気の圧縮熱で加熱され、空気の壁に潰されて、人も機体も区別できないまでに混ざり合う。
その姿は正に
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コオォォォォォ―――ンポタアァァァァァァァージュ!!!
や、やりやがった。水星スタッフめ、エランの焼きトウモロコシにミオリネのフレッシュトマトで、嫌な予感はしていたが、まさか逆シャアの名場面を使ってコーンポタージュを作るとは。
確かにアレだよ。グーグルでシャディクを検索すれば、コンポタやコンポタの作り方がヒットしたさ。
でも、よりによって、このシーンを使うとは……つーか、コラボの意味を知ってるのか? 販促だぞ。販売を促すを縮めて販促だからな。それなのに、営業妨害に片足突っ込んでるじゃねーか。
でも、これどうすんの? 隕石落ちたよ。
まあ、宇宙と地球の全面対決になったら、地球側に勝ち目はない。
地獄絵図に君臨する兄さんか……見たくないな。
だが、本当にどうしようもなくね?
だって、圧倒的な戦力差だよ……圧倒的? まさか!
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椅子に座り、戦況を見守るグエル。その表情は余裕に満ちており、勝利を確信していた。
「フッ、圧倒的じゃないか、我が軍は」
「どうやら、そのようで」
そのグエルの背後から銃を突きつけるキシリ…じゃなく、ラウダ。
「冗談は止せ」
「意外と、兄さんも甘いようで」
額を撃ち抜かれ、宙に飛ばされるグエル。
「父殺しの罪は例え総裁であっても逃れられることは出来ない! 異議のある者はこの戦いの終結後法廷に申し立てろ」
「グエル総裁は名誉の戦死をなされた。ラウダ先輩、采配を」
「ペトラ、助かる」
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ラウダ! この獅子身中の虫めえぇぇぇぇぇ!!!
何でここで父殺し云々言ってんだよ!
これで、逆転されるじゃねえか。指揮系統が乱れて……いや、まだ足りない。
相手は連邦じゃ無いんだ。大将の入れ替わりでどうにかなる戦力差じゃない。
だったら、続きがある。
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「フッ、圧倒的じゃないか、我が軍は」
「どうやら、そのようで」
そのラウダの背後から銃を突きつけるのはペトラ。
「冗談は止せ」
「意外と、ラウダ先輩も甘いようで」
額を撃ち抜かれ、宙に飛ばされるラウダ。
「兄殺しの罪は例え総裁代理であっても逃れられることは出来ない! 異議のある者はこの戦いの終結後、法廷に申し立てなさい」
「ラウダ総裁代理は名誉の戦死をなされたのだ。ペトラ、采配をするのだ」
「フェルシー、助かる」
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この女、何してやがる! お前に総裁が務まるとでも思ってるのか!
いや、でも戦場での代理くらいなら……これでも戦力差はひっくり返らないと思う。
まだだ! まだ終わらんよ!
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「フッ、圧倒的じゃないか、我が軍は」
「どうやら、そのようで」
そのペトラの背後から銃を突きつけるのはフェルシー。
「何の冗談フェルシー?」
「意外とペトラも甘いのだ」
額を撃ち抜かれ、宙に飛ばされるペトラ。
「もう争いは止めるのだ! これからは争いは競走で勝敗を付けるのだ!」
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アスティカシア学園がトレセン学園にいぃぃぃぃぃ!!!
どうすんだよ? あの馬娘、世界を書き換えるなんて真似しやがって、とんでもない地獄絵図……でも無い?
あれ? 平和になったぞ。この世界ならプロスペラやアリヤが何を企んでいようが関係ない。
ヤバいな平和の女神フェルシー・ロロとかいう幻影が見える。
これってガンダム史に残るハッピーエンドだろ?
いや、そうじゃないから。ラウダが兄さんを殺ってから頭がおかしくなった。
そもそもアニメの展開を考えている場合じゃない。
落ち着け僕。シャディクの凶行は防げる。これは確定。何故なら兄さんが決闘の約束をしてきたって事は、何らかの提案がされたはずだ。
つーか、それを聞いてないよ。
「ねえ、兄さん」
「ん? どうやら落ち着いたか。まあ、飲め」
何時の間にかコーヒーが入れられていた。
最初は無かったような? たまに兄さんって不思議な事をするよね。
ああ、美味しい。
「ねえ、聞いていなかったけど、決闘の経緯と狙いは?」
「向こうから言ってきた。アイツが勝てば言う事を聞くって約束」
「ふ~ん、戦場やその他条件は?」
「こちらで決めろとさ。ただ、一騎打ちが希望だ」
「なるほどね。とことん自殺願望持ちだ」
「油断してたら足元救われるぞ。それで、俺がベネリットグループ崩壊の引き金を引くとか」
そんな物騒な条件をアイツが言った時点で、決闘委員会に言えばOK。
つまり、そんな無茶な条件をアイツは言えない。いや、言う気が無いどころか、勝つ気もない。
「油断はしないよ。それはシャディクだって気付いてるさ」
アイツの事だ。
今回もシャディクの戦闘スタイルや戦場を丸裸にしてから挑ませてもらう。
「兄さんは、シャディクを叩きのめして、アイツの希望を叶えてやればいい」
自分で気付いたはずだ。己の破滅願望を含めた歪みが、大切な物を傷つける結果しか生まない事を。
もう、自分でどう進めば良いか分からなくなってるだろう。
だから、兄さんに縋っている。望みを叶えてやろう。倒して、言う事をきかせれば良い。
「手下にでもしてやればいいよ。シャディクもそう望んでいる」
だから決闘を挑んだ。負けると分かって、いや、負けるために。
言う事を聞くという約束も、言うことを聞きたいのさ。もう、自分では何処に向かえば良いか分からなくなっている。
「あんな手下はいらないさ」
そう、あんな手下………………………………え?