ラウダの野望   作:山ウニ

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ディランザ計画(中)

 

「お前が作った資料、読んだぞ」

 

ヴィム・ジェタークは息子が作った資料を横に置き、それを作った我が子を見る。

彼を産んだ愛人からは天才だと聞かされていた。

実際に目にして、それが偽りでは無い事も認めている。

 

「発想は悪くない。少なくともMSの方はやってみる価値がある。

 だが、地球は難しいぞ。単純にスペーシアンと言うだけで反発する者が出て来る」

 

「それはそうでしょう。それだけの事をやって来たのですから。

 かと言って、そこから目を逸らしていたら、いずれは共倒れです」

 

「和解できると思うのか?」

 

「分かりません。今まで放置してきた問題を先送りにしてきた結果が今です。

 ですが、目を逸らさずに、そろそろ選ぶときでしょう。

 共倒れを目指すか。時間をかけて対立の構図を書き換えるか」

 

「……共倒れか」

 

「ならないとお思いで?」

 

ならないはずが無い。そう。ラウダが普通の子供だとは思わないが、これだけは子供にでも分かる事だ。

 

「……まあ良い。一応は下調べを進める。確かに上手く行けば、こちらとしても良い話だからな」

 

「焦らない事です。対立の構図を変えるなんて直ぐには出来ません」

 

「分かっている! それで、テストパイロットに、お前は?」

 

「乗るつもりですが、メインは兄さんです。宣伝も兼ねて」

 

「……お前は、俺の地位に興味が無いのか?

 お前の才覚はグエルを超えると思うが?」

 

これほどの才覚がありながら、ラウダは兄を支えると言う姿勢を崩さない。

グエルも決して凡庸ではない。むしろ才気があり、皆に慕われる人柄は好感が持てる自慢の息子だ。

グエルをラウダが支える。それは当初からの構想だし、ラウダが現状で満足しているなら問題は無い。

だが、自分がラウダなら、間違いなく兄を蹴落とす。そして、ラウダは自分の息子だ。

そんな事になるくらいなら、最初からラウダを後継者に指名して、グエルには自由にさせる手もある。

 

「父さんは僕が普通に見えますか? また、付いて行きたいと思えますか?」

 

「全く見えんし、息子で無かったら距離を置く」

 

「ですよね。兄さんは光だ。そして、僕は闇。

 闇は光に隠されるのです。それで良いし、それが良い」

 

どこか恍惚と話す息子を気味悪く思う。

同時に、ラウダを自由にするのは危険だと感じる。

 

「そうか。ではディランザはいったん白紙にして、コイツにする」

 

「ディランザ?」

 

「次の新型だ。デスルターの後継機として設計されていた。

 設計段階は終わりかけだが、お前が言うように、単なる強化版では先行きが暗い。これを新たなディランザとして開発する。

 お前にも意見を聞くことがあるだろうが、グエルと一緒にモビルクラフトの操縦も覚えろ。

 むしろ、グエルの操縦の腕が上がるにはどうすれば良いか考えろ」

 

「分かりました。頑張ります」

 

最後の言葉で嬉しそうに返事をする息子を見て、呆れそうになる。

この狂人は、グエルに任せるしかない。

ここに、自分の後継者をグエルと決定した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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ディランザの完成目標は2年後を目指すそうだ。

最低でも3年後、丸3年も無いが、ベネリットグループが10周年を迎える年には、発表が出来る状態を狙っている。

つまり、本編が始まる5年前を目標にしている。

そんな訳で、僕は兄さんと一緒にモビルクラフトでレースをしたり、作業をしたりで楽しい時間を過ごしていた。

 

「なあ、ラウダ。いま作っている新型って、どんなMSになるんだ?」

 

「徹底した汎用性。兄さんは、そのテストパイロットを務めて貰う」

 

「いや、父さんからパイロットの件は聞いたけど、それを普通、素人の子供にやらせるか?」

 

「素人の子供だから良いんだよ」

 

確かに、新型MSは性能をアピールする必要があるので、腕の良いパイロットを採用する。

ディランザだって、完成後のテストには、腕の良いパイロットにも依頼する予定だ。

だが、同時にこの機体は操縦に不慣れなパイロットでも扱えるアピールも必要だ。

そこに打って付けなのが、次期CEOであるグエル・ジェターク。

 

今から8年後、水星の魔女の舞台では、御三家の次期CEOが三人そろってアスティカシア学園のパイロット科に在籍している。

これは、“俺”にとっては異常事態だ。正気を疑うと言っても良い。

同時に在籍している事では無い。同じ年が三人。確率は低いが、実子は兄さんだけだし、偶然だってあり得る。

だが、問題は全員がパイロット科であること。

 

俺の常識では、会社のトップの後継者が一番に優先して学ぶのは経営戦略。これは説明するまでも無い。

次いでメカニックだ。自社が作っている製品を知ること。自動車メーカーで言えば、多少経営には疎いが、車に詳しいトップ。昔のホンダみたいな会社もあるし、まあ分かる。

だが、パイロットは無い。車の運転が上手い、レーサーやプロドライバーが自動車メーカーのトップなんて無いだろ。1人くらいなら、例えば兄さんみたいにヤンチャな性格ゆえに、なんてこともあるだろうが、他の2人は分別がありそうな性格である。何考えてるんだと放送を見ている時は思ったものだ。

 

だが、“僕”の常識は違う。いや、この世界ではだな。

自社の製品、ことMSでは、トップが操縦することが望まれている。

先の自動車メーカで例えれば、レーサーがトップなら、変な製品は作らないと言う信頼が生まれるからだ。

逆に経営戦略に優れるが、MSの操縦が下手なら、性能や安全は2の次の粗悪品を作っていると疑われる。

だからこそ、御三家の次期CEO候補は、全員がパイロット科で、予備とも言える僕、ラウダ・ニールまでパイロット科になる。

 

そして、我がジェターク社の次期CEOは、こんな子供の頃からMSを操縦していましたというのは、かなりのアピールポイントになる。

見た目も良く、陽性な性格である兄さんならカメラ映えもするし、格好の宣伝材料です。僕なら買うね。絶対に買う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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