ラウダの野望   作:山ウニ

40 / 98


調べても分からなかったので、この作品ではアスティカシア学園は9月に入学と新学期スタートの三期制としています。

それと誤字脱字報告感謝です。





ウシとスイギュウの違いが分からない

 

 

「それがホルダーの制服か」

 

「はい。どうも悪目立ちしている気がします」

 

休日に、兄さんと2人でジェターク・ヘビー・マシーナリーの本社に来ていた。

久しぶりに会う父さんは、ホルダーになって、白い制服を着た兄さんを苦笑しながら見ていた。

 

「親として誇らしいし、目出度い事だが、地球の景色に慣れた所為かな? あまり趣味が良い色とは思えんな」

 

その言葉に、兄さんも苦笑している。

確かに特別感はあるが、派手な色合いだし、周囲の評判も良いとは言えない。

兄さんは肩にかけているだけなので、まだ見られるが、試しに真面目に着た時は、笑いを耐えるのが大変だった。

 

「服の事はどうでも良いとしましょう。それより、次の予定を教えてくれますか?」

 

「ああ、今度は大仕事になる」

 

そう言って、モニターに地図を表示させる。

それを見て、僕は思わず声を上げた。

 

「ダム? いくらMSを使っても流石に無理ですよ」

 

場所は東南アジア。その地形を見れば、何を作りたいかは分かる。

それはダムの建設予定の場所だった。

 

「相変わらず驚かせ甲斐の無い奴だな。

 ラウダが気付いたようにダムを作る。だが安心しろ。完成は10年後で、今回やるのはトンネルと地盤作りだ」

 

ダムを作るには、事前にそれまで通っていた川が流れている場所を工事するので、その水を別の場所へと通さなくてはならない。そのためのトンネルだ。

確かにトンネル掘りならMSは適している。車が通るような狭いトンネルでは無く、高さも広さもいるので、MSでの作業は適している。おまけに地盤落下が起きても、MSならそう簡単には潰れない。

 

「一応は10年と言ったが、もっと時間をかけるかもしれん。時間をかけながらでないと生育が間に合わないしな。

 そのため、トンネル掘りの先も工夫する」

 

「生育?……もしかしてスイギュウですか?」

 

地域とトンネルの先という言葉で、何を育成するかを予想した。

スイギュウは牛と比べて、脂身は少なく肉質が固いので、食用としては人気が劣る。

おまけに、水の牛と書くように、水浴びや泥浴びを好むので、厩舎での飼育が難しく、プラントでは扱っていなかった。

だが、エサは牛より少なくて済み、また乳は脂肪分が乳牛の倍はあり、バターやチーズの原料として優れている。なんでも本物のモッツァレラチーズはスイギュウの乳らしい。牛のしか食べたこと無いけど。

 

「そうだ。前に食わせてもらったが、チーズが実に旨くてな。それに干し肉も硬すぎるが、酒のつまみに良いぞ」

 

「ズルい」

 

兄さんが不満そうに呟く。干し肉はあまりにも硬いのでハンマーで叩いて、肉の繊維を壊してから少しずつ食べるそうだ。兄さんは変わった食べ物が好きだから興味津々だ。

でも、スイギュウの干し肉とか、本当に美味しければ、前世で売られていて食べる機会もあったと思うけどな。あまり期待は出来ない。

 

「それで、基礎工事をしながら、河川の流れを調整して沼地を確保する。

 これは、稲作の耕地の事も計算している」

 

「ワクチンは間に合ってますか?」

 

水田には蚊の幼虫であるボウフラが発生する。

蚊は、歴史上最も人を殺した生き物だ。根絶は不可能で、蚊が媒体となる病気の対策は必須と言って良い。

 

「当たり前だ。お前の手を何度も煩わせてたまるか。

 すでに発生する病気を調べて、ワクチンの培養と予防接種に取り掛かっている。

 初期から手を出している地域だけあって、向こうの政府とも直ぐに話がついた」

 

水田で収穫される米は、小麦に比べて土地面積に対して収穫が高い利点があるが、急速に拡大させると、疫病の原因となりパンデミックを発生させる。

2年ほど前に開発地域で、その兆候があったので、事前に僕がワクチンを準備させていた事があった。

実際に疫病が出た時は、ワクチンのお蔭で大した被害は出なかったが、本来なら予防接種をしている方が望ましい。

 

「あの時はお前に助けられたからな。今回はしっかりと準備をしたつもりだ。

 だが、何か気付いた事があれば、すぐに言ってくれ」

 

そう言って、当地で発生する病気と、ワクチンの種類を出した資料を表示させる。

同時に、そこへ行く僕たちの予防接種の予定表も書かれていた。まあ、僕たちの分は前回もやっているし、スペーシアンが地球に行くのは、日本人の海外赴任と同じようなものだ。危険がある地域に行く際は当然のように予防接種はある。

 

「それにしても、想像以上に大規模ですね」

 

「乾季の内にやれるだけやっておきたいからな。

 ディランザの数は用意できる。問題はパイロットとメカニックだったが、その問題を解決してくれたからな。

 期待できるんだろ?」

 

「そこはシャディク次第ですが、同時にジェターク社(ウチ)との勝負になるとラウダが挑発していますので、負けたら大恥ですよ」

 

「安心しろ。組み立て式の簡易住居は、今回は学生だけでなく、向こうの作業員も使うからな。グラスレー寮の全員が来ても大丈夫なだけ準備はしてある。

 実地の時の班決めと事前の教習はしておけよ」

 

「分かっています。すでに予定は組んでいますよ」

 

「抜かりはないか。それにしてもサリウスの養子は、随分とヤンチャだったようだな。サリウスが笑っていたぞ」

 

ヤンチャで済ませられるレベルじゃ無いんだけど、どこまで聞いているのか怖くて聞けない。

 

「それと、これを見て分かったと思うが、MSだけでは無理がある。市販されているモビルクラフトより、もっと小型の奴が欲しいが、残念ながらジェターク社(ウチ)は手が出ない。

 製造ラインはディランザで手一杯だ。それに開発チームも、新しいパーツで手いっぱいの上にラウダの提案に従って、新型フレームでのギャプランの制作にかかりっきりだ」

 

新型フレームは、ディランザに使用していた骨だけのフレームでなく、ほぼ同じ太さで駆動機構を設けたフレームの事だ。

これを使えば、より強力なMSを作れると踏んでいたが、ディランザに使用して限界値と同じだけの強化パーツを付ければ、強度の関係から破損してしまう問題があった。

でも、フレーム耐久値までパーツを組めばディランザ以上の出力は得られるし、構想だけはあるダリルバルデに用いれば、ディランザより5割増し程度の強化が可能だと計算されている。特に細身な分、速度に関しては倍とまではいかないが、それに近い数値が得られそうだ。

ただ、単にダリルバルデをそのまま再現しても芸が無いので、それは先送りにしてギャプランを強化する方向で進めている。

ギャプランなら、今までの、コストの割に中途半端な機体から、前以上の高コストだが、それに見合った以上の性能を発揮し、現状のジェターク社にとって有益な、防衛用MSとしての性能を発揮できると計算している。

思い返せば、コイツに夢中になっている間に、兄さんがダイゴウとの騒動を起こしたのだが。

 

「もしかしたら、同じことを考えているのかもしれませんが、提案があります」

 

「聞こう」

 

「以前、ラウダが考案したマルチプルモビルクラフトをグラスレー社との共同開発と言う事にして、これ以後の開発をグラスレーに委譲してはどうでしょう?」

 

マルチプルモビルスーツと言えば、ヴィクトリータイプの事である。

あれは、コアファイターを主軸に、ハンガーとブーツを取り付ける設計で、コアファイターにエンジンやスラスター、コンピューターとコストのかかる部品を集約し、ハンガーとブーツは低コストで使い捨てにさえできる設計だが、それなら、ハンガー(上半身)ブーツ(下半身)は違う形があっても良いじゃないかと思った事は無いだろうか? 僕はある。

 

MSの手足は高いので、実際は難しいが、モビルクラフトなら別だ。

コアの部分は、当然ながら変形機構は無し。サイズも1人乗り自動車クラスのサイズで、背後にエンジンとスラスターがある分長くなるが、それでも普通乗用車以下だ。

それに通常の足以外にキャタピラ型や多脚型で地形に合わせた選択が出来る下半身に、持ち替え可能な手も、異なる長さや太さ、持つではなく最初から″そういう腕”が付いている型を選択できる上半身。

規格さえ統一すれば、幅広い(マルチ)活躍が出来るモビルクラフトが出来る。

 

「理由は?」

 

「ラウダと相談した結果ですが、第一に無理に制作して発表すれば、他社も似たコンセプトのものを作り出すでしょう。その場合は、モビルクラフトの分野は決して得意とは言えない我が社より、低コストかつ高性能の機体が発表される可能性が高い。

 対策として、規格さえ統一出来れば、今後の開発でも技術的な発展性が望めますが、我が社単独で発表しても他社が規格を合わせてくれる可能性は非常に低いと予想されます。

 ですが、ジェタークとグラスレーの共同開発ともなれば、他社が同様のものを制作しても市場の確保は難しいでしょう。

 第二に、MSの型式番号を見ても明らかですが、グラスレーは我が社より開発チームが多い。それをモビルクラフトに転用できれば、発展性が望めます。

 第三に、この企画の長所の一つに、地球の工場で生産が見込める事です。コア部分は宇宙で製造して、上半身(トップ)下半身(ボトム)は地球再生計画を担える原動力になります。

 それは、我が社だけで行うより、協調路線を歩む予定のグラスレーを巻き込むべきですが、確実に巻き込むためにも、向こうが有利になる条件でも構わないと考えます。

 最後に、この機体は少しでも早く欲しい。ですが、父さんが先に言ったように、我が社の開発チームには余裕がありません。

 その点、グラスレーに余裕があるかは分かりませんが、少なくとも知り得ている情報の中では、これ以上に優先するものを作っている可能性は低いでしょう。

 なお、この設計自体が、我が社の技術陣より、グラスレー向きと言えます」

 

ジェターク社は頑丈設計にしたがる傾向にあるので、コアが無駄に大きくなってしまう。

コアが大きくなれば、他も大きくなるので、それだけコストが上がってしまう。

 

「良いだろう。まあ、想像していたようだが、俺もグラスレーに任せるべきだと考えていた。

 今後の需要を考えれば、価値は高いだろうが、現状ではな。

 発案はラウダだし、お前たちに相談してから判断しようと思ったが、そちらから言ってくれて助かった」

 

苦笑を漏らしながら、得手不得手があると漏らす。

だが、規格さえ出来てしまえば、地球で工場を作ってパワータイプの上半身(トップ)を作ることも出来るし、何と言っても、全長が3メートル程度の人型の機体は、今後の作業に使いやすいので需要が伸びるだろう。

その内、本格的に参入できるはずだ。

 

その後も、色々な話を詰めて予定表を作り上げていく。

今回は約1か月の長期休みだが、年を跨ぐので前期と後期に分けて参加者を募ることにした。

 

 

 

 

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。