いつも誤字脱字報告感謝です。
最近、目が疲れやすい……
戦争シェアリングでさえコントロールできない地獄絵図。
だが、それは兵器を売る側にして見れば、買い手の増加を意味するのではないか?
ナジはジェタークが、それを狙っている可能性を考えた。
「……最初からそれが狙いだったとか?」
「無いね。ヴィム代表のことは誤解してたけど、あの人も含めて、ジェターク社のノリって組織と言うより運動部のそれに近い。
悪く言えば排他的で身内には甘く、良く言えば情に厚い。で、良くも悪くも行動的。先ずは現場に行け。
結果、ヴィム代表の周辺は、アーシアンへの情が湧いている。少なくとも民衆や子供は戦争に巻き込みたくないと考えているみたいだ。
それに、基本的にジェタークはトップに従う集団だ。ヴィム代表がアーシアンに情を感じ、戦争シェアリングに反対するなら、社員はそれに従うし、反対ならそれを糾合する頭が必要になるけど、それも無理。
何故なら、ジェタークは一族経営だから、対抗できるのは2人しかいない。
その内の一人であるグエルはヴィム代表以上にアーシアンへの情がある。アイツも典型的なジェタークの男さ。そこら中でシンパを増やしてるけど、それだけ守りたい相手を増やしてしまったとも言える。
もう一人のラウダの考えは良く分からないけど、アイツの場合はグエルシンパの総大将と言って良いからね。兄の意志が全て。グエルが白と言えば、どんな手を使ってでも黒を白に塗り変える男だよ」
「ヤバい一家だな。特に最後」
「言葉にするとそうだけど、本当にヤバいのは真ん中だ。
考えてみてくれよ。スペーシアンの御曹司が、どうやったらアーシアンのシンパを作れるんだ? 有り得ない事を普通にやって、なおも増殖中だぞ。
ラウダは思考がおかしいが、グエルは存在がおかしい」
会ってみたい気持ちと、会うのが怖いと思う気持ちが衝突する。
「話が逸れたけど、ジェタークもグラスレーも戦争シェアリングの拡大は望んでいない。
そもそも、ジェタークの今の行動の切っ掛けは、これ以上、戦争シェアリングでは稼げないからだ。
それどころか、内乱での争いは戦争や紛争以下の規模での衝突が多い。携帯型のロケットや銃は売れても、高価なMSなんて売れやしないさ。
そのくせ、虐殺やレイプと言った反吐が出そうな事例が多いのも内戦だ……テロリストの働きどころが多いのも内戦だけどね」
「冗談じゃ無い!」
「何故? スペーシアンが相手なら、民間人でもやるだろ?」
「それは!」
「スペーシアンとアーシアンは別だから? スペーシアンは人間じゃない?
まあ良いさ。とにかくジェタークは地上の民間人に犠牲が出るのを望んでいない。
だけど、このままじゃマズい。ジェタークが何を求めているか分かるよね?」
嫌な話の進め方をするな。そうナジは怒鳴りつけたかったが、ここでの反論は難しい。
ジェタークはアーシアンとスペーシアンの差別をせず、民間人の安全を優先して考えていると主張して、
そして、シャディクとジェタークが何を望んでいるのか見当も付く。
悪い話では無い。だが、素直に頷けない自分がいる。
「お前だって、生まれは地球の紛争地域だ。可能だろ?」
「だから最初に言ったよね。俺はスペーシアンに染まってしまった。それにグラスレーを背負うと決めた。
つまり、媚びる対象だよ。そんな奴に務まるもんか」
「だが、俺はただの…」
「ああ、待って。みんな話に付いていけてない。イライラしてる」
その言葉に周囲を見渡すと、イラつき以上に困惑が広がっている。
「いや、ナジって理解力早くて助かるよ。言葉にする前から理解してたからね。
でも、ここにいる皆に分かるように、改めて言葉にするね」
そう言って、シャディクは両手を広げて満面の笑みを浮かべる。
何処か怪しげな笑みは、最初の人類を
「ナジは、戦争シェアリングの拡大や、コントロールできない内戦には反対だよね?」
「当然だ」
「ヴィム代表は言ったよ。アーシアンなんて人種はいないと。それぞれが守りたいものがある。
それは、基本的に自分のコミュニティだけど、それを許せないと思う?」
「いいや、当然の考えだろ」
「でも、素直に要求を聞いていたら、格差が広がるのは避けられない。
だから、特定のコミュニティを贔屓せず、アーシアン全体の事を考える人がいると良いと思わない?」
「……思う」
「出来れば、難民を率いるとか、そんな実績があると信用出来るよね? まさか難民に対して知らん顔が出来る奴が良いとか?」
「……今の地上で難民を無視する奴に、碌な奴はいない」
「だよね。それと、スペーシアンに対して武力闘争も辞さずなんて気骨があると、なお良いよね?
そうでなかったら、スペーシアンの言いなりだし」
「……そうだな」
「そんなアーシアン全体の事を考え、今後の地球再生計画に対し、公平な助言や必要とあらば文句を言ってくれる人物を、ジェタークとグラスレー連合は欲してる。
ナジ・ゲオル・ヒジャに、いや、フォルドの夜明けに協力して欲しい」
どう返事をすれば良い?
そもそも自分に出来ることがあるのか、ナジは同志とシャディクを交互に見ながら考えた。
そして、シャディクと目が合った瞬間、怪しげな笑みから、人懐っこい笑みへと変化する。
「まあ、そんな訳で考えておいてくれ」
「今で無くても良いのか?」
「ああ、考えたり、相談したりする時間が必要だろ?
2週間後に来るから、また話をしよう。ちなみに協力を拒否しても構わない。
ただ、待っているから」
「何故そこまで?」
「他に適任がいない。先の条件に当てはまる人物を推薦してくれるなら歓迎だけどね。
さてと、避難している人達と会うけど、ニカはいるかい?」
「ああ、あの子はどうする? 連絡役は不要なんだろ?」
「うん。役目は無かったことにする」
「役目には抵抗があったようだが、アスティカシア学園に行けることだけは、楽しみにしてたんだがな」
「だったら良かった。別の方法で入学の推薦を得られる手段を持ってきたんだ。会えるかな?」
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「問題は人か? 水か?」
上流側の田んぼを復旧すれば、その流れを下流域まで引き延ばすことが出来る。それに地下水も見込めるようになる。
だが、周囲を見ても物の見事に廃墟だ。
工場跡に住宅跡。避難民がいるのは廃校と来た。戦場になったのなら、それらしい壊れ方をするが、普通に朽ち果てている。まあ、戦争する上での
周囲は森が広がってきているし、生物が住めない地域では無いのにこの廃墟。
「やはり、多くは宇宙か」
明らかに、この国の人口が少ない。天災が多くて人が住みにくくなり、そこで技術があれば、当然ながら宇宙に活路を見出すよな。
おまけに、フォルドの夜明けが率いている難民の数は多くない。
つまり、マンパワーには期待できないってことだ。無暗に田畑を増やすのは得策ではないだろう。
「良い場所では無いな」
ボヤキながら、瀬戸内海を周回するコースを飛行する。
かつて、神戸や呉を始め重工業を牽引した場所や、明石の海産物は有名どころだ。
だが、見渡す限り、そんな場所でさえ人が見当たらない。
復興するのに、楽な場所と言うのがある。例えば水源さえ確保できれば、暑い地域の方が良い。
前世では地球温暖化が叫ばれ、自然が壊れていくとの声が多かったが、人にとって厳しい気温でも、植物にとっては温暖な方が育成が進む。二酸化炭素も毒どころか大切な養分だ。
人口が減っている今なら、自然の回復量の方が高い。
暑い地域なら川の流れを変えたりと、強引な開拓も進められるし、そこへ難民がいれば人でもカバーできる。
まだやったことは無いが、寒い地域でも、その地域に適した牧畜に挑戦できる。
その点、日本は両方が可能だ。農業、畜産、漁業、何でも出来る。
だからこそ、この地域は中途半端で困る。万能は無能と言うが、こんなケースで使うとは思いもしなかった。
これで、優秀な農業知識や畜産知識があれば、ブランド品にチャレンジも出来るが、ジェタークにもスペーシアンにも、そんな知識は無い。
漁業が一番マシな気がする。
今までは、農業、それも穀物をメインに難民に作らせて、余剰人力を工業等に回していたが、政府と話して米作りを別途支援して、難民には漁業をやらせても良い。
それに、雨が少ない地域なんだから、干物づくりがしやすい。
『ラウダ、話が終わった』
あれこれ考えていたら、シャディクから通信が入った。
どうやら、無事に終了したらしい。
「シャディクか? 生きてるみたいだな」
『大丈夫だよ。それと例の件、ニカには説明したから来てくれ』
「分かった」
難民区域に方向を向け、速度を上げると直ぐに到着。
大丈夫だろうが警戒は忘れない。MSに変形して、ビームキャノンを何時でも撃てるようにして周囲を警戒して、ゆっくりと下降する。
シャディクたちは直ぐに見つかった。集団の先頭にいる。その背後に大男と明らかに民間人ではない連中が。
見える限りを観察するが、2人の地球の魔女はいないな。やはり合流前か。
「あれ?」
思わず声を上げてしまった。ニカ・ナナウラらしき少女も近くにいるんだが……少なくとも、今はMSを見て興奮気味だが、その裏に暗さがあった。
前世の記憶では、地球寮生でチュチュに次ぐ印象の強いキャラだったから、覚えているんだけど、イメージが異なる。
髪が長くボサボサなのは、この環境だから仕方がないとは言え、目に力が無い。
絶望している弱さでは無いが、不安、いや、臆病さがにじみ出ている。
単なる不安なら、今回の件に対する不安だろうが、そうでは無い。もっと根っ子の部分が違う。
何処かで見た目。多分、難民の中にいるタイプだが、ハッキリとは思い出せない。
そして、思い出せないまま着陸を果たし、タブレットを持ってコクピットを降りる。
気にはなったが、今日は会話どころか目も合わせない。あくまで僕はシャディクに次いで、ここの避難民と区域を見て来るだけの立場だ。
「待たせた」
「紹介するよ。ここのリーダーのナジだ」
互いに自己紹介をし、施設を案内してもらう形で、避難民が使用している校舎へと入る。
緊張感を解すようにエナオが質問してくる。
「上空から見てどうだった?」
「色々と可能性がある。と言えば聞こえが良いが、実際は何をすれば良いか悩むところだ。
普段は穀物から手を付けるが、米を余分に作っても売れないだろうな」
基本戦略である、穀物と豆を作り、次いで他の作物を作り、自分達の摂取分を上回るようになったら、元から生活していた住民に売る。
同時進行で元からいた住民が働ける工場を建てるのだが、この国では米は間に合っているだろう。
「ああ、何でも米は別の地域で作ってるし、ここで作るより美味いそうだ」
「だろうね。農産物の味は水が重要だが、米は特にその傾向が強い。むしろ、そこでの増産を頼んで、買い取れるよう別の産業に手を出した方が良いかもしれない。畜産や漁業の経験者はいないか?」
「聞いてはみるが、地域が違えばな……」
「その辺は、この国の人と話してからだ。人手を欲している相手がいれば都合が良いからね。
見たところ雑多な集まりのようだし、自分の流儀を貫こうなんて考えは無いだろ?」
「それは無いと保証する。俺の保証が役に立つかは分らんがな」
「いや、見れば分かるよ。ただ、これだけ周囲に元の住民がいない事から察してるだろうけど、この国は移民に寛容とは言えない。
大きな理由として基本的に周囲に気遣う国民性なんだけど、それで調子に乗って好き勝手する外国人に嫌な目にあわされたからだ」
「ああ、知ってる。その辺は事前に言われているし、こちらから合わせるようにしようと全員が納得している」
「なら、良かった。ちなみに普段は大人しいけど、キレると世界一危険な民族だと思うよ。
エナオも歴史を調べて呆れていたしね」
「ここの国民は怒らせたらダメ。昔は笑われたってだけで相手を殺していた首狩り族。戦争では狩った人の頭部を腰にぶら下げて戦い続ける狂人の群」
「……冗談だよな?」
「「本当」」
エナオとハモった。エナオは既に室町時代の日本人も学んでいる。それに最初は幕末だったし、日本人は危険な民族だと認識している。
そんな会話をナジやシャディクたちとしながら、途中の部屋でタブレットを置いて、そのまま進む。
このタブレットを後日発見したニカが、落とし主を暴いて送り届けるというシナリオだ。
面倒だが、それをやってこそニカは自力での獲得を実感できる。無条件でジェタークやグラスレーが後見しても良いが、それは彼女自身のためにならない。
これでミッションは終わった。だが、フォルドの夜明けの連中には、こちらと手を組むことに前向きになって欲しい。
「船を運転できるなら良いし、出来なくても直ぐに覚えることが出来そうな奴も多そうだ。
ここは海流が強いようだし、魚介類は上質だろう。漁業に手を出せば、それこそスペーシアンに高く売りつけて富を分捕ることが出来るんじゃないか?」
「船か。やれるかもしれん。それにスペーシアンから富を分捕るのも面白そうだな。
それにしても、スペーシアンのアンタが言うかい?」
「僕は気にしない。それに金や物を蓄えて何になる? 物流を良くすれば、欲しいものが安く手に入るし、そちらの方が豊かさを実感できる。本来、経済とはそんなものだ。
それに、経済が複雑に絡み合えば、戦争なんてマイナスにしかならない。物流が滞るからな」
「そうか、そうだな……」
考えてくれてるようだ。
でも、これ以上はこっちが何か言うより、自分達だけで相談した方が良いだろう。
シャディクと目が合うと手ごたえを感じているようだ。なら、吉報を待つとしよう。
例えば、技術的には可能でも、タコなんかは賢すぎて地獄絵図になるらしい