ラウダの野望   作:山ウニ

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親は子供とコイバナをしたがるが、子供は嫌がるからな

 

待って、ちょっと待とうか。

え? ニカがこうなったのって、ジェターク、正確には僕の所為?

どうする? 安請け合いしたけど、本当に大丈夫か不安になってきた。そ、そうだ。

 

「ところで、入学までは半年あります。それまでは?」

 

アス高に来るまで時間がある。そこでの矯正に期待できないだろうか?

そう思って聞くと、ジェターク社の重役の家で引き取るとのこと。名前を聞いたら、記憶にあった。確か気は良いが軽い感じのおっさんだ。

おっさんの下にJC(年齢的に)という別の意味で不安になる事態だが、奥さんはもちろん、同じ年頃の娘がいるそうで、生活面でもある程度の手本になる。

よし、何かあったら、そいつの所為にしよう。

 

「では、オープンキャンパスは見送った方が良いですね」

 

今日はここに宿泊して、そのままオープンキャンパス中のアス高に突入しようと思っていたが、ニカがこんな状態ならやめた方が良いだろう。何と言ってもジェターク寮は一人一部屋の個室だ。ベッドと机が常設され、キッチンは無いが狭いアパート並みの間取りである。

 

「お前が一緒に寝れば良いだろう。ちなみにナジは忙しいし、今日は一緒に寝てもらうぞ」

 

何言ってやがる。この酔っぱらいが。忙しいって酒盛りの相手じゃねえか。

って、今までナジが一緒に寝てたんか。

 

「あのですね、僕たちの年齢を考えてください。問題があったら困るでしょう」

 

「構わんぞ。初孫だ。無下にはせん。嫁にしてしまえ」

 

いい加減にしろよ。この酔っぱらいクソ親父は。

ニカが顔を赤くして挙動不審になってるぞ。

 

「でも、まあ、ジェタークの御曹司ともなれば、ニカは難しいでしょう?」

 

ナジは素面に近いのか、実に正論を言う。良いぞ、もっと言ってやれ。

 

「いや、構わん。この娘なら、むしろ好条件だ」

 

「何故? 彼の妻ともなれば、政略結婚で良い相手が選べるのでは?」

 

「逆だ。今のジェターク社(うち)で一番困るのが派閥争いだ。

 ラウダとグエルの関係は良好だし、現状で不安になることはないが、結婚相手によっては、本人にその気が無くても周囲が騒ぐ。こいつの実績はそうなる可能性が高い。ならないと思うほど楽天的ではないよ」

 

「その辺の相手の調整は、代表が選べば良いのでは?」

 

「正直、俺が無理に勧めてもグエルは納得しないだろう。あいつは俺に従順に見えても芯があるからな。こいつに至っては、平気で逆らうし、俺が選んで調整しようなんて諦めてる。

 どんな相手をグエルが選ぶか分からんが、アイツの選んだ相手より、ラウダが選んだ相手の実家が太ければ拙いことになるだろ?」

 

「なるほど、つまり次男の相手は、背後が無い方が望ましいと」

 

「ああ。ちなみに社外よりはマシだが社内も気を付けろ。重役の娘はもちろん、当人は良くても派閥に巻き込まれるだろう。

 ラウダに野心があれば、争えば良いだけだから、どちらかが不幸になるだけで、まだマシだ。だが、こいつには無い。

 つまり、兄弟の周囲が勝手に望まぬ争いをして両方が不幸になる。

 いや、こいつの場合はグエルを優先して、嫁を実家ごと潰すか。どちらにしても救いはないさ」

 

あれ? この酔っぱらい思ったより考えてる?

いや、騙されるな僕。常識的に考えて、15歳前後の男女を一緒の部屋で寝させるなんて正気の沙汰ではない。

でも、兄さんに逆らう存在は、誰であろうと潰すという常識は弁えているようだし……

 

「お前に強制できるとは思ってないが、心の片隅にでも入れておけ。

 まあ、嫁に逃げられた俺が言っても説得力はないがな」

 

そう言って笑い飛ばすが、普通は笑えないからな。

愛人にしても良いが、気を付けろとかも言ってるが、僕の立場だと下手したら傷つくぞ。

つーか、隣で聞いているニカの事を考えろ。スパイから愛人に転職とか勘違いしたらどうするんだ。

 

「心配しなくても、父さんが心配するようなことにはならないよ」

 

そもそも僕は結婚なんてする気はない。

僕は兄さん()が使役する怪物だ。怪物が誰かを愛することも、愛されることも許されない。ましてや家庭を持つなどあってはならない。

 

「なんだ? すでに好きな女がいるのか? まさか、付き合ってるとか?」

 

「付き合ってる相手はいないよ」

 

じゃあ、片思いか? とか根掘り葉掘り聞いてくるが、干し肉を口に入れてそっぽを向く。

酔っぱらい面倒くさい。誤解されるのも面倒だが、これで結婚する気はないとか本当の事を言ったら別の心配をしそうだし、無視を決め込む。

親とコイバナしたがる子供はいないと思うぞ。特に嫁に逃げられた親とはな。まったく勘弁してほしい。

 

 

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 

昨夜は、あれだけ飲んでいたのに、父さんもナジも朝になるとケロッとしていた。

早朝で時間もないので、ナジが持参したサツマイモを朝食代わりにかじりながら、素面でのニカの取り扱いに関しての説明を受ける。

僕と父さんで、サツマイモの栽培を増やすように勧めるなど、多少の脱線もあったが、ニカの後見人には父さんがなるので、原作の様にアス高であからさまな嫌がらせを受ける心配はなさそうだ。

 

そして、サツマイモとラム酒を物々交換して御満悦な2人に見送られ、MSに乗れると興奮気味なニカを乗せてギャプランを発進させる。

結構な長時間移動になるが、時差の関係でアス高には、向こうの時間で昼前に到着出来そうだ。

 

「あれが軌道エレベーターだ。これから下降して変形する」

 

「うん」

 

前に座るニカに声をかけると、減速して高度を下げる。

近付く地面に興奮して前のめりになっているが、変形の時はシートに背中を密着させないと衝撃があるからな。

兄さんみたいに同乗者に負荷をかけない操縦は、僕には無理だ。

 

「変形する。姿勢を正せ」

 

「はい!」

 

ニカが姿勢を正すのを確認して、変形をして着陸する。

そのまま、事前の手続きに従って、軌道エレベーターの格納庫にMSを固定させると、地上に降り立った。

 

「酔いはないな」

 

「大丈夫。楽しかったよ」

 

「そうか。軌道エレベーターで上昇した後は、輸送機が待っているから、そこで移動しながら宇宙用装備に換装する。輸送機は本社に真っ直ぐに向かうから、僕たちは途中で出てアスティカシア学園に向かう」

 

「うん。ちょっと緊張するな。ラウダは大丈夫? 社長さんが寝不足じゃないかって言ってたけど?」

 

「問題ないさ。ちゃんと寝れた」

 

ウソです。あまり眠れませんでした。あのクソ親父、本当にニカを僕に任せて酒盛りを続けやがった。

それに、同じ部屋なら大丈夫と聞いていたが、どうやら近くに人の気配がないとダメらしい。

最初は、ニカをベッドに、僕は部屋の隅に寝袋で寝たのだが、話しかけてきて寝させてくれない。

距離がダメだと気付き、だんだんと近くまで寄ったのだが、ベッドの高さが不満だったらしく、結局は同じベッドで寝た。

あのな、僕は結婚も恋愛もしないと決めているが、性欲はあるんだからな。

悶々とした夜を過ごすのは健康上良くない。頑張って耐えた僕を褒め称えろ。

まあ、原因の一つに、僕の気配の薄さ、いるかいないのか分からないのが理由らしいが、それ人によっては傷つくからな。

 

軌道エレベーターでの移動中は寝たいが、ニカが寝させてくれないだろう。

あれ? こう言うと、えろいな……ダメだ。脳がおかしい。ちょっとした単語をソッチ方面に考えるなど、まるで中学生じゃないか。

実際は、ニカがタブレットの中身。僕が考えた役に立たないデータに興味津々で、色々と聞いてくるからだ。

無視したいが、現状の彼女は不安もあるのに、それを抑え込んでいる節がある。冷たくすると普通の奴以上にダメージを受けるだろうから僕にしては珍しいくらい受け答えが丁寧だ。

それにしても、寝ないのは我慢できる方だが、出来れば仮眠を取りたい。寝不足だと攻撃的な性格になるから、ニカに対しても不用意な発言を取りかねない。

なんか良い手は……そうだ。

 

「ニカ、輸送機での換装作業を見学させてもらうといい。専属のスタッフに頼んでやろう」

 

「本当? ありがとう!」

 

フッ、チョロいな。これで少しは睡眠時間を確保できたぞ。

だが、その前にやることがある。

 

「よし、次の軌道エレベーターが動くまで、あまり時間がない。早く済ませるぞ」

 

「え? 何を?」

 

「お前、その姿でオープンキャンパスに行く気か? 美容室に行った後は、まともな衣装に着替えてもらう」

 

ニカは支社でシャワーを浴びているし、服装も難民のままの汚れたものでもない。

だが、作業着でオープンキャンパスに行くのは許可できないな。制服は無いが適した格好というものがある。

美容室には軌道エレベーターの時間を伝え、それまでに間に合うよう伝えた上で予約はしているから問題ない。

 

「ジェタークの名前で予約したものだが……ああ、髪型などは全て任せる。良いようにやってくれ」

 

美容室に行くのが初めてだというニカは、酷く緊張していたが、暴れることなく髪をカットされていく。

うん。ペットを美容室に連れて行った気分になるな。

お任せにしたから、アニメのようなショートカットになると予想していたが、少し長めになっている。

出来ればショートにして、バタフライ効果なんかなかったんや、と思わせて欲しいが、嫌でも現実を突き付けてくる。

いや、衣装だ。衣装を変えればワンチャン。

 

「すまない、彼女の着る物を見繕って欲しい。行先は学園のオープンキャンパスだから、派手すぎない範囲で。

 予算の上限? そんなものは無い。どれだけ高くても構わん」

 

いや、考えてみれば作業着ほど、闊達な衣装ってないような?

気合の入った店員によるコーディネートで仕上がったニカは、どこぞの御令嬢というには無理があるが、誰がどう見ても難民の少女とは思えない仕上がりになった。

 

「に、似合うかな」

 

「ああ、よく似合うぞ」

 

ダメだ。違う。僕の知っているニカは姉キャラだったはずだが、これでは妹キャラだ。

バタフライ効果が地味に刺さってくるが、目を逸らすわけにもいかないか。

この後、店員が勧めるままに、バッグも購入し、時間も来たので軌道エレベーターに乗り込む。

まあ、この子の境遇を聞けば、ジェターク寮(うち)の女性陣が面倒を見てくれるだろう。そちらにパスするまで耐えろ僕。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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