離れろ貴様ら! そう叫びたいのを我慢しながら、兄さんにまとわりつく子供たちに殺気を送るが、僕の存在などないものかのように、小僧共は兄さんに抱きついている。許せん!
ジェターク社の地球開発事業は、何とかなりそうな感じだ。
地球の現状としては、貧困層もいるが、ちゃんとした富裕層もいる。アーシアンとスペーシアンという二極化が宣伝されるが、“俺”がいた地球がそうだったように、地域による特性と言うものがある。
最初は、その中でも、貧困層が多く、反スペーシアン感情が低い場所を選んで、工業製品の工場を建設しようとしたが、僕が全力で反対した。
人の営みにおいて、最重要なのが食糧だ。極論、飢えていなければ無茶はしない。
先ずは飢えない環境を整えてから、裕福さを目指すべきであり、いきなり工場を建設したところで、全員を雇えはしない。周囲に飢えた人がいれば、暴動待った無しである。
だから、極端な反スペーシアン感情が無ければ良しとして、開発可能な土地がある事を重視して何か所か選定した。
その中で厄介なのが、難民がいる場所。だが、ある意味、思いっきり出来るとも言える。
交渉した政治家も、このままでは、国が崩壊するので、何とかしたかったようだ。
そこでは、膨大な平地を占拠している難民テントを撤去するため、簡易住宅を建設し、畑に変える計画を打ち立てた。最初は芋と豆。それがあれば最低限人は生きていける。
団地型の住居建造や、荒野を畑にするために水を引いたりで、大掛かりな工事がいるが、そのためのディランザである。
何か地上げ屋みたいな感じだが否定はしない。父さんってヤクザみたいだしね。
だけど、ここはジェターク組のナワバリだと主張する事で、周囲からちょっかいを受ける事が減るのも事実。
それに、重要なのは結果である。住んでいる者が飢えない、未来に展望が持てる生活を送ってやれる事こそが為政者の責務である。現実的な政治家は、ジェタークを利用して国内を整えようとしてくるが、利用すれば良いのだ。
今の状況で信頼関係など不可能、互いに利用し合う事が、現状取れる最適な関係だろう。
ただ、これだけだと単なるボランティアになってしまうので、そんな最悪な状態は早急に脱したい。
取り急ぎ、産物となるものを調査したところ、塩を選択した。
利益は少ないが、無いよりは良いし、これも投資である。
コロニー生活などでは、水と空気が注目されるが、実のところ水は太陽系には、氷の状態としてだが大量にある。近場では火星にあるしね。
スペーシアンが優位になれるASの技術では、水と空気は比較的手に入りやすく、宇宙世紀物のように貴重品とはならない。
それは塩も同じだが、それは精製塩だからであって、ミネラルを含んだ岩塩や海塩を、別の意味で貴重な嗜好品として売り出すことにした。
香辛料を含めて、プラントで食糧は生産できるが、天然塩を切っ掛けに、やがて地球産=高級品というイメージを作っていく事を基本戦略に据える。
そして、いずれは築かなければならない信頼関係や、未来の展望と言う意味でも、兄さんの存在が大きい。
開墾しても野盗に怯え、作物を実らせても奪われると言う生活では絶望しかない。そんな状況で自分達を守ってくれ、内輪もめを調停し、開拓の手順をまとめる存在が、かつて日本に存在した。
武士である。
例えば、朝廷の役人であった源八幡太郎義家の三男義国は叔父と所領をめぐっての抗争に敗れたりしながら、栃木県を占拠して次男に受け継がせたり、長男を派遣して群馬県の一部を占拠している。ちなみに前者が足利家で後者が新田家になる。
やっていることをヤクザみたいだが、当時の日本の朝廷は少なくとも治安面ではほとんど機能していないので、彼等の存在は素直に受け入れられている。
何が言いたいかと言えば、父さんはヤクザだが、兄さんは武士。ここは譲れない。
実際に、父さんは現地の人から怖がられているが、兄さんは人気者である。
最初の住居建設準備に地鎮祭ではないが、工事の最初の一手みたいなことをやるのだが、それを兄さんがMSで務めた。
これまでにない、MSでの大掛かりな建築工事の最初の一手であり、新時代の幕開け的なアピールで始めたのだが、それ以来、兄さんの人気が凄い事になってしまった。
そもそも、インキュベーションパーティ用の映像を撮影するために、兄さんは参加したのだが、MSでの建築が面白かったらしく、数日に渡って続けた結果、何時の間にか地元民と仲良くなってしまった。
最初は単なる
僕の人気? いや、僕はやりたい事があったからね。調べ物と言うか、外せない用事が多くて、あまり現地の人と接する機会が無かったんだ。本当だよ。
まあ、調べようが無かったので何の進展も無かったし、何をやってたんだと反省したけどね。
でも、気になるものは気になってしまう。
地球の魔女の存在を