ラウダの野望   作:山ウニ

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男子高校生にそれはダメだろ。

 

連休を3日後に控え、僕と兄さんはグラスレー寮の寮長室に来ていた。

今年度から、シャディクが正式に寮長に就任している。ジェタークの寮長室が兄さんと僕のオフィスと化してるように、今やシャディクのオフィスと言って過言ではない。

 

ちなみに、新学期になる前から、連休の目的は決めている。

新入生の地球での順応性を確認するのがメインで、それには簡単な作業が良いという事となり、日本での水田拡張とダムの修復になる。

予定では、2,3年生は経験者で構成されるため、上級生が1年生に指導しながら作業するという妥当で健全な方法が取れる。

そのため、順調に進めると思っていたが、予想外の状況が生まれていた。

 

「予想より参加者が多い。派閥を避けたいなどと言ってられんな」

 

「途中で変更すると言う手もあるが?」

 

「班は行動の際の基礎チームだよ。初日より最終日にはレベルが上がっていることを実感させないと」

 

前回は先行してたので経験が多いジェターク寮のパイロットを軸に班を編成していたので、ジェターク、グラスレー、地球寮が混生した班を構成することが出来た。

だが、今回は他の寮からも参加者がいるので、ジェタークとグラスレーを分ける必要がある。

 

「メカニック科が一番多いんだから、そこを分散させれば良いんじゃないか?」

 

「そうだな。だが、それでも一班の数が増えるが……」

 

「今さらながらに、グエルの影響の大きさが分かるな」

 

参加人数は前回の倍以上。いや、3倍弱と言った方が正確だ。

このことは、ベネリットグループでの派閥争いに影響を与えるだろう。

あまりの大人数の上に、他寮が技能を習得しても利益にならないと、父さんとサリウスが判断する危惧があったが、2人とも事の重大性を理解していて、全面的なバックアップを約束してくれた。

 

「多少の偏りが出るが、ダイゴウはグラスレーに任せる」

 

「分かっている。その辺りは言わなくても全員が察してくれるさ。だが、現地でのフォローはやれよ」

 

「ああ、むしろ、そうさせて欲しい。機会をくれ」

 

特に注目株がダイゴウだ。社としてのダイゴウに反発する形で、学生が改革派になびいている。

この流れを切りたくは無い。

兄さんとシャディク、サビーナがテーブルに並べた名簿を見ながら班を振り分け、僕とエナオは机でPCに入力していく。

その作業が終わり、ようやく一息ついた。

 

「この辺かな。僕はニカとフェルシーを連れて、明日から先行する予定だけど?」

 

「ああ、問題は無駄足にさせないかってことだな……」

 

「ミオリネの様子はどうだった?」

 

シャディクが、途中から入室していたウシ娘たち1年生トリオに声をかける。

 

「ああ、資料に埋もれながら何やら計算してるが、アタシ等には何やってんか検討もつかね」

 

「凄い集中してる。前にシャディクと起業しようとしてた時以上の集中だと思う」

 

「鬼気、せまる、感じ」

 

「飴と鞭を同時にぶら下げられてる状態に近いからな」

 

「いや、鞭を受けた上に飴を取り上げられそうなんじゃないか?」

 

「飴は取り上げんぞ。ここで取り上げたら、修復が難しくなるからな」

 

ちなみに、飴は地球行きのことだ。昔から行きたかったそうで、アス高に入ってから、本当は行きたくて仕方がなかったのだが、自分の口から、連れて行けとは言えなかった。

入学当初は当然で、ミオリネの進む道を示しても、自分から言い出せない。

あの手の人って、多少強引に誘って、仕方がないわねぇ、と言いながら来させるという面倒な儀式が必要なのだ。

そして鞭の方だが、ミオリネの地球での評判が問題だった。

 

元々、ミオリネが兄さんの婚約者に見える立場で、一緒に地球へ降りたら、イメージ的にマイナスになるとは予想はしていた。

何しろ、アーシアンに評判の悪いデリングの娘だ。

マルタンが予想したように、デリングが何らかの思惑を持って婚約させたと思うだろう。

デリングが地球再生を認めたと好意的に捉える人が多いと思うのは楽観が過ぎる。

 

何と言っても、人は嫌いな相手の事は悪く受け止める。デリングが今さら善行を行っても、認めるより、ケチをつける人の方が多いだろう。

地球再生計画を認めても、今さらと冷たい視線を受けるならまだ良い方で、罵詈雑言が来る可能性もある。

ミオリネがどれだけ罵詈雑言を浴びようと、僕は構わないが、兄さんに飛び火が来たら拙い。

だから、事前に地球での評価を収集したのだが……

 

「あんな噂が流れてたら、必死にもなるか」

 

「あの美少女フェイスが、ここで(アダ)になるなんて」

 

エナオが嘆息しながら言う。ミオリネの容姿が良いという事は僕でさえ認めるところだ。

だが、ミオリネを知っている人間からは想像もしないような噂が流れていた。

 

ミオリネは、地球再生計画が邪魔と考えたデリングが、兄さんを篭絡するために婚約者として送り込んだらしい。

 

要はハニートラップである。

中には、デリングの娘が、あんなに可愛い訳が無い。だから見た目の良い少女を養女にして婚約者にしたてあげた。なんてものもある。

地球では、ミオリネの性格とデリングとの関係を知っていたら呆れるしかないような、そんな噂が流れていた。

 

「奴の性格なら、こんな噂を聞いたらブチギレするのも当然か」

 

「それだけじゃない。ラウダが追い打ちをした。突然、大笑いを始めて」

 

「いや、あの時は悪気があった訳じゃない。ただ、純粋に噂の件を説明している最中に、ミオリネが色仕掛けをしているところを想像しただけだ」

 

デリングの指示に従って、必死に色仕掛けをしているミオリネを想像したんだ。爆笑するのも仕方がない。

 

「それに、お前も笑っただろうが」

 

「なんのこと?」

 

コイツ、白を切る気か? いや、本気で気づいてなかった? まあ、良いか。

 

「だが、地球ではミオリネの顔写真しか出回ってないのが不幸だったな。せめて、バストアップの写真なら、あれで色仕掛けは無いと気付くのだろうが」

 

「そんなこと言うから、ミオリネも怒る」

 

「その怒りで上手くやってくれたら儲けものだがな」

 

「そんで、ミオリネに何やらせてんだ?」

 

ウシ娘が聞いてくるが……

 

「半月以上やってるんだが、説明して無いのか?」

 

「したけど理解しきれない。私たちは、昨年の地球で、ヴィム代表がシャディクに説明しているのを横で聞いていたから分かるけど、あれをもう一度説明するのは難しい」

 

「そうか? 大まかに言えば、ミオリネは、自分が目指している植生エンジニアと正反対のことに挑戦している。

 植生エンジニアの基本は、植物に合わせて土や環境を変える。高品質を目指す感じだな。

 一方、今やっていることは、土と環境は決まっている。その中で、どのような植物を育てるかを決める。

 更に、連作障害を考えてのローテーションや、生産と需要のバランスに周辺との取引まで視野に入れてな。

 今までやってきた芋と豆をでは済まない。膨大な種類の植物を過不足なく育てる必要がある」

 

「ラウダ先輩でも出来ないって聞いたけど」

 

「そうだな。植物の知識に加え、周囲を含めた経済を読む能力も必要だ。

 だが、僕と違って、土に水の質や、植物の種類、品種、それに適した養分などに関する基礎知識が豊富だ。

 そこに望みをかけているが、流石に時間が無いな」

 

今回は諦めて次回に頑張ってもらう方向で考えている。

 

「今回は兄さんと距離を置いてもらう。それで…」

 

「だったら、良い手があんぜ。ここは……」

 

ウシ娘が自信たっぷりに言い放つと、兄さんが座るソファーに向かう。もう、嫌な予感しかしない。

そのまま隣に座ると……

 

「こうやって、女を侍らせてますって態度で行けば良いんだよ。

 ついでに、こう乳揉んで……手ぇでけえな」

 

「何やってんだ!」

 

「暴れんな! ちょっと乳揉むくらい良いだろ!」

 

「良くねえよ!」

 

「凄いね。レネの台詞って普通は強引に触ろうとする側の台詞だよ」

 

「絵面的にも、強引に揉もうとする男と必死に抵抗する女なんだけど実際は逆。

 ホラ、イリーシャも暴れない」

 

ねえ、人って、怒りの限界を超えると、身体が硬直するんだね。

シャディクは何を冷静に評価してるんだ? 推し子がんばれ、地味子なんかに負けるな。これを止めれれるのはお前だけだ……って、落とされた。地味子凶暴過ぎん?

 

「でも、根本的な理由は、グエル先輩が人気者すぎるってことでしょ? だったら、親しみやすい演出もありじゃない? みんな遠慮するしね。ついでにイリーシャが気絶したから膝枕よろしく、ホイ」

 

「お前等の何処に遠慮がある!? 友だち放り投げるな…って、逆! 膝枕は良いけど逆!」

 

気絶させたのはお前だと言いたい。それを放り投げて奇麗に兄さんが膝枕をする姿勢になったのは良いんだが……

普通は仰向けや横向きでやるものだろ? うつ伏せで膝枕したら卑猥な絵面にしかならん。

 

「いや、イリーシャはなぁ。こう、顔の良し悪しじゃなく、乳のでかい女で周囲を固めんのよ。

 そうすりゃあ、グエル先輩は巨乳好きって思われっから、ミオリネが婚約者になっても安心ってわけ」

 

「なるほど、レネって天才だね」

 

「良いね。グエルの築き上げてきた硬派なイメージが、音を立てて崩れ落ちる姿だよ」

 

「お前の取り巻きだろうが! 教育しろ教育!」

 

「そうだね。レネ、あまり自分の身体を安く扱うものじゃないよ。軽い女だと思われる」

 

「バカにすんな。グエル先輩にしかしねえよ。実際、お前や他の奴にしたこと無えだろ?」

 

「言われてみれば……あれ? グエルのこと好きなのか?」

 

「好き、つーか、一緒にいるとムラムラする? こうして、腕を組みながら胸を押し当ると幸せと言うか」

 

「そうか、欲情してるんだね」

 

「なに冷静に会話してやがる! 止めろ!」

 

「まあまあ、落ち着いて下さいよ。質問があるんですけど、実際のところグエル先輩は胸が大きいのと小さいの、どっちが好きなんです?」

 

「な!……」

 

「そうだな。俺は小さい方が好きだ」

 

「シャディクには聞いてない」

 

「お前はミオリネなら何でもOKなだけだろ? で、グエル先輩は?」

 

「お、俺は……大きい方……かな」

 

「やったね。レネ」

 

「そう言われっと照れるな。安心しな。アタシはエナオみたいに激重女じゃ無いから、遊びで良いぜ」

 

「ついでに、イリーシャも食べちゃえば? 大小の味比べしても良いよ」

 

「メイジーは?」

 

「私はあっちかな? 何か純情青春してるから、ドロドロさせようかなって」

 

「待て止めろ。激重サンドに毒物混入させるな」

 

「冗談冗談。私もグエル先輩のハーレムに入るね」

 

「来るな!」

 

このジャリ共、兄さんから離れろ。それに兄さん甘くない? いくら何でも自由にさせすぎ。

ここはビシッと一つ……あれ? な~んか既視感が……

 

「ラウダの所為」

 

人がこの感覚の謎を思い出そうとしてるのに、エナオが疲れた声で呟く。

何が僕の所為なんだ?

 

「ラウダが、あの子たちに自由に生きろなんて言うから」

 

そんなこと言ったか?…………うん。言ったな。

でも、間違ったことは言ってないぞ。何時までもシャディクの言いなりとか、アカンやろ。

シャディクが目的を変えた。今度はむしろ政治力が必要になる。

サビーナとエナオは、それぞれの方法で支え始めたが、あの3人は何してんの? 今まで何をしてたの? って思った。

そんなだから自分で考える事が出来な……かったのが、考え出した途端に巨乳ハーレムとかヤバいな。

 

「ん?……ここは?」

 

「イリーシャ、起きたか?」

 

「え? へ? グエ……りゅぅ」

 

「あ、また気絶した」

 

「そりゃあ、目ぇ覚ましたら、推しの股間に顔突っ込んでるんだもんな」

 

「計算した。ついでに無限ループね」

 

「股間じゃ無えだろ! 太もも! って、友達に何してんだ!」

 

「友達のためです。その願望を叶えてあげようかと」

 

「これ、何回か失神してたら、マジで股間にいかね?」

 

「グエル先輩、下脱ごうか」

 

「脱ぐか!」

 

 

この惨状の引き金を引いたのが僕? そんな訳がない。言いがかりも甚だしい。

 

「あの子たちがこうなった理由を考えたけど、多分、色々と重なったのが悪かったんだと思う。

 自由に生きろと言われ、やりたいことを考えてる最中に、グエルが目を覚ました瞬間を見て、凄く格好いいから、コイバナで恋愛弱者と判明するまでの期間が短すぎた。

 自由、尊敬、親しみやすさ、今まで周囲にいなかった頼れる兄。それが変な融合を果たした。

 あの2人にとって、グエルは大好きな面白れぇ兄ちゃん。やりたい事とグエルで遊ぶが直結した」

 

「お、お兄ちゃんならシャディクが……」

 

「シャディクは末っ子」

 

「サ、サリウス」

 

「お爺ちゃんと言わない理性は残ってた」

 

「ほ、他に手ごろな生贄をだな」

 

「グエルの代わりが務まる人間なんている?」

 

「そうか。そうだな」

 

無理だ。兄さんと遊びたい以上、兄さんが遊んでやるしかない。兄さんの代用は無い。

仕方ないか……ん?

 

「怒らないの?」

 

「何がだ?」

 

「ラウダなら、この状況に怒ると思ったから」

 

「怒ってはいるが……」

 

馴れ馴れしい、どけと思っているが、口に出してはいけない気になる。

なんだろう? この感覚に覚えがある。

まさか、3人の内、誰かが父さんの隠し子だったというオチ?……じゃあ無いな。そんなもん遠慮する理由にはならないし。

何かを見落としている気がする。

 

 

 

 

 

 

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