昨夜、地球から戻って来て、朝から情報の整理。
改めて思ったね。情報と言う武器の効果は絶大だ。
人生をやり直し、例えば2週目なんていったら、普通にイージーモードに突入するだろう。
何故、そうなるかと言えば、情報を持っているからだ。
“俺”の知っている限り、進行中であるウクライナでの戦争で、どうやれば良いかなんて分かる奴は少ないが、終わった戦争ならいくらでも語れる。
それは今の僕も同様で、水星の魔女の知識があるお蔭で、どう振舞えば良いか、普通の人間より分かるので、随分と助かっている。
だが、結末を知らない僕は、かなり不安である。
兄さんを助けるというのが基本方針だが、最後のプラントクエタでの顛末を考えても、情報が足りない。
兄さんがああなる関係者、水星女や父さん、そして、シャディクに関しては、やがて手が届く。
水星女は関わらないという方針が取れるし、父さんは色々考えてるので良し。まあ、厄介なシャディクの目的が不明だが、監視を強化するしかないし、やらかす前提で接すれば糸口が掴めるかもしれない。
しかし、全く手掛かりの無い相手がいる。
フォルドの夜明けというテログループ。そして、地球の魔女。
フォルドの夜明けに関しては少しではあるが、情報が出て来た。まあ、普通に世直しを語っている過激派グループだ。何かやらかせば、その際には犯行声明を出すからね。その範囲でならニュースにも出て来る。
意外というか、そこまで分別の無い過激派では無さそうだ。同時に居所さえつかめば、ジェタークが持つ戦力で殲滅も可能。いや、容易だと言える。
しかし、この連中、分別の無い過激派どころか、意外と良心的な印象すらある。上手くやれば仲間に引き込めそうな感じもするのだが……いや、テロリストだし、何が起こるか分らん。敵対前提で保留とする。
だが、フォルドの夜明けはともかく、地球の魔女の出所が全く分らん。
プロスペラの手先では無かったようだし、禁止されているGUNDの研究をペイル社以外もやっていたと考えれば、いくらでも容疑者は出て来る。
そもそも、革新的な技術なんてものは、複数で異なる研究者がやっている事が普通だ。原子爆弾だって発明者はオッペンハイマーになっているが、彼は最初に完成させた人であって、研究自体はナチスも日本もやっていた。
つまり、GUNDだって、ヴァナディース以外で研究されていても不思議では無いし、知られているだけでも、オックスアースという会社が関わっている。つーか、人体実験してたのこっちだよな。だが、ここは事件の後に潰されている。作中では存在は欠片も語られなかったし、この世界でも情報なし。
まあ、消滅した会社の事は良い。少しでも魔女の情報を集める。クソ、アニメを最後まで見ていれば犯人が誰かなんて一発で分るのに。
「ラウダ、何見てるんだ?」
「おはよう、兄さん」
兄さんも起きてきて、僕が見ていたタブレットの画面を覗く。
「何だよ、これ?」
兄さんが不快そうな声を出すのも無理はない。画面に映るのは『我が子はガンドに殺された』と書かれたプラカードを掲げる人。水星の魔女プロローグに映っていたアレ。
兄さんは昨日まで、地球の子供と仲良くしていたから、余計に神経に刺さったのかもしれない。
「ん、ヴァナディース事変のことをね」
「ベネリットグループが結成された切っ掛けの奴か……酷いな」
僕が開いていた画面には、データストームの影響で、顔に赤いアザが出ている子供や治療を受けている人、一応は救助された人の写真も映っている。
「ヴァナディース機関って、本当にろくでもないマッドサイエンティストの巣窟だったんだな」
兄さんが嫌悪感丸出しで吐き捨てる。
まあ、世間ではそうなっているし、別に誤解を解かなくてもいい気がしないでもないが、兄さんに良いところを見せたくて、ちょっとだけ知識自慢をしたくなった。
「多分、違う。場所や時系列的に見るとね……」
事件があったあらましを、場所と起きた事件を整理して並べる。
「切っ掛けは、地球でオックスアース社の人体実験の発覚。この辺の写真はそこで撮影されたもの。
そこで、本丸と思われたGUNDの研究機関であるヴァナディース機関に……デリングが研究者を逃がさないため、強制突入を実行したんだけど……これ以降の写真がコレ」
射殺されたヴァナディース機関の研究員や、研究施設の写真が出て来る。
「気付いた?」
「……ないよな、変な研究してたにしては……」
「うん、正解。オックスアースの時は、明らかにGUNDの被害をアピールする写真を証拠として公表しているけど、ヴァナディース機関を落とした後は、それらしきものはない。当然、秘匿している記録だってあるだろうけど、アピールするにしても、オックスアースの使い回ししかない」
「どうして?」
「そんなもの、ヴァナディースでは人体実験はしていなかったからでしょ。
でも、デリングはGUNDの研究者を、危険だからと皆殺しを狙って暴走した」
「だけど、GUNDが危険だって事実はあるんだし」
「GUNDが危険って言うより、人間とMSを繋げるのが危険なのかな?
人間が、MSサイズの身体を動かすのって、確かに無理があるし」
「だったら、何でMSの製造会社と手を組んだんだよ」
「お金が無いから。新技術は軍事研究からの流用が多いのは、軍事技術は研究資金が獲得しやすい。
テレビ然り、通信然り、ドローン然り、みんな最初は軍事研究だった。
GUNDも医療技術だったけど、それだけでは資金が捻出できなかった」
「それって、医療技術が消えただけだって事になるじゃないか」
「それならマシさ。本当にね。
この手の研究は複数でされている可能性が高い。だから、研究者は生きている。
でもね、その生き残った研究者は、もう光の下を歩けない。GUNDは禁止され、医療としての道を絶たれた。
だから、裏を、闇を歩くしかない。この件は魔女狩りなんかじゃない。魔女を生み出しただけだよ」
「だったら、ベネリットグループは……」
「別に、その存在に善悪は無いよ。GUNDの研究も。グループの存在意義も。
問題は、それをどう使うか、どう運用するか。
ジェターク社だって、兵器の製造会社だし。でも、兄さんが地球でやったようなことも出来る」
うん。流石は兄さん。偉大過ぎるよ。
だけど、兄さんは落ち込んでいる。分かるよ。ジェターク社の跡取りで、グループの一員なんだし、罪悪感があるよね。
僕だってそうだ。転生していることなんて口には出せない。
それが正しい存在だとは思えないからね。どうせ信じないなんて言い訳はしない。自分が
「兄さんの反応は人として正しいと思う。罪は罪だし、そう思えば口も重くなる。
参考になるかは微妙だけど、こんな方法もあるよ」
プロローグでのデリングの声明を流す。
人殺しの正当化でしかない。命の尊さ、あがないきれない罪を背負う、立派な事を言っているが、本当に罪だと思っているなら、簡単には口には出せない。その重さに目を逸らし、口を閉じるか、言い訳をする。
デリングの場合は言い訳の奇形だ。
「どうしても、苦しい時は自分を正当化する。
この人が苦しんでいるようには見えないけどね。最初から自己正当化で固めていたのかもね。
でも、狂ったり、圧し潰されるよりはマシだと思う」
いや、デリングはある意味、狂っているのかもしれない。戦争を嫌うあまりに、火種さえ許さずに暴走した。
だけど、問題はそこじゃない。これは過去だ。僕たちにとって重要なのはこれからだ。
「グループは魔女を狩ったんじゃない。生み出したんだ。
だから、何時の日か、遭遇することだってある。もしかしたら立ち塞がる敵として」
これは、必ず来ると分かっている事だから、兄さんには備えて貰う。
兄さんを助けることが僕の存在理由だから。それが、僕の