ラウダの野望   作:山ウニ

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今後の予定と新たなイベント

 

 

 

グラスレー・ディフェンス・システムズの本部にて、サリウスとの面会を受けてもらった。

理由はいくつかあり、ジュネーズの改良案と造船所の件で話を通しておきたかったのと、グラスレー組のトラウマに関してだ。

 

「やはり、互いの過去は知らないのですね」

 

「思い出を語ることが、多くの者にとって互いを知るための良薬になるのは分かる。

 だが、あの子らの場合は良くて不幸自慢だ。それは毒よ。妬みや僻み、そのような負の感情の温床になる」

 

「理解できます。そして、過去を忘れるようにしてるのですね」

 

「批判するか?」

 

「いえ。最良の判断だと思います。大切なのは過去より未来です。

 問題は前に目を向けるための道標が無い事でしょう」

 

過去、経験は、自身を作るバックボーンだ。それを切り捨てて生きる場合は、ある者に比べて特に目指すものが必要になる。

 

「御希望があれば、誘導してみせますが?」

 

「いや、可能な限り、彼女等が自分で答えを出すようにしてもらいたい。

 勝手な話だとは思うが」

 

「いえ。サリウス代表から特別な指示が出ない限りは、僕も手出しはしません。

 そうなれば、兄さんもシャディクも、そのようにしますよ」

 

「そう言ってくれると助かる」

 

どうも、サリウスの人の好さは、罪悪感が根底にある気がする。

そうでなければ、戦争孤児を集めはしないだろうし……聞いてみるか。

 

「ところで、サリウス代表は、GUNDについてどう思っていますか?

 あれが医療技術として上手く進展していれば、代表のお身体も」

 

スペーシアンは老化が激しい。特にサリウスは車椅子が必要なだけでなく、内臓も弱っている。

サリウスのような人にこそ、GUNDの医療技術が必要だったのではないか?

 

「耳が痛いな。グエルがデリングにケンカを売ったのを思い出す。

 そして、私自身に関しては、デリングの暴走を許した罰だと思っている。仮に技術が手に入っても私に使用することは決してない。

 だが、やはり、ガンダムは認められんよ。殲滅しそこなったが、警戒は怠ってはいない。必ず潰す」

 

ベギルペンデやミカエリスにアンチドートが仕込まれているし、ガンダムが現れることを警戒しているのか。

いや、ドミニコスが既に残党と戦っているのかもしれない。

 

「あの実験体にシャディクらがなっていた可能性を考慮しますか」

 

「そうだ。何人もの子供が連れて行かれ、実験体として扱われた。

 デリングは戦争のルールやパイロットの矜持を重視したが、私にはそちらの方が許せん」

 

「そこは同感です」

 

素体の多くは孤児だ。シャディクが強化人士に。エナオが地球の魔女になっていた可能性だってある。いや、そこまでに至れず、失敗作として処分される事だってありえた。

同じ孤児でも、片やグラスレーで未来を夢見れる立場。片や人間兵器として戦場に立つ日を待っている。

運で片付けるには、理不尽な世の中に過ぎるよ。

やはり未来が必要だ。先を見ていれば苦しみにも耐えれるが、ただ潰すという手法では、その場しのぎにしかならない。

でも、サリウスに未来を語るのは酷なのだろう。だからこそ、語ることなく魅せる必要がある。

 

「ところで、お前はインキュベーション・パーティには出席しないのか?」

 

GUNDの話は終わりだというように、唐突に話を変えてきた。

まあ、気分が良くなる話でもないし、何かがしたい訳でも無いからな。

 

「僕が出ると、面倒なのが寄ってくるんですよ」

 

今度のインキュベーション・パーティでは、シャディクを代表とした新たな会社を立ち上げ、その融資を募る。

ジュネーズを主力商品とし、幹部に兄さんやジェターク社から移籍した者もおり、実質ジェタークとグラスレーの共同会社だ。

プレゼンには兄さんとシャディクだけでなく、サビーナも行うことで、若さを前面に出す会社とする。

本当は資金を募る必要なんか無いのだが、実態は他社が似たようなものを作っても、こちらが優位に進めるための牽制だ。

そんな中に僕がうろついていると、面倒な奴に絡まれるだろう。

 

「いくら離間をかけようが、お前とグエルの間に亀裂など入らんだろう。

 それに、そうやって、逃げるから隙があると思われるのだ。

 もし、婚姻外交の誘いが面倒というのであれば、エナオを連れて歩けば良い。アイツなら喜んで付き合う」

 

「彼女にそこまで甘えられませんよ。それに、参加したとして何もすることがありません」

 

「だが、あれを作ったのはお前だ。説明を求められても誰より詳しくできるだろう。もっと前に出る気は無いのか?」

 

「僕より、実際に開発したグラスレーのスタッフの方が、より説明は詳しいですよ。

 何より、今回の出展は政治的な理由が主です。僕の出る幕はありません」

 

「不思議な男だ。それだけの能力がありながら、周りに認められたいとは思わないのか?」

 

「不思議なのは、兄さんとシャディクの方です。言われた通りに、僕は能力でも、開発能力と言う言葉に出来る力です。

 でも、あの2人は? 武力? 魅力? 知力? 上手く言葉に出来ないものがあり、そこに誰もが惹かれる。

 サリウス代表は何故、シャディクを養子にまでしたのです? ただの能力なら部下で良かったはず」

 

「ふむ。言われてみれば、何故、あの子を養子にしたか、上手く説明は出来んか。敢えて言うなら養子にしたくなっただな」

 

「そんな規格外の2人が並ぶことに価値がある」

 

この停滞した世界を変える可能性を魅せ付ける。

ただの資金誘致や他社への牽制など方便に過ぎない。

 

その後、造船所の件も話し合い、グラスレーを辞するところで、先ほどまでの事務的なものとは違う、何処か生身の人間らしい声でサリウスが言う。

 

「グエルには、あの子たちのことを、よろしく頼むと伝えてくれ。

 それに、エナオのことを頼む」

 

あの子たちは1年生トリオだし、兄さんへの伝言だと分かるが、エナオは僕に言ったのか?

…………つまり、もっと鍛えろと? ここまでスパルタとは想像していなかったな。

 

「分かりました。必ず」

 

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

連休が終わって直ぐに、次の長期休みのスケジュールを組むという、文面だけだと遊んでるだけにしか見えないんだが、やっている方は結構切実である。

これまでとは、異なる作業を行うことになるので、事前の準備も多い。

特にサリウスにも頼まれたので、エナオを鍛えつつ計画書作りを始めることになった。

 

なお、場所はジェターク寮の寮長室。

先程まで、兄さんにグラスレーの1年生トリオが絡んでいたが、MSの訓練をすると言って出て行った。

存分に遊んでもらうが良いさ。

 

「あの子たちが迷惑かけてゴメン」

 

「いや、僕の不用意な発言が招いた事でもあるし、放置すれば兄さんが気付かなかったことで、自分を責めかねない。一種の予防接種だ。早めに対処することで小さな痛みで済む。

 エナオにしろシャディクもだが、アカデミーの教育上、気付きにくい内容だしな」

 

基本、トラウマがあって不思議では無いのが戦災孤児だ。

それを集めたのが、グラスレーのアカデミーであり、サリウスの言うように過去の詮索は毒になる可能性の方が高い。

よって、互いに気にしないのが、全員の精神衛生を守ることとなる。

 

「これについての謝罪は必要ない。今後は前向きな発言で無いと殴る」

 

「ん、分かった」

 

「じゃあ、仕事だ。今日中に大まかな場所の候補地を絞る」

 

「大まかって、どれくらい?」

 

「世界地図で、この辺にあればという範囲だな。当然、湾のように波が防げる地形で無いとダメだぞ」

 

ジェタークはこれまで温暖な地域を主に手を伸ばしてきた。

去年の長期休みで行ったのも、ニカを迎えに行ったのも、かつてフィリピンと呼ばれていた地だ。

一方、グラスレーは、敢えて寒冷な地域に手を出し始めた。

日本で最南端。グラスレー組の面子を見ても分かるように、元々欧州と縁が深く、そこから孤児を保護してきた経緯がある。

 

「それと先に聞いておきたい。私たちで出来るものなの? 造船所なんて」

 

「設計なんかは別の人材がいる。僕たちは作業の手足として指示通り動けば良いだけだ」

 

実はアス高生徒は、短期アルバイトとして見れば、非常に優秀なのだ。

MSを操縦出来て、メンテナンスまでやってくれる。おまけに常時採用してコストを圧迫することもない。こんな優秀なバイトは他にいないだろう。

現地の人間にとって、作業能力だけで見れば、さっと仕事をして、さっと去っていく、災害救助時の自衛隊みたいな能力を発揮する。

 

「それに、一から作る訳でも無い。過去の造船所の修復と拡張になる。先ほども言ったが、この辺に欲しいと思った場所から、付近の造船所を調べる。そこまでやれば、今度はそこを詳しく調べる」

 

「それなら、付近の造船所を調べる前は、シャディクに決めさせた方が…」

 

「いや、エナオが決めるべきだ。そして、そこにした理由を伝える。

 シャディクが、反対するなら反対する理由を言わせろ。

 それをすり合わせるためにも、先ずはエナオが決めるべきだ」

 

「わ、分かった」

 

そう言うと、グラスレーが手を出した地域に、今後、行く予定の地域をチェックし始める。

距離的な問題と地形で可能そうな場所をピックアップしていく。

 

「うん。これで調べるのは、近くで稼働している造船所なら、そこに聞けばいいけど、閉鎖している場合は?」

 

「閉鎖している理由次第だな。人口の減少による閉鎖なら、水深を調べる必要がある。場所によっては水深が無くなって造船が困難になっている場所もあるかもしれない」

 

「水深が無くなるって、過去に比べ、海面は上昇しているはずだけど?」

 

「海底が問題でな。そうだな、日本で説明しておくか」

 

そう言いながら、日本の地図を開く。

 

「エナオが目を付けているのはここだが、欠点として河川がある」

 

大阪港と考えているようだが、淀川を筆頭にいくつもの河川が流れ込んでいる。

 

「人が生きるためには、古くは川の存在は不可欠だ。逆に川が無ければ発展はしない。

 ここなんか、その典型だな」

 

そう言って、横浜を指さす。

ガンジスの恵み。ナイルの恵みと言うように、川があってこそ人類の文明は発展した。

そして、横浜は川が無い。だから、江戸時代までは寒村だった。

 

「だが、河川は人に水の恵みをもたらすけど、流れてくるのは水だけではない。

 一緒に土砂などが流れ込んでくる。結果として川から流れ込んだ土砂などの堆積物が積み重なり、水深が浅くなるから、大型の船舶は近付けない場所へとなる。

 でも、技術が高まり、大型船の需要が増えると、川のない地域が発展した」

 

横浜や横須賀。それに神戸。

 

「エナオが目を付けていた地域より、難民キャンプがあった地域に少し寄った場所も過去に造船所として発展してきた。ここも一緒に調べると良い。

 他に……」

 

呉と長崎。戦艦大和と武蔵が誕生した地。

 

「ただ、こういった地形は、特に堆積物の影響を受けるからな。なるべく早く水深を調べたい。

 今の要領で、調査地域を決定しようか」

 

そうして、作業を開始して1か月ほど経った頃、父さんから連絡が入る。

地球寮に用事があるので、案内しろとのお達しだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

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