ラウダの野望   作:山ウニ

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インキュベーション・パーティは婚活会場じゃない

 

 

「それでは失礼します」

 

離れた後、溜息を吐く。どうやら早く来すぎたな。素の雰囲気を味わいたかったので、少しくらいなら1人で行動しても良いと思ったが、もう少し遅れた来た方が良かったかもしれない。

ずっと続く、挨拶と称する誘惑行為に辟易している。

 

インキュベーション・パーティに限らず、僕はベネリットグループの集まりからは距離を取っている。

その理由は、現在のジェターク社は保守派から見れば敵にしか見えず、失速させる隙を伺っている状況だからだ。

そして、周りから見れば、僕の存在はジェターク社の隙と見える。

つまり、ジェタークを攻略するとしたら、兄さんと僕を離間させることだ。

どうしたって、人の口には戸が立てられない。僕が今までやってきたことを、ほぼ正確に把握しているベネリットグループの関連企業は少なくない。

 

そして、いくら僕が、自ら望んで表に出ないと言っても、そうは捉えない人の方が多い。

自らを基準に判断し、決して数字や言葉で表現できない兄さんの凄さを理解できない者から見れば、僕は不満を燻ぶらせて当然と思われている。

兄弟仲が良いとは知られているが、それでも不満を押し隠している。何処かで兄より自分の方が優れていると思っている。それが、周囲から見た僕の評価だ。

 

そんな中で僕が1人でウロウロしてたら、僕を抱え込もうとする保守派の連中が寄ってくる。

中には、派閥の関係なしに、娘や姪といったのを引き連れてくる分かりやすいのもいる。

何時の世もハニートラップとまではいかないが、婚姻外交を狙って近付きたがる奴は多い。

だからこそ、ミオリネがあんな立場になったんだが、アイツの場合は我が強すぎる。

普通は、原作の兄さんがそうであったように、良家の子女の習性と言うべきか、親が相手を決めるのは当然と受け入れる方が多いくらいだ。

ただ、それでも相手の年齢や外見とか、その辺りの希望はある。原作の兄さんだって、ミオリネがあの外見で無ければテンションはダダ下がりだろう。

彼女らにとっては、僕は中々の当たり物件になるようだ。

そんな状況に辟易していたところ、顔見知りの女性に声をかけられる。

 

「貴方が来るとは珍しい事もあるのね。ラウダ」

 

「ええ。ご壮健そうで何よりです。ゴルネリ」

 

ペイルの4BBAの中で、名前と顔が一致しやすい人No.1ゴルネリさんだ。

顔と身体だけでなく、名前までゴツイ。

なんと言うか、この流れでコイツは無いだろうと、内心で突っ込みつつも、心の中では彼女を癒し枠に認定するほど、今の僕は追いつめられているようだ。

 

「先ほどのはファルネオ社ね。可愛らしい娘じゃない、今も貴方に熱い視線を送っているわよ」

 

「代表の娘で、今年14歳だそうです。予定の相手よりは上等と思われたのかと」

 

「予定?」

 

「今日は来ていませんが、ハンマー・フィールド社の。僕やエランの同級生にいるんですよ」

 

典型的なスペーシアンで、相手を見下す趣味を持った奴だ。

当然ながら兄さんとは反りが合わないし、引き込み不可能な保守派として認定されている。

多分、原作で虫の声で謝罪を要求されたのも、グエキャン中に頭に水をかけていたのもコイツじゃないか?

 

「ファルネオ社は業績が悪化していて、連続で赤字を出しています。

 ハンマー・フィールドに多少のコネがあるので、自慢の娘を使って縋るしかない状況のようで」

 

「なるほど、そんな藁にも縋ろうとしている中、立派な救助船が見えたら必死にアピールもするわね。

 救助はしないの?」

 

「何故です?」

 

そんな理由が何処にある? 僕にもジェターク社にも関係が無い。

ファルネオが潰れようが、あの少女が路頭に迷おうが、僕は微塵も痛痒を感じない。

 

「好みでは無かったかしら。

 でも、貴方の好みって、明るく家庭的なアーシアンか、一緒に図書館で勉強するような大人しい子か、良く分からないから」

 

…………誰のこと? 図書館で勉強ならエナオか。それに、僕が親しいアーシアンならアリヤだろうな。

誤解を解きたいが、アリヤはともかく、エナオは解いたら拙いな。ファルネオ社とハンマーフィールドの件を知らなかったから、僕の事は十分に調べているっていう強がりか? どのみち、そんな話なら安心か。

 

ファルネオを改革派に引き込むかの話と思って、わざと冷たい態度を見せたのに、警戒させんな。

まあ、ファルネオ社の代表には、娘をシャディクの好みだと言っておいたから、向こうに突っ込んでくれるだろうから任せる。あそこの技術的には、ディランザよりジュネーズ向きだ。

ついでに、地球再生計画に関わりたいなら、娘を道具に使わず、正面から来いとサリウスに説教されればいい。

 

「僕の好みは、先ほどの親に従順な年下でも、ゴルネリの言ったタイプでもありませんよ。

 そうですね……」

 

少し考える振りをする。

 

「……包容力のある年上が良いですね。ゴルネリみたいな」

 

「なっぁっ!?」

 

動揺して初心じゃないか。さて、隙を突かせてもらうか。

 

「せっかくですから、エランと他の共同CEOに挨拶させてもらおう。一緒に行こうか」

 

「え、ええ…い、いや!」

 

今いるのは本物のエランなんだろ? 会わせたくは無いだろうが、一目見ておいきたいんでね。

先に進み、ゴルネリは後を追いかけるしかない状況だ。もう、無理に止めることは出来んぞ。

長いソファーに陣取るペイル組の前に立つ。

 

「やあ、エラン。興味深いプレゼンはあったか?」

 

「ああ、ラウダじゃないか。君が来るなんて驚きだよ。

 それで、何でゴルネリと一緒なんだ?」

 

「口説いていた。ここ良いか?」

 

「祝福するよ。どうぞ」

 

「エラン」

 

リーダー格のニューゲンが咎めるように名前を呼ぶ。

ボロが出ないか心配なんだろう。

さて、どう出るかな?

 

「良いじゃないか。威厳が無くなるからって、学園じゃ同じ寮の生徒とも話さないようにしてるんだ。

こんな場所くらい勘弁してよ」

 

「それで、学園では無口キャラをしてるんだな。 

 確かに喋ると軽薄そうに見える」

 

今思いついたのか、それとも最初からの設定なのかは分からないが、その設定に乗って話を進めよう。

 

「でも、シャディクもそんな感じだし、気にしなくて良いんじゃないか?」

 

「そうかい? でも、アイツは軽い振りをしてるように見えない?」

 

「あ~……そうも見えるか。言われてみれば不思議な奴だな」

 

色んなものに怒りと憎しみを募らせているのを、誤魔化す仮面だったんだろうが、それが定着したのが今のアイツなんだろうな。

そして、シャディクの仮面に何かを嗅ぎ取るコイツも侮れない。

 

「それで、ラウダはどんな風の吹き回しで出席したの?」

 

「そのシャディクと兄さんの晴れ舞台だからね。もし出資額が届かなかったらシャディクの所為にするためさ。

 あと可愛い妹分と後輩の晴れ舞台でもあるしね」

 

「ふ~ん。でも、今回の2作品とも開発したのってラウダなんだろ?

 それなのに、表舞台にも立たないって、なんだかなぁ」

 

そう言った瞬間、4BBAの視線が鋭くなる。

反応を伺ってるのか?

 

「ねえ、君はホルダーを取りに行かないのかい?

 君なら決闘前にグエルの機体に細工をするくらい出来るし、一度なら勝利は確実だろ?」

 

「確かにそうなれば、貴方がベネリットグループの総裁になる」

 

新鮮と言うか、今日の雰囲気だと、またかになる。

でも、その台詞は兄さんを知らないと言ってるに等しいぞ。

 

「アスティカシア学園の生徒らしくもない発言だな。ニューゲンなら分かるが、お前は兄さんを直に見てるんだろ?

 そちらこそホルダーに興味はないのか? 確かにエランに勝ち目はない。やっても無駄だよ」

 

見たところ、この本物はパイロットとしては大したことが無い。

エランに勝ち目が無いと言って、挑発と見るかと思ったが、軽くうなずくだけだし、戦闘でのプライドは無さそうだ。同時に強化人士に期待もしていないと見て良い。確か、原作でも友好的と言えない態度だった。

その理由は? 嫌っている? 強化人士という存在を? あるいは4号個人をか? それとも自分の偽物だから?

 

「でも、決闘は1対1と決まっている訳でも無い。

 集団戦で、例えば来年に途中編入で優秀な奴をスカウトしてきて、リーダーをエランにすればどうだ? 最強決定戦をやる訳じゃあない。学園のルールは結果が全てだ」

 

でも、彼が強くなくても、強化人士を複数用意すれば話は変わる。

原作でシャディク戦は6対6だったが、ペイル社は最低でも4号と5号の2人がいる。助さん格さん、やっておしまいだ。

ペイル社の編成なら、それが最善の方法。何も最強がトップになる必要は無い。

パイロット至上主義のベネリットグループといえど、組織のトップがバカでは困る。パイロットの経験を積み理解を示していれば良いんだ。

 

「……ふ~ん、面白そうだね」

 

エランは興味を持った? 

いや、それこそが、あるべき姿と思っているのかもしれない。

強化人士に否定的な理由は自分の偽物だからか。自分がいるべき場所に立っているのが気に入らない。

 

「我々には我々の作戦というものがある」

 

「だってさ」

 

「余計なことを言って悪かったよ」

 

ニューゲンのお叱りに、2人して肩をすくめる。

そのタイミングで、ジュネーズのプレゼンが始まり、全員の意識がそちらへと向かう。

僕は何を言ってるんだ? 奴の考えを知りたいなら、もっと別の手段があるだろうに。

お前が学園に通っていないと分かっていると挑発したいのか? それとも強化人士を救いたいと思ったか?

別に強化人士がどうなろうと構わない。原作で兄さんを辱めた奴は敵でしかない。 

プレゼンは終わりに近付き、エナオがプレゼンを始める。思えば、彼女やシャディクも当初は排除すべき敵だと思っていた。それが今では頼りにしている。大切だとも思える。

だからか、可能性の姿に見える強化人士や魔女への同情心が湧いているのか?

 

「凄いね。一瞬で出資額達成だ」

 

「当然でしょう。内容の質が高すぎる」

 

「わざわざ出資を求める必要もないのに、出したのは牽制の為ですか?」

 

さて、兄さんは自分の会社の起業で、父さんといるニカたちと合流だが、直ぐにシャディクたちは出てくるだろう。

もう、ここにいる理由は無い。4BBAの視線も痛いし退散するとしよう。

 

「想像に任せます。さて、邪魔をしたね」

 

「良いのかい? また、面倒なのに絡まれるよ」

 

「問題ないさ。これからはエナオとデートの約束をしてるんでね」

 

「なるほど。彼女連れなら大丈夫そうだ。

 エナオが言った改良案も君の発案らしいし、良い仲みたいだね」

 

「そう、冷やかさないでくれ」

 

そう思われるように、プレゼンで手配をしたからね。僕とエナオが個人的に親しいと思う奴は多く出るだろう。

この後、グラスレーの人間である彼女とカップルらしく振舞えば、面倒なのは寄ってこないはず。

 

それにしても本物のエラン、どうやら4BBAとの仲は良好とは言い難いし、あの口ぶり、日の目を見ない僕に自分を重ねていた。

おそらく、4BBAの傀儡の立場に不満を持つ野心家だ。

 

だが、先程の提案に、あいつは魅力を感じていたが、4BBAは余計なことをって感じだ。

何故だ? 追いつめられているのは分かっているはず。ジェタークとグラスレーを倒す秘訣でもあるのか、今の状況をどう思っている。

原作でも、隠し玉と言えるファラクトをエアリアルで切ったし、まさか、総裁の地位を重視していない? 何か隠し玉があるのか?

ダメだ。もう少し様子見だな。これから始まるショーに、どのような反応をするか、確認するしかない。

 

 

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