ラウダの野望   作:山ウニ

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お前の娘がどんな目に合うか教えてやろうか?

 

 

「元凶が戻って来たわ。

 で、誰が貧相な身体だって?」

 

僕を視界に入れるなり、ミオリネが不平を言いやがる。

どうやら、兄さんとシャディクが手四つで膠着状態になっている状況から、兄さんが笑ったことを責めてるのだろう。

まあ、じゃれ合いとも言う。

 

「茶番としては良かっただろ? ちなみに、僕が売ると言ったときは、シャディクはガチギレしてたぞ」

 

「グエルは無理してる感があって可愛いのに、お前が言うと洒落にならないんだよ」

 

「誰が可愛いだ」

 

「当然だ。僕は兄さんと違って本気で売るぞ」

 

「えっと、本気で怒ったんだ?」

 

「お前を金品でやり取り可能と言うのが気に入らないらしい。文句は父親に言えと思ったがな」

 

「ふ~ん」

 

シャディクはしまったという表情だが、ミオリネはちょっと嬉しそう。

何か知らんが、良かったなシャディク。好感度が上がったぞ。

 

「でも、あれは悪趣味っす。演技だとでもグエル先輩には言ってほしくない台詞ばかり」

 

「お前だけが笑ってなかったな。良い子過ぎるぞ。ほら、兄さんも」

 

「そうだったか。お前だけが癒しだよ」

 

兄さんも、フェルシーの頭を撫でてやる。

周囲が笑いを耐える中、1人だけ不機嫌な表情で見てたしな。

 

「それで、ここばかり見てたわけじゃないよな」

 

「当然でしょ。ここだけ異質すぎて目につきやすいけど、ちゃんとチェックは終わったよ。

 早めにエナオと擦り合わせをしたいんだけど」

 

未だに腕を組んだままのエナオを見る。

来る途中から父さんがニヤニヤ見てるのが落ち着かない。

 

「ゴメン、お仕事終わりだね」

 

そう言ってエナオが腕を放すと、解放感と寂しさの両方を感じる。

そのタイミングで、それまで頭を撫でられ心地よさそうにしていたフェルシーが、ビクッとして兄さんの後ろに隠れる。まあ、初見だとビックリするよな。

 

「あら、驚かせちゃったかしら?」

 

そう言って、フェルシーに微笑みかけるが、目が笑ってないでなく、目が見えない。

唐突な仮面女の出現に、全員が黙り注目する。

僕も面識は無いから、警戒した表情で沈黙を保つ。

 

「えっと……」

 

「おお、レディ・プロスペラ。来ていたのですね」

 

「ええ、申し訳ありません。挨拶にうかがったんですけど」

 

父さんが前に出て挨拶を交わす。

だが、これで切っ掛けが出来た。主導権を取らせてもらうか。

 

「プロスペラ? では、シン・セーの?」

 

「ああ、そうだ。こちらが、シン・セー開発公社のプロスペラ・マーキュリーCEOだ」

 

「シン・セー開発公社のプロスペラです。

 貴方が、ギャプランを製作したラウダさんですね?」

 

「はい。ラウダ・ニールです。貴社が開発した技術には助けられました」

 

「とんでもない。貴方のお陰で、かのジェターク・ヘビー・マシーナリーと取引できるようになりました。

 辺境の企業としては、身に余る光栄です」

 

「あ、シン・セーって、あの…」

 

「ステイだ。ニカ」

 

相変わらずの世間知らずを発揮して、前に出ようとしたニカの首根っこを押さえる。

だが、ニカの反応で、怪しくない……は無理があるが、僕が説明する前に重要な関係者だとは認められたようだ。

 

「ギャプランのライフルで特許を使用させてもらった、自動装備システムを開発した会社です」

 

この中で面識がある父さんを除いて、最も地位の高いサリウスに向かって言うと、僕が知っている理由に納得がいっただろう。

その流れで、サリウスの後は、兄さん、シャディクと順に紹介と挨拶を交わしていく。

 

「それにしても、挨拶に伺ったら、面会禁止になってるし、何だろうとは思いましたが、まさか、あのような余興を用意してるとは思いませんでした」

 

「お恥ずかしい」

 

兄さんに向かって微笑みかけるが、意味が分かってんのか?

子供を道具に使うなだぞ。ああん、分かってんのか水星女のママさんよ。

盛大な皮肉攻撃だったろ? 分かっているとは思うが、手は緩めんぞ。

 

「子供は親の道具ではありませんから。やって欲しいことがあれば、向き合う必要があります。

 道具扱いするなら背かれることを想定すべきですよ」

 

「ええ、その通りね。子供の意思は尊重しなくちゃ」

 

んん~、強がりかなぁ~? どの面でそんなことが言えるのかなぁ~? 

その強がりが何時まで続くか試してやろう。

 

「あ、あの、シン・セーの特許、見ました。毎年、あんなにたくさん」

 

……おい、ニカくんよ。ステイを解いた覚えはないぞ。ヨシ言ってないよ。

だが、僕もシン・セーの特許を見たときはドン引きした。技術者として興味があるのは理解できる。

 

「ありがとう。プレゼン、見させてもらったわ。ニカさんだったわね?」

 

「はい」

 

「娘と同じ歳なのに、随分としっかりしてるわね」

 

「同じ歳って? アスティカシア学園に?」

 

「いいえ。本当なら、今年入学するはずだったけど……」

 

「え? 何か…」

 

「ニカ」

 

父さんが、強めの口調でニカの質問を遮る。

うん。普通はこの流れだと、生きてたら入学って思うよな。

それ以上、聞かないよう制止するのも無理はない。でも本当に水星女が死んでたら面倒ごとが減るんだが……

 

「ええ、ちょっと、お仕事が忙しくて、水星から離れられないの」

 

「えぇ~」

 

何、お茶目さんしてるんだよ。全員が脱力してるじゃねえか。

それに、やはり水星女は健在か。当然と言えば当然だな。

 

「水星でお仕事ですか? 私と同じ歳で?」

 

「ええ、実は救助活動をしてるの。MSでね」

 

「す、水星で!?」

 

「マルタン先輩? えっと、そんなに驚くことっスか?」

 

「私たちと同じ歳だから?」

 

「そうじゃなくて、水星はヤバいんだよ。救助事例を調べてたけど、結果として、水星は除外したんだ。

 理由は環境が酷すぎて、ギャプランを使えばどうにかなるレベルじゃない」

 

「確か、太陽が近すぎて、重力や太陽風の影響が強いんだったか?」

 

「他にも大気が薄すぎる。無いなら無い方が良いんだけど、ゼロじゃないから影響はあるし、重力が低いから簡単に宇宙へと散ってしまう」

 

「大気が安定しないか。想像しにくいな」

 

兄さんとシャディクも興味を持つが、やはりマルタンは調べただけあって詳しい。

このまま水星談義を聞いてたら埒が明かないから、話を進めるか。

 

「そんな場所、と言えば失礼ですが、御息女が心配では?」

 

「ええ。それに、あの子は学校に通うのを楽しみにしてるし、本当は通わせたくて…」

 

そして、アスティカシア学園で決闘を繰り返し、エアリアルのパーメットスコアを上げたい、だろ?

水星女が何者なのかは分からない。実の娘であるエリクトと別人物なのは確定だし、どうやって作られたかも不明だ。クローン説や全身GUNDの半機械的な人造人間説が有力だが、普通の人間では無いだろう。

でも、最後まで知らない僕でも、これだけは確信している。

 

水星女は復讐を果たすための戦闘マシーンだ!

 

温厚そうな田舎娘を装いつつも、1期ラスト(やめなさい)の衝撃。初期キービジュアルでの無機質な表情といい、あれこそが水星女の本性。

そのように育てた、いや、作ったのだろ?

 

復讐対象のデリングと組んでまで目指す、クワイエット・ゼロの正体は分からなくても、そのためにはパーメットスコアを上げる必要がある。

そのための戦闘マシーンが水星女だ。

 

そして、兄さんが子供を道具に使うな発言をしておきながら、なお、水星女を来年にアス高へと編入させようとしている。実に度し難い。お前のたくらみはお見通しだ。その対策も考えてある。

 

「もし、編入したら、よろしくお願いします。

 ちょっと、世間知らずなところがあるけど、悪い子じゃないから」

 

「それは会える日が楽しみです。

 でも、過酷な環境の水星から、アスティカシア学園での生活には落差を感じるでしょうね」

 

ミオリネに厳しくしたら、妙にパワーアップして扱いに困ってる実績があるからな。

まあ、役には立ってるし、兄さんのスーツに仕込んだボイスレコーダーに入っているであろう、デリングにかました台詞のコピーをくれてやろう。褒美だ褒美。別に怖いから媚びてるんじゃないからな。

と、とにかく同じ愚は犯さん。

 

「ですから、いくらでも頼る様にお伝えください。

 可能な限り、新しい環境と、学園生活のサポートをします」

 

そう。ぬるま湯だ。どれくらい温いかと言うと、シベリアから日本に来るようなもの、いや、もっと落差がある。

この意味が分かるか? シベリアンハスキーやサモエドが日本での生活に慣れて、コタツに潜り込む駄犬になるように、水星女を堕落させるって言ってるんだよ!

 

「さあ、スレッタ復讐に行くわよ」

 

「今日、お外寒いからヤダ」

 

そんな感じに復讐を拒否されるんだよ。

今頃は水星でその復讐に使う牙を砥いでいるのだろうが、アス高に来たら柔らかい肉しか食えなくしてやる。

ミオリネの愚は犯さん! 水星女は徹底的に甘やかす! 駄犬にする! いや、駄タヌキだ!

 

「水星から来た田舎者だってバカにされないかも心配で」

 

「恥ずかしながら、アスティカシア学園には、そのような風潮があるのは事実です。

 ですが、僕たちの活動は聞いていると思いますが、出自で差別するような考えを否定していますし、そのような者が増えています。

 また、彼女等だけでなく、今年の新入生は気の良い子が多いので、御息女が編入して来たら、きっと仲良くなるでしょう」

 

先輩として、いじめからのガードだけでなく、友達だって用意するからな。

もう、水星に帰りたくないって言わせてやる。

いいか! アス高に来たら、甘やかすからな!

 

「あら、嬉しい。楽しみにしてる娘に伝えなくちゃ」

 

そう言うと、最後に全員に丁寧にあいさつをすると、足早に去っていく。

フッ、どうやら気付いたようだな。アス高に来れば、御自慢の戦闘マシーンが腑抜けになると。

本当は泣きたいだろうに、最後まで笑顔を保った胆力は褒めてやる。

 

それに原作に比べ、戦闘力にインフレが起きているから、水星女が蹂躙するケースにはならんよ。

水星女が来たところで、兄さんは当然、僕が相手でもエアリアルをスクラップに変えて見せるさ。

 

僕の忠告は分かっただろうし、野望が崩れ去ったことを嘆くが良い。

さらばだ水星女のママンよ。今日のレスバでは、兄さんがデリングを倒し、僕がプロスペラ・マーキュリーを倒した。

ラスボス候補を2人とも倒す完璧な勝利だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 

 

今日もスレッタに頼まれて、最近のお気に入りの映像を流す。

彼女は、昔からコクピットに入ってきては、学園ものの漫画をねだられていたが、これは本物の学園の映像だった。

アスティカシア学園の名物、ランブルリングの映像だ。

入学希望者を案内するオープンキャンパスのイベントの一つで、最も注目度が高く、そのため映像が手に入りやすいというのもある。

ただ、これが憧れの学園生活の映像かと問われれば、答えはNOだ。

それなのに、彼女にとっては、憧れを感じれる生の映像であり、その躍動する機体に目を奪われるようだ。

 

この映像が入った記録媒体を持ってきた母さんは、何をやったのか、スレッタに自分と一緒にアスティカシア学園に入学するように勧めてきた。

自分はお尋ね者のガンダムだが、大丈夫だという。スレッタも最初は怯えていたが、オープンキャンパスの映像を見て心が惹かれている。

 

「あ、お母さんからだ」

 

母さんからメールが来た。文面から、何か良いことでもあったか、妙にウキウキとしてるのを感じる。

どんな内容だろうと一緒に見ると、インキュベーション・パーティにアスティカシア学園の生徒が参加していたらしい。

 

「インキュベーション・パーティ?」

 

インキュベーション・パーティを知らないスレッタは首を傾ける。

だが、そんなスレッタと同じ歳の少女がプレゼンをしたというのは普通に驚きだ。

おまけに、企業の代表は、あのグエル・ジェタークとシャディク・ゼネリ。

 

「あの、赤い人と白い人だよね? それに青い人もいたって」

 

今も流れているランブルリングの映像では、赤と白のMSが戦闘をしている。

この2人が、そろって起業をした。そして、青いMSを含めて、最初に映像を見たときに、スレッタが勝てないと思ったのが、この3人だ。

同時に、母さんは扉だと言ってた。スレッタが鍵で、扉を開くには何度も戦う必要がある。

でも、この3人と互角に戦えば扉が開く。来年なら2人でも開きそうだと言っていた。

 

「やっぱり、アスティカシア学園ってレベルが高いんだね。

 操縦が上手いだけじゃなく、お仕事も出来るんだ」

 

スレッタも頑張らなくちゃねと応援する。

スレッタには起業は難しいだろう。それなら操縦くらいはと気合が入ったようだ。

 

「じゃあ、ゲームしようか。

 もっと頑張らなきゃ、恥ずかしい思いをしそうだし」

 

射撃に関しては問題ない。でも、接近されると分が悪いと思う。

ランブルリングの映像を見て衝撃を受けたスレッタは、ずっと頑張ってきた。

戦闘シミュレータを立ち上げ、赤いMSと対峙する。

今では、青いMSには余裕を持って勝てるし、白いMSも何とかなる、でも、赤いMSは難しい。

母さんが作ったグエル・ジェタークの戦闘データを解析した対戦相手だ。実際の実力と大きく異ならないだろう。

 

ただ、スレッタは勘違いをしていると思う。

スレッタは、この上位の実力者を見て、これがアスティカシア学園のレベルだと思っているのだ。

でも、普通の生徒は、赤と白のMSに巻き込まれながら落とされているMSのパイロットだと思うけど……

 

 

 

 

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