ラウダの野望   作:山ウニ

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兄さんVSダブスタクソ親父

 

「これが我が社が開発した新型モビルスーツ、ディランザです!」

 

父さんが高らかに声を上げ、2機のMSが映し出される。

あまりにも異なる2体のMSを同時に紹介された事で、インキュベーション会場には困惑が広がっていた。

1機は、前作デスルターの系統である事を感じさせるジェターク・ヘビー・マシーナリーらしい重厚さを持ったMS。まあ、僕がアニメで見ていたディランザ・ソル。

そして、もう1機は、ペイル社のそれよりも細身、正しく言えば貧弱極まりない姿のMS。

 

「この2機のMSは、基本となるフレームは同一のものを使用しています。

 その上で、このように駆動部を付け加えていくことで異なる姿となります」

 

そう言って、何通りかのパターンを映していく。その数は膨大で、詳しい説明など不可能。

 

「最初にアップした2機は、1つは軍用としてパワー重視で性能をカスタマイズしたもので、もう1つは訓練に適した物となります。前者はパワーだけでなく、あらゆる面でデスルターを超え、後者は出力を抑えている事で、訓練用に適しています。

 この映像の通り、子供でも操作が可能です」

 

その言葉の後に、複数の視線がこちらと映像を往復する。

何しろ、MSを操縦している子供が、ここにいるのだから。

 

「注目の的だね」

 

そう言って、隣にいる兄さんに声をかける。

モニターの中では、訓練から一転、地球での建設中の映像が流れていた。

今回のディランザ紹介と別に、地球再生をプロジェクトとして出資者を募る案があったが、それは中止になった。

ジェタークが地球で何かしていることくらい周囲にはバレている。

そして、希望としては、出資者より、ジェターク以外の参入が欲しいのだ。そこで、強欲な父さんが何も言わない事で、地球は金になると思わせることが出来る。

だから、今回は資金稼ぎの名目もあるし、純粋にディランザのアピールに終始すると同時に、参加グループからディランザのパーツ製造を請け負う希望者を探すのが目的だ。

 

見ている者は興味津々。パーツの少ない状態、つまり訓練で使用していた状態や、建築で使用する状態だと、非常に安価になり、その金額を発表すると、ブリオン社の社員が険しい顔をしていた。

だが、本領は戦闘能力だ。映像では、デスルターを圧倒するアニメ内の学園で使用していた青緑色のディランザの姿。

ここで、父さんが挑発的な笑みを浮かべる。

 

「さて、この映像内のディランザは、テストパイロットの希望により、パワーを重視したセッティングです。

 では、あそこにあるディランザの性能が分かる方はいらっしゃいますかな?」

 

そう言って、飾られている黒いディランザを指差す。

その言葉に会場内のあちこちで息を飲む気配が伝わる。

MS製造会社では、トップのほとんどがパイロット経験者。だからこそ、このディランザの怖さが分かる。

初見のMSに比べ、戦闘経験が多ければ、それだけ情報が開示され対策も打てる。

しかし、ディランザは前回の情報が役に立たない。全くでは無いが、パワーもスピードも、異なる可能性を考慮する必要がある。持っている装備で予想は出来ても、信じ切る根拠はない。

 

「凄い反響だね」

 

プレゼンが終わった後は、多くの人が父さんに詰め掛けていた。

このままでは、兄さん目当てに僕たちの所にも人が来るかもしれない。

だけど、兄さんは遠くに視線を送っている。誰かいるのか? 例えば、シャディクやミオリネとか? 僕たち以外の子供は出席していないはずだと思い、兄さんの視線を追うと、そこは食べ物の山。

 

「兄さん?」

 

「もったいねえよな」

 

「いや、気持ちは分かるけどね」

 

この手の場所では、あまり食べまくるのはマナー的によくはない。だったら用意するなと言いたいが、そこは用意するのがマナーという何とも相反する世界である。

だが、先日まで芋と豆を食べれると喜んでいた子供と一緒にいたのである。どうしてもね……

 

「よし、食うぞ」

 

そう言って、料理が並んでいる場所まで行くと、思いっきり食べ始める。

ワイルドな食べっぷりは素晴らしいが、周囲には眉をひそめる人もいる。上品ぶってんじゃねえぞコラ! と、叫びたい。

だが、これはこれで、悪くないか。兄さんが地球に行っていた事は、知る人は知っている。そこを見て来た13歳の少年が、余るような食事を前に、我慢できなかったというシチュエーションは、今後の計画ではプラスになる。

だったら、僕も食べるべきだな。父さんが何か言って来たら、それを伝えよう……ん? 周囲の雰囲気が変わった。

なに? 興味? 失笑? いや……恐怖だ。

 

美味(うま)いか?」

 

その声に振り向くと……

 

「デリング……総裁」

 

思わず声が出た。呼び捨てで終わる所だったが、頑張って最後に総裁を付けた僕を褒めろ。

だって怖いし。威圧感が半端ない。

威厳があるとか言うけど、コイツの威厳は多くの人を殺して、それを自覚している人間のそれ。子供が立ち向かえる者でも、僕のような中身が大人でも修羅場を潜っていない人間では、畏縮するしかない。

だが、それでも兄さんを守らなくちゃ……

 

「美味いですよ。でも誰も手を着けないから、全部食って良いですかね?」

 

守ろうとした対象は、怯むことなく挑戦的な視線と声で迎え撃つ。

かっこいいけど、何やってんの! 

 

「……それは何よりだ。だが、世の中には作法と言うものがある。

 貴様の食い方は浅ましすぎる。場を弁えるのだな」

 

はい。挑戦と受け取った模様です。

どうすんのコレ? そもそも、何でそんなデリングに反抗的なの?

 

「作法ね。それって人殺しの正当化の事でしたっけ?」

 

ああ、例の声明か……誰だよ、あれを見せたの? 僕ですゴメンなさい。

僕はアレを罪の意識から逃れる方便として、参考になると思ったけど、兄さんは違った。

捻くれた僕と違って兄さんは純粋だった。だから、許せなかったみたい。

 

「なるほど、そのような見方もあるか。今後の参考としよう。

 だが、無暗に敵を作る態度は感心せんな。少しは狡猾さも身に付けろ。ヴィム・ジェタークの息子よ」

 

「忠告感謝します。それと自己紹介が遅れて申し訳ありません。グエル・ジェタークです」

 

正論だ。確かに気に食わないからと、無暗に突っかかるのは良くない。ケンカは正しく行おう。

でも、ここで、父さんの名前を出したのは、何か意味があるのか? 単なる子ども扱いか、脅しのためか?

逆に兄さんは、子ども扱いが嫌なだけで、そこまで考えていないだろうけど、責任は自分にあると言っていると、とらえることが出来る返答をする。デリングはともかく、周囲で見ている人はそう感じただろう。

うん。責任感のあるナイスガイで好感度アップ。こんな時でも味方を増やすように振舞える兄さんは凄い……けど、計算じゃ無いんだよね。

 

「それはこちらもだな。デリング・レンブランだ。

 話が逸れたな。グエル・ジェタークよ。お前に聞きたいことがあった」

 

「何でしょう?」

 

「お前なら、ディランザを戦闘用にすれば、デスルターを落とせるな?」

 

背中がゾッとした。ウソは許さない、そんな声。兄さんも言葉に詰まる。

あの映像では、兄さんが戦闘用を操縦した記録は残していない。興味があれば聞いてくるとは予想していたが、あれだけで兄さんの成長速度を予想して、正解に辿り着いた。

この男は、見抜く力も持っている。良くも悪くも優秀な軍人だった。

 

「なるほどな。才能も機体も良いようだ」

 

返答は聞かずとも、兄さんの態度で察した。

それだけ言うと、この場を去って行く。向かう先は父さんの所。

 

「……マズかったかな」

 

「そうだね。気に入らないだろうけど、あの人の言う事は正論だよ」

 

「怒られるじゃ済まないか。次期CEOは任せるよ」

 

なに言ってんの? 確かに、父さんが怒る可能性は高いし、下手すれば勘当なんて言いかねないけど、そんなことは絶対にさせない。

でも、兄さんが形だけでも反省している態度を見せないと、父さんも引っ込みがつかなくなる可能性があるから、少しは殊勝になってもらおう。

分かってるんだよ。兄さんはCEOの地位に興味は無くても、MSの操縦が出来なくなるのは嫌だとね。

 

「兄さん、CEOの地位を継がないなら、その年齢でMSの操縦をする理由が無くなるよ」

 

「え?」

 

だってそうだよ。テストパイロットをしたのも、次期CEOとしてのアピールだし、いくら才能があっても、MSは子供のオモチャじゃない。

 

「ラウダ、何とかしてくれ」

 

「うん。する。でも、反省する振りはしてよ」

 

「振りじゃなく、反省するから。頼む」

 

今回は何も出来なくて情けない思いをしたからね。僕としても挽回したい。

この前、地球を見てから、その内とは考えていたし、新型MSとして、可変MSの提案と、テストを兄さんにしてもらうって事で父さんを丸め込もう。

 

 

 

 

 

 

 

 




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