ラウダの野望   作:山ウニ

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お、お祭りだから、僕のミスで負けても怒らないでね

 

 

『ラウダ先輩、太りすぎじゃない?』

 

『ダイエット手伝ってやんよ』

 

メイジーとレネが、攻撃しながら挑発してくる。ダイエットって、装甲(にく)を切り裂くつもりなんだろうか?

連携も取れて良い動きだ。同時に自分に意識を向けさせるのは、狙いとして悪くは無い。

でも、狙いを読まれたらそれまで、僕を相手に駆け引き勝負はやめような。

 

『くっ!』

 

後方から忍び寄っていたイリーシャに、T装備の後方に向いたビーム砲を放つ。

直撃は躱したか。だが……

 

「失礼な奴らだな。これは太ったんじゃない。

 若い子を相手にするから、精一杯お洒落をしてきたんだよ」

 

全身からビームを放ちながら、接近する。

だが、上空から攻撃。エナオが援護射撃をしてくる。

 

『ホラ、若い子に目移りしてるから、エナオが怒ってる』

 

『男って、若い娘が好きだから、しゃあねえ』

 

「バカ言うな。僕がエナオから目を放すわけ無いだろ」

 

回避しながら、上空に向けてもビームを放つ。

逃げるのに必死なフェルシーの隙を突いたようだが、甘いな。

制空勝負が付いていないのに、対地に気を割けるほど、フェルシーは甘い相手じゃないぞ。

 

『させない!』

 

フェルシーのギャプランが上空からエナオに襲い掛かる。

その角度からは反撃が出来ないが……

 

「フェルシー突っ込むな!」

 

僕が言い終わる前にエナオが機体を変形させる。

 

『ちょわっ!?』

 

妙な悲鳴を上げて方向を変えて再び逃げ出す。エナオも変形してそれを追いかける。

それで良い。フェルシーは逃げに徹して対地をさせなければ十分だ。

メッサーラの変形構造上、空気抵抗が悪くなるのを我慢すれば腕部を自由に動かせる。

だから、下手に低速で戦えば、ギャプランに勝ち目はない。よって高速での移動を続けて欲しい。

 

ワイヤーを射出して障害物をつかむと、機動に回転を加える。

それを繰り返しながら回転を上げて、周囲にビームを放ちながらレネに接近。

 

『敵味方、見境なしかよ!』

 

「心配しなくても味方に当てるヘマはしないさ」

 

『だったらさ!』

 

メイジーが接近してくる。

こちらの味方機を背負い、僕の射撃を躱せば、僕が味方を撃ってしまう。

メイジーのビームガンを避けながら、射線の確保を狙うが、上手いな。しっかりと背負って僕に討たせないまま接近してくる。だが……

 

「舐めるなよ」

 

レネからメイジーに狙いを変えて一気に踏み込む。

アンテナへの斬撃をシールドで受け止めるが、同時にビームガンを上空に投げ捨て、代わりに抜いたビームトーチで左腕を下から切り上げる。

受け止めていたシールドを保持する左腕が肘から無くなったので、そのままアンテナを切り落とそうとするが…

 

『させっかよ!』

 

レネが叫びながら接近すると同時に、イリーシャもちゃっかり接近してきている。

とっさに、イリーシャを右手のビームトーチでいなしつつ、左手のビームトーチを捨てて、落下中のビームガンをキャッチして、レネに向けて射撃。それもシールドで防がれる。

 

「よく防いだ。だが…」

 

シールドを上げれば、シールドの正面に動くことで、視界から消えることが出来る。

予想しない状況でこれをやれば消えたと錯覚するはずなんだが、シールドを放り投げやがった。

だが、この辺りで1機は減らしておきたい。

メイジーとイリーシャにT装備の射撃で牽制しながら、レネに踏み込むと、ランタンシールドのランスでの刺突が来る。

それを避けながら、右腕を切り落とす。

これで、レネ機は武器を失っ……は?

 

『まだぁっ!』

 

ランスの先を左手で掴んだかと思えば、切られた右腕が付いたままのそれを振り回す。

マジかよ?

 

『仲良く片腕同志だね♪』

 

『笑えねえ! マジ強え! 本気でヤベえ!』

 

こっちの台詞だバカ! 本気でやってんのに、まだ1機も落とせていない。

計算して動くサビーナとエナオに比べ、連携は雑だが咄嗟の判断が良い。

 

『私は、無傷だから、前に出る』

 

『却下だ! アタシは撃てないんだから、アタシが前に出る!』

 

ランスを一振りして、シールドから完全に抜き取り、ただの短槍と構える。

面倒くせえ! 逞しすぎるし、判断も間違ってない。

こうなったら、時間を稼いで、兄さんがシャディクを倒すのを期待するしか……ないんだけど、やはりか。

 

『面白い武器だな!』

 

『初見で躱しといてよく言う!』

 

ミカエリスの右手が外れ、ヘンテコ武器のビームを放つと同時に、左腕のショートシールドはビームガンとビームサーベルの両方を出せる。

その手の多機能すぎる武器は、下手すれば使い手が混乱するが、シャディクは完全に使いこなしている。

 

正直、そんな気はしていたんだよね。

開き直りと言うか、精神的な呪縛からの解放。

シャディクは自らの出自を、よりよってという、時と場所で公にすることで、自分の殻を破った。

 

『ちっ!』

 

『逃がすか!』

 

更にサビーナが張り付いて、牽制の射撃を効果的に行っている。

結果として、覚醒したシャディクとのコンビで、あの兄さんが押されている。

こうなったら、全力で撃ちまくって、味方が犠牲になるかもしれないが、強引に1年生トリオを落とすか……

 

「くそっ!」

 

そう考えてたら、遠距離からの射撃……ダイゴウか!

 

『レネ! 熱くなりすぎるな! 相手はジェタークだぞ!』

 

『ご、ごめん』

 

ダイゴウはシャディクが出自を言っても動揺無しか。

事前に知らされていたのか?

 

「随分とシャディクを買ったんだな。ワンジー」

 

『買いもするさ。出自なんて関係ない。ただ、グエルに挑むと決めた。俺たち以上に、アイツの怖さを熟知した上でな。

 それだけで尊敬できるし、応援したくなる』

 

「なるほど……」

 

『じゃあ、俺たちはグエルに付いて行くと決めたんでな!』

 

その声と共にダイゴウ組にアズラワンが攻撃を仕掛ける。あの声はエボニーか。

ファリサが、こちら側で参加してくれるのか?

 

『ちなみにシャディクにも、その出自にも含むところは無いぜ。

 ただ、ダイゴウがグラスレーに付くんなら、バランスは大事だろ?』

 

「正直、助かる」

 

『良いね! 面白くなってきた!』

 

『同感!』

 

あ~あ、もう、全員で熱くなっちゃって、でも、祭りならこういうのも良いか。

 

「じゃあ、僕は若い子3人とのダンスに張り切ろうかな」

 

『お手柔らかに』

 

『い~や、逆に足腰立たなくしてやんよ』

 

『レネ、なんか、卑猥』

 

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 

シャディクの出自公表による衝撃はあったが、それでも、観衆の目を引き付けているのは、グエル対シャディクの戦いよりも、誰もが初めて見る可変MS同士の戦闘だった。

グエルとシャディク、サビーナ。ラウダとレネ、メイジー、イリーシャの戦いは素人目には難解すぎて分からないというのもあるが、それを差し引いても、空中を高速で飛行しながらのドッグファイトや、途中で変形してのアクロバティックな動きは、それだけで熱中できるものがある。

だが、観衆の見た目には華麗な動きも、内部から見れば、華麗とは程遠い状況だった。

 

『ラウダ先輩の噓つき! 空に厄介な相手はいないって言ったじゃん!』

 

『お、落ち着いてフェルシー。逃げよう。頑張って逃げよう。追いつかれるよ』

 

管制を務めるニカが、フェルシーをサポートするが、客観的に見てエナオが優勢に見える。いや、精神的に気圧されているようだ。

実際に追いつかれそうになったので、急速変形してMS形態でやり過ごすと、向こうも同じことをやって攻撃をしかけてくる。

 

『やだぁぁぁぁぁぁぁ!!!』

 

『あまり叫んだら酸欠になるから! 深呼吸、深呼吸、お腹に力を入れて3秒息を止めて吐く』

 

『むっ………ぴゅっ。あああああぁぁぁぁ!!! 涎が出たあ! バイザーの内側にべっとりぃぃぃっ!』

 

『だ、大丈夫。フェルシーは可愛いから、フェルシーの涎付きヘルメットなんて、みんなが欲しがるから。

 何なら売ってみる? どれだけの値が付きますかね?』

 

『売るなぁぁぁぁぁぁっ!!! あとグエル先輩の真似は止めぇぇぇぇ!!!』

 

『そ、そうだ! あれがメッサーラと同じなら、低速域では安定しないはず』

 

『じゃあ、速度を落とせば…』

 

速度を落とそうとしたところで、通信が聞こえただろうラウダからの注意が入る。

 

『ダメだフェルシー、あれの変形システム上、低速域では両腕を自由に使えるぞ』

 

『本当だ』

 

だが、その通話を聞いたエナオが、両腕を前に出して、ビームバルカンを射出する。

メインのビームキャノンと違って、出力は低くても連射と命中率に優る武器の存在を敵に気付かせてしまった。

 

『ラウダ先輩いぃぃぃぃぃぃ!!!』

 

『ゴメン。本当に悪かった』

 

まさか、気付いていなかったとはラウダも思わなかったようだが、これで低速での戦闘は無しになった。

 

『フェルシー、速度上げて、あと叫ばない』

 

『上げる! 上げれば良いんだろ!』

 

『だから叫ばない』

 

『ニカのバカァぁぁぁぁ!!!』

 

一方、このやり取りが聞こえるグラスレー側はというと、全く笑えない状況だった。

いや、恐怖していた。

 

『エナオ、もっと息を吸って』

 

高速機動での最大の敵は、グレイアウト、そこから進んでブラックアウトすることだ。

それを防ぐには、脳内に酸素を送り込むことだ。

だから、大声で叫ぶなんて正気の沙汰ではない。

現にエナオは普段から寡黙な性格なのもあるが、沈黙を貫き、脳に酸素を送り込むことに集中している。

それに引き換え、フェルシーは大声で叫び続けていた。

 

(何で叫べるの?)

 

既にエナオは、何度もグレイアウトを起こしている。

そんな場合は、普通なら相手も苦しいはず、だから我慢比べだと思える。

それなのに……

 

『よ、涎! また涎!』

 

本当に苦しくないのか? 何故、大声を出せる? 普通なら、大声を出した時点でブラックアウトするのに。

もう、フェルシーの声は、どんな情けない内容だろうと、獣の威嚇、いや、妖怪の声にしか聞こえない。こちらを喰らうと脅しているとしか思えない。

 

どうアドバイスして良いか分からないまま、エナオが自身の判断でフェルシーを追うのを止めて、集団戦の中へ対地攻撃を開始する。

確かに、このまま追いかけても埒が明かない。いや、自滅の可能性もある。

だが、エナオが近づいた途端に、ラウダが奇妙な装備から対空砲撃を発射する。それを回避するたびにGがエナオを襲う。

 

『フェルシー、チャンスだよ』

 

『落ちて楽させろぉ!』

 

更にフェルシーが戻ってきて砲撃を加えると、一目散に逃げだす。

やはり、先にフェルシーを何とかしないと、対地に集中できない。

でも、本当に、あの妖怪を倒せるのだろうか? グラスレー陣営に不安が沸き上がっていた。

 

 

 

 

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