ラウダの野望   作:山ウニ

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経営者には向いていない人間がいる

 

 

昨年は、ミオリネの婚約騒動と地球寮のパイロットの件で集まったが、今年は地球での魔女の件、つまり、GUNDの痕跡についての情報を聞くために、前回と同じメンバーで集まることになった。

去年と同様に、アリヤはバイトをしているので、最終日にお迎えである。

どうやら、バイト先でも僕と噂になっているようだが、アリヤは相変わらずのペースだ。

 

つまり、僕とは何の進展もない。あの時はいい雰囲気だったのだが、妙な流れで有耶無耶になった。全部、父さんの所為だ。

その後も、3人目をどうするのかと聞かれるだけで、避けられているのかとも考えるが、それにしては距離感はグッと近づいている。普通に密着してくるし、僕でなくても好意を感じるはず。

 

すっかりチョロい男と化した僕は、今日も健気にアリヤの送り迎えをする。

そんな事を思いながらも、ジェターク寮のハンガーにギャプランを止めて降りると、訓練をしている兄さんの付き添いをしているカミルに挨拶をする。

 

「久しぶりだな。何時も悪いな」

 

「良いさ。好きでやってる事だ」

 

「何だか、久しぶりに見たが、お前の兄は人間を止めてないか?」

 

挨拶を交わした後、兄さんが操縦するディランザの機動を見た感想をアリヤが言う。

内容は例によって、対ガンダム対策のシミュレートなのだが、客観的に見ても、その動きは尋常ではない。

ビット兵器が包囲しようとしても、それを上回る速度ですり抜けて、一方向から見る単なる群れにしてから、まとめて排除する。

 

「半年前のランブルリングでの結果が、良い方向に働いた。

 あの流れ弾での撃墜で、一番後悔したのは兄さんだった。今は目の前のターゲットに集中しつつ、周囲への警戒を自然と行える」

 

ランブルリングの後も、人前で殊更悔やむような態度は見せなかったが、その実、シャディクに集中しすぎた自分の行動を反省した。

当時は、増長はしないまでも、成長するための目標が見えなかったので、頭打ちになっていた感があったが、あの敗北により、殻を破ることが出来た。

 

「訓練データを修正する必要があるな。カミル、機体の方は大丈夫か?」

 

「大丈夫とは言い難いな。いくらメンテナンスをしても追い付かん。

 駆動部が特注というのもあるが、あの機動だ。摩耗が激しすぎる。新型に期待しているんだが?」

 

「急かさないでくれ。休みの間は、アイツに付きっきりだったんだ。

 だが、アレなら兄さんの能力を十全に発揮できるはず」

 

ダリルバルデは、ギャプランで試したフレームや技術を盛り込んで色々とやっていたので、僕の休みは完全に返上だった。

あと一息で完成する状態にまで持ってくることが出来たが、やはり、ネックはAIドローンだな。

個人的には、あれっていらないんじゃないかと思っているが、試作機である以上、使える技術は盛り込みたいという技術者の意見を無視するわけにもいかない。

 

「聞いて良いのか悩むところだが、新型だからといって、今のグエルの機動に耐えられるのか?

 別に新素材だという事も無いのだろ?」

 

「アリヤの意見はもっともだが、新型は内蔵フレームが駆動するから、ディランザより細身になる。

 今のディランザの欠点は、巨体を強引に駆動させているのが原因だからな。

 軽量化によって、機体の負担も減るし、何より反応が良くなる。その分、兄さんの操縦も優しくなると思う」

 

そんな事を話している間に、シミュレーションのルブリスを倒したところで、マルタンとティルがやってきた。

ちょうど良いタイミングだ。兄さんに伝えると、訓練を終えてコクピットから降りてくる。

 

「どうだった?」

 

「結構な情報が拾えたけど、想像より気分が悪くなると思うよ」

 

集まった原因である、地球寮の先輩が集めた地球での魔女の情報をまとめたマルタンが、元気のない声で漏らす。

何だってGUND関連の話って重いものが多いんだろうね? だいたいは戦災孤児が関係することが多いからだろうけど。

 

「シャディクに話すのも気が引ける内容が多い」

 

「巻き込んだのは失敗だったか?」

 

「それはそれで、機嫌を損ねそうだ」

 

シャディクには、早々に魔女の危険性を伝えたのだが、ちょっと失敗というか、GUNDの件は掘り下げると戦災孤児には効く話だった。

何しろ、戦災孤児を使って人体実験してた奴らまでいるから、精神的なダメージが大きい。

シャディク達でこれだけダメージを受けるならと、グラスレー寮で広めるのは禁止になり、翌年からの面子であるニカと、地球寮のヌーノのメンタルを考慮し、ジェターク寮と地球寮でも同様になった。

よって、新学期からは、魔女に警戒しているのは、ジェターク寮と地球寮の3年生と、シャディク、サビーナ、エナオのみとなる。

正直、これから原作の時系列になることを考えれば不安なのだが、こればかりは無理強い出来ない。

 

そして、シャディク達、グラスレー組が来たので、寮長室まで行ったのだが、先に話しておきたいことがあると切り出してきた。

何かと思えば、ミオリネに会社を設立させてはどうかという提案だった。

 

「無理じゃないか?」

 

「相変わらずミオリネには厳しいな」

 

「これでも、随分と上方修正してはいるんだけどね」

 

僕のミオリネの評価は、頭は良いアホな子だ。

ちなみに修正前は、原作の影響もあって、勉強は出来るアホな子である。

大した伝手も無いのに、憧れだけで地球に行こうなんざ、トー横キッズと同レベルの思考能力しかない。

生活の糧を得ようにも、ボブ君と違って肉体労働には適していないし、ちゃんとした履歴も無いので、売春か悪い大人に騙されて犯罪の片棒を担ぐのが関の山だろう。

 

その後も見直せる機会と言えば、株式会社ガンダムをプレゼンするために、何やら計算らしきものをしたくらいだが、それも翌週の、「さあ、会社を立ち上げたものの何をしようか」発言で台無しである。

何をするか決めずに会社を立ち上げるアホが何処にいるんだろ? 利益なんて出る出ない以前の問題である。

インキュベーションって、〇〇〇の虎と一緒だよ。あの番組で何をやるか決めてないって言ったら、どんな暴言が飛び出る事か。

結局のところ、父親に頭を下げて出資を頼み、その父親の権力が半端ではないので他の者も仕方がなく出資したようにしか見えなかった。

挙句に、事業内容はヴァナディースがオックスアースに吸収される前の事業だ。

ここでも、何故、ヴァナディースがオックスアースに吸収されたかを検討もしていない。

普通に考えて、義手義足の開発では失敗する。

 

それでも、ここ最近は仕事を一緒にしたりするので、多少は見直しているくらいだ。

時々、ここは原作とは同じ人物だが、能力が異なる別世界ではないかと思う事もある。

だが、ミオリネが経営者としてやっていけるかと聞かれたら、やはり無理だと言う。

 

「上方修正って、どれだけミオリネを悪く見ていたんだ?」

 

ミオリネを高評価しているサビーナが突っかかってくる。

コイツはミオリネを才色兼備とか抜かしていたからな。

 

「入学時の体たらくで、コイツはアホだな、常識を知らないなって」

 

「アレは貴様がミオリネを孤立させたんだろうが」

 

「しなければ良い。簡単な方法がある。それどころか、常識で言っても、そうするべきだった」

 

「何をだ?」

 

「私の父が迷惑をかけて御免なさい。と言いにくれば良かったのさ。

 一番迷惑な存在は奴の父親だ。次いで、その父親に従えないのに意見を変えることが出来ない奴の非力。

 それを他責して、他所に解決を求めた身勝手さが原因だ。

 だから、そのことを謝ってくれば良かった。

 それをすれば、こちらもリアクションを取る必要がある」

 

普通に困惑中の兄さんと相談できた。そうなれば、僕だって解決案を出さざるを得ない。

原作でも同様。原作の再現だった場合、僕がホルダーなら、被害者面して無視。

だが、ミオリネに転生したら、先ずは謝罪することで自分を優位にする。

そして、自分が婚約に乗り気でないと告げる。

 

原作の兄さん、グエル・ジェタークなら相談に乗った。今の兄さんみたいに、頭はキレない。

それに、アス高の中でも、人の好さで言えば、レアキャラである。実にチョロい。

いくらでも利用できる相手だ。グエル君は、結婚を迫る父親と、自分の道を進みたい女の子の間で、板挟みになって苦悩するだろうが、絶対に無下にしないと確信できる。

これが、ヤバいことを企んでいるシャディクや、実質4BBAに利用されるエランがホルダーだったら詰みだが、グエル君のチョロさなら余裕で利用できる。

 

「あのアホさの原因は、元は友達がいない事から来る、視点の少なさだから、今は改善が進んでる。今なら気付いてるんじゃないかな? 少なくともサビーナよりは賢いからな。

 それでも、経営者としてやっていけるかは疑問が残る」

 

サビーナが不機嫌になっているが無視。

この辺りを気づいていたエナオなんかは苦笑している。

 

「それで、会社って、要するに、今やっていることを企業として行うって事だよね?」

 

「ああ。現状では学生のタダ働きだが、卒業してしまった後がね」

 

「それは分かるけどさ……」

 

卒業して、ミオリネが植生エンジニアになるための技術を学ぶため進学したら、彼女がやってる仕事を誰がやるのかという問題が出る。

それを惜しいと思う気持ちは、僕にだってある。それでもだ。

 

「それで、会社として独立したとして、アイツはどうやって利益を出すの?」

 

現状では、彼女が出す利益は膨大だが形は無いものだ。

食料の収穫アップは、治安の向上や、ジェタークやグラスレーの名声を高める。これの効果は非常に高いのだが、独立した場合は、どこから収入を取る必要がある。

 

「アイツがさ、で、いくら出す気? とか言えると思う? その金額じゃ無理ね。とか、断れると思う?」

 

そう。アイツの欠点は、視野の狭さに加えて、人が良すぎるのだ。

交渉相手は基本的にジェタークやグラスレーになるだろう。あとは地球の政府とか自治体になるか。

それらを踏まえれば、ジェタークとグラスレーに、半ば子会社になっていいからと、一定の保証を求めなくてはならないが、アイツはその発想が出ないタイプだ。

 

「言われてみれば、ミオリネに金銭の交渉が出来ると思えないな」

 

「ああ、兄さんやシャディクになら、遠慮なく吹っ掛けることも出来るだろうけど、それも、こちらから言い出せばの話だ。先ず、どうやって利益を出すかで躓くんじゃないか?

 おまけに、地球で貧困した地域の自治体に依頼されたとしたら、まず断れない。

 移動費など費用を出すだけ出して、実質のタダ働きどころか、赤字になると思う」

 

「う~ん、この話は無かったことにするか」

 

シャディクも無理に進める気は無さそうだ。

どうやら、ミオリネの進路によっては、彼女の能力が消えるのを不安に思う人がいるようだが、ミオリネを赤字経営の会社の社長にしてまで進める気は無いだろう。

 

「可能なら、ジェタークかグラスレーに就職してもらうのが理想なんだけどね。

 こちらが、お題を出したときの解決能力は高いんだし、良い条件で勧誘するのも手だね」

 

「就職って、一応は総裁の御令嬢になるんじゃない?」

 

マルタンの疑問はもっともだ。

 

「でも、ジェタークは、婚約者の会社だぞ」

 

「その設定、まだ生きてるの?」

 

「設定というか、一応は形式上は婚約者のままなんだが? 忘れるのもマズイだろ?」

 

未だに狙っている奴がいないとも限らないからね。

 

「ちなみに、ジェターク社に就職して、そのままグエルと結婚するなんて言い出したら、どうする気だ?」

 

「兄さんの意思次第。兄さんが結婚すると言ったら、僕は反対しないよ」

 

「は?」

 

「ウソだろ?」

 

「何か悪いものでも食ったか?」

 

アリヤの軽口に真面目に答えたら、全員でざわつきだした。

 

「いや、兄さんの結婚相手として見れば、ジェターク社としては悪い条件ではないしね。

 僕の好き嫌いで決められないし、反対する理由がないじゃないか」

 

「そうじゃなく、お前の事だから、絶対に邪魔するとしか思えないんだが?」

 

「あのね、僕を何だと思ってるんだ?

 僕は、兄さんが結婚すると決めたら、絶対に反対はしない。何時だって、兄さんの決断を優先する」

 

それが僕の決めたルールだ。

どれほど嫌でも、ルールを破ることは絶対にしない。

 

「だから、ミオリネを好きになりそうだったら邪魔をするだけさ。好きにならないようにする」

 

「お、おう、安心した。やはりラウダだったな」

 

「いや、安心するところかな?」

 

「実際に、全く惹かれている気配はないしね」

 

「そうなのか?」

 

あたふたしてるシャディクとは対照的に、苦笑していた兄さんが話を振られると、真剣に考えこむ。

 

「そうだな。無い。やはり、無いな」

 

「何だ? ラウダに上から目線で、少しは異性に心を傾けようと言ってたじゃないか?

 そのラウダは二股だぞ。三股目を探してるぞ」

 

「探すって、僕は見つけるよう強要されてるんだが? 一股も手を出せててないんだが?」

 

「いや、俺だって、ちゃんと意識してるぞ」

 

マジで!? つーか、僕の現状はスルー?

 

「ほう、良いと思う相手がいるのか?」

 

「そうだな。知っている範囲では、フェルシーとレネは可愛いと思うぞ」

 

「何というか……似てると言えば似てるが?」

 

メスガキがタイプ?

 

「決闘委員のセセリアとかは?」

 

「あれはないな。どちらかと言えば、苦手だ」

 

ん? 同類じゃないのか?

 

「前に、胸が大きい方が良いと言ってたが、フェルシーだと……」

 

「いや、スタイルで言えば、レネの方なんだが、性格はフェルシーの方が、より好みかな」

 

「元気でイケイケな性格か?」

 

「いや、そこは違うな。そこは抑えて欲しい所だ。それが無ければなと思ってるくらいだし。

 何と言うか、ミオリネやセセリアみたいに、しっかりとした子でなく、明るくて頑張ってるんだけど、何処か抜けてる感じの子が安心できるというか」

 

ほうほう……だ、大丈夫だ。奴は来ない。プロスペラ(母親)をしっかりと脅しておいたから。

 

 

 

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