質問、MSが空を飛ぶのに必要な条件は?
答え、重量に対して、十分な揚力と推進力があれば飛べます。
そんな訳で、地球で行動するのに、空を飛べるMSがあれば良いね。そんな考えを持つ者は多い。
実際に、ジェターク社で雇っている警備の人に聞いたら、当然欲しいと言う答えが返ってくる。
しかし、大気圏内を飛行するMSの代表がペイル社のザウォートだが、重量はディランザの半分以下。
軽装甲で当たらなければどうともないを地で行くMSで、逆に言えば、当たれば凄くどうともある。
パイロットの生存性を重視するジェターク社のコンセプトとは真逆であり、似たようなMSを作るのは、開発陣の矜持が許さないだろう。
ザウォートの重量なら十分な揚力でも、ディランザでは無理。グラスレーのハインドリーでも、長時間飛行は不可能だ。
つまり、重量級MSを飛行させるには、何らかの形で揚力を発生させる必要がある。
ミノフスキークラフトのような特殊技術でもなければ、重力に逆らう方向に推進力を発生させ続けるか、翼を使って、気流を揚力に変化させるか。
前者は大量のスラスターを配備するグフフライトタイプやバイアラン。勘違いしやすいが、ビームローターはミノフスキー関係の技術だから別枠。
そして、後者はΖシリーズ等の可変機がそれに当たる。もっとも、翼だけでは、揚力を得るのに十分なサイズの大きさでは無いので、やはり別個の推進機を設けている。
ちなみに、揚力が低くとも、それを補うだけの推進力があれば空を飛べる。例えばミサイルがそれに当たる。
砲弾の原理と一緒で、速度があれば、前へ進む力で重力を振り切ることが可能だが、その必要な速度が問題である。
ミサイルが落下しないのは、マッハ5で飛び続けるからであって、速度が低下すると失速して落下してしまう。
ちなみに、この原理を利用したMSがある。Ζガンダムに登場したギャプランで、揚力を生み出す装備は無いが、ロケットのような速度で飛翔して、高度を取ってからMSに変形し、落下しながら戦闘するスタイルである。
理に適っているようでありながら、発生するGで普通のパイロットでは乗れないと言う、狂気の産物だ。
だが、この狂気の産物が、最も参考になるのだから面白い。
というのも、今回の可変MSのプランを提出する理由は兄さんのためだから、あまり予算は取れずに、おまけに短納期で、かつ、失敗は許されない。予算の関係で、フレームやセンサーなど部品の多くを既存のMS、ディランザから流用しないとダメ。
そんな素晴らしい条件の下で、父さんからゴーサインが出るような企画を出すのだ。
僕の頭ではミノフスキー物理学のような画期的なシステムは開発不可能だし、ゼータのような複雑すぎる可変システムも無理。そして、航空力学的に悪化するような変形システムなど論外。
つまり、出来る事と言えば、関節の稼働を大きく超えない動きで、推進機を一方向に固めて推力を得て、翼を取り付けて揚力を得るくらいしか不可能。
だが、別個を向いている脚部と背部のスラスターの向きを合わせるのは、ギャプランがやっている事である。似たような変形システムを採用しているのにメッサーラがあり、この両機をモデルにして、翼を付けるとどうなるか設計を進めていく。
頭部など多くがディランザと共通になるが、致し方なし。
ちなみに、OOのフラッグなども同じタイプだが、細身すぎて、あれではジェタークの矜持が許してくれないだろう。
そんな訳で、主翼の位置だが、ギャプランはムーバブルシールドの形状を変えて、MS時には内蔵させる。可変時にはシールドを垂直方向でなく水平方向にして主翼を展開させる。そうすることで大型の主翼からかなりの揚力を得られる。おまけにムーバブルシールドの形状を更に弄って、ゼータのフライングアーマーのような、いびつな半円形状にしたので、そこでも少しだけ揚力を稼げる。
更に、長時間飛行も考え、脚部には側面に熱核ジェット推進を搭載。ASでは古い技術になるが、パーメットの使用を減らして、大気圏内での燃料を大幅に稼げるので採用した。
メッサーラの方は、元が宇宙用だが、背部の大型スラスター兼メガ粒子砲を細身にして、空気抵抗を向上させる。
そのメインスラスターには、変形時は腕の一部を収納する空洞があるのだが、MS時にはその空洞に主翼を折り畳んで収納する。
また、メッサーラの脚部は宇宙用なので、ふくらはぎにスラスターが並んでいたが、これはギャプランと同様の形状に変更。
そして、両機で共通するのが、主兵装であるメガ粒子砲が、主翼を取り付けた影響で、威力が低下してしまうことだ。これを補うために、変形時にはフラッグのように、機首になる大型ビームライフルを装備させる。空気抵抗に優れたデザインにする事で、飛行性能もアップした。
でも、変形中に落としたら拙いよな。どうするかは後で検討する。
これで、シミュレーション調査する。いやあ、昔は、つーか、“俺”がいた時代はコンピューターの演算だけでなく、試作機にミニチュア作ったり大変だったけど、便利な世の中になったものだね。空気抵抗やら戦闘能力やら自動で結果が出るんだもの。
それで、結果だが戦闘力はメッサーラが上になった。威力が低下してるとは言え、可動式の背部ビーム砲は、空戦時にも脅威になり、おまけにコイツは空戦時に腕を展開しても大丈夫だと言う結果になった。安定感は悪くなるが、武器を持った腕を振り回せるのは大きい。
更に、MSでもギャプランは腕にムーバブルシールドが付いているので、格闘武器を振り回しにくい。ゼータのギャプランも高高度迎撃がメインで、そこには目を瞑っていた。活躍できたのはパイロットが化け物だっただけ。
そこで、サーベルなどの格闘武器を持たせるではなく、ムーバブルシールドにビーム刃を展開できるようにして、シナンジュのように振り回せるようにしてみた。性能差は少し縮んだが、メッサーラ有利は変わらず。
だが、空力の安定性ではギャプランが圧勝。
特に低速域での安定性に優れ、偵察や哨戒に向いている。
また、シールドを装備しているのも大きく、避難民を文字通り盾として守る任務にも使える。
そもそもの、地球での運用目的が、問題が発生した際の早期展開が第一で、それを防ぐには偵察任務が重要になる。
ちなみに、日本で大震災が発生した際は、真っ先に行動するのが航空自衛隊だったりする。
地上部隊を派遣しようにも、そこまで行くのに問題が発生していないか、上空から確認を済ませておくのだ。当然、被災地の状況も火災や倒壊など、詳しくは不明でも大まかな情報を送ることが可能だからだ。
かくも軍と言う組織は情報を重視している。
だが、この世界の軍は……いや、よそう。愚痴っても仕方が無いし、とにかく現場の人が求めているのはギャプランの方になるだろう。
コイツの設計を煮詰める前に、先程の問題。
「空戦の最中にライフル落としたなんて洒落にならんよな」
変形して撃とうとしたら無くしてましたとか笑えん。ゼータはしっかりと背中に付けてから変形していたが、他のシリーズはどうしてるんだ? 確かウイングガンダムとかシールドとライフルが自動で飛びながら合体して変形するシーンがあったような? サイズが厳しそうだが、ダリルバルデのドローン技術の応用で出来ないか?
そんな事を考えながら、特許関連を含めて使えそうな技術を探してみる。
「あったよ。ライフルが自動で手に……」
ウソみたいな話だが、特許として発表されていた。
パーメットを利用した推進システムで、背中などにマウントした武器を手元まで送るシステム。当然、地面に落ちてもOK。
「どこの特許だ? こんな凄いシステムなら……」
特許を買い取るのが理想だが、無理なら使用料を払ってでも採用したいシステムだ。
競合相手である御三家なら父さんの許可が出ないだろうが、それ以外の相手なら……
「……シン・セー開発公社」
よりによって、ココ? 水星女の妖しいママこと、プロスペラママの会社だよね。
調べてみると特許が凄い凄い。流石にGUND関連は無いが、推進システムに関してはペイル社を上回っている。
ここなら、中量級のエアリアルでも飛行可能に出来るんじゃ? つーか、ビームライフルを浮かせる描写なんかあったか? でも、考えてみれば、重力圏でビットを使用していたし、推進システムは滅茶苦茶高いはず。
まさか、エアリアルって、ビットの中にライフル混ぜようと思えばできるとか? こえーよ。
「だが、ここの技術となると流石にな……相手は魔女だ」
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「よかろう。スタッフも付ける。開発チームを立ち上げろ」
何度かの修正案を出して、可変MSギャプランの開発が決まった。
もちろんテストパイロットは兄さんだ。
「それと、シン・セーとの契約は合意した。意外と安かったから助かったぞ」
「ありがとうございます」
例の特許の使用許可が出た。システムを利用した武器を1つ作るのにいくら、という契約内容だ。
ちなみに魂を売った訳では無い。あくまで会社としての契約。ウィンウィンの関係である。
追記。別に父さん、兄さんの事を怒っていなかった。あの後、アス高で訓練用のディランザを購入したいと話になったそうで、むしろ嬉しかったが、褒めれる状況じゃないので何も言わなかっただけらしい。
僕の苦労は一体……
追記2。可変MSのテストパイロットに選ばれた事を兄さんが喜んでいた。こんなこと別に苦労でも何でも無いのに♪