ラウダの野望   作:山ウニ

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兄さんVS水星女 その2

 

 

 

 

「あんな行動をするなんて」

 

スレッタはグエルの無茶な行動に困惑しながらも、回避に専念する。

ビームライフルを右手と一緒に失った。ライフルを左で持って、これまでと同じ行動を取ることも考えたが、先程のような行動を取られると、今度こそ負ける気がする。

それならばと、開き直って接近戦を覚悟してビームサーベルを装備して、接近されない限りは回避に専念。

遠距離攻撃はエスカッシャンに一任する。

 

「こんな状況だけど、何だか動きが良い」

 

幸いと言っては何だが、エアリアルとエスカッシャンの動きが今までにないくらい良い。

これなら、まだやれる。

グエルは強い。でもエアリアルを壊させるわけにはいかない。

 

「みんな、お願い!」

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 

 

赤い発光。パーメットスコアが4にまで上がったか。

 

「おい、パーメット流入値が凄いことになってるぞ」

 

「ああ、だが、データストームは検出されていない」

 

シャディクと一緒にデータを見ているが、GUNDフォーマットの特徴であるパーメットの流入値は異常に高いが、データストームはない。

頑張って原作を思い出してみるが、これってどう判断されたのか思い出せない。

 

「それにしても、想像以上の腕だね。グエルにあんな無茶をさせるまで追いつめるなんてさ」

 

「腕もだが、判断が良い。憎らしいくらいに正解を選んでいる。

 まあ、その対策も兄さんに見つけられたみたいだけど」

 

「愚策に弱いか。普通は思いつかないよ」

 

大自然の驚異と言えば、むしろ手緩いくらいだろうが、水星での太陽風や磁場の影響などは最大限の警戒と対処が必要なのだろう。

例えるなら雪崩に巻き込まれて、そこから生還しろと言われて雪崩の波を進んでいくようなもの。

そんな事を成し遂げそうなスレッタは間違いなく化け物だし、兄さんの攻撃に対応していったのも頷ける。

だが、兄さんは人間の愚かさという理不尽を使って、スレッタにとっては想像の斜め下からの攻撃でダメージを与えた。

でも、剣道で言う小手撃ちなので、手首に近い箇所だから、ビットのチャージが可能なのは失敗だったかな?

昔、僕が多用していたので、兄さんも使うようになったが、普通の相手なら良いけど、エアリアルが相手だと、肘の辺りまでは落として欲しかったな。

 

「動きが良くなったか?」

 

エアリアルとビットの動きが、更に良くなって見える。

もしかすると、パーメットスコアが上がっているのか?

パーメットの流入値も赤く発光した直後から更に上がっている。

確か、6で青色に発光するから、今はスコア5にまで上がっているのかもしれない。

 

「パーメットの流入値に比例しているな。やはり、そうなのか?」

 

「これで違っていたら笑うしかないな」

 

ああ、少し思い出してきたな。

原作では、なんやかんやでデリングの独断と判断でガンダムかどうかの判定がされていた上に、ガンダムを禁止か認めるかまで奴の気分次第だったな。

ふざけるなよ。散々人を殺して技術を断ちながら、娘に頭を下げられたら認める? あり得ないね。

 

「問題は、この動きの変化に兄さんが、どう対応していくかだけど」

 

エアリアルの問題は、下手に追い詰めるとパワーアップしていくこと。

スレッタの身体の心配より、更にパワーアップする前に倒して欲しいんだが、戦闘は時間ばかりが過ぎていく。

あのエスカッシャンは厄介だが、兄さんが僕が何かを開発する際の口癖を思い出してくれれば……

 

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 

 

「更に動きが良くなった!」

 

ビームの射撃を避けながら、グエルは舌打ちをする。明らかにスウォーム兵器の動きが滑らかになっている。

速度そのものは上がっていないはずだが、MSの操縦で例えればランクが上のパイロットが乗り換えたみたいだ。

先に撃ち落とそうともしたが、こちらが攻撃をするとスウォーム兵器は防御して、ビームランチャーの砲撃すら弾いてしまう。

 

「とんでもない兵器だな」

 

1つずつ落とすつもりで、近距離で収束ビームを撃ってみたが、それでも壊せなかった。

何度かやればとも思うが、下手に接近すれば周囲から攻撃を受けるので、基本的に受けに回ることが多く、こちらから攻撃する場合は散弾状でビームをばらまく戦い方になる。

その繰り返しに時間ばかりが過ぎ、そして時間が経つたびにエアリアルとスウォーム兵器の動きは良くなる悪循環。

 

「ビーム兵器だと厳しいか」

 

実弾兵器は禁止されているが、ラウダが作った武器の中には実体剣の他にワイヤーで飛ばすアンカーや、アンカーの代わりに杭にした実弾兵器の代用武器がある。

ジェターク寮の武器庫、通称ラウダのオモチャ箱と呼ばれるエリアには、そういった武器があるが、今さら武器の変更は効かない。

 

「代わりに使えそうなものは……ラウダの真似はどうかと思うが贅沢も言えないか。あれで行くか」

 

スウォーム兵器を引き付けながら高度を上げると、ビルに体当たりして壁を突き破りながら内部へと入る。

これでスレッタからは見えない。このまま…

 

「見えるのか!?」

 

だが、スウォーム兵器もビルの内部まで追いかけてきて攻撃をしてくる。

狙いも適当ではない。明らかに、こちらの居場所を正確に把握した上での攻撃だ。むしろ狭い分、小回りが利かないグエルの不利を察しているのか積極的な攻勢に出る。

 

「ちっ、だったら、潰し方を変えるだけだ」

 

一気に最下層まで突き進むと、ビルを支える支柱を全て一瞬で破壊する。

予定ではスウォーム兵器側にビルを倒して押しつぶすはずだったが、内部に入って来たのならビルの支柱を砕き崩壊させて巻き込む。

何だか子供の悲鳴が聞こえた気がするが、そんなはずがない。

ビル解体の要領で崩壊させたビルを出ると、飛び道具とシールドが無いエアリアルへ向かう。

 

「逃がさん!」

 

エアリアルは逃げ出す。

ビームライフルは右手ごと失った。防御に使えるスウォーム兵器も今は無い。

あの状況から、スウォーム兵器が戻ってくるのかは分からないが、現状ではビームサーベルしか武器は見当たらない。

他に武器の可能性として、頭部にバルカンの発射口らしき穴が開いているので、そこは注意をしなくてはならないが、警戒しすぎるよりも今は追って撃墜を狙うべきだと判断した。

 

逃げる。追う。

直進はこちらが速いが、ビルの間を縫うように逃げるので、ビームランチャーを使えない上に、最大速度に到達する前に減速を強いられる。

だが、少しずつ距離が近付く。

そして、もう少しというところで、エアリアルは左手に持っていたビームサーベルを投擲武器として投げつけてきた。

 

「焦ったか…いやっ!」

 

シールドを使うまでも無く、投擲されたビームサーベルの柄を左手でつかむと右手でビームカタナを抜いて破壊する。

問題はこの後、エアリアルが逃げた先は、先程ビームライフルを持った右手を切り落とした場所。

ビームライフルが自動で浮き上がり、エアリアルの左手に収まる。

 

「これを狙っていた! だが!」

 

エアリアルが撃ったビームをシールドで受けながら突進する。

これで相手は近接戦が出来ない。

エアリアルが倒れるように横向きになって右足で蹴りをしてくるが、苦し紛れの行動だ。

足を切り払った。だが、更に回転を続けたエアリアルの手にあるビームライフルには光の刃が形成されている。

 

ビームライフルがビームソードに? 咄嗟に躱す。だが、完全には間に合わない。

左腕を肩から切り落とされる。

おまけに不安定な態勢にも関わらず、頭部からビームバルカンを撃つと、左腰のビームカタナのラックを破壊された。

このまま、片腕同士で切り合いを続けようかとも思ったが、更に悪いことに、スウォーム兵器が戻ってくる。

たまらず、この場を離れるしかなかった。

 

「やってくれる! それにしても、また色が変わったか」

 

エアリアルの赤く発光していた胸部が、今は青く輝いていた。

 

 

 

 

 

 

「お、惜しかった? それとも助かった?」

 

エスカッシャンをビットオンフォームに戻しながら、スレッタは息を吐く。

グエルは離れていった。

左腕を無くした上に、近接武器を収めるラックを壊したので、あの状況ではカタナを捨ててビームランチャーを使うか、そのまま撃ち合いを捨ててビームカタナで近接戦を続行するかの2択だったが、前者なら時間を稼げばエスカッシャンが戻ってくることが分かっていたし、後者なら距離を取ってビームライフルでの射撃戦に移行して、エスカッシャンに背後から襲わせるつもりだった。

 

「みんな、ありがとう」

 

スレッタはエスカッシャンに礼を言う。

どちらにせよ、今のエスカッシャンの状況が分かればこそだ。

みんなの声が今日はよく聞こえる。

 

「頑張ろうね」

 

 

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 

本当に良いのか?

すでにパーメットスコアは6にまで上がった。

このまま続ければ、もしかすると目標のスコア8にまで届くかもしれない。

その結果どうなる?

エリクトに広い世界を自由に行き来できるようにしたい。

それが母さんの望みだという事は分かっている。エリクトとしても、そのことを嫌だという気持ちは無い。

 

でも、そのために自身の身体を犠牲にしている。

母の身体と、自分の自由。いや、本当に自由だというのか? 

そもそも自由とは何だ?

何が出来る? 

 

何よりも、もっと根本的な問題がある。

エリクト・サマヤ《自分》は、どんな存在なのだ?

死んだはずだ。今の状態は生きていると言えるのか?

生きるとは何だ?

人は生きて何を望む?

 

美味しい食事?

食事も必要ない。必要ないどころか食べられないのだから、食事を楽しむことも出来ない。

 

可愛い洋服?

自分の姿は人に見えないし、触れることも出来ない。

仮に見えたとしても、死んだ時と変わらぬ姿で彷徨ってるだけだ。

 

素敵な恋?

何処に見た目が幼女の自分に惚れる相手がいる? いたら逆にヤバい人だ。親しくなりたくない。

恋愛の知識なんて、漫画の世界しか知らない。スレッタと同レベルだ。

 

でも、そのスレッタは、これから恋をするかもしれない。

いや、すでに恋を意識している。

本当は誤解なんだけど、好意を向けられたと思っているし、そう考えることで相手を恋愛対象として考えている。

普通に考えれば高望みすぎる相手だ。釣り合いが取れるとは思えない。

だが、スレッタの世間知らずが功を奏したのか、そんな世間体を考えてのマイナス思考が無い。

 

スレッタには幸せになって欲しい。

エリクトがエアリアルになってからは、人としての望みは無くなった。いや、望めなくなった。

でも、そんなエリクトにとって望むものが、母とスレッタの幸せだ。

 

母は、その命を懸けてまで、エリクトに広い世界を与えようとしている。

復讐を考えているのかと思っていたが、ヴァナディース事変の復讐も、それどころか自身の命すら捨ててまで、今の計画の成功だけを考えている。

それは、もう止めることは出来ない。エリクトの事は良いから、自分の身体を大事にして欲しい。でも、それを伝える手段が無いまま手遅れになってしまった。

 

だが、スレッタは?

これから、いくらだって幸せになれる可能性が待っている。

例え、それが母さんの望みと相反する選択肢であっても。

そのためには、この戦いで負けた方が良い。自分がガンダムだと知られて破壊されることになっても、スレッタが幸せになるなら、この身を捨てる事も厭わない。

それなのに……

 

「エアリアル!」

 

スレッタの声に反応して力が漲る。

エスカッシャンも、エアリアル(自分自身)も、より正確にスレッタの操縦に反応する。

グエル・ジェターク(スレッタを救おうとする者)を倒すために。

 

 

 

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