ラウダの野望   作:山ウニ

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兄さんVS水星女 その3

 

 

スウォーム兵器が先にも増して流麗な動きを見せ、ブレードアンテナや関節を狙って正確な射撃を行ってくる。

その際は2つ以上のビームが交差するように撃つので、その正確さは恐ろしくなる。

 

「正確すぎる狙い……か。試すなら今しかないか」

 

だが、グエルはその正確さが気になった。

読みが正しければ、もっと早くに気付けばという後悔と一緒になるが、活路も見いだせる。

それに、終わった後で正解が分かっても無意味だ。

 

「さて!」

 

スウォーム兵器の前に身を晒し、ゆっくりと前進する。

撃ってくる。と、同時に右足を前に出してビームを受け止めた。

装甲が溶けていく。だが、装甲を直ぐには貫けない。

 

「やはりか!」

 

ラウダが開発する際には、口癖のように言っていた。

万能は無能。

優れた兵器を作るには、何かを足す以上に、不要な部分を排除することの方が重要だと。

それなのに、あのスウォーム兵器は多機能すぎる。移動するための推進機、防御フィールドの発生器、攻撃ビームを発生する加速器、それらはGUNDとは関係ない。

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

兄さんのディランザは右足の膝から下を失うと同時に、ブースターを全開にしてビルの中に突っ込んだ。

 

「グエル!?」

 

「正気を無くした?」

 

やっと気づいてくれた。そんな僕の安堵の思いとは違い、シャディクとセセリアは驚愕している。

兄さんのディランザが左腕を持って行かれた事で、動揺が見られている。

そんな事は初めての事だし、言葉が少ないエランも同じだった。

 

僕の場合は、エアリアルのライフルがソードとしても使えることを知っていたし、エスカッシャンの秘密に気付かない限り、それくらいは覚悟していたから、ああ腕だけで済んだとの思いだったが、おそらく、学園中でも騒いでいるだろう。

そんな中で1人冷静なロウジに声をかける。

 

「威力はどれくらいだと思う?」

 

「見た目はビームライフル並みに見えますが、精々がビームバルカンよりは上なくらいだと思います。

 ビームバルカンと違って照射は長いようですが」

 

「同感だ。あの武器の本質はシールドだな」

 

エスカッシャンは見た目は派手だが、単発での威力は低い。

それを補うため、関節を狙い、それを複数のビットが同じ場所を撃つことで破壊力を上げている。逆にそれが余計に派手に見える要因でもあるんだが。

これの不自然さに気付くとしたら、メカニック科の生徒になるだろう。

どれだけ優秀だろうと、シャディクやセセリアでは気付きにくいし、ここにいるロウジやジェターク寮でもカミルの方が異常に先に気付くはずだ。

 

宇宙世紀でも初代エルメスのビットは戦艦を破壊していたが、小型化に成功したキュベレイのファンネルはMSが相手でも、百式は落とせても、Ζのシールドや重装甲のジオには通じなかった。

そうした威力が低すぎるのが問題になったので、サザビーやヤクトドーガのファンネルはキュベレイのものより大型化している。

それでも、ファンネルはMSの装甲なら十分に貫けるが、エスカッシャンはMSの装甲を正面から貫くのは不可能だ。

 

「それでも、あの狙いの正確さは驚きですよ。

 従来のドローン兵器には不可能な動きです。破格の技術だとしか言いようがありません」

 

「そうだな。まあ、今はその正確さが仇になったようだが」

 

兄さんはエスカッシャンの攻撃が単発では低いと予想し、どれくらいで装甲を貫けるかを確認した。

狙いが正確だからこそ狙いを見抜いて、今回は厚い装甲のすねでワザと受けた。

あとは少し身体の向きを変えれば、関節やブレードアンテナへの被弾を防げる。

 

「でも、あの技術に心当たりがあるのでは?

 お二人とも、何かを調べているようですが?」

 

「悪いが秘密だ」

 

エランは確実に気付いている。あれを使うために身体を弄られているんだしな。

そして、戦闘が終わった後は、改革派の連中には言う事になるだろうが、保守派のブリオンに所属しているロウジにまで言う気は無い。

セセリアが不満そうに見ているし、ロウジ自身は技術者として僕を慕ってくれているので邪険にはしたくないが、こればかりは言いふらすようなことではない。

 

「これで問題は装備か」

 

左腕だけでなく、ビームカタナのラックまで失ったのは痛い。

肩から持って行かれたので、シールド裏にあるビームトーチも無くした。

ビームカタナを収納できないのに、左手で持つことも出来ないので、このままではビームランチャーの使用が不可能だ。

 

ビームライフルからソードを展開して斬るのは、アンテナを狙っていたし、止めのつもりだったのだろう。

それを避けられ肩から切り落とす形になったのは、スレッタとしても不本意な形だったはず。

それなのに、あの状態でカタナのラックを狙った。威力の低いビームバルカンでは、最良はアンテナだが、それを狙えないなら、最良のターゲットだった。

カタナかランチャーかの2択を強いた。

改めてスレッタの戦闘センスには驚かされる。ワザと下手な行動を取らない限り、彼女を狂わせることは出来ない。

 

「お前ならどうする?」

 

シャディクに問いかけてみるが、直ぐに答えることは出来ずに悩んでいる。

だよな。僕も判断は付かない。兄さんはどうするんだ?

 

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 

「今回は追ってこないか」

 

グエルはビルの内部、最下層まで来ると持っていたビームカタナで右足の太ももを貫いた。そのままビームの展開を止めると、軽く動かし固定されている事を確認する。

どちらを選ぶか悩んでいるラウダとシャディクが唖然とするような行為だが、最初からこうするつもりで、使えなくなる予定の右足を犠牲にしてスウォーム兵器の威力を確かめた。

 

最近は政治的な動きが増えたが、以前はMSや装備を、ラウダの隣で話しながら開発に参加していたので、そこらのメカニック科よりMSの構造には詳しい。

こうして、破壊しても大丈夫、かつ、刺してから足以外に異常が出ずに固定される箇所も分かるし、相手の装備の不自然さに気付いたのもそうだ。

 

「限界だな。今度こそ終わらせる」

 

左腕と右足を失った。エアリアルが右腕と左足だと考えると互角だが、機体の損傷よりも、補充が不可能な状態なので、推進剤とビームランチャーの残弾が少ない。

これ以上の消耗した後では仕切り直しも難しい。

そして、何よりもスレッタの身体が気がかりだった。本当に大丈夫なのか?

 

「中に入ってこないなら」

 

パーメットの逆流に犯されたスレッタの顔を想像する。

あの、純朴そうな大きな目を思い出し、何を考えているんだと、頭を振ってから追い出す。

今は戦闘に集中する。先ほどはスウォーム兵器がビルに入ってきたが、当初は予想外だった。

元々、外にいるスウォーム兵器を圧し潰すつもりだったし、今度こそそれをやる。

 

 

 

 

 

 

 

「大丈夫?」

 

スレッタはエアリアルに語り掛ける。

左足を失った。ヒザから斬られたので左足のスラスターも使えない。そのため、今までのようには動けなくなった。

でも、それは相手も同じだ。

それに、今日はエアリアルだけでなく、みんなの声が良く聞こえる。とても心強かった。

 

――またビルに入った

 

――追いかける?

 

――ヤダ。怖い

 

――ボク達の攻撃、威力が低いのも気付かれたし

 

「…………えと、みんな大変そうだね」

 

心強さは薄まったが、相手が相手だ。先ほどはビルの下敷きになりかけたし、慎重になるのも仕方がない。

今回はビルの下で待機し、外から迎撃する気のようだ。

だが、そのビルが崩れ始める。みんなの悲鳴が聞こえる。助けようかと思うが、エアリアルが制止する。

 

「来るの?」

 

言い終わらない内に赤いディランザが接近する。

ビームランチャーを構えている。近接武器は捨てたか?

いや……

 

「ええ~」

 

カタナが太ももに刺さっていた。何度も意表を突かれる。

予定が狂った。やはり甘い相手ではない。

おそらく、ビームランチャーを使いながら接近するのだろう。

機動力が落ちた現状では、ミドルレンジを確保しながら戦うのは不可能。

でも、エスカッシャンが後を追ってくる。前後からの挟撃が可能だ。

ビームランチャーの砲撃に警戒しつつ接近戦に備える。スレッタは腹を括って、ビームライフルを構えた。

 

 

 

 

「やはり追って来たか」

 

ブースターは全開にしていない。まだ早い。

だが、スウォーム兵器とは、もう少し距離を取りたい。

振り向きざまにビームランチャーを撃つ。防御態勢を取られたが、追い足は鈍った。

 

「3、2、1」

 

ブースターを全開にする。そのままビームランチャーを構えてエアリアルに撃つが、やはり避けられる。

間違いなく、ビームランチャーの砲口から狙いを読まれている。

だが、予想通りだ。今度はビームランチャーを構えて、そのまま右腕に付いたビームガンを発射する。

 

 

 

 

 

「!」

 

左手に持ったビームライフルが爆発する。

ビームランチャーの砲口を意識していた。そのため、威力の低いビームガンから放たれた射撃に反応できずに、ビームライフルが破壊された。

 

「手が!」

 

慌ててビームサーベルを装備しようとしたが、左手の反応が悪い。見た目は問題ないがマニュピレーターが損傷している。

接触までの残り距離はわずかだ。あと一射が限界。それを回避しても接近された後は?

こうなったら殴る。それに蹴りも使える。その間にエスカッシャンが戻ってくる。そう瞬時に判断する。

だが、またしてもグエルは予想外の行動を取る。ビームランチャーを外して後ろへ投げると、それを胸部のビームバルカンで破壊する。爆発でエスカッシャンが動きを止めた。

 

「くっ!」

 

ビームランチャーの投擲から、胸部ビームバルカンの発射、空いた右手で太ももに刺したカタナを抜く。一回転しながら、流れるような動作でそれをすると、そのまま首を切り裂くと見せ……そこに意識が集中したのを見計らったかのように左腕を肩から切り落とされる。

ビームバルカンを撃つ。同時にグエルもビームバルカンを撃つ。互いのビームバルカンが衝突し干渉し合う。

咄嗟に右足で蹴ろうとしたが、それもディランザの左足で受け止められた。

後は、そのまま体当たりになり、縺れるように転がる。ビームバルカンは? 撃てない。互いに撃ち合いながら接触した。向こうは胸部で、こちらは頭部。発射機関が損傷した。

ブレードアンテナは? 当たり所が良かった。壊れていない。よく無事だったものだ。

 

止まった。転がりながらも態勢は分かっている。膝立ち状態で向き合っているが、狙ったのか、位置が入れ替わり、エスカッシャンが攻撃してきてもエアリアルを盾にされる位置。

エスカッシャンが射線を確保しようと動いているのが分かる。

 

ありがとう。最後まで頑張っている。

自分もとエアリアルを動かそうするが、この後の流れが見えている。ダメだ。間に合わない。

ディランザの右腕が動き、ビームカタナを一閃する。眼前で流れた斬撃は、この状況でもなお奇麗だと思った。

 

試合終了のメッセージが流れ、グエルの勝利が告げられると同時にコクピットが開いた。

負けたのだ。

 

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

「ど、どうしよう……負けちゃった。エアリアルが」

 

スレッタはよくやった。負けたのは僕たちの所為だ。そう伝えたが、スレッタには聞こえていないようだ。

完全にしてやられた。エスカッシャンの威力を確かめたから、その攻撃に身を晒すと考えてしまった。攻撃を厚い装甲で受け止めるだろうと。同時に慎重になりすぎた。

だが結果はどうだ? グエルは最後まで攻撃を受けないように戦った。威力の確認は保険に過ぎなかった。

それにカタナを太ももに刺したことで、遠距離で使用するだろうビームランチャーの存在に気を取られた。

その状態でビームガンを使い、その上、ビームランチャーを投げ捨てて破壊した事で混乱してしまった。

 

見ようによっては愚かな戦い方だ。

エスカッシャンの攻撃は装甲で受け止めながら、突っ込んだ方が良い。

特にビームランチャーは外さない方が仕切り直しになった場合に不利になりすぎる。

残弾が無い可能性もあるが、それはエリクトにもスレッタにも分からない。

大胆すぎる。だが、それも彼の強さだろう。

 

「こ、こうなったら、私はどうなっても良いからと、エアリアルを助けてもらうよう頼んで……私、どうなるんだろう?」

 

ヘルメットを取った後、この後どうするかを悩んでいる。ただ、自分を破壊することは、母との交渉しだいだから、今は悩んでも仕方がないだろう。

それよりスレッタ? 頬を染めて恥ずかしそうだけど満更でもない?

 

「おい! 大丈夫か!」

 

慌てた様子のグエルがスレッタに近付く。

そのまま顔を挟み込むように掴むと、真剣な表情で見つめる。

更に髪をかき上げるなどして、首筋なんかも確認しだした。

 

「な、な、な、な?……」

 

「動くな」

 

パーメットの逆流を確認しているみたいだけど大丈夫。

そんな事は僕がさせない。そう伝えたいが声は出ない。

届かなかった。あと少しだと思うけど、まだ体の自由も無いし、声も出ない。

 

しかし、エリクトは分かっているがスレッタは違う。

ただ異性に至近距離で見つめられている状況だ。緊張から声も出ないようだ。

 

「良かったぁ~」

 

パーメットの逆流が無いことを確認したグエルが、大きく息を吐く。

険しかった表情も、柔らかい安堵の表情に変わった。そうすると年相応の少年らしい面影が顔を出している。

彼の感覚だと、スレッタはGUNDフォーマットの影響で苦しみながら戦っている事になっているのだろう。

そこまでスレッタの心配をしてくれたことに感謝する。

 

「えっと、何が?」

 

「いや、待て。顔は大丈夫みたいだが」

 

訳が分かっていないスレッタを無視して、グエルは再び真剣な表情に戻ると、スレッタのノーマルスーツを脱がし始める。

 

「ちょっ!? 何を!?」

 

何をする気だ? スレッタは大丈夫なんだ。僕が守っているから。

でも、声を出すことも身体を動かすことも出来ない。

何も出来ないままスレッタがノーマルスーツを脱がされていく。

カメラ回ってるよね? スレッタのインナー姿が放映されているんだよね?

 

「ま、待って! 待ってください!」

 

「大人しくしていろ!」

 

いい加減にしろよ! しかし、動けない。声も出ない。

エリクトは今の状況を呪った。

声を出したい。動きたい。

これほど母の計画に賛同したことは初めての事だった。

 

 

 

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