芝浦淳の人生は刺激がなければ成り立たなかった。
父親が大会社の社長と言うこともあり自身の思い通りにならなかった事など何もない。何不自由ない生活は満ち足りていながらも何か物足りないのだ。
芝浦はそんな退屈な日々を刺激的なゲームで補おうとした。大学のサークル仲間と開発した殺し合いのゲームですら暇つぶしとさえ言える。
だが芝浦は最高のゲームの参加券を手に入れた。
『ライダーバトル』
13人ものライダー同士でのバトルロワイヤル。こんな刺激的なゲームは他にはないと芝浦はワクワクしながら参加を決めた。
しかし、対戦相手のライダーは中々見つからず退屈な日々を過ごしていた。仕方なくモンスター狩をしていた芝浦だが遂にライダーと遭遇する事が出来たのだ。
モンスター狩を終えた後、偶々近くでモンスター狩をしていたカメレオンの姿をしたライダーと赤い龍の姿のライダー。
二人のライダーは協力し合いながらモンスターを撃破すると分かれてミラーワールドから出て行こうとする。
芝浦は咄嗟に片方のライダーの跡をつけた。此処でライダーの正体を探っておけばいつでも戦いを仕掛けられるし、アドバンテージにも繋がると考えたからだ。
そして見た。カメレオンのライダー……ベルデがミラーワールドから外に出てその正体が女子高生である事に。
「へー……女の子でもなれるんだ。ライダーに」
ミラーワールド内から女子高生……楓の姿を覚えた芝浦は後日、ライダーバトルの誘いをしようと心に決めた。
◆◇
(なんで、このタイミングで芝浦!?)
そんな芝浦の事情を知らない楓は当然ながらストーリーの矛盾に焦っていた。自身は未だに手塚にすら会っておらず出会うライダーの順番が狂っている事に混乱していた。
「俺さぁ……最近始めたゲームの参加者なんだよね。分かるよね、そのゲーム?」
「うん……知ってる。でも私は……」
「ちょっと何の話をしてるの?って言うか楓ちゃんから手を離しなさい!」
芝浦は楓の肩を組みながらカードデッキを見せ付ける。この行為は芝浦が楓がライダーである事に知っている上で戦いを申し込んでいると言う意思表示である。
楓としては浅倉とは違う意味で会いたくないと……言うか関わりたくない芝浦と戦う気はなかった。元々ライダーバトルに積極的でもない上にこの辺りからストーリーが更に重くなるのだ。そのフラグを真っ先に踏むのは真平ごめんと言える。
そして楓の脳内では他の思考も存在していた。
(このまま手塚さんと遭遇したらユナイトベントしちゃうのかなぁ……)
仮面ライダージオウのスピンオフ作品である『RIDER TIME 龍騎』では地上波の放送では不可能なシーンがあり腐女子が狂喜乱舞した。無論の事ながら外伝の話なので可能性は低いが今までの事を考えればゼロではないと思えた。
楓がそんな風に現実逃避しそうになっていた時だった。
《キィーン……キィーン……》
「っ!」
「ほら、狩りに行かなきゃだろ。あ、おねーさん。俺とコイツはゲーム仲間でさ。知らない?モンスターハントってゲームなんだけど。俺、コイツと狩に行く約束してから。じゃあね」
「あ、ちょっと!?」
楓と芝浦の耳に届いたのはライダーである者に聞こえる耳鳴り。近くにミラーモンスターが居る反応だった。
即座に反応した楓だったが意外な事に助け舟を出したのは芝浦だった。
芝浦はカードデッキを仕舞うと何処からか携帯ゲーム機を取り出すと美穂に見せ付けてから楓の手を取り立たせると店を出た。
「なんなのよ……でもあんなチャラそうな奴と楓ちゃんが知り合い?なんか怪しいわね。須藤さんに相談してみようかしら……」
一人店に残された美穂は楓と芝浦の関係性を疑っていた。芝浦はどう見ても楓が関わりを持ちそうな人間ではない。更に言うなら貧乏な楓が最新のゲーム機を持って芝浦とゲームしている事自体があり得ないのだ。さり気なく楓の事すらディスっていた美穂だが今は先にする事がある。楓の保護者である須藤への報告と確認だ。
因みにこの行動が後々に大変な事態を引き起こすのだが今の段階で予想出来る者は誰もいないだろう。
◆◇
先程の喫茶店から離れた人目の付かない場所でライダーに変身した楓と芝浦はイカ型のミラーモンスターであるバクラーケンと戦っていた。
ミラーワールドに入る前に芝浦から「落ち着いて戦えないし、アンタはモンスター狩を優先してんだろ?なら先に倒そうよ」と一方的に話し掛けると先に変身してミラーワールドに入ってしまったのだ。
楓としてもモンスターは放っておけないので(モンスター倒したら即行で逃げよ)と思いながら変身して芝浦の後を追った。
芝浦が変身した仮面ライダーガイはバクラーケンを圧倒していた。重装甲に加えてストライクベント『メタルホーン』でバクラーケンの攻撃を凌ぐと同時にパワーでも圧倒したガイはファイナルベントでアッサリとバクラーケンを倒してしまった。
「やっぱり……強い、んきゃ!?」
「今度は俺達の番でしょ。この間、見てたけど他のライダーとも共闘してたけどさ……ライダーの敵はライダーって事を忘れないでよね!」
バクラーケンを倒した直後、ガイは間合いを詰めるとベルデの顔を掴み、地面に叩きつけた。叩きつけられたベルデは咄嗟に立ちあがろうとするがガイのメタルホーンで殴り飛ばされてしまう。
ガイが放った言葉はTVスペシャルで本来のベルデである高見沢が発した台詞だったが今のベルデにそれを気にする余裕はなかった。
「くっ……撤退!」
【CLEAR VENT】
「させる訳ないでしょ」
【CONFINE VENT】
先日の龍騎と共闘を見ていたガイはベルデがどういうカードを持っているか把握していた為、即行で逃げ道を封じた。ガイが持つコンファインベントは相手が使用したカードの効果を無効化する物でカードの性能頼りのベルデとは相性がかなり悪いカードである。
このカードを持つガイを倒すにはスペックで圧倒するしかないのだが当然ながらベルデにはガイを圧倒出来るようなスペックは持ち合わせていない。
「じゃあ楽しませ……ぐぅ!?」
「キシャァァァァァァァッ!!」
「ディスパイダー!?」
ガイがメタルホーンを構えたと同時に何処からか糸が飛来しガイの首に巻き付いた。何事かと振り返れば蜘蛛の大型ミラーモンスターであるディスパイダーが糸を吐いてガイを拘束したのだ。
ベルデは見覚えのある事態に焦っていた。この光景はTVスペシャルで起こった事で放置すればガイは捕食されてしまうだろう。
「は、離せよ……」
振り返ったガイに追加の糸を吐いて完全に動きを封じたディスパイダーはガイを手繰り寄せていく。ガイはディスパイダーの拘束から逃れようとするがメタルホーンは身体ごと糸に巻き取られているし、カードも新たに使えない。そもそもガイの攻撃カードはストライクベントとファイナルベントだけであり、そのファイナルベントは先程使ってしまった。
先程解説したがガイはカード無しでも戦闘力の高い敵には押される恐れがあり、TVスペシャルのディスパイダーに捕食された時やRIDER TIME 龍騎でリュウガに敗北した時が顕著と言える。
「これなら……やぁ!」
【COPY VENT】
「緩んだ……でぇい!」
「キシャァァァッ!」
そんなガイを見捨てればライダーを脱落させると同時に自身の安全を図れるベルデだが見捨てると言う選択肢はベルデの中には存在しなかった。ベルデはコピーベントでガイの姿と武器をコピーするとメタルホーンでディスパイダーの脇腹を突いた。脇腹を突かれたディスパイダーは怯み、拘束が緩んだガイは自身が持つメタルホーンでディスパイダーの顔面に攻撃を放つ。
同時に攻撃を受けたディスパイダーはガイの拘束を解き、攻撃に転じようとしたが、その都度ベルデから妨害の攻撃を受け注意を逸らした隙にガイが追い討ちをかける。それを繰り返して遂にディスパイダーは力尽きコアを吐き出して消えていった。
「よ、良かった……なんとか、キャアッ!?あうっ!」
「甘いんだよね。助けたからって感謝されると思った?」
ディスパイダーを撃破して気が緩んだベルデをガイはメタルホーンを横凪に振り払いベルデを殴り飛ばした。
攻撃をマトモに浴びたベルデは近くの壁に激突し、気絶した。
「さっきも言ったでしょ。ライダーの敵はライダーだって。隙を見せたら食われるだけだよ」
「………」
完全に気絶してるベルデを小馬鹿にするように近付きしゃがみ込むとガイはベルデの胸部の装甲を指でトントンと突いた。須藤が見ていたらブチ切れ案件である。
「じゃあね……いや、待てよ。面白い事、思いついた」
トドメを刺そうとしたガイだったがメタルホーンをベルデに突き付けてから何かを思いつきメタルホーンを離した。ガイは徐にベルデのカードデッキから一枚のカードを引き抜いた。それはベルデと契約したバイオグリーザのアドベントカードだった。