楓が手塚の仕事を手伝い、手塚が楓の護衛をしている頃。それぞれが様々な行動をしていた。
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真司はOREジャーナルを乗っ取った芝浦がOREジャーナルのメンバーに無茶振りをして笑い者にしていた。真司は怒りに耐えながら芝浦の無茶振りに耐えながらもこっそりとメールで楓のカードを奪ったのが芝浦淳である事を他のライダーへと伝えた。
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北岡は仕事中である事と運転中である事から真司からのメールに気付いていなかった。それと言うのも先程まで極悪犯の浅倉威との最後の面会をしていたからだ。
浅倉の弁護人を受けた北岡だったが浅倉が異常な殺人犯だったのは知っていたがあそこまで異常者だとは思っていなかった。そもそも様々な暴行事件や殺人を犯した理由が『イライラしたから』と言うものであり、さしもの北岡でも死刑から懲役10年に引き下げるのが限界だったのだ。
その事を前回の面談で伝えた所、大暴れするわ無能だと目の敵にされるわで北岡からすれば散々なものだった。
そして本日で浅倉と会うのも最後であり引き継ぎも終わらせたのだが浅倉は更に暴れたそうだ。
「イライラするんだよ!俺を捕まえた刑事も俺を無罪に出来ない無能な弁護士もなぁ!!」
後の事を警察に任せた北岡は「やれやれ」と呆れた溜め息をこぼして次の仕事へと移動中だった。二度と会う事も無いだろうけど二度と会いたくないね、と北岡は心の中で呟きながら助手の吾郎から次の依頼人の話を聞いて現場へと向かうのだった。
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真司からメールを受けた蓮は芝浦の特徴を聞いた上で既に行動を起こしていた。楓に貸しを作っておけば須藤への牽制になるだろうと思っていた。
それに現段階でライダーに一人も脱落者が出ていない事への焦りもあったのだろう。
「日向を助ける為だと言えば城戸達も煩くは言わんだろ」
戦う為の理由を口にしながらバイクを走らせる蓮。その一言は戦いで誰かの命を奪う事への自身に向けた一言だったのかも知れない。
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「須藤さん、例の件ですが……」
「ええ、裏どりを始めてます。直ぐにでも確保しに行きましょう」
警察署内で同僚から書類を受け取った須藤は芝浦の逮捕に向けて動いていた。それと言うのも真司からのメールを見た須藤は即座に殺しに行こうと思案したがそれと同時に同僚から若者達の謎の暴行殺人未遂事件の容疑者として芝浦の名が上がり逮捕する為に動くと聞いた。須藤はこれ幸いと乗ることにした。
「楓さんを傷付けて無事で居られると思うなよ」
あわよくば芝浦を始末する為にと。
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浅倉は苛立っていた。
何に対して?
全てに対してだ。
「がっ!うっ!があっ!!」
生まれ付き浅倉威という男は苛立っていた。何かを傷つけ、自身を傷付けなければ気が済まない。イライラが止まらない。溜め込んだ鬱憤を晴らす為に頭や拳を独房のコンクリートの壁に打ち付ける自傷行為でさえもストレス発散には至らず、気が晴れるどころかフラストレーションが溜まる一方だ。
「イライラするんだよ……殺す……あの刑事も弁護士も!」
「手伝ってやろうか?」
イライラが加速して更に壁に拳を打ち据えようと振りかぶった所で自身しか居ないはずの独房に聞こえる他者の声。振り返れば一人の男……神崎士郎が立っていた。
「誰だ……テメェは!」
「お前の望む……戦いを提供してやれる者だ」
浅倉は問いかけをしながらも目の前の男に注視した。看守ではなさそうだし警察にも見えない。ならばコイツはなんだ?と浅倉は取り敢えず殴ろうとしたが放った拳は空を切り、自身が殴っていた壁とは反対側の壁を殴る結果に終わった。
「俺をここから出すってか……お前は俺に何を求める?」
「戦え……お前が望むままに」
浅倉にカードデッキを投げ渡す。浅倉は神崎士郎が何者でも構わなかった。ここから抜け出し、復讐を果たすべき刑事と弁護士を殺せるのなら。
神崎士郎もまた全くと言っていいほどに進まないライダーバトルに苛立っていた。自身が選んだ欲望を持つ者達は何故か戦いをしようとしなかったからだ。現状で進んでライダーバトルに尽力しようとしているのは芝浦だけである。
戦いたい浅倉威と遅々として進まないライダーバトルを進めたい神崎士郎。二人の利害は一致していた。