仮面ライダー龍騎 ベルデIFストーリー   作:残月

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蟹の逆鱗

 

 

 

 

 

シザースのシザースピンチがガイの目前で止まった。

 

 

「と言いたい所ですが……」

「な……へ、結局アンタも腰抜けって訳かよ」

 

 

シザースはガイへの追撃を辞めた。スッと立ち上がりガイから距離を開ける。その様子と自身への脅威が消えた事でガイは立ち上がりながら鼻を鳴らしてシザースを煽り始めた。

 

 

「勘違いしない事ですね。私の目的は最初からこっちです。それにキミ程度が私達と同格などと思わない事です。子供の悪趣味な遊びに付き合う気は無いんですよ」

「な……いつの間に!?」

「すっげぇ……」

 

 

シザースはそのままミラーワールドから出ようとその場の全員に背を向けるが振り返らないまま左手を上げる。その手の中にはバイオグリーザの契約カードが握られていた。シザースは先程の殴打の際にガイに気付かれないようにガイのカードデッキからカードを抜き取っていたのだ。

トドメを刺さなかったのも用は済んだからガイへの追撃を辞めたに過ぎない事を告げていた。

 

 

「テメェ……ふざけるな!があっ!?」

「キミは子供だ。自身が優位に立っていなければ何も出来ない。事実、キミは秋山君に負けた。だが、その事実を受け入れず駄々を捏ねたに過ぎない。結果を認められず自身のミスは誰かの所為だと決めつける。幼児的万能感が抜けきってない……ただのガキだ」

 

 

ガイは激昂し、シザースを背後から襲うがシザースはまだ右手にシザースピンチを装備したままだった。背後からの攻撃を振り返らずにシザースピンチの裏拳で迎撃したシザースはやれやれ、と溜息を吐きながらミラーワールドを後にした。

 

 

「ぐ……ちくしょう!アイツ!!」

「あ、おい!?」

「須藤を敵として認識したらしいな。それよりも秋山を外に連れ出そう。時間切れになるかも知れんぞ」

 

 

ガイは怒りの咆哮と共にシザースを追ってミラーワールドの外へと走り、龍騎とライアはナイトを抱えて急いでミラーワールドから出る事にした。ナイトの体は時間切れによる粒子化が始まっていたのでその判断は間違いではないだろう。

 

 

 

 

◆◇

 

 

「お待たせしました楓さん。さ、貴女のカードです」

「あ、ありがとうございます須藤さん」

 

 

ミラーワールドから出た須藤は真っ先に楓に駆け寄りカードを手渡した。実は須藤は龍騎とライアがミラーワールドに入った直後に同じ様に変身して現場へと駆け付けたのだ。その際にも「すぐに終わらせてきます」と告げてから入ったのだ。

そして宣言の通り、須藤はナイトとガイの戦闘を止めただけではなくバイオグリーザの契約カードも回収していた。

 

 

「さて……大丈夫ですか秋山君」

「秋山さん!」

「ぐ……」

「なっさけないよね。トドメを躊躇って負けるんじゃさ。その意味じゃアンタの方が良かったよ」

 

 

 

地面に倒れ込み、城戸や手塚に支えられながら起きあがろうとする秋山に須藤は話しかけ、楓は秋山に駆け寄る。多少の怪我は見られたもののどちらかと言えば精神的なダメージによる喪失の方が大きそうだ。

 

 

「やはりキミは子供だな。守る物も負うべき責任もないからそんな事も言えるしライダーバトルを軽んじて見ていられるんだろう」

「はん、そんなお説教なんか俺に響くと思ってるの?生憎だけど俺はゲームを止めるつもりは無いよ。ソイツ等は弱いけどアンタは強くて潰し甲斐がありそうだ。んじゃまたね」

 

 

須藤の言葉もくだらないと吐き捨てると芝浦はそのまま行ってしまう。当然ながら芝浦はナイトに敗北寸前まで追い詰められた事すら自身の中で響いていない。精々少し運が悪かったから負けたくらいに思っているのだ。

この後の展開を知る楓としては何か言おうかと思ったが言葉が出なかった。

 

 

「良かったのか須藤……奴は」

「心配せずとも彼は逮捕されますよ。すぐに釈放されるとは思いますが」

「それってどう言う……あ、それよりも蓮!俺、お前を見直したぞ。やっぱライダー同士の戦いなんて馬鹿げて……」

「くそっ……俺は……俺は!!」

「秋山さん……」

 

 

反省もせずに去っていく芝浦に手塚は疑問を口にしたが須藤は警察の同僚の動きを把握していた為、芝浦が違法なゲームで殺し合いをさせた事などの罪に問われて逮捕される事を知っていた。尤も芝浦の父である社長の顧問弁護士が北岡である事も調べ上げていた須藤には仮に捕まっても即座に釈放されるであろう事も予想済みである。

そんな中、城戸は秋山が芝浦にトドメを刺さなかった事でライダー同士の戦いを止めてくれるかもと期待していたが、秋山は戦いの覚悟が足りなかった、戦いによって負うべき覚悟が無かったのだと悔しそうに地面に拳を叩きつけた。

そんな秋山を楓は見つめる事しか出来なかった。

 

 

◇◆

 

 

その頃、丁度芝浦は須藤から連絡を受けた刑事が現場に到着し拘束されていた。

 

 

「へー……やるじゃん警察も」

「その舐めた態度がいつまで続くか見ものだな。芝浦淳、お前を逮捕する!」

 

 

芝浦の悪びれもしない態度に刑事の一人が苛つきながら芝浦に手錠を掛けた。だが、芝浦の態度は警察署に行っても変わらず暫くした後に連絡を受けた北岡が釈放の手続きをしてアッサリと釈放されてしまう。

警察署を後にした芝浦と北岡は駐車場を歩きながら雑談に興じていた。

 

 

「流石はウチの親父の顧問弁護士だよね。一発で釈放じゃん」

「元が大した罪じゃなかったんでね。それはそうと……押収された荷物の中にカードデッキがあったんだけど……アレはお前の物と思っていいのかな?」

 

 

芝浦の一言に北岡は大した事じゃないと笑みを浮かべる。そして警察に押収されたカードデッキを北岡は見逃さなかった。

 

 

「へー……アンタもライダーなんだ。でも、今は気分じゃ無いから戦わないよ。それにあの須藤って奴を先に倒したいからさ」

「……お前、よりにもよって須藤さん狙ってんの?だったら先輩ライダーとして忠告してやるが須藤さんには地雷……いや、龍の逆鱗みたいな子が居る。日向楓って高校生だけど間違っても、その子には手を出すなよ」

 

 

芝浦のヘラヘラした態度にコイツが脱落しようが構わないが飛び火だけは勘弁だな、と北岡は芝浦に釘を刺したが芝浦はニヤニヤと笑みを崩さなかった。

 

 

「そっか……アイツ俺に偉そうに説教したクセにあのJKが大切なんだ……面白くなるかも」

「忠告はしたからな」

 

 

明らかに何かしでかしそうな芝浦に北岡は自身の失言を感じた。『コイツ、もう須藤さんを怒らせた訳?ろくな死に方出来ないね』と内心呆れていたりもするが。

 

 

 

 

 

◆◇

 

 

 

「ううぅ……なんだろ今の悪寒……そろそろ浅倉が出てくるから寒気が止まらないよ」

 

 

一方その頃、楓は城戸達と協力しながら傷ついた秋山を花鶏へと連れ帰った。秋山を寝床に寝かせて部屋の外へ出たタイミングで先程の悪寒が走ったのだ。

その悪寒の正体は浅倉ではないのだが今の楓にそれを知る術は無かった。

 

 

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