須藤と北岡に連絡をした楓だったが浅倉は既に北岡事務所を襲った後だった。電話で事情を話した所、須藤・北岡の両名から下宿先の花鶏に戻る様にと言われた。
須藤と北岡は浅倉の凶暴性をよく理解している。だからこそ楓が無事だったのには驚いたし、これ以上の幸運は続かないだろうと判断して出歩かない様に釘を刺したのだ。
尤も……
「や、デートのお誘いに来たよ。今さ、すっごい面白い事になってるから」
「だが、断る」
「か、楓ちゃん……」
楓の不運はそれを上回るのだが。
花鶏に戻った楓だったが、それと時を同じくして芝浦が花鶏に来たのだ。芝浦はデートと評したが実際には芝浦が仕掛けたライダーバトルの乱戦なのだ。しかも仮面ライダー王蛇と化した浅倉が居るとなれば行きたくない、と言うよりも行ってたまるかと言った心情である。
「へー、だったらそっちのお姉さんを連れ出そうか?そうすりゃ、あの腰抜けも戦いに来るだろ」
「……優衣さんに手出しはしないで。そんな事させるくらいなら私が相手になる」
芝浦はニヤッと笑みを浮かべ優衣を攫おうかと画策したが楓は真っ先に止めた。芝浦が仮に優衣に手出しをして傷付けようものなら確実にオーディンが出張ってくる。それだけは阻止しなければならない。
「いいね。だったら◯△ビルに行こうか。あそこなら面白い事になるからさ」
「楓ちゃん!」
「大丈夫です、優衣さん」
芝浦はニッコリと笑みを浮かべた。ここで楓を倒せば須藤になんらかのアクションを起こせると思っていたからである。それに楓を戦いの場に引き摺り出せば秋山や手塚も引き寄せられると画策していたからである。
そして◯△ビルは浅倉が立てこもっているファミレスの近くである。あわよくば乱戦に持ち込もうと言う腹なのだ。
それ以外にも芝浦は楓を誘えた事に妙な高揚感を感じていた。
対する楓は自分では芝浦に勝てない事は百も承知であるが、ぶっちゃけ時間さえ稼げば秋山や手塚が助けてくれるだろうと他人任せな事を考えていた。現状で最も警戒するべきは芝浦が結衣に手出しをしてオーディンやリュウガを招き寄せる事態を避ける事だ。
しかし、楓は忘れていた。ライダーバトルの遅延は結局、オーディンを呼び寄せるきっかけになる事を。
◇◆
楓と芝浦が花鶏を出てから数分後、店に戻った秋山と手塚だったが、優衣から事情を聞いた二人は急いで◯△ビルへと向かった。
楓の強さの事を知っている事と芝浦の厄介さを知っている二人は急いだ。特に楓に何かあれば須藤がブチ切れるのは目に見えてるからである。
◆◇
浅倉はファミレスに立て籠っていた。店に居た客を人質の解放を条件に弁護士の北岡を呼ぶ為に。
しかし、ミラーワールドで戦っていた城戸が店に居た為に事態は更に混迷を見る事になる。
城戸は人質救出の為にOREジャーナルの上司の大久保の指示の下、警察に協力する事となる。
◇◆
「弁護士の北岡さんが到着なさられました」
「ご苦労様です。協力を感謝します」
「いいえ、当然の事ですよ」
一方で警察からの協力要請に応じた北岡は現場に来ていた。
危険だとは思っていたが警察に協力し、イメージアップを図るのが目的なのだ。
(ま……警察の機動隊も居るし、須藤さんも居るから大丈夫でしょ)
北岡は警察関係者の中に須藤を見つけて安心していた。ライダーとして協力関係にある須藤。そして須藤は過去に浅倉を逮捕した経歴がある人物だ。ならば安全だと鷹を括っていた。
◆◇
ベルデとガイに変身した楓と芝浦は◯△ビルの近場で戦っていた。ベルデはガイのコンファインベントを警戒してカードは一切使わずスピードで撹乱していた。そもそもライダーとしてのスペックはベルデはガイに劣っている。更にカードを封殺されるコンファインベントがある以上はガイを相手にする際はスペックで圧倒するしかない。そしてベルデのスペックでガイに優っているのはジャンプ力だけである。
ならば、どうするか?
ベルデは狭いビルの中でジャンプや跳躍を駆使した戦略を駆使していた。
ビルの壁や天井を蹴りながらガイに地味な攻撃を繰り返していた。対するガイはチマチマとした攻撃しかしてこないベルデにイライラしていた。
「だぁぁぁぁっ!もっと派手に戦いにこいよ!」
「カードの効力無効化されるって分かっててカードを使うわけないでしょ!」
ガイはストライクベントで召喚したメタルホーンを振り回すがベルデはそれを避けながらパンチやキックで戦う。これを繰り返していた。
イライラはしていたがガイ……芝浦には新たな感情が生まれつつあった。
芝浦は今まで親の力や他人を利用して生きていた。だが、前回の須藤や今戦っているベルデに苦戦している。
今までワンサイドゲームしかした事が無かった芝浦にとっては新鮮とも言える感覚。今までの一方的に蹂躙する楽しさとは違った愉悦だった。
「は、ははは……やば、楽しい。殺し合うって……最高の愛情表現なんだな」
芝浦は自身の下腹部に熱が集まるのを感じていた。ああ、これは恋だ。殺し、殺し合うのが最高の快感なんだと芝浦は感じていた。
メタルホーンでベルデを殴り飛ばし、壁に叩き付ける。壁に激突して苦しむベルデを見て、ガイはゾクゾクした。愛おしい……と感じていた。
「いいね……もっと見せてよ……愛おしい……可愛いよ……」
ガイはこの楽しい時間をもっと楽しみたいとメタルホーンをポンポンと手で叩いた。コイツをこのまま殺したらとんでもない快楽になる。ベルデを倒した後に須藤にそれを教えたらどんか顔になるかな?そんな事を想像してガイは仮面の下で愉悦に満ちた顔をしていた。
「なんだろ……今すぐに逃げた方が良い気がする」
一方のベルデは女の勘でガイが自身に抱く感情に寒気を感じていた。今すぐ逃げなければと感じていたが、その寒気の正体に気付けないまま戦うしかなかった。