バイト先のアンティークショップの店長が裏で悪事を働いていた事から楓も取り調べを受ける流れになっていたが潜入調査の体で捜査をしていた須藤の口添えもあり、楓が罪に問われる事は無かった。
因みにあの日、須藤と加賀がミラーモンスターに襲われた事は当然ながら話す事は出来ず、『裏の仕事の関係者とのトラブルで襲われた』という事で処理された。
須藤は加賀の悪事を暴いた刑事として一躍有名になり、街のアンティークショップで起きた事件は新聞の片隅に載ったがそこまで大きく取り立たされる事はなく騒ぎは鎮静化していく事となる。更なる余談だが須藤は加賀に全ての罪を押し付けていたりする。
「はぁ……バイト見つからない」
そんな中で楓は新しいバイト先探しで悩んでいた。バイト先であるアンティークショップが無くなったと言う事は楓の少ない収入が更に減る事となる。楓は学生でありバイト時間を増やしてなんとか生活をしていたがバイトが見つからないとなると生活も厳しくなるし下手をすれば家賃も払えない。楓が住んでいるアパートは築50年の木造アパートで家賃が激安なのだが、それでも収入の見込みがない現在の状況はヤバいと楓は焦っていた。
因みに楓のバイトが決まらないのにも理由があるが今は割愛しておこう。
「須藤さんは援助してくれるって言ってたけど……甘えてばかりもいられないし」
須藤はあれから楓の事を気にかけてくれていた。何かと気を使うし、須藤曰く『事件に巻き込まれた一般人の心のアフターケアは必要ですよ』との事だった。楓はそれを「須藤さん、真面目だなー。良い人だ」と受け取ったが須藤からしてみれば「楓さんと会う口実と刑事の立場を利用して近付ける」が理由だった。
成人男性と女子高生の交流は側から見れば誤解されかねないが、この様な理由があれば合う事に不自然はない。大人は色々と気を使うのである。
気を使うと言う意味では楓も須藤を気に掛けていた。
楓と須藤は近隣のモンスターを倒して人を守ると決めていたし実際にモンスター狩りをして被害が出ない様に戦っている。
戦法としてはベルデが撹乱し、シザースが攻撃から身を守るスタイルで互いが互いをカバーしあうコンビネーションで戦い、最終的にどちらかのファイナルベントでトドメという流れだ。
モンスターが巨大なタイプならシザースのファイナルベントで、人型ならベルデのファイナルベント。
互いの戦い方を最大限に活かした戦い方をして、モンスターを狩り、自身の経験値とモンスターの強化。悪くない話ではあるが楓にはそれとは違った懸念事項がある。
それは須藤が契約したボルキャンサーの問題だ。
原作においてボルキャンサーはカードデッキが破壊されて契約が切れたシザースを捉え、変身が解除された須藤を頭から捕食してしまう。朝八時から流してはいけない光景だと楓は思っていたが何故ボルキャンサーは須藤を真っ先に捕食したのか。同じく主人を失ったメタルゲラスやエビルダイバーは主人の敵討とばかりに浅倉を付け狙う。
ガイやライアは主従の絆があったのに何故シザースは即捕食だったのか……それはあの日の晩の事が原因だと楓は考えていた。
須藤と加賀が襲われた日、ボルキャンサーとシルバーロブスターは二人を狙っていた。つまりボルキャンサーはあの段階で須藤を獲物として見定めていた。その中で須藤は契約のカードを使ってボルキャンサーと契約。これによりボルキャンサーは須藤に手が出せなくなり、捕食も不可能となった。だがナイトとの戦いでカードデッキが破損した事によりボルキャンサーとの契約が打ち切られてしまう。ボルキャンサーからしてみれば自由を取り戻し、捕食対象だった須藤が目の前にいるのだ。そしてトラウマシーンに至ったのではないかと楓は仮説を立てていた。
「気をつけないと……私も頭からモグモグされかねないよね……」
自身がバイオグリーザと契約した時は特に狙われてなかったよね?と契約時の事を思い出すが、それと同時に思い出すのは神崎士郎からカードデッキを受け取った時の自身が抱いていた焦燥感。
それを思い出しそうになった楓はブルっと身を震わせたが頭を切り替えて学校に行く事にした。明日の放課後には新しいバイトの面接だから頑張ろうと楓は意気込みを新たにする。
楓が学校に通学した後、楓が住むアパートに張り紙が貼られた。それには『アパートの取り壊しが決定した』事が記載されており、学校から帰ってきたら楓が絶望するのは数時間後の話である。