トレセンの保健室には一つの噂があったり無かったりする。
『消毒液の匂いではなくすごくすごい良い香りがする』
というものだ。ちょうど今がその時である。今日の担当はメジロアルダンとサクラローレルの二人である。今、後輩ウマ娘に手当をして包帯を巻いて送り出したところだ。その後輩は二人のファンになった事は言うまでもなかろう。まさに白衣の天使が二人。仮に野郎がいる学校なら速攻で全員虜になって我先にと傷口を作って差出すだろう。ともかくひと段落ついた二人は世間話に興じる。
「やっぱりローレルさんは包帯を巻くのが上手ですね。」
「そうでもないですよ。自己流といいますか、ビクトリー倶楽部でよく巻いていましたから。手慣れてはいますけど。」
「そうだ、昔のチヨノオーさんってどうだったんですか?」
「チヨちゃんですか?そうですね〜…」
しばし共通の友人の話で盛り上がる。見る人が見ればここが保健室とは思えないほど尊い光景であろう。
「という感じでチヨちゃんとバクちゃんによく包帯を巻いてあげてました。」
「なるほど〜可愛らしかったんですね。今もですけど。」
昔話がひと段落しても二人の会話は続く。
「そうだ、ローレルさん。新しい漢方のお茶があるんですけどどうですか?」
「わあ、いつもありがとうございます。前のお茶を試してみてから朝の練習に行くまで少し早くなったんです。やっぱり血圧とかなんでしょうか?」
そう、こちらのサクラローレル、朝練の遅刻率90%だったのがお茶の効果か80%にまで減少したのだ。念のため言っておくがやる気がないわけでは無い。むしろ気合が空回りするくらいだ。どうも体質的に壊滅的に朝に弱いのである。愛しのトレーナーに早く会いたい気持ちはかなり強いのだがなぜか起きられない。
「う〜ん確かに体温を上げたりする効果があるとは聞いたことがありますね。血圧は…どうでしょう?でも良かったです。」
一方のアルダンは長く病院にいたり床に伏せがちなのもあり漢方に詳しい。こうして色々なウマ娘の役に立ちそうなお茶やら薬を勧めている。
「恥ずかしながらトレーナーさんに早く会いたいのに起きられないのはなんとかしないといけないんですけど…でもこの間のレースでですね!トレーナーさんに添い寝してもらったら…」
ガタン!!
その時アルダンに電流走る!いまローレルさんは何と言った??添い寝?トレーナーさんと!?
「ロ…ローレルさん…??」
「あ、正確に言いますと朝気づかないうちにトレーナーさんをベッドに引きこんでいたみたいで…」
「気づかないうちに…引き込む…そ…その話詳しく!!」
「え、あ…はい…」
こうしてローレルは以前の遠征で朝トレーナーをベッドに引きこんだ話を詳しく根掘り葉掘りほじくり返されたのである。後半はローレルもノリノリで話していた。やはり恋する乙女同士盛り上がるのである。
「なるほど…つまり寝惚けてトレーナーさんを引き込んでいた…しかもそのレース結果は最高だったと…そういうことですね!!」
いつの間にかメガネをかけメモを取っていたアルダンがまとめる。要約すると遠征で朝起きられないローレルを起こしにきたトレーナーを寝惚けてベッドに引きこんだ。その結果添い寝状態となり絶好調でレース結果は最高だったということらしい。
「朝起きたらトレーナーさんが隣で寝ている…なんて…なんて羨ましい!!」
「ア…アルダンさん?」
「ローレルさん!ありがとうございます!!これは使えるわ…そう…寝惚けてなら不可抗力…その手があったのね……」
フフフと燃え上がっているアルダン。今この時は深層の令嬢ではなくターフ上よりギラギラとした目をした狩人となっていた。
「他には?他には何か隠してませんか??」
「ええと…そうですね…フランス語講座にかこつけて色々言ってもらったり…あ!婚姻届!!そうですアルダンさんこれはさらに使えます!!」
「フムフムこんいんとどけ…?婚姻届!!?」
その時アルダンに電流が倍流れる!!
「どどどどどういうことなんですか???何をどうしたら婚姻届が出てくるんですか???」
もう深層の令嬢もメジロの誇りもなくローレルに食いついているアルダンである。
「ええとですね。前に雑誌の付録にそれが付いてきた時があったんです。それで…覚悟を見せて♡と言ったらですね…書いてもらえました♡」
「書いてもらえました♡ですか…へー…え?書いてくれたんですか?」
「はい♡『誰にも渡したくない』って言って♡」
「なるほど『誰にも渡したくない』…と…いいなあああ!!!言われたいなああああ!!!」
メガネを放り投げ、しばらく悶えるアルダンと過去に意識を飛ばすローレルの二人がいた…お忘れかもしれないがここは保健室である。決して深夜のスナックとかではない。
数分後…肩で息をしながらアルダンは若干の理性を取り戻す?
「そ…そうです…トレーナーさんとは永遠を誓ってます…ということは実質結婚してるようなもの…フ…フフ…」
苦い漢方茶をグイッと一気飲みして理性を取り戻すアルダン…ちなみにそれはローレルに渡す用のコップだ。
「やはり既成事実が必要ですね…よし、次の遠征…いえ週末にトレーナーさんを屋敷にお呼びして早速ウフフ…」
チョンチョン…
ローレルがアルダンの肩をつつく。ちなみにローレルの瞳に桜は無い。ローレルがアルダンの耳元で囁く。
「その時にトレーナーさんのお食事によく眠れる素材が入っていてもおかしくないですよね?こないだ教えてくれたあの眠りが深くなるお茶…たまたま眠る前に二人で飲みながらお話とかしててもおかしくないですよね?」
悪魔的発想!!なんということだ!!もうそこに白衣の天使はいない!いるのは獲物を食い殺さんとする猟犬!!だれがアルダンとローレルがそんな恐ろしい顔を持っていると看破できるだろうか??いや不可能!!
「そして朝起きたトレーナーさんに隣で言うんです…C'était merveilleux♡<素敵でした♡>」
この瞬間アルダンの理性は完全に粉微塵になってダートの砂と化した。
サムズアップしたアルダンは重戦車の顔つきで言う。
「ローレルさん…私やります。」
「そうです…アルダンさんの覚悟。しかと受け取りました…」
「「ウフフ…フフフ…」」
トレセンの一部トレーナーには言い伝えがある。
『甘い花には棘がある』
実はローレルさんとアルダンさんの覚悟ガンギマリおせいそ保健委員コンビ好きなんですよね。これは太古に失われた古代大陸の奥深くの一丁目一番地メジロの新築ボロアパートの箪笥の上から二段目にしまってある古文書をエニグマでポチポチ解読すると記載してあるから間違いないんですよ信じてください。そんなことよりアルダンさんです。今日はアルダンさんのお清楚ふぁいッ♡ふぁいッ♡とお清楚どーーすんの♡を脳内麻薬にしてたら生えてきた文章なんですよね。本当はアルダンさんとローレルさんが交互に惚気合ってお互いにダメージを与え合い最後はクロスカウンターで倒れながら友情を深めるスポ根夕日の河原めいたなんかをする予定だったんですけどアルダンさんの方がネタ不足と状況判断によりローレルさんのお悩み相談室?に急遽変更になったんですよね。まあこれはこれでええやん?みたいな?アルダンさんのお清楚っぷりが皆様にも広く知られていいことだなあと思いました。これはストーカーローレルさんシリーズと今までの病みやすいアルダンさんシリーズ夢のお清楚コラボなので病みやすさが倍の大バクシン物語なのです。よしバクちゃん成分を入れたからセーフでしょう。あ、クリークさん…