「それで…隠しカメラはこれで全部か?」
「はい…あ、でも盗聴器がまだあります…」
「まだあるのか…そんなに一箇所に仕掛けてどうする気だったんだ?」
「いやあ…仕掛けてたら楽しくなっちゃって…ついつい置いちゃいました♡」
「はあ…何をしてるんだか…」
目の前でてへへと頭を掻いてるのは俺の愛バ、サクラローレル。彼女とは逆スカウトの形でパートナーになった。それはいいのだが…どうも彼女はストーカー体質というか…俺に対する愛がこじれている。今もトレーナー室にカメラを仕掛けてるところを現行犯逮捕したところなのだ。そもそもほぼ一日中一緒にいるのに今更カメラやらなんやら必要無いだろうに…
「トレーナーさん、それは違います。」
ナチュラルに心を読むな。それで?
「寝る前にトレーナーさんの心音を聞くことで安眠して早く起きることができるんです!枕に盗聴器が必要な理由がお分かりですよね?だから枕に向かって『おやすみ、ローレル』って囁いてください!あ、でもそんなことされたら頭がフットーして眠れなくなるかも…ヤダ…どうしましょう!トレーナーさんはどう思いますか??」
「今の話だと俺の枕にも仕掛けてるのか?」
「いいえ?トレーナー寮の鍵は開けられないので仕掛けてませんよ?もしかしてトレーナーさん自分でつけてくれるんですか!やった!」
「つけないよ?」
「そんなあ…」
どうしてこんな漫才みたいなことをしてるのだろう…
「ローレル…君が俺を好いてくれているのは嬉しいよ?でもね、こんなストーカーじみたことをしちゃダメだろう?」
「でもトレーナーさんにしかこんなことしませんよ?トレーナーさんだけが私を理解してくれるんです。だからトレーナーさんを一から百まで理解してさしあげたいんです!だから一個だけでもいいですからカメラ仕掛けさせてくれませんか??」
「ダメだよ?」
「枕に盗聴器を仕込んで寝言や寝返りの音を聞きたいんですけどダメですか?できれば毎晩お話しながら寝たいんですけど?」
「ダメだよ?」
「そんなあ…何を楽しみに生きればいいんですか!!」
「まず走ろうね?」
「うう…トレーナーさんが好きなのに…どうして…」
「こっちが聞きたいよ……」
はあ…惚れた弱みというやつだ…悪い娘ではないんだけどなあ…
なんだろう…付けられている…というより盗撮されているという方が正しいのか…?というより…
「なんでさっきから付けてきて写真撮ってるの?ローレル?」
隠れてるつもりなんだろうけどウマ耳が見えてるしスマホでの撮影を止める気は無いらしい…
「そ…そんな…どうして分かったんですか?」
「だって堂々と付いてきてるじゃん…何してるのさ?」
付かず離れず…もといしっかり後ろから付いてきては時々手を握ろうかどうしようか迷ってる風を楽しんでるローレル。結局何がしたかったんだろう?
「隠しカメラで撮影できないから盗撮していつでもトレーナーさんと一緒にいたいと思ってただけですよ?」
「そうなんだ…普通に一緒に居るんじゃダメなの?」
「トレーナーさんの自然な雰囲気を撮りたいんですよ!だからこっそり撮影する必要があるんです!」
「めちゃくちゃ堂々と撮影してたよね?なんなら手を握りたそうにしてたよね?」
「それはもちろんトレーナーさんと一緒に居られるチャンスなんですから活かさないといけないじゃないですか!だから私のことは気にしないで自然に振る舞っていてくださいね」
「そういうものなのか…」
まあそういうのなら普通に振る舞ってればいいんだろう…ということで普通にしているのだが…もうローレルは堂々と前からも撮影し始めた。盗撮とはなんなんだろう?
「あ、トレーナーさん。その角度いいですね!もうちょっと右いや左ですね!あ~そこそこいいですよ!」
なにかの撮影かな?堂々とポーズまで指定されている…もはや盗撮でもなんでもない…
「ウフフ…これで数日はホクホクです…」
数日なのか…まあ盗撮をしだすよりはマシかな…?
ある日デスクを見ると見慣れないペンが置いてあった。あと明らかに異質な新品のような消しゴムも…これは…使えってことなんだろうが…これ引き出しにしまったらどうなるんだろうな…試しに閉まってみよう。
「ちょっとトレーナーさん!デスクに置いておいたペンと消しゴムどうしたんですか?」
やっぱりローレルが聞いてきた…自白してるようなものなんだけどなあ…
「ああ、使わないから閉まっておいたぞ?」
「ダメです!使わなくていいから上に出しておいてください!」
「どうしてそうなるんだ…」
「トレーナーさん…分かっててやってますよね…?」
「ローレルこそなんでそんなに監視したがるんだ?浮気なんてしないぞ?」
残念ながらというべきかそんな浮ついた話は無いのである。
「はぁ〜…トレーナーさん…分かっていませんね…トレーナーさんが浮気なんてするはずがないのは分かっています。これはいつでもトレーナーさんと一緒にいたいという乙女心なんですよ?分かっていただけますか??」
「半分くらい分かったけど監視までするのは問題だと思うんだけどなあ…」
乙女心というものは難しいのだなあと思う今日この頃だった。
実はローレルさんすごくすごい好きなんですよね。だからローレルさんに隠しカメラで一部始終を盗撮されて盗聴器で一言一句漏らさず言質を取られてえなあという思いから生えてきたお話なんですね。おはようからおやすみまでローレルさんに監視されながらお墓に入りてえなあという純粋無垢な思いのストーリーなのです。