ディアーナガールの02が誕生してから約一年が経過した。
血統が血統だけに期待されていなかった仔馬だがセリに出されることになった。
セリといっても良血揃いのセレクトセールではなく地元の北海道オータムセールであるが母同様にバランスがよく薄い皮膚に覆われた肉体はいかにも走りそうな雰囲気を醸し出していた。
残念ながら毛色は月毛ではなく栗毛に分類されてしまったが尾花栗毛の様にまえがみと立て髪、尾毛が白く栗毛よりも薄いクリーム色の毛色が目を惹かれるものであることに変わりない。
タマモクロス産駒ということもあり需要の高い早熟なスピードタイプではなく成長傾向が晩成に寄り長距離向きのスタミナタイプの可能性が高いがそこを含めても十分に魅力があった。
なら何故ここまで魅力のある仔馬が庭先取り引きで引き取られなかったのか。
それは仔馬の行動にあった。
産まれた時こそぼんやりとした可愛らしい仔馬だったが親離れをし仔馬だけで放牧地に出すようになると奇行とも言える行動を起こすようになった。
放牧地では落ち着きなく二本脚で立ち上がったり駆け回り続け執拗に他の仔馬と並走しようと絡み続けた。
人が来れば牧場スタッフだろうが庭先取り引きに来た馬主だろうが近づき柵を飛び越えようと飛び跳ね続けたりひたすら鳴き続けたりと気味悪がらせた。
あまりにもしつこいので他の仔馬に蹴り上げられ怪我をしたこともあった。
馬房では厩舎に備え付けられている時計ばかり見つめ時間通りにスタッフが来ないと壁を蹴ったり隣の馬房にいる仔馬が怖がる程の大声で嘶き暴れた。
それだけならまだしも脱走癖が酷かった。
鍵を器用に開けて他の仔馬の馬房を覗いたり厩舎の様子を探ったりと問題行動ばかり起こした。
これには牧場側も困り果てディアーナガールの02だけ離れた馬房に移し鍵を二重に付けるなど対策を取ったがことごとくすり抜けられてしまいセリに出す日まで解決することはなかった。
見かけはいいが中身に問題がある。
良血馬の仔馬ならそれでも買い手がつくがディアーナガールの02はそうではない。
だからこそ生の馬体を見て購入するかどうかが判断されるセリに出そうと決められたのだ。
競走馬にせず乗馬にするという手もあるのだが牧場での問題行動から受け入れてもらえる乗馬クラブがあるのかどうか分からない。
かといって母と同じように未出走のまま繁殖入りさせることも牡馬なのでできない。
ディアーナガールの02の曳き手を持ち上場されるのを待っている男の目は疲れ切っていた。