月光背負いし逃亡者   作:ローレルライト

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霽月

調教師の発言に黙り込んだ調教助手。

それもそのはず宮原というのは若手で腕はそこそこにいいが馬を好きなように走らせる騎手であり調教助手が期待していた馬にレースを教え込ます騎手ではなかった。




 

 

「流石に宮原はマズイですよ!初戦こそ教育のできる騎手じゃなきゃダメじゃないですか」




 

 

「でも馬主が宮原以外は絶対に乗せたくないと言っている以上は乗せないといけないんだよ」

 

 

「ですが宮原ですよ?フォルモーントは変に賢いところがあるから好き勝手に走らせて結果がどうであれレースで鞍上の指示に従わなくてもいいと学習してしまったらどうするんですか?これから先我々はもちろんフォルモーント自身も苦労しますよ」

 

 

「俺だってそれくらい分かってるよ。でも馬を預かっている以上はその持ち主である馬主の意見を尊重しないといけないだろ」

 

 

「そんな……」

 

 

「もし馬主の気が変われば勇や川岸辺りの騎手を乗せたいがこればっかりは仕方がない」

 

 

こうしてフォルモーントの新馬戦は一月に京都競馬場で行われる3歳芝2000mに決められ鞍上も決まった。

後は来る新馬戦に向けて調教を積むだけだがここでも問題が起きた。

 

 

「はっきり言ってフォルモーントに追い込みはできません」

 

 

「それをなんとかするのが騎手の役割だろ」

 

 

「ですが前を走る馬を見ただけであそこまで掛かる馬を直線まで最後方に押さえつけることはどの騎手でも無理ですよ。絶対に逃げさせた方がいいです」

 

 

「ダメだ絶対に抑えろ。今回の新馬戦ではフォルモーントにレースを学ばせることになっている。馬群の中に入れろと言わないだけマシだと思え」

 

 

レースでの教育と父タマモクロスの強烈な末脚と勝負根性が引き継がれているのかを確かめたい調教師と馬を好きに走らせたい宮原で意見が対立したのだ。

初めは調教師の指示通り追い込みでレースをしようとしていた宮原だったが調教でフォルモーントに乗るようになってからは抑えれる自信がないから逃げさせてくれと言い出した。

調教師もフォルモーントの難しさを知っているので無理に逃げるなと言いたくはないがどうしても父の再来とも言える能力があるのかどうかを調べたいし初戦での教育の大切さを嫌と言うほどに理解しているので簡単に宮原の意見を飲むわけにはいかなかった。

しかし宮原との何度かの衝突の後このままでは埒が開かないと調教師は妥協案として当日のレースでもしフォルモーントのスタートが良ければ後続を引き付ける逃げ、悪ければ追い込みという指示を出した。

 

 

新馬戦に向けての調教が積まれフォルモーントはようやく自分の役割が分かったのかこれまでの様子とは打って変わって競走馬らしいピリピリとした緊張感を纏い馬房から抜け出そうとすることもなくなっていた。

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