調教師達を悩ましたフォルモーントの青葉賞飛び入り参戦は競馬ファンからは好意的に受け取られた。
登録上は栗毛だが光り輝く月毛に四白流星鼻梁小の恵まれたルックスやレースでの暴れっぷりが一部で人気になっているらしい。
それに父タマモクロス、母父ミホシンザンの時代遅れな化石血統もどうやらその人気を支えているようでそれはつい先日皐月賞を制したディープインパクトやその他のクラシック有力馬達が実力で身につけた人気とは違い判官贔屓的な人気であった。
そういうこともあってかフォルモーントの人気は前走すみれステークスを快勝したダンツキッチョウを押しのけて1番人気になっていた。
「いくらなんでも人気になりすぎじゃないか?青葉賞を中一週で勝った馬なんてこれまでいたことがないのに……」
「そうですよねぇ。間が短いからフォルモーントもいつもより昂っていてパドックでも入れ込んでましたしレースで暴走しそうじゃないですか」
「それにキャリア二戦も不安視せざるを得ない要素じゃないか。まともな競馬ができる馬ならまだしも無茶苦茶な競馬しかできないのに出走馬の中だと1番場数を踏んでいないんだぞ」
「やっぱり重賞に出すにはまだ早いですよね。そういえば出走馬の中にブレーヴハートがいますしこちらも何か大口叩きましょうか?」
「叩くにはもう遅い」
検量室のモニターの近くで調教師と厩務員がコソコソと話し合いながらレースを見ていた。
「あ〜、やっぱり出遅れたし前に行こうとしてる」
スタートでフォルモーントは出遅れるがすぐさま馬群を抜け出し先頭を走るワールドアベニューを抜き去ったがもっと前に行きたいフォルモーントと大逃げはさせたくない宮原とで喧嘩をし始めた。
振り落とさんとばかりに首をもたげて抵抗するフォルモーントに負けじと手綱を引く宮原の構図が観客の笑いを誘う。
「宮原抑え切れてませんよ」
「抑え切れず暴走するよりはマシだ。せめて4コーナーまでは何とか保ってくれないと厳しいぞ」
そんな調教師達の願いも虚しく向う正面の半ばで宮原の体力が切れてしまい解き放たれたフォルモーントは暴走しながらグングンと後続に引き離しリードを10馬身ほどに広げた。
観客席からは怒号や歓声、笑い声が沸いた。
「こりゃもうダメだな」
「直線の短い函館ならまだしも1番長い府中でこんなことすりゃもうダメでしょうよ」
案の定4コーナーを抜けて直線に入った時にはフォルモーントの体力が完全に尽きてしまい失速していた。
あったはずのリードはあっという間に縮められゴールした時には出走した18頭中17位の大惨敗だった。
自らの意思で暴走したのに茫然自失としているフォルモーントと申し訳なさそうな宮原を出迎えた調教師は今度こそ放牧に出すなりして建て直してやらないとマズいなとどこか冷静だった。