一応、二巻までは勝ち方を考えてある。
続くかは未定。
息抜きを乱発するかもしれない。
『130』という都市伝説を知っているだろうか?
この数字記号はあるオンラインゲームのプレイヤー名である。
『130』はオンラインランキングで不動の記録を打ちたてたという訳では無い。
常勝不敗という訳でもなければアプデされたダンジョンを誰よりもいち早く攻略したという訳でもない。
曰く……オンラインランキング一位のプレイヤーに圧倒的大差で勝つ。
曰く……電王戦で使用されたプログラムに対し、三面指しで完封した。
曰く……『130』に勝利したプレイヤーはその勝利を誇ることをせず、そのゲームから足を洗う。
曰く……ツールアシスト、チートコードを使うと馬鹿らしくなる程酷い敗北を味わうことになる。
曰く……曰く……曰く……
もし『 』のような敗北を許さない都市伝説が存在していたら二番煎じにしかならなかったであろうそんな都市伝説
その程度の都市伝説だが紹介しようではないか。
『130』の素顔を!!
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
130「死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ」
六台もあるコンピュータの画面に向かってコントローラを握る少年が一人。
「俺使用しているワンキャラに大した130人同時に相手しろとかそえなんてイジメ?てか、『130』にかけてって死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ」
素早さに極振りしているのか73まで減った敵プレイヤーの弾幕を緋弾せずに掻い潜っている。
「死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ……さーて、そろそろかな……っと!」
いきなり死ぬの連呼を止めたと思ったら敵方の73名のプレイヤーの連携が崩れ、仲間割れが始まる。
130「後は疲弊した敵方を狩る簡単な作業ゲー」
『You Win!!』
画面にデカデカと現れる勝利コール。
敵プレイヤーの仲間割れの種明かしだが彼の足元にあるキーボード。
足で相手方のチャットを引っかき回し、某芸人のブログの炎上並に荒らした。
誰も憧れることはない邪道な手段に手を出す彼は哀川 零(あいかわ れい)18歳・無職・白髪・Yシャツ・ジーンズ・大きな隈・死んだ魚の目・ゲーム廃人。
某神の遊び相手ではあるのだが、某神はオリキャラでしかもこの作品にでてくるか分からないので説明は割愛させてもらう。
今回は某神ではなく、盤上の唯一神と遊んでもらうとしよう。
テロンッ
パソコンから新着メールの音が鳴る。
「お、早速先程の対戦の誹謗中傷か?予想より頭が冷えるのが早い奴がいたもんだ」
王道でなく邪道を進む130は数多くの敵と数多く捨てメアドを所有している。
いつもだったら対戦相手からのメールなんて面倒なんで読まずにとっととプロフィール設定画面でメアド変更を行うのだが、予想より早く届いたメールを暇つぶしついでに見てみるとそこに予想していた誹謗中傷はなく、URLと一文『生まれる世界を間違えたと感じたことは無いかい?』と。
「こうも予想を裏切られると好奇心を刺激されるじゃねえか」
零はそう呟き、URLをダブルクリックする。
別にウイルスの類でも架空請求の類でも構わない。もしそうならば逆に潰せるし。
またもや予想外に表示されたのはオンラインチェスの盤面。
この予想外は熱が冷めていく。
「将棋のプログラムより人間に勝てる確立が高いからってチェスのプログラムか?そんなもんとっくに攻略済みなんだよ」
せっかくの熱が冷めたことによって怒りが沸いたらしく、呟きながら完封する為に駒を動かす。
チェスは『二人零和有限確定完全情報ゲーム』である。
運の介入は無く、理論上必勝法が存在する。
ただし1000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000通りの局面を把握出来た場合のみである。
これがまだコンピュータプログラムに人間が勝てる理由である。
前回プログラムと対戦した時からどれだけ成長したのか予想し、それを上回るように駒を動かす。
「……ほう。こういう予想外だよ。俺が大好きなのは」
今の敵方の一手は完全な悪手。対戦相手は最善手しか選ばないプログラムではない。
零は再び熱を持つ。熱を持ちながら冷静に嬉々して駒を動かす。
十数時間後
コンピュータの画面にはゲーム終盤の盤面が映し出されている。
相手側 キングA8 ポーンB6
零側 キングB1 ビショップC5 ポーンB3 ポーン(クイーン)E7 ポーン(クイーン)E6
もう零の詰め作業の段階である。
零の次の一手で画面に文字が映しだされた。
『Draw』
このゲーム引き分けである。
零は最後のポーンをE6クイーンにプロモーション済みのポーンで取り、ステイルメイトとなった。
ステイルメイトについては説明面倒なんでググれカス。
テロンッ
おそらくチェスでの対戦中に何度も流れていた先程のオンライン対戦での敵方からのメールではなく、チェスの対戦相手からのメールだろう。
メールにはまた一言『おみごと。それ程までの腕前、さぞ世界が生きにくくないかい?』
彼のいる部屋にはパソコン、床に散らばるゲーム機器、詰まれたダンボール。ドアの郵便受けには豪華な装飾がされた手紙が大量に刺さっている。
やれそうなことはやり尽くした。しかし、何をやっても新鮮味を感じない。まるで前により質の高い類似した何かを経験したような感覚。
現在の生活も惰性でしているだけ。
何か簡単なきっかけで手放すだろう。世間に戻るかもしれないし、人生を終わらせるかもしれない。
『むしろ生きやすくて糞つまらねえ。ベリーイージーとか誰得だよ』
送ったメールに即座に返信が来る。
返信ではあったが返答ではない一文
『もしその世界と違うルールで動く世界があったら?』
この世界にルールがあるのかは知らないが、この世界はもう充分に遊び尽くした感がある。
いや、生まれる前にもう遊び尽くしていたのだろう。
なのにエンディングが起こらない。
いや、いくつエンディングを迎えても世界が終わることはない。
『目的もルールも明確な盤上の世界があったら、どう思うかな?』
「ふっ」
零は苦笑し、メールに返答する。
『もし、そんな世界があるのなら生まれる世界を間違えたんだろうな。そんな世界でなら俺も楽しめるのかもしれないな』
刹那
パソコンにノイズが走り、世界が歪む。
メールが表示されたパソコンを除き、電源が落ちる。
「……確かに驚いたがまさかこれだけじゃねえよな?この程度だったらまだ俺を楽しませられねえぞ!」
唯一光る画面から音声がする。
『僕もそう思う。君は生まれる世界を間違えた』
メールへの返答だ。
そして、視界が画面を残し、テレビの砂嵐に変わる。
零は画面に問答無用に引きずり込まれた。
『ならば僕が生まれ直させてあげよう。君が楽しむことの出来るだろう君が生まれるべきだった世界に』
元居た世界で最後の言葉はそんな誰だか分からないその世界の住人でない者の声だった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
零の視界は光を取り戻す。
瞳に映る絶景で自分がいる状況を理解する。
そこは、上空。
「後、43秒ってとこか」
零は自分が地面にキスするまでの時間。つまり、自分の死までの時間を冷静にはじき出した。
いや、冷静ではない。今現在に目に映る光景のほうが重要だっただけだ。
『絶景』と表現した。今までも素晴らしい景色を見てきたが、先程も述べたように新鮮味が無かった。でも、今回は違う。一部の隙もなく、この景色を初めて見ると言えた。
もしこのまま死ぬとしてもこの景色を見れたことで充分お釣りが出せるとまで感じた。
「ようこそ、僕の世界へッ!」
零の隣にいる少年が落下しながらそう言う。
「この世界は全てが単純なゲームで決まる。人の命も、国境線さえも」
そんな少年の発言に零は意義を唱える。
「馬鹿か?このままだとその単純なゲームを始める前にゲームオーバーになりそうなんだが。斬新過ぎるだろ。それなんてクソゲ?」
「馬鹿じゃないよ。僕は君たちの世界風に言うなら神様かな?あそこに住んでるだ」
最初の疑問にだけ返答し、自称神様は地平線のかなたの巨大なチェスの駒を指差した。
「また会えることを期待しているよ。そう遠くないうちに、ね」
自称神様はそう言って消える。
「おいおい、こういう場合は走馬灯が見えるもんじゃねえの?あれが俺の走馬灯?走馬灯なのに初めて見るものが出てきちゃったよ。はい、死んだ」
零は地面にキスをした。
いつもならば原作知識とチート臭い能力で彼は原作を壊すが、今回は原作知識無し、武力の介入がほぼ無いゲームでの戦い。
『 』というチート兄弟抜きで原作を壊すことが出来るか?