ノーカオス・ノーブレイク   作:零崎哀識

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ステフ=バカ

貴族から毟るだけ毟った帰り道。

 

「いくらなんでも鬼畜過ぎますわ」

 

なんかステフが言ってくる。

 

「おいおい、俺はいくらなんでも第十二位の吸血種(ダンピール)を飼ってなんていないぞ」

 

「吸血『鬼』を『畜』産しているという意味じゃありませんわよ!」

 

「あなた、今のよく分かったわね」

 

「はぁ……で、どうするんですの?」

 

「ん?何をどうするって?」

 

「あの三人から巻き上げたものですわよ」

 

「別に、家族を案山子にするつもりはねえよ。好きなようにさせるさ。賭け皿に乗せられてそれでも許せるっつうなら連中のところ戻ればいいし、実家に帰るんだったらそれでもいい。もしいくところ無いなら適当に給仕の仕事でもくれてやれ。他の資産はステフと大臣に任せるわ」

 

別に金の為にした訳じゃねえし、農業改革の邪魔だったからしただけ。

 

国が有効に使えばいい。

 

「……今回のデモは私のせいですから言いずらいですけどこのやり方は遺恨を残しますわよ」

 

「政策と指針だけ出すからそれ進めるのはステフと大臣に任せると言ったが、それでも面倒な輩が居たら俺が対応するとも言った筈だぜ」

 

「だから!あなたのやり方がヤクザだと言ってるんですわよ!」

 

「問題無い恐怖政治は失敗確実だが、少しは力を見せねえと図に乗って態度デカい奴で溢れかえるぞ」

 

国王決定戦で恐怖政治紛いの戦術をとったクラミーは渋い顔をする。

 

「つーか、逆に俺が即位して一ヶ月近くもよく持ったな」

 

そういや、もう少し正確には五日後には一ヶ月か。クラミーともそれでおさらばと考えると感慨深いものがあるな。

 

俺が干渉に浸っているとステフが言う。

 

「ええ、まあ……今までは抑えてましたもの」

 

「抑えてた?」

 

「レイが提示していた農業改革は多数の貴族が最初から反対してましたのよ。幸いオルオ家とビルド家はドーラの加盟が通用するから強力してもらって根回しして貰ってましたの」

 

「……へ?」

 

「王家の直轄地で大規模実験して得たデータから、こちらの派閥の大貴族き利権流してそれをえさに日寄った中小諸侯達を少しずつ切り崩せはしてたんですけどそれでも反対する貴族もいるんですのよ。今日の三人が筆頭でしたから二度はないですわ……って、なんですの?」

 

すらすらと語るステフの額に手を当てる。

 

「うん、熱はないな。まさか敵国が変装して俺を潰しに来たのか!?」

 

ちっ!あの世界中がカオスな盤面になっている状況で攻勢に出てくる種族がいたとは。全く予想外だったぜ。狙いは俺がどこの国の間者か確認する為か?……もしどこの後ろ盾もないことがばれたらその時点でこっちは詰んでるぞ!まずは魔法を感知出来ないことから気をそらさねえと!

 

「ま、ちょっと詰めが甘かったな。ステフに上手く化けたつもりだろうがステフがそんな頭良さそうなこと言わないんだよ!」

 

「……あのちょっといい加減失礼過ぎませんの?」

 

偽ステフは肩を震わせて言う。

 

「ふん!まだステフだって言い張るのか?あの何度も無策で無謀な戦いするステフだぞっ!!」

 

「その何度も無策で無謀な戦いするステフですけど!?」

 

「……えー……あー……うん……はいはい、少し待て。いや結構待て」

 

ちょっと頭の中で整理する。

 

あのステフだと言い張るこの頭良さそうな発言する少女。

 

「……お前、本当にステフ?」

 

「そうですけどなにか?」

 

嘘はついている感じは無い。てことは本物?

 

「……まさかとは思うけど……ステフって実は……馬鹿じゃないの!?」

 

「これでも国内最高のアカデミーを主席卒業してるんですのよ!!」

 

「鏡を見ろ。そしてアカデミーの皆さんに謝罪しろ」

 

本日二回目の鏡見ろ。

 

国王の血族が首輪、犬耳、犬尻尾を装備している。

 

「頭いい人はこんな姿にならない」

 

「こんな姿にした当人が何言ってるんですの!?」

 

今朝のブラックジャックで敗北したステフは『今日一日犬になれ』という要求によってこのとうな姿になってる。

 

やはりこの世界線でもこの格好は怪異日できなかったようだ。メタってないよー。

 

大通りを通る人は皆奇異の目をステフに向けている。

 

「もうちょっとマシな要求は無かったんですの!?」

 

「いやあ、この要求にどのような形で達成されるのか気になってな。本物の犬になる訳でもないのに耳と尻尾だけ生えて首輪がつくってのは中途半端だよな。それに精神的に犬になってねえし、言葉も普通なのにステフお座り」

 

そう言うとステフはしゃがみ両手を地面につける。

 

「うぅ……なんで逆らえないんですのよぉ!」

 

「この通り犬への仕込みは完璧って謎だよな」

 

そこら辺の飼い犬より利口ってことだろ。躾しないと出来ねえもんな。首輪がついてるから野良ってことはねえし。

 

「うう、というか何で勝てなかったんですの?」

 

「やっぱり分かってなかったのか、うん、ステフはそうじゃないと」

 

「ステフ=バカが成り立ってるんですの!?」

 

さて、ステフのおかげで改革は上手く行ってるっぽいけど一時しのぎなんだよなあ。

 

「領土取り戻さねえといけねえか」

 

ベストとしてはテトの話を聞くなり、東部連合がベストなんだけどな。

 

「ねえ」

 

「あ、そういやクラミーいたな」

 

ほとんど空気だったクラミーに声かけられ存在を思い出す。

 

「はあ!?四六時中一緒にいるのに普通存在忘れる!?」

 

「お前こそ忘れたか?俺は普通じゃない。で、何よ?」

 

「はあ……まあいいわ」

 

俺の発言に何かを諦めたらしく用件を言う。

 

「こんな大通りをワービーストの格好させたステフを連れて歩いたら迷惑でしょ。どこかお店に入るなりして休憩しましょ」

 

「……なるほろ。だから不憫とかそういう目じゃなくて怯えの方が近い目してたわけか」

 

うむ、東部連合には動物を擬人化したような種族の集まりだと……見る価値あるな。

 

「よし、丁度いいし、最初に攻め落とすのは東部連合にするか」

 

「なんでそんな結論に到達するのよ!?」

 

店に入ることを提案したら攻める国が返ってきたことに驚くクラミー。

 

「あ、店入るのも構わないぞ。適当に決め手くれ。ペットありのところな」

 

「ちょっとそんな話よりも「それと図書館……は何故かねえから本屋帰りによれそうなところで」……分かったわよ!ただし店に着いたら説明しなさいよね」

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

というわけで喫茶店でお茶してるんだが、喫茶店の客はほぼ無しの閑古鳥が鳴いてる状態。本来はこんな格好のステフを入れるのは無理っぽいんだが、色々頼むという条件でOKしてもらった。

 

テーブルの上の紅茶と茶菓子だが結構な値段がする。

 

材料が少ないんだから仕方ないってとこだな。ステフに聞いた国のデータをスマホに纏めてみたが、元の世界なら暴動が起きてるレベル。

 

「で、説明してくれるのよね?」

 

「ん、何を?」

 

「いきなり東部連合を攻めるって言った理由よ!」

 

ダン!とテーブルを叩いた。

 

「ああ、それ。理由は三つ。一つ、土地的にこのエルキアと隣接していて領土としてはうってつけ。二つ、テトが言うに俺のスマホが気になって夜も眠れないらしいから何か攻め入る隙がある。三つ、獣擬人化面白そう」

 

「最後の一つ理由になってないけど、少ないけど根拠はあるみたいね。でもやめときなさい」

 

「やだ」

 

即答してやるとクラミーは溜息を吐いて茶菓子の自棄食いに走った。

 

「うむ。で、ステフは食わないのか?」

 

床にお座りの姿勢でいるステフに問う。

 

「……お皿を床に置いてあるのは犬食いしろってことなんですの!?」

 

店員さんに悪いし、皿はあとでちゃんと洗いますよ。クラミーが。

 

「聞いてますの!?まずは負けた理由を教えなさい!じゃなきゃ納得いきませんわ!」

 

「ふーん、説明されたら納得すんのか。命令解除じゃなくて」

 

「……あれ?」

 

「何?もしかして気に入ってる?そうなら半径10メートルに入らないでくれ」

 

「そ、そんなわけ……ないですわ!馬鹿にしてるんですの!?」

 

「うん、でも、今の嫌なのに感じちゃう的な発言はガチで引いた」

 

「お願いしますわ。後生ですから一発殴らせてください」

 

凄い形相でこっちを見てくるステフに少し圧されてっ種明かししてやる。

 

 

「分かったよ。教えてやる。俺がやっていたのはカードカウンティングだ」

 

「カードカウンティング?」

 

「そう。ブラックジャックは『親がバーストしやすい。つまり残りの山札に9~KとAが多く残ってれば子が有利でそれ以外が多く残っていれば親が有利ということになる。山札は52枚。子が有利なカードは24枚。52÷24=2.17

だから残りの山札の枚数をその山札に乗っている子に有利なカードの枚数で割った数が2.17より大きくなれば親が有利。逆に小さくなれば子が有利になる。

差が大きく開いたときにオールベットとかして稼いだだけ」

 

「「………」」

 

俺の戦術にステフだけでなくクラミーの口も開いて塞がらない。

 

「……それってイカサマじゃないですの?」

 

「頭使ってゲームすんのが駄目ならチェスで盤面読むのもイカサマだろ。それに教えてやったんだからまねすれば?バカには出来ねえと思うが」

 

ぶっちゃけると元の世界じゃイカサマに分類されるんだけどな。

 

「だいたいお前がやっていたシャッフルトラッキングの方がイカサマだろうが」

 

「き、気付いてたんですの!?」

 

「まあ、お前よりイカサマする連中はベガスやヤーさんの賭博場で見たからな。ステフレベルのイカサマやろうものなら直ぐにバレてベガスならバカみたいな負債、ヤーさん相手なら海のそこに沈められるのがオチだな」

 

(まさかゲームに計算式を持ち出してくるなんて……本当に純粋な運勝負だったら?)

 

「レイ!もう一度勝負ですわ!」

 

「何思いついたか知らんが。一般的な人間の対応してやる。正気か?」

 

「ええ!今朝と同じように私が勝ったらレイには真人間になってもらいますわ」

 

「はあ、断ってもいいんだが受けてやるよ。挑発とかウザそうだし、ていうかステフに挑発されたら死ねる」

 

「そこまで言いますの!?」

 

「うっせえ。俺が勝ったらお前語尾にワンね」

 

勝ったら今日一日犬の撤回ならわざと負けてやっても良かったんだけどなあ。

 

「あら、ゲームの内容を聞かずにOKしてもいいんですの?」

 

「俺がステフに万が一にでも負けるかよ。億が一、兆が一なら分からねえけど……あ、ちなみに俺がわざと負けようとする可能性だから」

 

そういやこっち来てから一度も負けてねえな。

 

別に無敗目指してるってわけじゃねえんだけど、賭けとなるとそう簡単に負けられねえんだよな。

 

「勝負内容は次のカドから現れるのが男か女か勝負ですわ」

 

以下略

 

あの後も何度も勝負を続けた結果、全線全勝。

 

ステフが大変な状況になった。

 

どんな状況かは次回に続く。

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